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第三十八話 『狂乱と愛敬の肉料理(ビアンド)』

今回は、すべてフィルス視点となっております。


2017/03/27 微修正


 私はレイジ様と昼に別れた後、お言いつけの通り、ギルドにて襲撃を警戒しつつ待機していた。

 レイジ様のことは心配だし、ついて行きたい気持ちもありますが、残念ながら今の私では足手まといになるだけでしょう。

 レイジ様はそんなことないと言って下さいましたが、あの方はお優しい方ですから……


 「はぁ……もっと、強くなりたいなぁ…………レイジ様……」


 少し離れただけで、もう胸が苦しい。

 調査のためにずっと離れて行動してた時なんて、もうどうにかなってしまいそうだった。

 私は、どうしてしまったのだろう……母が死んでからもう3年、ずっと一人で生きてきたはずなのに。

 レイジ様と出会って、何か変わってしまったのだろうか。

 この私の中に渦巻く未知の感情が、怖くて、痛くて……でも、とても温かい。


 「……どうか、ご無事で」




 何も起こることなく、時は過ぎ去って行く。

 もう外はすっかり暗くなってしまった。

 ……そろそろだろうか、レイジ様が動くのは。


 ちょうど、そんなことを考えている時だった―――――ギルドの扉が勢いよく開かれたのは。

 私はその光景にデジャヴを感じながらも、一応警戒態勢をとる。

 そして視線を向けた先、ギルドの入り口には……やはりというべきか、マーガス様がいらっしゃいました。


 「フィルス君! 良かった、居てくれた! 君に至急伝えねばならないことがあります」


 そしてその彼は、何故か開口一番に私へと声をかけてきた。

 私に用とは一体……まさか、レイジ様の身に何か!?


 「まさか、レイジ様に何かあったのですか!?」


 「いや、まだそうと決まったわけではありません。ありません、が……このままではマズいかもしれません」


 「どういうことでしょうか」


 「ああ、君はエルバルト殿を襲った襲撃犯の女のことは覚えているかい?」


 襲撃犯というと、あの黒ずくめの女のことでしょうか。

 

 「一応は。私はすぐに協会へと向かったのできちんと見たわけではありませんが」


 「そうですか。まあ、それは良いのですがね。それで、その女が先ほど冒険者協会を訪ねてきましてね」


 まさか! 奴ら協会に襲撃を!?


 「それは、大丈夫だったのですか!?」


 「ああいや、襲われたわけではないですよ。本当に普通に訪ねてきただけです」


 ?? それは一体どういう……


 私がよくわからないといった表情で悩んでいると、マーガス様は苦笑しながらもそのまま話を続けます。


 「まあ、そういう顔をするのも当然でしょうね。私も最初はどういう意図があるのかと、随分疑ってしまいましたよ。でも、話を聞いてみると、どうやらそうじゃないみたいでしてね……彼女は、ウチに情報を伝えに来てくれたようで……」


 「情報を、ですか? ですが、それは信用できるものなのでしょうか」


 敵がそうほいほいと情報を渡してくるとも思えません。

 ここは、罠を疑うのが普通でしょう。


 「確証はありませんがね。情報の内容は、こちらが掴んだ彼らの集会の情報は意図的に流されたもので、レイジ君を引きずり出すための罠であったという事。彼女はそれだけ伝えると、大人しくこちらに拘束されましたよ。正直私には、こんな相手にメリットの無い情報を伝えるために、人員を犠牲にするとは思えません。それが、私がこの情報を信じるに値すると思った根拠です。それに、詳しい話しは聞いてないけどけど、彼女はレイジ君に恩義を感じているみたいでしてね。気づかせてくれたとか言ってましたけど……」


 罠、ですか。

 確か、レイジ様はその線も疑ってはいましたが……伝えに行きべきか、否か。

 下手に私が行けば、足手まといになってしまうかもしれない。

 むしろレイジ様を危険な目に合わせてしまうかもしれない。

 でも、それでも私は……私は、行きたい。

 行かずに後悔するのだけは、嫌だ!

 もう、一人になるのは嫌なんだ……


 「マーガス様、こちらはお任せします!」


 私はそれだけ言うと、そのままグジャシュニクのギルドの方へと駆け出していた。

 後ろで呼び止める声が聞こえるが、すべて無視する。

 今は一秒でも早くレイジ様の所へたどり着く……ただ、それだけ。


 「どうか、間に合って下さい……レイジ様っ」


 そうして私は、外套を被っていないことで集まる視線も気にせず、ただ全速力で夜の街を駆け抜けてゆくのだった――――




 グジャシュニクのギルドが近づくにつれ、私の鼻が強烈な違和感を訴えてくる。

 ギルドの方から漂ってくるのは、強烈な死の臭い――――血と臓物の臭いだ。

 それにこの強烈さ、相当な数の人間が死んでいると考えて良いでしょう。

 知らせは間に合わなかったようですね……レイジ様、どうかご無事で。



 ギルドの見える位置まで近づくと、ますます臭いは強くなり、それに加えて悲鳴と笑い声が聞こえてくる。

 それだけでも、建物内がどれだけ悲惨なことになっているかが十分過ぎるほど伝わってくる。


 ですが――――この笑い声は、一体誰のものなのでしょうか。

 レイジ様がお亡くなりになっている場合、既に戦闘は終了しているでしょうから、それはないでしょう。

 ですが、あのレイジ様が悲鳴を上げて逃げ回るお姿も想像し難いですし、逆に笑いながら殺すお姿も……ですが、この声は……いえでも、そんなはず……


 私は、断片的な情報から推測される状況の不可解さに混乱しながらも、その足を速める。

 そして、グジャシュニクのギルドに足を踏み入れた瞬間、そのあまりに悲惨な光景に思わず固まってしまった。

 床に散らばるのは、バラバラになった人間であったナニカ。

 立っているのは、狂気に染まった笑みを浮かべた、明らかに様子のおかしいレイジ様と、満身創痍の初老の男性が一人だけ。

 その風格からして、彼がギルドマスターだろうか。

 だがその男も、右腕と左足をもがれ、かろうじで立っているだけといった感じであった。


 私がその目を疑うような光景に、レイジ様に声をかけようとしたその瞬間――――レイジ様の御姿が私の視界から消え、代わりに腹部に鈍い痛みが走る。


 (……え? 一体何が……)


 あまりの痛みに視界が一瞬真っ白になり、膝から崩れ落ちる。

 遠のく意識の中、私が最後に見たのは視界の端に映る、レイジ様の驚かれたような表情でした。

 そこには先ほどまでの狂気は見られず、目の焦点もきちんと合っている。


 (ああ、よかった。いつものレイジ様だ――――)


終わりが見えてきましたね

リアルが忙しくなる前に、今の話だけでも終わらせてしまいたいものですが、どうなることやら(^^;

まあ、ぼちぼち頑張ります(笑)

ではまた

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