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第四十三話 『龍の恩返し② / 幸福の在処』

前に次の話に入る前に一旦休んでプロットを~なんて話をしたと思いますが、そんなのはなかった←


2017/04/06 微修正

 「……そのお話を前向きに検討するために、いくつか確認したいことがあるのですが、よろしいでしょうか」


 おおよその相手の事情を把握した俺は、今度はこっちから切り出す。


 「はい、もちろんです。なんでもお聞きください」


 「ではまず、開催日や大会の規模から考えて、宿をとるのが難しそうですが、宿が取れなかた場合に何かしらの対応策をお願いすることはできますでしょうか」


 「ご心配はもっともですが、問題ありません。レイジ様さえよろしければ、我が家の別宅がございますので、そちらにお泊りいただければと考えております」


 確かにそれなら宿の心配はいらないが……フィルスがなぁ……使用人はほぼ確実にいるだろうし……


 「ふむ…………レティア様は、獣人と呼ばれる人種に対し、どういったお考えをお持ちですか?」


 少々聞くのが躊躇われたが、返答次第ではこの話は丁重にお断りさせていただくとしよう。

 確かに礼はしたいと思ってはいるが、あくまでフィルスが第一優先だからな。


 「フィルス=レーヴェ様のことでしたら、ご心配なく。私は獣人を含む亜人に対し、差別意識は持ておりません。そもそもの話、魔獣の一種とされている魔晶龍様を信仰しておきながら、魔獣の血が流れているなどと根拠のない噂で忌避されている獣人に対し、嫌悪感を抱く方がおかしいと私は思っております。宿泊先の方も、きちんと対応はしておきますので」


 ふむ、まあ確かに……言われてみればそうかもしれん。

 まあ、そういう事なら問題はないかな。

 というか、フィルスのこと知ってたのね。


 「そうですか、それを聞いて安心しました。そういう事であればこの話、謹んでお受けいたします」


 フィルスと宿代の心配がないのなら、断る理由も特にない。

 むしろ、個人で出場するよりも色々頼れる分、楽なくらいだ。


 「ありがとうございます! なんとお礼を申し上げて良いか……」


 レティアは俺の色よい返事に安心したのか、先ほどまでの堅い表情を崩して、柔らかい笑みを浮かべながらも、頭を下げる。

 まったく……侯爵家の娘なのだから、もう少し偉ぶっても良いだろうに。

 まあ、好感が持てて良いけどな。変につけあがる奴がいないか心配になってしまう。


 「いえ……私としても、ポーションのお礼を少しでもしたいと思っていますのでね。困っていることがあれば、力を貸すのは当然のことです」


 「ふふっ……やはりあのポーションはレイジ様がお使いになられたのですね」


 「その節は、大変お世話になりました。夜分にあのようなお願い、失礼は承知の上でしたが――――」


 「いえ、他ならぬ古魔晶龍(エンシェントクリスティアドラゴン)様からのお願いでしたし、一刻を争うようでしたので、あのような時間であったのも仕方のないことと理解しております」


 「ありがとうございます。そう仰っていただけると助かります。それで、出発はいつ頃が良いのでしょうか? 私はそのレムサムというのが、どのくらい遠いものなのかもわからなくて……」


 「そうですね……レイジ様さえよろしければ、私と共にレムサムに向かっていただけると助かります。色々と手配も楽ですし。出発は二日後の朝を予定しておりますので、少々急な話にはなってしまいますが」


 「いえ、大丈夫です。私一人では道もわからないですし、助かります」


 「それでは二日後の朝、北門前にてお待ちしておりますので、よろしくお願いいたします」


 そんなわけで、その後の会話も弾み、随分楽しそうにしていたレティアであったが、時間も遅かったことから、そばに控えていたメイドさんにたしなめられ、しぶしぶといった様子で帰っていった。






 で、今に至るというわけだ。

 現在、馬車の中にはフィルスと俺の二人だけ。

 レティアはいつも一緒にいるメイドさんと一緒に、一個前の馬車に乗っている。

 まあ、彼女自身は俺やフィルスとおしゃべりがしたかったようで、駄々をこねていたが……


 護衛は騎士らしき人たち、計15名。

 顔ぶれからして、前に助けた時と同じメンツっぽい。

 懐かしいなぁ……あの時は服が欲しくて片手間に助けただけで、まさか一緒に馬車で隣町へ行くことになるなんて、思ってもみなかった。


 しかし……馬車っていうのはサスペンションがついていないのかね。

 さっきから揺れまくりでケツが痛い。

 対面式で四人乗りの座席も、全て木製で堅いし。

 自分の馬車が必要になったら、どれだけ大変でも自作してサスペンションをつけよう……


 「どうかなさいましたか、レイジ様」


 俺がケツの痛さにげんなりしていると、フィルスが気を遣って声をかけてくれる。

 ちなみに、同行している護衛の方や使用人の方たちは全員レティアの専属らしく、フィルスに対し差別意識を持つような者はいないとのことなので、フィルスは特に尻尾と耳を隠すようなことはしていない。


 「あーまあ、なんだ。ケツが痛くてな。せめて何か、クッションの一つでもあればいいんだけどな……わかっていれば用意しておいたのだが」


 「レイジ様は、馬車にお乗りになるのは初めてなのですか?」


 「あーまあ、前世でも乗ったことは一応あったんだがな、あっちのはサスペンションっていう、振動を緩和する装置がついてるから、こんなに揺れないんだよ」


 「それは素晴らしいですね。ですが、そうですか……あ、でしたら私の膝の上に座るというのはいかがでしょうか。多少座り心地は悪いかもしれませんが、お尻が痛くなるのは避けられるかと」


 いやいやフィルスさんや、それはいかんでしょう。

 だってあれですよ? 膝の上に座るという事はですよ? その胸部についている柔らかなアレがアレするわけでして……

 というかそもそも、そんなことをしたらフィルスへの負担が増える。

 それならこのまま我慢していた方が良い。

 いやむしろ、俺の膝の上にフィルスを座らせてもいいくらい――――いや、やっぱダメだ。そんなことをしたら俺のマグナムが大変なことになって、しかもそれがフィルスに当たってバレる。そんな醜態を晒すわけにはいかない。

 フィルスはずっと一緒に行動する仲間なんだ。それが気まずい空気にでもなってみろ…………最悪だな。


 「いや、大丈夫だ。それに、そんなことをしたらフィルスの負担が増えるじゃないか」


 「今、返答までに随分間があったように思うのですが、もしお望みであるのなら私は別に――――」


 「いや、大丈夫だ」


 「ですが――――」


 「大丈夫だ」


 「…………かしこまりました」


 「うむ。というかだな、そんな献身的なことばかりでなく、もっと我儘を言いなさいな。この間、我儘をもっと言えって言って、あんなに良い雰囲気になったというのに、結局我儘を言われた記憶がないのだが俺は。何かしてもらった記憶なら色々あるのだが」


 「うっ……それは……その……はい。いざとなると、言っても良いものかと考えてしまって、なかなか……」


 俺も遠慮しいな方だし、気持ちは分らんでもないがなぁ……せめてもう少しくらい、どうにかならんものかねぇ……


 「あのなぁ……まあ気持ちは分らんでもないのだが…………恥を忍んでぶっちゃけて言うとだな、あんまり俺ばかり頼ってしまって、そっちから全く甘えてこないと、不安になるんだよ。心に壁があるんじゃないかとか、信用されてないんじゃないかとか。だから、もしフィルスも俺のことを、家族……とまでは言わずとも、大事な仲間くらいには思ってくれているなら、少しは甘えて欲しい。俺にも、お前を支えさせてほしい。それとも、俺では役不足だろうか。お前の隣には立てないのだろうか」


 「い、いえ! そのようなことは決して! むしろ、私の方が不安になってしまうのです。きっと私は、一度でも甘えたら、歯止めがきかなくなって、もっと甘えたくなってしまいます。でも、もしそれで邪魔に思われたりして、捨てられてしまったらと思うと、怖くて踏み切れなくて……レイジ様はお優しい方ですから、優しい言葉をかけては下さいますが、それにも限度があるのではとか、色々考えてしまって……」


 ふむ……まあ、そうか。そうだよな。

 今まで独りぼっちで、皆に嫌われて、やっと見つけたたった一人の仲間。

 失うのが怖くなるのは当然。

 少し前までは当たり前のように察していたそんなフィルスの気持ちも、少し仲良くなれた気がしてすっかり忘れてしまっていた。


 「あーそうだよな、すまん。少し前までは、お前のそんな気持ちも考えてやれてたのに、最近はなんだか前より仲良くなれた気がして、浮かれていたのかもしれんな……まあ、なんだ。悩みがあるならいくらでも相談に乗るし、不満があれば遠慮なく言って欲しい。そうやって少しずつ不安の壁を減らしていって、少しずつお互いのことを理解していけたら、俺は嬉しい」


 「レイジ様……私も、レイジ様ともっと仲良くなりたいです」


 フィルスは涙ぐみながら、とても可愛らしい笑顔を浮かべてくれる。

 ……今は、その笑顔が見られただけで満足しておくとしよう。


 その後も俺とフィルスは、夜になって馬車が止まるまで、ずっと他愛のない会話を続けていた。

 だが、そんな何でもないような時間が、とても幸せなものに感じられたのは……きっと互いの心の距離が、また一歩近づけたからだと、俺は思う――――

~おまけ~

『レイジとフィルスのおしゃべり①』

※フィルス視点です



 「レイジ様。レイジ様は好きな食べ物などは、何かありますか?」


 「ん~食べ物か。前の世界ので良いなら……ミートソーススパゲティとか、結構好きだったぞ。こっちの世界に来てからは、食事が必要ないせいか、あまり気にしていなかったが、また食べたいものだなぁ……最近では魔素が不安定なせいか、多少腹も減るし……」


 (ミートソーススパゲティ……どのような食べ物なのでしょうか……名前からして、肉を使った料理なのはわかるのですが、それ以外が全く分かりませんね……ですがお聞きしようにも、レイジ様はご自分の世界に旅立たれてしまいましたし……むぅ……)




 みたいな何でもないやり取りばかりしていました。

 しょうもない会話なので、オチはないです←

 後日フィルスが、語感だけで想像して作ったミートソーススパゲティが――――

 とかも考えましたが、まあそれは機会があればという事で。

 ちなみに、レイジの食の好みは作者基準です(笑)


 あと、①とかつけましたが、続くかはわかりません(;^ω^)

 気が向けば、あと数話くらいは続けるかも?(笑)


 ではまた次回、お会いできたら嬉しいです(*‘ω‘ *)

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