第四十二話 『龍の恩返し①』
前話のサブタイトルの適当さ加減に、思わず自分で笑ってしまいました。
はははははは!
…………ごめんなさい。
サブタイトル考えるの、大変なんだもん(´・3・)
「それじゃ、気をつけて帰るんだよ?」
「ええ、今日は本当にありがとうございさいました。タダで色々教えてもらった挙句、こんな魔導具までいただいてしまって」
「いいんだよ。レイジ君が魔導技師の仕事に興味を持ってくれたのは嬉しいし、その魔導具はレイジ君の作ったものだ。初めての作品くらい、自分で使ったらいいさ。愛着も持ちやすいだろうしね」
「ありがとうございます。それでは、また」
「ああ、またいつでもおいで」
時刻は日も沈みかけ、空が茜に染まった夜の五時過ぎ。
クレアさんの店も閉店作業に入るとのことで、そろそろお暇する流れとなった。
帰路に着いた俺の手には、今日作った下位四属性魔法の初級杖が一本ずつと、魔導具製作に必要な小道具、それから初級指南書が握られている。
これらは全て、クレアさんにいただいたものだ。
若い頃に使っていたもので、今は既に使わなくなったものとはいえ、こんなにいただいてしまって……世話になりっぱなしだし、今度きちんと礼をしなければならんなぁ……
そのためにも今は、自らを磨き、せいぜい金を稼ぐとしよう。
さあ、明日からはまた、張り切って仕事をしよう!
――――と、思っていたのだが……
現在、俺は馬車に揺られながら、王都から馬車で六日ほどの場所にある『レムサム』という街に向かっている。
レムサムは王都に比べれば見劣りするものの、アストレア王国内でも五本の指に入るほどの大都市だ。
そしてその最大の特徴は、街のど真ん中に鎮座する大闘技場『ラザーム』。
ラザームは円形の闘技場で、最大収容人数30000人、観客席と舞台との間には、アーティファクトである大規模結界魔導装置が設置されており、その防御力たるや、現状開発されている最強魔法を受けてもヒビ一つ入らないほどとか。
で、なんで俺がそんなところに向かってるのかと言えば、話は三日前にさかのぼる――――
クレアさんの店を後にした俺は、フィルスを迎えに行くべく、ギルドへと向かったのだが……いざ着いてみると、ギルドの前には何やら高そうな馬車が停まっており、ギルドの扉の前にも護衛らしき黒服が4人ほど立っている。
誰かお偉いさんでも来てるのかね……てかこっちの世界でも護衛は黒服スーツなんだなぁ……
などとどうでもいいことを考えながら、俺は護衛に冒険者証を見せて中へと入る。
するとそこには、マスターと話す、ウェーブのかかった長い金髪の少女が――――ってレティアじゃん。
お偉いさんってレティアのことか。まあ、仮にも侯爵家の御息女だしな。
むしろこんなちっぽけなギルドを訪れている方が不自然なくらい偉い人物だ。
てかフィルスの姿が見えないのだが、どこに……?
今朝は、この時間にはギルドに帰っているはずと言っていたのだがな……
俺が入り口できょろきょろしていると、レティアがこちらに気が付いたのか、マスターとの会話を中断して歩み寄ってくる。
「こんばんは。あなたがレイジ様ですよね? エルバルト様よりお噂はかねがね。私のことならお気になさらず、どうぞ中までお入りください。ここはあなたの所属するギルドなのですから」
別に、入り辛いとかで立ち止まっていた訳ではないのだが……まあ、気を遣ってくれたのだし、わざわざ訂正することもないだろう。
「はい、ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えて」
俺はそう言って彼女の脇を通り抜け、近くのテーブルに腰掛ける。
さり気なく気配察知を使用したところ、フィルスは二階の客室にいるようだ。
おそらくは、彼女から身を隠すために移動したのだろう。
「あの、レイジ様。よろしければ、少々お時間よろしいでしょうか」
俺が座って傍観を決め込もうとしていると、何故かレティアはマスターとの会話に戻らず、俺に話しかけてくる。
「え、ええ、もちろん。ですが、マスターとの話はもうよろしいので?」
「ええ。元々、例の件の事後報告のために立ち寄っただけですし、今はそれも終わって雑談をしていただけですから。それに、今はちょうど、あなたの話を聞いていたところでしたの。ご本人が目の前に居て下さるというのに、わざわざ他人から聞きく必要などございませんでしょう?」
まあ、そりゃ確かにそうだわな。
「そうでしたか。しかし、侯爵家の御息女ともあろうお方が、私のような一介の冒険者、それも無名の新人にどのようなご興味がおありで?」
「そうですね……まず、もっとも大きな理由は、貴方があの古魔晶龍様と親しい仲であるという事です。是非、詳しい話しを聞きたいと思いまして――――」
「申し訳ございませんが、それはお話しすることはできません。それが、"彼"の意向ですから」
「そうでしたか。それでは残念ですが、それは諦めることと致しましょう。では、もう一つの理由なのですが……」
レティアは不意にそこで言葉を切って、真面目な表情になる。
な、なんだ? そんなに真面目な内容なのか? 面倒事でなければ良いのだが……
「来月10日よりレムサムにて開催される武闘大会に、出場して欲しいと考えておりまして……それで、あなたのことを色々と聞いておりました」
「武闘大会、ですか? それは一体どのような……というか、なぜ私なのでしょうか? 強い人間なら他のもっと――――」
「その疑問はもっともなものであると思います。では、貴方に白羽の矢が立った理由ですが……二つあります。一つは、貴方が古魔晶龍様と交流があるという事。二つ目は、貴方が倒したグジャシュニクのメンバーの中に元々の出場予定者がいた、という事です」
うげ、ってことはあれか。
俺が連中をぶっ倒しちまったから、彼女、というかジウスティア家は今困っているってことなのか?
こいつはますます断りにくいな。
まあ、話自体が悪くなければ、断る必要もないのだが。
武闘大会そのものには、むしろ興味があるし。
「えーっと、申し訳ありませんが、私はその武闘大会がどういうものなのかを存じておりません。ですので、そこからご説明いただけるとありがたいのですが……」
「まあ、それは失礼いたしました。有名なものなので、てっきり知っていると思って話を進めてしまいました。一言、確認をするべきでしたね。申し訳ございません」
レティアは軽く頭を下げて謝罪の意を示した後、軽く咳払いをして、場の空気を切り替える。
「では、まず武闘大会の内容ですが、そう変わったものではございません。トーナメント制で一対一の対人戦。武器の使用は自由ですが、相手の命を奪う行為は禁止、明らかに事故の場合を除き、それをした時点で失格となり、処罰を受けます。優勝者には賞金に加えて、王室から褒美も下賜されます。その内容は、毎年違うのでわかりませんが」
ふむ、賞金が出るのか。そいつはなかなか悪くなさそうだな。
勝てれば仕事で稼ぐよりも短時間で、まとまった金が入りそうだ。
まとまった金さえあれば、好きなタイミングで旅に出られる。
「そして、私があなたに出場をお願いしている理由なのですが、毎年行われるこの大会の出場者には、個人でのエントリーに加え、貴族からの推薦枠というものがあります。これは数年に一度回ってくるもので、位の高い家ほど、それが早いです。これには色々、政治的な理由などもあって、私個人はあまりよくは思っていないのですが、無視をするわけにもいきません。そして、今年は我が家の長兄であるジョエスが、グジャシュニクのAランク冒険者のゴルゼメスを指名していたのですが……」
俺が殺してしまった、と。
ううむ、聞いた限りでは悪い話しではなさそうだが、まだよくわからんな。
「だいたい理解はできたのですが、ならば、他の大ギルドの高ランク冒険者にお願いすれば良いのでは? なぜ、わざわざ私なのでしょうか。別に嫌というわけではないのですが、どうも解せなくて」
「そうですね、それができるのであれば、そうするのが良いのかもしれませんが……大会に意欲的なめぼしい選手は、既に他の貴族に声をかけられてたり、個人でのエントリーをしてしまっています。そして私の家は侯爵家です。真面目に選んで半端な選手を出すわけにはまいりません……ならばいっそのこと、勝ちは捨てて、変わり種を選ぶのはどうかと考えたわけです。私の熱心な魔晶龍信仰っぷりは、貴族の間では既に有名なものとなっております。ならば、貴方を選んだ理由にも一応の言い訳はつきますし、それに元代表を倒したあなたならば、実力的にも申し分ないかと」
ふむ、そういう事か。
もし俺が負けても、まだまだ子供なレティアの可愛い我儘ということで押し通せるし、勝ったら勝ったで家の面目は保てる。
なかなか都合の良い存在のようだな、俺は。
かな~り中途半端な感じですが、文字数的にアレなのでここで切ります。
続きは次回!
ごめんなさい!