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第四話 『王都に着いた』

ヒロイン、決まりました!

次かその次の話辺りで登場させてあげられる......と思います。たぶん。


2017/01/22 修正しました (ギルド協会 → 冒険者協会)

2017/01/22 冒頭の「盗賊を目撃していたため」の辺りの文に違和感をおぼえたので修正しました

2017/02/07 行間修正

2017/04/28 日本語のミスを修正

2017/06/16 微修正

 村をでた俺は、王都目指して街道をひたすら歩いていた。


 こちらの世界に来て早々に盗賊を目撃していたこともあり警戒をしていたのだが、1日経っても何も起こることはなく道中は至って平和であった。

 事件など何もなく、特別起きたことと言えば時たますれ違う荷馬車に乗った商人らしき人達や冒険者の中に、笑顔で手を振ってきてくれる人がいるくらいだった。




 そんな平和な道を1日と少し歩いたところで、王都の外壁らしき見るからに堅牢そうな壁が見えてきた。

 メリルさんの、王都まで歩いて2日っていうのは色々荷物を持って行くことを前提にした時間だったのかもな。本来は食事休憩などもあるだろうし、もっと時間がかかるはずだ。

 俺の場合、夜以外止まることなく歩き続けてたからな。そりゃ予定より早く着くわけだ。


 外壁に近づいていくと、門の前には何人かの列ができていた。おそらく街へ入るための待機列なのであろう。

 列に並んで待つこと約20分。俺の番がやってきた。正直ちょっと緊張する。


 「次の方、どうぞ!」


 「はい」


 前の人を見ていたから手順はわかっている。初めに身分証の有無を聞かれ、ある場合にはそれとよくわからん水晶に触れ、金を払って終わり。無ければいくつか質問を受けてから水晶に触れ、金を払って終わりだ。

 しかし、ここで誤算が生じた。どうやら身分を証明するものを何一つ持っていない場合、仮の身分証を発行してもらわなくてはならないらしいのだが、これの発行に50メリク、つまり大銅貨1枚必要らしい。そこには税金も含まれているらしいがそんなことはどうでもいい。問題は俺の所持金が94メリクしかないという事だ。これでは冒険者登録に必要な金が足りなくなってしまう。しかし街に入らんことには冒険者登録もできない訳で......


 悩んだ俺だが、結局せっかくの王都まで来たのだしとりあえず入ってみることにした。

 というわけで50メリク支払い仮身分証を受け取った俺は、不安を抱きつつ王都へと入っていくのだった。




 中へ入ってみると流石王都なだけあって、門をくぐってすぐだというのになかなかの賑わいを見せていた。

 いや、むしろ門をくぐってすぐの所だからこそかもしれないが。


 「ようこそ! 王都フェレブへ! フェレブへ来るのは初めてですか?」


 俺が立ち止まって辺りを見渡していると、外壁の内側に立っていた兵士の1人が声をかけてきた。


 「え? ああ、はい。遠くの田舎から来たもので。色々と珍しくて」


 「そうでしたか。長旅ご苦労様です。よろしければ良い宿を紹介しますが?」


 「あ、いや、その前に冒険者登録がしたいのだが」


 金もなく、宿を利用するつもりなどさらさらない俺は紹介などされたらたまらんと慌てて話題を変える。


 「冒険者希望でしたか。どのギルドで登録されるのですか?」


 ん? どのギルド? 王都だけで複数支部があるという事か? どこでもそんな変わらんと思うのだがな。


 「別にどこでもいいから一番近いところでいいです」


 「え!? そんな決め方でいいんですか? もっとちゃんと考えた方がいいと思いますよ。後から違ったと思っても、所属ギルドはなかなか変えられるものではありませんから」


 へ? 所属ギルド? え、何、ギルドっていくつもあるの? そういうタイプだったのか。てっきり1つしかないのだと思い込んでいた。俺としたことがうかつだったな。


 「そ、そういうものでしょうか。実は冒険者のことよくわかってなくて。よければ軽くでいいので教えていただけるとありがたいのですが」


 「いいですよ! と言っても私は国の兵士ですからね。ギルドに関しては人並み程度にしか知りませんけど」


 「いえ、全然それで構いません。私なんて人並みにも知らないのですから。人並み以上の部分は自分で何とかしてみます」


 「そうですか。わかりました。では――――――」


 それから俺はその兵士の方に有名ギルドについての簡単な情報を教えてもらった。

 いやーほんと親切な兵士さんがいてよかった。彼が居なかったらテキトーに所属ギルドを決めてしまってあとで後悔することになっていたかもしれん。彼の親切心に感謝だな。持ち合わせがないので礼ができないのが心苦しい。


 とりあえず必要な情報を得た俺は、親切な兵士さんにお礼を言い街の様子を見て回ることにした。

 さて、肝心の冒険者ギルドについてだが、有名な大ギルドは全部で4種類だけのようだが、所属人数が10~20人程度の小さいギルドはたくさんあるらしく、正確な数はわからないとのことだった。

 有名ギルドの話もそれぞれいくつか聞いたが、俺としては変にデカいところで縛られるよりは、小さいアットホームなギルドのほうが好みだ。わざわざ俺のために色々話してくれた彼には悪いが、大ギルド所属は選択肢としてはなさそうだな。ノルマとかルールが色々あるらしいし。一応確認くらいはするつもりだが。


 冒険者登録の手数料は、すべての冒険者ギルドを取りまとめる冒険者協会が定めているものらしく、どのギルドでも一律50メリクなのだそうだ。中には追加で手数料を取るギルドもあるらしいが。

 となるとやはり金が必要になる。やはり買ったばかりの服を売るしかないのだろうか。失敗したなぁ。こんなことなら関税や身分証についてメリルさんにきちんと聞いておけばよかった。


 そんな風に若干凹みながらどうしたものかと街をぶらぶら歩いていると、少し離れた場所から言い争うような声が聞こえてきた。

 様子が気になった俺は、声のする方へ行ってみることにした。


 「できるから依頼を受けたのだろう? いいからさっさと責任をとれ!」


 「しかし現地で確認された魔獣はそちらの報告にあったものとは全くの別種で」


 「言い訳をするな! それくらい想定しておくのは冒険者として当然の――――」


 言い争っていたのはいかにも貴族! といった感じの太った男性と、小柄なおじいさんだった。


 (ふむ。貴族が何らかの依頼をしていて、その依頼を受けた冒険者が依頼を達成せず帰ってきた。それについて貴族は責任を追及してるといったところか? しかしあの爺さんは何者だ?冒険者って感じではなさそうだが......)


 聞いている感じでは、そもそも貴族側の依頼書に記載されていた情報が間違っていたために依頼を達成できなかったのに対し、貴族が難癖つけてるとしか思えんのだがなあ。

 しかし止めに入ろうにも詳しい事情を知っているわけでもないし、ましてや貴族がどれだけえらい奴なのかわからない以上、下手に首を突っ込んでこっちまで被害を受けたくはない。最悪この国での立場を失う可能性まである。そこまでのリスクを背負ってまであの爺さんを助ける義理は俺にはない。


 (でもなぁ......見ちまった以上はどうにかしてやりたくなるのが人情ってもんだしなぁ)


 そう考えた俺は、一旦その場を後にすることにした。




 それから10分後――――――

 俺は争いの現場にある人を連れて戻ってきた。


 「失礼。私は冒険者協会フェレブ支部副支部長のマーガスという者です。依頼者とギルドとの間で言い争いが行われていると聞いて来ました。よろしければ、事情をお聞かせ願えますかな?」


 そう! 俺が連れてきたのは冒険者協会の人間だったのだ! 事情が分からんのならプロに丸投げしてしまえばいい! ギルドをまとめるところの人なら何とかしてくれるだろ。

 まあ正直副支部長なんて偉い人を連れてくるつもりはなかったのだが、街の人に冒険者協会の場所を訊いて行ってみると彼しか手の空いている人が居なかったのだ。

 居ないのなら仕方ないと事情を話すと、彼は二つ返事で現場へ行くことを了承してくれた。

 で、ここまで急いで戻ってきたというわけだ。

 ちなみに俺は相手の貴族に目をつけられるのはご免なので物陰から気配を殺して様子を見ている。

 

 それから更に20分くらいだろうか。マーガスさんはお互いから色々話を聞いた結果、どうやらあの貴族はそもそも以来の段階で断れないように圧力をかけていたらしいという事がわかり、また、その依頼内容も無茶苦茶で正当性が認められないという結論に至った。

 結果無茶な依頼は取り下げ。貴族は冒険者協会から厳重注意された上に迷惑料の支払い義務が被害者ギルドとギルド協会に対し課せられた。


 (ふぅ......なんとかなったみたいだな。よかったよかった。しかしやっぱり貴族側が悪かったんだな。まあ、見るからに悪人顔の貴族だったしな)


 無事に解決したことを確認した俺はそのまま人知れずその場を立ち去る――――――つもりだったのだが。


 「あ、君。今回は助かったよ。君が呼びに来てくれなければ危うくギルドが1つ潰されるところだった。こういう事件は後を絶たなくてね。協会側でも双方に注意を呼び掛けてはいるんだが、なかなかなぁ」


 マーガスさんが俺に気が付いて話しかけてきてしまった。

 しかしギルドが潰されるって......そんな大きな話だったのか?


 「あなたが副支部長を呼んで来てくれたのですか? ありがとうございます」


 そういって言い争いをしていたおじいさんも俺の方へ歩いてきた。


 「あ、いえ。別に大したことをしたわけでは......」


 「いえいえとんでもない! あなたが居なければ副支部長の言っていた通り、私のギルドは潰されていたかもしれんのです。助かりました」


 そういうとおじいさんは深々と頭を下げてきた。


 「いえいえそんな......ところであなたは?」


 関わりたくなくて他人に丸投げしてしまったうしろめたさがあった俺は、イマイチ素直にお礼の言葉を受け止められず、徐々に話を逸らす作戦に出ることにした。


 「おお! これは申し訳ない。申し遅れました。儂はエルバルトと申す者でございます。こんな老いぼれではありますが、一応ギルド『クリスタリア』のギルドマスターをしております」


 まさかのギルドマスターだった。てっきり依頼を受けた冒険者の親族とか、仲間の魔術師とかかと思ってた。


 「ギルドマスターの方でしたか。私はレイジと言います――――」


 「レイジさんですか。できれば何かお礼がしたいのですが」


 くっ、この爺さん俺が遠慮してるの見抜いてさり気なく断る前にセリフぶっこんで来やがった。やるな。


 「い、いえ。だいじょうぶですから」


 「そう言わずに。なにかお困りのことがあったりはしませんか?」


 「い、いえそんなこと......あ」


 そういや金なくて冒険者ギルド入れないんだった。いやでも......


 「む? 何かあるのですな? ならば遠慮なさらず言って下され。この爺が微力ながら力にならせていただきますぞ?」


 「そういう事なら私も力になりましょう。私にも、本来なら気が付くことができずギルド側が不利を被りそうだった所をわざわざ呼びに来てくださった恩があります。ぜひともなにかお礼がしたいところですからな」


 やはり遠慮して礼は受け取らない方針で行こうと考えたが、エルバルトさんとマーガスさんがオレを逃がすまいと詰め寄ってくる。なんでこの人たちは自分がお礼する立場だっていうのにこんなに必死なんだよ。普通逆だろ。


 しかしここまで言われて断るのも何か違うと思い、俺は正直に、王都に冒険者になりに来たが仮身分証のことを知らなくて登録に必要なお金が足りなくなったことを話した。


 「そういう事なら儂のギルドへ来ないかの? 登録料ならギルド側が持とう。金がないなら宿もとれんだろうからギルドの部屋を一部屋貸そう。しばらくはそこに寝泊りすると良い。他にも中古で良ければ装備の貸し出しもできるぞ?」


 「彼のギルド『クリスタリア』は規模こそ小さいが実に良いギルドだぞ? 所属する冒険者は今回のようにマスター自らが勧誘したものばかりで実に気持ちの良い者ばかりだ。依頼者からの評判もいい。実力もそれなりで、依頼の数もクリスタリアを贔屓にしてくれている人達がそれなりに居てな。心配はいらん」


 お、おう。めっちゃ推してくるな。

 しかし、正直この際どこでもいいから入って金を稼げればと思っていた俺にとっては悪くない話だ。

 懸念していたギルドの雰囲気も悪くなさそうだし、相手の負担も登録料の50メリクだけで済みそうだし。部屋と武器は俺が断れば大丈夫だろう。


 「えっと、そういう事ならお言葉に甘えさせていただいてもよろしいでしょうか?」


 「もちろんじゃ! ギルド『クリスタリア』はレイジ殿を歓迎するぞい」


 「ふむ。しかしこれだと私からは何もお礼ができませんな。他に何か、お困りのことはございませんかな?」


 せっかく丸く収まりそうだったのにマーガスさんがなんか言って来やがった。あんたに関しては俺はむしろ面倒ごとを押し付けただけなんだがなぁ。人がいいのか仕事熱心なのか。どっちもかもな。


 「いえ、大丈夫です。何か困ったことがあったらその時に改めて頼らせていただければそれで」


 「そうですか。わかりました。王都へ来たばかりでは何かと不便もありましょう。何かあれば遠慮なく頼ってください。私は基本的に日中は王都支部におりますので」


 「はい。機会があれば」


 (絶対頼らないけどな! 申し訳なさすぎる)


 そう心に誓いながら、俺はこのお礼合戦をなんとか納得のいく形でやり過ごしたのだった。

 ......何やってんだろ、俺たち。

 まあ、いいや。とりあえずギルドへ行こう。


 「それではエルバルトさん。しばらくお世話になります。よろしくお願いします。それで、ギルドはどちらに?」


 「こちらこそよろしく頼む。ギルドはすぐそこじゃ。ギルドの拠点としてはちと小さいがの。では行くかの」


 そう言って歩き出すエルバルトさんの後に付いて行くと、1分ほどで実に雰囲気の良い木製の建物の前にたどり着いた。


 「ここがギルド『クリスタリア』の拠点じゃ」


 「へぇ......いい雰囲気ですね」


 「ほっほっほ! 嬉しいことを言ってくれるのぅ。ここは儂がまだ若い頃に婆さんと一緒に建てて住んどった家を改装したものでのぅ。外観は当時のままなんじゃよ」


 「そうだったんですか。エルバルトさんも昔は冒険者だったんですか?」


 「うむ。魔術師をやっておった。今では魔術は使えても体が付いて来なくての。隠居してギルド運営なんぞやっておるんじゃよ」


 「いいかもしれませんね、そんな生き方も」


 「ほっほ! まぁ、儂は楽しくやらせてもらっておるがの。生き方なんてもんは経験を積んでおる内に勝手に見えてくるもんじゃて。今は思うがままに生きてみるとよい」


 「はい。ありがとうございます」


 「さて、こんなところで立ち話をし続けとってもあれじゃしな。中へ入るかの」


 「あ、はい。そうですね」

 

 さて、一時はどうなることかと思ったが無事に冒険者になることができそうだ。

 金もほとんど無いし、冒険者登録が済んだら早速バリバリ働いて稼がないとな! 

明日はちょっとやらなければならないことがあるので投稿できるかわかりませんが、できるだけ頑張ってみたいと思います。

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