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第五十八話 『大会二日目・第二試合開始』

書き終わったら即投稿! これぞジャスティス!!

……ミスがあったらすみません。


2017/04/29 微修正

 「それではレイジ選手、移動をお願いします」


 昼休憩が終わりしばらくすると、係員から声がかかる。

 ついに二回目の試合の順番が回って来たらしい。


 のんびりとした食事のひと時を過ごし、リフレッシュもできた。

 気合も十分。特に不調も無し。

 ……よしっ! 行くか!!


 気合を入れなおした俺は、椅子から立ち上がり、舞台の出入り口へと向かう。


 「では、クジを引いてください」


 ……来たな、マジキチくじ引き。

 中に入っているルールは、レティアやフィルスに聞いて全て把握している。

 俺は見ていなかったが、二人は全ての試合を見ていたからな。

 流石に五種類程度なら、全て出揃う。


 特殊ルールは移動不可、魔導具使用不可に加え、武器・防具使用不可、視界遮断、開始後一定時間攻撃不可だ。

 ちなみに最後のルール、時間は砂時計で計られているらしく、だいたい三分くらいっぽい。


 いやはや、なんという鬼畜さだろうか。

 とはいえ俺の場合、ぶっちゃけ最初の二つ以外はそこまで深刻な問題にはならない。

 武器防具は、元々大したものは無いのであまり関係が無いし、視界遮断はむしろ自分でそうする魔法を用意してるくらいなので、最悪相手も同じ土俵に引きずり込むだけ。

 開始後一定時間攻撃不可に至っては、HPに影響しない妨害などは認められているので、よほどの相手でもなければどうととでもなるだろう。

 つまり、俺にとってこのくじ引きはハズレ2アタリ3という、まぁまぁ悪くないものであるという事だ。

 相手の引き次第では、むしろ有利になるかもしれないくらいだ。

 そうだな、ポジティブに考えよう。

 きっと今俺の手に触れているこのクジも、良いものに違いな――――


 『魔導具使用不可』


 ……オワタ。これ一番引いちゃ駄目な奴じゃん。


俺の今の装備は、マスターに貰った短剣一本だけ。

 流石にこれではマズいという事で、急いでフィルスの元へと走り、剣を貸してもらう事にした。

 この剣は、以前フィルスに買ってあげたもので、何の変哲もない、ただの数打ちの鉄剣だ。

 だがそれでも、古い鉄の短剣よりはずっと強力な武器であろう。

 残る問題は、俺が西洋剣を使ったことが無いという事なのだが……

 日本刀なら、師匠の下にいた頃に練習したこともあったが……それももう、随分前の話だ。

 最近はずっとナイフしか使ってこなかったからなぁ……現代兵器の蔓延る戦場では、刃物などその程度で十分なのだ。

 むしろ長い剣など、邪魔でしょうがない。


 急いで戻ると、もう準備は終わっていたようで、直ぐに舞台に通される。

 相手は四十代くらいの筋骨隆々なオッサンで、その手にはこれまたゴツイ大剣。

 ……俺の相手はこんなんばっかか! というより、この世界の単騎での強者というものが戦士系ばかりという事なのかもしれないな。

 魔法は詠唱に時間がかかるし、単騎で、それもこんな狭くて障害物の無い場所での戦闘は厳しいだろう。 俺はどっちも行ける上に、身体能力も高めだからまだいけてるけど。


 さて、相手は完全に物理系の戦士っぽいし、特殊ルールがまた魔導具使用不可とかでないことを祈るとしましょうかね。

 ……あれ? これってフラグかな?


 「それでは、試合を始める前に、お互いの特殊ルールを確認したいと思います!」


 俺が舞台中央に到着すると、マリアーナさんがしゃべり始める。

 ……さて、お相手は何を引いたのかね。


 「レイジ選手の特殊ルールは、魔導具の使用不可! この試合中、彼は全ての魔導具の使用を禁止されます! 先ほどの試合では見事な魔法を見せてくれたレイジ選手ですが、今度はいったいどんな戦いを見せてくれるのか、期待が高まります! そしてその対戦相手であるガメシュナ選手の特殊ルールは……これまた魔導具の使用禁止です! つまりこの試合は、お互いに己の力と技のみで競い合う、ある意味では本当の強者を決める戦いというわけですね! これは熱い! 私、今から興奮してきちゃいました!! さあではお二方、準備はよろしいでしょうか!」


 くそぅ……相手もそれかよ。こりゃ、こっちが不利だな……まあ、やるしかない、か。


 「なさそうですね。それでは、開始位置への移動をお願いします」


 俺も相手も、お互いに一言も発することなく移動をする。

 その間には、既に緊張した空気が張りつめており、これから始まる試合への真剣さが感じられた。


 「それでは、試合――――開始!」


 開始の合図が響き渡るが、俺も相手も動こうとはしない。

 真面目に試合をしていない訳では無い。

 ただ動くだけの隙が見つからないのだ。

 下手に動けばそれこそが隙になりかねない。

 それをお互い、よく理解しているだけ。


 「あんた、強いな。冒険者ランクDって聞いてたから、こうして相対するまではどんな雑魚が出て来るのかと思ってたが……いいね。面白い」


 お互い動けず見つめ合っていると、ふと相手選手が口を開く。

 そこには隙こそないものの、試合の相手、俺に対する敬意のようなものが感じ取れた。


 「そいつはこっちのセリフだよ。冒険者ってのはあんたみたいなのがゴロゴロしてやがんのか? さっきの相手もなかなかのもんだったが」


 「ふ……ふははははは! そんな訳ねーだろうが! 俺らはAランク冒険者だぜ? というか、この会場で勝ち残ったお前以外の冒険者は全員Aランク以上だっつーの。ゴロゴロなんている訳ねーだろ! Aランクなんざ、そこそこでけぇギルドでも一人いれば上々、三大ギルドでも十人かそこらだ。それでも多いってんなら、お前にとってはそうなのかもしれんがな」


 げっ! そんなに少ないのかよ。

 こりゃ、さっきの試合、俺が思っているより目立っちまったのかもな。


 「なんでそんな嫌そうな顔してんだよ。今更、今いる場所の厳しさに気が付いたのか? それにしては怯んだ感じがしないが……」


 「そんなんじゃないさ。ただ、あんまり変に目立つのはね……ま、こんな場に出てきた時点で今更なのだが」


 「ははははは! そいつは本当に今更だぜ! こうして狭き門を潜って戦っている時点で、お前は十分目立ってるんだよ。それに、一回戦でAランク、一人倒しちまったんだろ? だったら今更勝とうが負けようが、目立つことに変わりはないだろ」


 「ま、そうだよな……はぁ……」


 「冒険者なんだから、名が売れるのは悪いことじゃねぇだろうに。変わった奴だなお前……だが、これで躊躇う理由はなくなったか?」


 「なんだ、気づいてたのか……ま、そうだな。ああ、大丈夫だ。すまなかったな。では改めて……参る!」


 俺はまっすぐ相手の懐まで踏み込み、均衡を崩す。

 先ほどまで攻められなかったのは、どこかまだ、目立ってしまう事への躊躇いがあったのだと、今のやり取りで気付かされた。

 だがもうそんな必要はない。開き直ってしまえばいい。そう思った瞬間、嘘みたいに体が軽くなる。


 「ふはははは! そうでなくてはなぁ!! これでこそ闘い! それでこそ戦士よ!!」


 俺の剣を両手に持つ大剣で受け止めながら、楽しそうに笑うガメシュナ選手。

 まったく……とんだ戦闘狂だな! だが、嫌いじゃないぜ!!


 「ふははははは!」


 「あははははは!」


 両者の剣のぶつかり合う音と笑い声だけが会場に木霊する。

 俺も師匠と気が狂う程試合をし続けた身、こういう武に身を置く者同士の真剣勝負は嫌いじゃない。

 それにあの頃は格上との闘いしかなかったからな……こうして戦いになる相手との試合は始めてだ。

 いや、一応試合っていうならさっきのもそうなのだが、やはり魔法無しってのがいいな。

 この泥臭い感じが、前の世界での戦いを思い出せてどこか気持ちが良い。

 魔法無しなら、一応フィルスとの組手もあったのだが、やはりフィルス相手では腕の差以上に、イマイチ真剣にぶつかり合えない。

 やはりこういうのは、男同士に限る。


 「おめえも楽しそうじゃねえか! なあ、闘いは好きかよ!」


 「こういう泥臭いのは嫌いじゃないぜ! あんたほどじゃないけどな!」


 「ふははは! そうか! だがお前さん、長物は不慣れか? イマイチキレがない……っぜ!」


 彼の重い一撃に、俺は体ごと吹き飛ばされてしまう。

 その勢いで、剣が場外まで吹き飛んでいってしまった。


 「ほれ、お前さんの闘いってもんを見せてくれよ」


 「はっ! 今の隙を突かなかったこと、後悔するなよ!」


 そうして俺は、腰の後ろに下げていたナイフを抜いて、再びガメシュナ選手に向かって行くのであった――――

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