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第十話 『今後の見通しを立ててみた』

え~とですね。今回、風呂に入れませんでした。すみません。

行けるかと思って書いてたんですけどね、無理でした。

文字数的にはプロローグの次に多ので許して下さい。


2017/02/07 行間修正・その他微修正

2017/03/14 微修正

2017/05/17 古龍のサイズを300m→60mに修正&若干加筆。

 ギルド『クリスタリア』に所属することになって四日目の朝。俺はギルドの二階にある個室に居た。

 「そういや俺、もう収入得てるのにいつまでここにいるんだろ」


 このギルドの部屋はエルバルトさん……俺もギルドの一因だし、マスターって呼んだ方がいいのかな? 今更だけど。まあ、そのマスターの好意で無償で貸してもらっているものだ。いつまでも甘えているわけにはいかない。それに、秘密の多い俺としてもできれば自宅は欲しい。好きに改装できるしな! 実を言うと部屋のインテリアを考えたり模様替えをしたりするのは割と好きだったりする……と言っても俺の前世|(?)はあんなだったから自分の部屋なんてあるはずもなく、模様替えとかはゲームでやってただけだけどな。


 しかーし! こちらの世界では自宅が持てる(たぶん)! これは嬉しい。インテリアとか拘っちゃうぜ~? と言っても自宅なんて実用性重視だから、遊び心全開でいじり倒すのは客間とかだけだろうけど。でも自宅を持つには金がかかる。ただでさえ魔法の杖とか装備とか色々入り用になりそうなのに……これは今後の計画をきちんと立てないとな。特に金策。やっぱり異世界でもお金は大事だからな。


 さて、金策をするにあたって一番問題になりそうなのは……俺の実力の秘匿との兼ね合いかな。手っ取り早く金が欲しければぶっちゃけテキトーな強めの魔獣を狩りまくるのが一番早いだろう。どれくらいまで相手にできるのかはわからんが。ま、流石に古魔晶龍モードならそこらの雑魚には負けないでしょ。

 でもそんなことをして金になる獲物を狩ってきてしまえば当然噂にもなるだろう。ただでさえ一昨日赤付きとやらのせいで若干目立っちゃってるし。そうなれば静かな生活は送れなくなるかもしれない。変な奴らの目についたりするかもしれないし、何かと頼られたりもしてしまうだろう。

 人助けは別に嫌いではないのだが、俺はまだこの世界に来たばかりだ。自分のことで手一杯で、正直人助けをする余裕などない。悪人に目をつけられ、反撃して懲らしめるのもまぁだいたい同じ理由で今は遠慮したい。周りに火の粉が飛んでいくのも嫌だしな。


 でもな~お金は欲しいんだよなぁ~久々に料理もしたいし。そうなるとやっぱキッチン付きの我が家だよなぁ。家欲しいなぁ~そうすると必要なのはお金、か。やっぱ世の中金だよなぁ…………よし、決めた! とりあえずなるべくごまかせそうな所を突く感じで自重するのをやめる! ちょっとだけなら大丈夫だろう。それに何より金を手に入れる手段があるのにそれをせずに我慢するなんて俺にはできん!


 と、いうわけで自重モードを一時的に一部解除することに決めた俺は、とりあえず割と近いうちにやらなければいけないこと・やりたいことをまとめてみることにした。



・魔法陣の解析 (魔法陣の確認できる道具または書籍の入手)

・実力の確認 (主に相手にできる魔獣のレベルの確認)

・魔獣の情報収集 (金になるやつの確認)

・スキル育成 (特に手軽に合間の時間に反復練習できるもの)

・こちらの世界の常識の確認



 こんなところだろうか。まあ常識の確認に関しては慌てずゆっくり、必要になればその都度確認するくらいでもいいだろうと考えているので優先度は微妙だが。


 魔法陣の解析とスキル育成は自身のスキルアップのためにしておきたいことだな。なのでこれは実力の確認ができてからそれに合わせてでもいいだろう。

 魔獣の情報収集はがっつりとはやらなくてもいいかもしれないが、有名どころくらいは早めに知っておきたい。実力確認ついでに狩れるかもしれないし。

 となるとまずは魔獣の情報収集だな。これは冒険者仲間に聞いてみるのが一番だろう。早速下に降りて食事がてら皆に聞いてみることにしよう。


 俺が1階へ降りると、既に休憩スペースにはエルバルトさんの姿があった。どうやら食事をしているようだ。


 「おはようございます、マスター」


 「うむ、おはよう。それと、呼び方は別にわざわざ変えんでもどちらでもよいのじゃぞ?」


 「あ、いえ。なんとなくそっちの方がギルドの一員って感じがするかなと思って変えただけですので」


 「ふぉっふぉっ、そうか。それは良い心がけじゃな。そういう事なら良いんじゃ」


 呼び方について早速ご本人からツッコミが入ったが、別にどっちが良いとかはないみたいで良かった。


 「相席、よろしいでしょうか?」


 「うむ、構わんよ」


 話をするためマスターと同じ席に着いた俺は、とりあえず一番安いメニューを注文する。

 マスターはまだ食べているし、話をするのは食べ終わってからでもいいかな? マスター基本いっつもギルドに居るしな。ギルドマスターって案外暇なのかな?


 時折空気が悪くならない程度に何でもない雑談を挟みながら食事を終えた俺は、さっそくマスターに魔獣の情報について質問してみることにした。


 「あの、マスター」


 「む? ようやく本題かの?」


 ……マスターには話があることがバレていたらしい。ま、そりゃそうか。わざわざ同じ席に座る理由なんてそれくらいしかないし。


 「あはは……はい。適性ランク度外視で、お金になる魔獣ってどんな奴かな~と」


 俺がそういうと、マスターは俺の顔を見てニヤリとしてから話し始めた。


 「金になる魔獣のう……正直な話、金にならん魔獣というのは教えやすいが、金になる魔獣というのは教えるのが難しい。なぜなら、魔獣素材の値段は、希少なものを除くとだいたいランク帯で決まっておるからじゃ。つまり、金になる魔獣というのは一般的に、自分が倒しやすい魔獣だったり、見つけやすい魔獣のことを言うのじゃよ。そして一部の高値で取引される希少な魔獣は、狙って見つかるものではない。値段は労力に見合ってつけられるものじゃからの」


 ……ふむ。言われてみればそうだよな。じゃあ金にならない魔獣を避けていれば何を狩っても大して変わらないってことか。となると欲しいのはむしろ買った獲物をしまっておく大容量の袋だな。あの魔術付与がされている袋って高いのかな?


 「では、ガイスさんが持っていた魔術付与(マジックエンチャント)された大容量の袋っていうのは、いくらくらいで手に入るものなのでしょうか」


 俺がその質問をすると、エルバルトさんは渋い顔をする。あ、これダメな奴だな。あの袋は諦めるか。


 「あの袋は神々がまだこの世界を創ったばかりの、人の生まれる前の時代に造られたとされている遺跡から出てきたアーティファクトなのじゃよ。じゃから普通には売っておらん。確実に手に入れる方法は、年に一度開かれるアストレア王国主催の武道大会で優勝するくらいしかないじゃろうな。ガイスもたまたま見つけた未探索の遺跡で見つけただけじゃしな」


 やっぱりそういう感じなのか。まあ、起きている現象は確実に魔法的な何かによるものなのに持っていても魔力を消耗していない様子からなんとなく察しはついていたけどな。おそらくあれは周囲の魔素を吸収することで機能を維持しているのだろう……ん? てことはあれにも魔法陣が描かれているのかな? ちょっと今度ガイスさんに頼んで見せてもらおうかな……


 「わかりました。そういう事なら諦めます。ありがとうございました」


 「ああそうじゃ。ちょいと待ってくれ」


 席を立つ俺をマスターが呼び止める。なんだろ?

 マスターは俺を残したまま受付の奥へと入って行き、すぐに戻ってきた。


 「ほれ、Fランク用のギルド証じゃ」


 そういうとマスターは俺に新しいギルド証を渡してくれる。Fランク用のギルド証は、Gランク用のものと比べ見た目にはほとんど差はないものの、プレートの中央に大きく刻印されたFの文字|(こちらの世界の文字なので本当はFではないのだが)がFランクであることを激しく主張していた。


 「あ、ありがとうございます。では、今度こそ失礼します」


 ギルド証を受け取り、知りたいことの確認も終えた俺は、とりあえず次の目的である実力チェックをすべく、この世界に来て初めて目を覚ましたあの森まで行ってみることにした。




 人気のない森の中で風の古魔晶龍の姿をとり、飛ぶこと10分。俺は始まりの森|(俺命名)まで来ていた。


 (さてと、では魔獣を狩ってみますかね)


 気配察知を使用して魔獣を探すと、ちょうど少し先に大きな気配を感じる。

 気配のする方へ近づいてみると、そこには全長5m以上の大きな双頭の蛇がいた。まあ、大きなと言っても俺の方がでかいんだけどな。古魔晶龍状態の俺は全長60mはあるだろうし……俺、でけえな。

 まあ、普段見つからないようにしている時は、魔素を調節して、もうちょい小さくなってるけど。


 そんなことを考えながら上空から双頭蛇を見ていると、相手もこちらに気が付いたようで相手と目が合った。すると次の瞬間、すごい勢いで相手が逃げ始めた……っておい! 逃げられちまったら実力チェックできねえじゃん! 闘ってくれよ!

 そんな俺の願いも空しく、結局双頭蛇は森の奥へと逃げて行ってしまった。


 (う~ん。近くにいる中ではあいつが一番強そうだったんだけどなぁ)


 その後、何度か場所を変えて同じことをしてみたが結果は同様で、全く戦闘にならなかった。




 結局二番目の目標であった実力の確認もできぬまま、俺はこの世界での夜を最初に過ごした山肌の洞窟へ来ていた。無論、そのままの姿では入れないので一時的にヒト族の姿をとってだが。

 「なんだか前途多難だなぁ……まあ、いいや。スキルレベルアップのためにも今一度スキルを確認してみますかね」


 見たところスキルに変化はなさそうだ。魔力操作も魔素操作になってから変化無しだし、そろそろ能動的にレベル上げをし始めなければいけない頃合いだろう。スキルを見直した結果、すぐに片手間にあげられそうなスキルは以下の通りだ。



・自己能力鑑定(Lv9/10)

・肉体構成魔素固定(Lv1/5)

・魔素化(Lv1/5)

・気配察知(Lv4/10)



 この4つが生活の合間に鍛えられそうなスキルだ。


 まず自己能力鑑定だが、これはステータスを確認すれば上がるだろうから移動中などの暇な時間にずっとステータスの確認と終了を繰り返していればいい。

 肉体構成魔素固定化と魔素化は人目のない寝る前などの時間に何度か繰り返し行うことで鍛えることにする。この二つはある意味俺の切り札みたいなものだし、なるべく早くレベルを上げておきたい。

 で、最後に気配察知だが、これはある意味一番簡単だ。起きている間ずっと周囲の気配に気を配っていればいいだけだからな。普通の神経をしていればそんなのすぐに匙を投げてしまうだろうが、戦場を渡り歩いてきた俺にとってはこの程度、1日2日続けたところでどうという事はない。疲れてきても必要のない場面で適度に休憩を挟めばいけるだろう。


 三つめの目標であったスキルの育成の計画が完了した俺は、魔法の解析と風呂作成を兼ねて一旦街へ戻ることにした。

 しかし、実力の確認が思いの外上手く行かず追いかけっこをしまくっているうちに結構時間が経っていたらしく、王都へ戻ってくる頃には空は若干赤みがかってきていた。そしてそんな空の色を見てこのままでは買い物すらできないかもしれないと焦った俺は、足早に市場の方へと足を運ぶのだった。


 市場に到着した俺は真っ先に近くにあった串焼き屋の屋台へ歩み寄り、串焼きを注文しつつ店主から杖などを売っている店の場所を聞いてみることにした。


 「沼蛙(スワンプフロッグ)の串焼きを2本」


 「まいど!」


 「店主、ここらで初心者用の杖を買うならどこがいいかね?」


 俺がそう聞くと一瞬店主は顔を上げ俺の顔を見ると、すぐに手元に視線を戻して話し始めた。


 「お客さん、よその人かい? 王都でってなると他にもあるかもしれんが、この辺りで魔導具を買うならこの通りを突きあたって右へ行ったところにあるクレア婆さんの店がオススメだよ。腕は確かだし、値段も吹っ掛けたりしていない。何より婆さんはいい人だ」


 「そうか、ありがとう。数日前にここに来たばかりでね」


 「そうだったのかい。なら、これからもよろしくな。ほい、沼蛙の串焼きお待ち!」


 俺は店主から沼蛙の串焼きを受け取ると、それを齧りながら勧められた店へ向かった。


 店主の言っていた通り突き当りを右へ曲がりしばらく歩くと、クレア婆さんの魔道具商店と書いてある小さな看板を発見した。店舗は小さな木造の1階建てで中の様子を覗けるような窓はついていなかった。建てられてからしばらく経つのか建物自体の雰囲気も暗く、大通りを離れた細い路地の薄暗さと相まってなかなかに入りにくい空気を醸し出している。これは知らずに来たら入ろうとは思わない類の店だな。店主は商売する気があるのだろうか。


 そんなことを考えながらも店の中に入ると、店内は外の雰囲気とは異なり非常に清潔感があり、商品も綺麗に陳列されていた。


 「おや、お客さんかい?」


 俺が陳列された商品を眺めていると、店の奥から小柄で腰の曲がった優しそうな顔のお婆さんが出てきた。


 「あ、どうも。お邪魔しています」


 「初めてのお客さんだね、珍しい。誰かから聞いて来たのかい?」


 どうやらこのお婆さんは自分の店が入りにくい雰囲気を醸し出していることについては自覚があるようだ。ということは一見さんお断りみたいな感じなのだろうか? それとも大勢の客を相手するのは疲れるからとか?


 「大通りの入り口辺りにある、沼蛙の串焼きを売っている店主さんに聞いて来ました」


 「ああ、マルキスに聞いて来たのかい。それなら安心だね」


 ? どういうことだろう。


 「なぜマルキスさんに聞いて来たのなら安心できるのですか?」


 「マルキスの人を見る目は確かだからね。その人が善人か悪人か。パッと見ただけでわかるんだとさ」


 ああ、だから俺が質問した時一瞬こっちを見たのか。


 「それでお客さん。今日は何が欲しくて来たんだい? わざわざ聞いて来たのなら欲しいものがあるんだろう?」


 「はい。えっと、欲しいのは魔法陣の書いてある書物か、なければなるべく多くの魔法陣が見れる道具ですかね。予算は~そうですね、2900メリクで」


 2900メリクはほぼ俺の全財産だ。本当なら少しはとっておきたいところだが、ここで良いものを逃すわけにはいかない。予算を提示するだけで金が飛ぶわけではないのだからと、とりあえず上限ギリギリで申告してみたのだ。


 「ふむ。お客さん、魔導技師かい?」


 クレアさんは優しそうな顔から一転、鋭い眼光を俺に飛ばしてきた。

 魔導技師っていうのはおそらく魔導具なんかを作る職人のことなのだろう。そしてクレアさんもおそらく魔導技師だ。つまり俺は今商売敵ではないかと疑われているという事か?


 「あ~いえ。そういうわけではないんですが、魔法の発動原理に興味がありまして......」


 クレアさんの眼光があまりに鋭いので思わず本当のことを言ってしまう。嘘の通じそうな雰囲気じゃないしな。


 俺がそういうとクレアさんは再び元の優しそうな笑顔に戻ってくれた。どうやら俺の選択は間違ってはいなかったようだ。よかった。


 「すまないねぇ、試すような真似して。実を言うとお兄さんが魔導技師でないのはわかっていたんだよ。魔導技師が既に持っている魔法陣の書かれた本なんて欲しがるわけないからね。でもそうなると目的が見えてこなくてね」


 そういう事だったのか。でも魔導技師志望の可能性とかはないのかね?


 「その顔、魔導技師として弟子入りしに来た線は考えなかったのかって顔だね。でも知っている人間にとってはその可能性はかなり低いものなのさ。魔導技師を志すつもりがあるなら魔導技師ギルドへ行って登録すれば魔法陣全集は購入できるし、それを知らない者はそういないからね」


 そんなギルドがあるのか。ギルドって冒険者だけのものかと思ってた。


 「でも嬉しいねえ。最近じゃ魔法の発動原理なんて誰も気にもしないでみんな魔法陣の組み合わせにばかりご執心だからね。あたしの若い頃には数は少なかったが魔導の深淵へと挑もうとする者がちらほらいたんだけどねぇ。そういうあたしもその一人だったしね。あの頃は楽しかったねぇ。言語学者の先生に弟子入りしてみたり、賢者先生に弟子入りしてみたり……でも結局あたしは何にも解き明かすことができなかった。魔法への理解は深まったけどね、それだけだったよ」


 そう話すクレアさんはとても楽しそうな、でもどこか悲しげな、そんな表情を浮かべていた。


 「すまないね、つまらない話聞かせちまって。ちょっと待ってておくれ」


 そういうとクレアさんは店の奥へと入って行ってしまった。することもないので再び店内を見て回っていると10分くらいしてようやくクレアさんが戻ってきた。大量の荷物を持って。


 「待たせたね。これはあたしが若い頃に研究に使っていた道具や研究の記録だよ。魔法陣のリストもこの中に入っているよ。あの頃は魔法陣大全なんて便利なもんは出回っていなかったからね。発動させた魔法陣を見ながら必死に写し取ったものさ」


 おお! もしやこれを譲ってくれるのだろうか。そんな貴重なものを譲ってもらえるなんてなんという僥倖! 言い値で買おう!


 「はっはっはっ、良い目をしているねぇ。目の前にある知識に対して貪欲になれる、キラキラした良い目だ。マルキスのお眼鏡にかなっただけはあるね」


 ……はっ! 思いがけなく現れた宝の山に思わず見入ってしまった。恥ずかしい。


 「恥ずかしがることはないさ。あたしも昔は同じような顔をしていたもんさ。いいよ、持って行きな。それと、困ったことやわからないことがあればいつでもまた来ると言いよ。いくらでも力になるからね」


 え? タダでくれるの? 売ってくれるんじゃなくて? それは流石に悪いんじゃ……


 「いいんだよ遠慮しなくて。どうせあたしが持っていたってどうにもなりゃしないんだから。あたし夢を継いでくれる人がいるなら、その人の手に渡るべきなのさ。あんた、名前はなんていうんだい?」


 クレアさんの発言がマジイケメンなんだが。てかさっきから気になってたんだけどなんで俺の考えていることがわかるんだよ。俺なんも言ってないんだが。そんなわかりやすい顔してたかな……でもそういえば昔師匠にもお前にポーカーは無理だなとかいって笑われたことがあったな。なんか悔しい。


 「……レイジです」


 「そうかい。良い名だね。それじゃあレイジ、あたしの夢をあんたに託す。頼んだよ。別に上手くいかなくたっていいけどね、折れないでくれよ?」


 そう話すクレアさんはどこか晴れ晴れとした笑顔を浮かべていた。長年追い続けてきた夢を諦めたことが心のどこかで引っかかっていたのかもしれないな。


 「はい。確かに受け取りました。また来ることにはなると思いますが、その時はよろしくお願いします」


 そう挨拶すると俺はクレアさんから大量の荷物を受け取って店を後にした。外に出ると既に日は沈み、街は闇に覆われていた。荷物は風呂敷のような大きな布に包んであるから落とす心配はないが、これでは道が見えない。大通りまで出れば街灯があるが、今いるのは大通りからは少しばかり距離があり明かりは一切無い。足元の道ですらほとんど見えないほど暗い。月明りも王都中央にそびえたつ大きな城に阻まれてここまでは届いていない。


 あまりの暗さに店の前に突っ立ったままになっていると、店の中からクレアさんがランタンのようなものを持って出てきた。


 「すまないね気が利かなくて。これを持って行くといいよ。次来た時に返してくれればいいから」


 「あ、ありがとうございます」


 何も買い物していないというのになんだか色々とお世話になってしまって申し訳ないな。今度来るときはもっと稼いできて、色々買っていけるといいな。


 そんな風に考えながら俺はギルドへと帰って行くのだった。


 


次回の冒頭は魔法陣の研究からになると思います。

それが長引くとヒロイン登場まで行けないかもしれません。

いやはや自分の見通しの甘さが嫌になりますね。

最初にヒロイン出すって言ったのいつでしたっけ?

もういつ出すとは言いませんというか言えませんが、消化しなければいけないイベントもほとんど残っていないので近いうちに出せると思います。

~〇か月後~みたいなのが来たらもうすぐだと思ってください。

それではまた明日お会いしましょう。

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