第三十五話 『報復準備③』
……と......ってどっちが良いんですかね(;´・ω・)
どっちでもいいなら、個人的には......が使いたいなと思う今日この頃。
さて……煩悩との戦いに見事勝利した俺は、色々と思いついた事を試してみたわけだが……
まあ、結論から言えば……無理だった。
全然できん。
いや、手ごたえはあったんだが……イマイチこう、最後のきっかけが掴めないというか、一歩及ばない感じというか……
まあできなかったのは残念だったが、代わりに得たものもあった。
俺は夕方くらいまで、延々とフィルスの見せてくれたような技を発動させようと躍起になっていたのだが、流石に空の色が変わってきたあたりで、こりゃイカンと思ってな。
それからはまあ、アプローチを変えて身一つで使える技を模索していったのだが……結果、手からブレスが出せるようになった。
というか、手じゃなくても出せなくはないのだが、上手く指向性を持たせられなかったので現状手からだけって感じだな。
そもそも俺の吐く(吐いたことはないが)ブレスっていうのは、属性を付与した魔素を周囲に物理的な影響を与えやすい形に変換して放出しているだけという至極単純なものだ。
まあそんなんで威力を出している分、消費する魔素も馬鹿にならんのだが、俺の場合回復が一瞬だからな……
人の姿で放つブレスは、当然龍の姿の時のものに比べれば小規模なものだが、対人戦で使う分には十分すぎる威力だろう。
なんせ一撃でその辺の岩くらいなら溶解させられるレベルだからな……
無論、これは火属性のブレスでの話だが。
というか、今更だが魔素ってなんなんだろう。
無限に循環するリソースで、変換に必要なのは僅かな体力だけ。
その変換に必要な体力だって、魔導具を使えば必要ない。
変換すれば、ありとあらゆる超常現象を引き起こす。
……改めて考えるとやばすぎだな魔素。
今度機会があれば、神様にでも質問してみたいものだ。
そんなわけで、日も沈みそうだったので慌てて帰ってきたわけだが、王都に着いた頃には完全に真っ暗で、門も閉まる寸前の滑り込みセーフだった。
そしてそんな時間まで書置き一つ残しただけでほっつき歩いていた俺たちは、当然と言えば当然の話なのだが……ギルドに帰るや否や、ちょっと怒られて、それ以上に凄く心配されてたようだ。
扉を開けて中に入った途端に駆け寄ってきた皆の顔を見た時、少しばかり悪いことをしたように思えてしまった。
だが、それも明日で終わりだ。
だからもう少しだけ、俺のわがままに付き合ってくれ。
そして翌朝、皆が寝静まっているうちに目を覚ました俺とフィルスは、皆に気取られないようギルドを後にする。
もちろん、書置きは残しているが。
昨日あれだけ心配され、もうするなと言われたばかりだが、それで行動が制約され今晩失敗しましたではお話にならない。
ちなみに午後にはフィルスとも別れるつもりだ。
こういっては何だが、フィルスも場合によっては足手まといになってしまうからな。
元々ギルドでの待機を命じるつもりだったし、そこからは俺の時間というわけだ。
人目をはばかるようなエグイ作戦や死人が出るようなものはフィルスの前では避けたいからな。
さて、そんなわけでギルドを出た俺たちは、さっそく冒険者協会へと向かった。
目的は、協会の訓練場を使わせてもらうためだ。
今日は流石に遠征する時間は無いからな。店なんかがが開くまではそこで時間を潰そうと思う。
協会に着いた俺たちは、さっそく受付で申請をする。
多少のお金はかかるが、今なら人もいないだろうしそう高いわけでもない。
数時間利用する程度なら、むしろ遠征して時間を無駄に浪費するよりお得だろう。
協会保有の訓練場は武闘大会などにも利用されるらしく、古代ローマの闘技場を思い出させるような感じの建造物であった。
とはいえ、建物の中に入るとそこかしこに魔導具などが設置されており、流石に中性より文明レベルは高いのだと感じさせられたが。
あるいは今の地球よりも良いものがあるかもしれない。
こと戦闘においては、こちらの世界の方が進んでいる所も多いだろうからな。
「レイジ様。それで、本日はこちらで何を?」
「うむ、見たところまだ人もいないようではあるが……見られて困る訓練はやめておくとして……組手でもしてみるか? 魔法は無しで。 対人の勘を取り戻すにはちょうどいいからな。無手の戦闘に自信は?」
「そうですね……自身があるかと言われると何とも言えないところではありますが……それでも一応、一通りのトレーニングはしてきましたので、できないという事はないかと」
「ふっふっふ……実は俺は無手の方が得意でな。今までこの体の微妙な感触の違いや戦闘の常識差異から自重していたが、魔法無しのこの勝負なら、警戒すべきはスキルのみ。まあ、俺の固有スキルはずるいから使うつもりはないが……あ、フィルスは使ってもいいぞ。ただし、すぐに吸血はできないから、長期戦を考慮してな」
「畏まりました。では、まずはそのままで」
そう言いながら、お互い距離をとって構える。
「では、尋常に――――」
「「勝負!!」」
「はぁ……はぁ……お強いの、ですね。さすがは、レイジ様、です」
「いや、フィルスもなかなか良かったと思うぞ? 正直、最後の方は何度かヒヤッとさせられた」
「それは、血の力があったからです。血の力はあくまで奥の手ですから、できれば平常時でもう少し戦えるようになりたいものです」
さて、一時間ほど戦い続けていたが、結果は俺の圧勝だった。
まあ、俺には師匠に拾われてから20年近くの経験があるのだ。そう簡単には負けられんよ。
とはいえ、流石森で暮らしていただけのことはあって、フィルスの戦闘力はなかなかのものであった。
しいて言うなら、対人戦の経験が不足しているな。
今度からは、暇なときにでもちょくちょく訓練相手になってやるとしよう。
「それじゃあ人も来たことだし、そろそろおいとましましょうかね」
「あ、はい。それで、次はどちらへ?」
「うむ。正直武器は大して必要ないし、そんな金もない。というわけで次の行き先はクレアさんの魔導具店だ」
手からブレスが出せるようになったとはいえ、それだけでどうこうなるほど甘い相手とも思ってはいない。
そんなわけで今回はクレアさんに助力を求めようと思う。
彼女は優秀な魔導技師で、マスターの古い友人だ。
ギルドの危機を救うためなら、ある程度は協力してくれるのではないかと思う。
申し訳ない気もするが、ここで遠慮してダメだったなんて洒落にならんからな。
チャンスは今晩の一度だけ。失敗は許されない。
そんなわけで、朝の運動(?)を終えた俺たちは、クレアさんの店へと向かうのだった――――
皆さんこんばんは。
最近執筆スピードが落ちていて、少々焦り気味のモモガスキです。
たぶん準備は次話で終わります(フラグ)
長くなってしまって申し訳ない(^^;
ではまた次回、お会いできたらいいなと思います(*‘ω‘ *)