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旧・木花開耶物語  作者: crow
第一章
33/40

木花開耶物語11話 PROLOGUEのみ

はい、今回もPROLOGUEの割に長い仕様となっております(>_<)

無駄話が多いんですよね~(@_@;)

自覚があるなら止めればいいのにって思うんですが……思うだけで終わるんですよね(;一_一)


そんな訳で、今回も長いですがよろしくお願いしますm(__)m

PROLOGUE



――時を遡る事、十数分前 木花家


「私は――」

 それに続く言葉は出なかった。

 当然、答えが返ってくる筈もない。

 私は潔く諦め、ニギハヤヒ様の後を追う事にした。

 きっと、イワフネに帰るのだろう。

 此処には、もう用もないのだから。

「……?」

 しかし、ニギハヤヒ様はソファーの前で止まったままだった。

 その視線の先には――

「……ニニギちゃん。ニニギちゃんをどうするつもりなの?」

「……」

 沈黙。やはり、言葉は返ってこなかった。

「ニギハヤヒ様、答えてよ……?」

 私の声が震えていた。胸が痛くて、喉も変に渇いてる。もう、何も言いたくない。

 こんなのいつもの事なのに、今日は何でこんなにも苦しいのか分からなかった。



 それから、ニギハヤヒ様はニニギちゃんを抱えて自ら空けた穴から外へ出た。その先にはずっと待っていたのか、イワフネがユラユラと揺れながら宙に停滞していた。

 普通の家の二階くらいの高さに居るイワフネに、ニギハヤヒ様は軽い足取りで乗り移る。私も置いていかれない様にニギハヤヒ様の後に続きイワフネへと移る。

 そうして、私が乗ると同時にイワフネは高度を上げ始めた。

 私はすぐにふちへ乗り出し、サクヤくんの家を見下ろす。

(まだ、出てきてない……)

 私の中で二つの譲れない想いが何度も交錯する。

 そんな時、私の中で懐かしい声が私に語りかけてきた。


――一体、貴女あなたはこれからどういう展開を望んでいるの?


(私は……)

 やはり、言葉は出なかった。言ってしまったら本当にそうなってしまいそうで、どちらとも言えなかった。

 すると声が、私のニギハヤヒ様への想いを尋ねる。


――ニギハヤヒ様がサクヤくんに倒されれば良い?


(ううん、そんなのは望んで……ない)

 即答できたが、語尾はいまいち自信が持てなかった。

 声は続けて、私のサクヤくんへの想いも尋ねる。


――じゃあ、このまま何もしないでサクヤくんが死んじゃっても良い?


(ううん、それは違う……!)

 今度は確かな自信を持って答える事が出来た。


――じゃあ、どうしたいの?


 その問いを最後に、声はもう語りかけてくる事はなかった。

 でも、その言葉で私のすべき事は何となく分かった気がした。

(私、もう一回ニギハヤヒ様に訊いてみる!)

 善は急げと、私は振り返ってニギハヤヒ様の元へ駆け出した。



 私がニギハヤヒ様を見つけたのは、丁度ニニギちゃんを長椅子に移し替えている時だった。そして、ニギハヤヒ様は私の存在に気づくと静かに顔をこちらに向けた。

 それを合図に私は、今まで何となく想ってた事、最後に訊きたい事を吐露した。

「ねえ、ニギハヤヒ様。私、バカだからさ、ニギハヤヒ様を怒らせる様な事いっぱいしちゃったかもしれない。それを全部許してほしいとは言わないから、一つだけ教えて。


 ――私とニニギちゃん、どっちが大切?」


「……」

 難しい質問だったかもしれない。それでも、ニギハヤヒ様には私を選んで欲しかった。

 さっき、私が苦渋の中でサクヤくんよりもニギハヤヒ様を選んでここに来た様に、ニニギちゃんじゃなくて私だと、登美夜とみやの方が大切だって、その口から言って欲しかった。

 けれど、いくら待っても私の望んだ言葉が聞ける事はなかった。



 それから、ニギハヤヒ様は無言のまま私の前を去った。目的地は分かっていた。たぶん、サクヤくんにトドメを刺しに行くんだと思う。

 予想通り、縁の辺りにニギハヤヒ様は居た。そして、いつかの時にみたいにイワフネのマストと同じくらいの大きさの棒状物体を抱えていた。

 あの時、私は確かにサクヤくんよりもニギハヤヒ様を選んだ。けれど、もう一つ。私は決めていた事があった。

 それは――もしもニギハヤヒ様が私の質問に答えなかった場合。その時は、私はサクヤくんに賭けてみるって。

(ゴメン、ニギハヤヒ様。私、ニギハヤヒ様の事がこの世で一番好きだけど、これだけは絶対に止める――!!)

 ニギハヤヒ様が棒状物体を手放したのを見計らい私は私に出来る事、私のすべき事を行う。

「無限回廊。ルール、なし。対象、その棒!


 ――オープン&クローズ――」


「なっ……!?」

 たちまち別空間に消えていく棒を見てニギハヤヒ様が驚きの声を上げた後、後方に居た私の方を向く。振り向いたその顔には、もう驚いた様子はなかった。けれど、別段怒っている様にも見えなかった。

(ま、怒ってても言うつもりだったけどね……)

「ゴメンね、ニギハヤヒ様。でも、私後悔はしてない……しないよ!」



――その少し前……


 空を見上げるといつかの船が見えた。あと、空耳かもしれないけどミヤの声も聞こえた気がした。

 家の中にニニギが居なかった。たぶん、あの船に居る筈だ。

 とりあえず、少しでも近づくため僕は二階から屋根に出た。

 再び夜空を見上げると、何の冗談なのか、家を軽く全壊できそうな棒らしき物体が船の縁から見える。その照準が、この家に合わされるのは容易に分かった。ただ、ここからではどうしようもない。


――まあ、焦るな。嬢ちゃんが何とかしてくれる……と思う


「もし落ちて来たら即行、交替ですからね?」

 そう、約束を取り付け、僕等は動向を見守った。

 すると、呑気な予想を裏切って棒状物体は落下を始めた。

「どうすんですか!?」


――……まあ、落ち着け。いいか、ああいうのは大抵落ちて来る方の先端に力が集まる


「……でしょうね」

 あれが神器などでなく、この世の産物であるのならその考えは至極当然の推論だ。


――だから、そこ以外は結構(もろ)いんだ


「それで、どうするんですか?」

 先の見えない話に僕は先を促す。


――俺の攻撃の有効範囲に入ったら思いっ切り、左右どちらかに蹴る! 左右どっちが良い?


「どっちもダメです! その後の始末をどうするつもりですか!?」

 一体、何(むね)の家を壊すつもりだ。そんな事をしたら明日の朝には、この辺り一帯に新手のミステリーサークルが出来てしまう。そんなものが一夜にしてできたら、間違いなく全国ニュースで取り上げられてしまう。

 それに、そんな事は僕の信念に反する。

(誰も傷つく事なくこの戦争を終わらせるんだ……!)

 そこで僕等の会話は中断された。それと言うのも突然、棒が消失したからだ。

 どうやら、上で何かあったらしい。


――やっぱり、俺の言った通りだったな


 自信満々に言うところから察するに、これはミヤの能力らしい。

(ミヤが頑張ってるんだ。僕も頑張らないとな)

 少し足を開き、深く息を吸う。そして、真夜中にしては近所迷惑なボリュームで皮肉たっぷりな宣戦布告をする。

「ニギハヤヒ、今度は家を丸ごと壊す気ですか?」

「サクヤくん!」

 僕が言ってからすぐ縁にミヤが乗り出す様に姿を現した。

「ミヤ、僕等と僕の家を守ってくれてありがとうございます」


――ここから先は俺達の引き受けた仕事だ、行くぜ!


 と、今にも替われと言わんばかりに勢いづく佐久夜さんを制し、僕はある事をミヤに告げる。

「……と、その前に。これを見て思い出しました。ミヤに一つ訂正する事がありました」

「えっ……と、何?」

「ミヤと会った回数です。三回でも四回でもありませんでした。答えは、五回です。ミヤの言う二回目と三回目の間、屋上でその船に乗って僕の前を通りましたよね?」

 僕の確認にミヤは少し考えてから、いつもの笑顔を浮かべて快活に答えた。

「あっ、言われてみれば……見覚えのある男の子が浮かない顔してたから、ちょっと励ましに行った様な覚えが……」

「僕はあの時、空から声が降って来たものだと思ってましたが、これに乗って、且つミヤの能力で姿を隠してたんですね。空に雲一つ無いのに陰った理由がやっと分かりましたよ」

 この時、僕の中でモヤモヤしていた疑問が一つ解消された。

「ああ、そっか。だからその後、私イワフネを置いてサクヤくんに会いに行ったんだ。面白そうだったから……」

 今、思えば皮肉にもモヤモヤについて考えていたらモヤモヤを作った張本人が僕に粗相をされてしまった訳だが、あれは僕とミヤだけの秘密だ。

「さて、僕の用件はこれで以上です。後の事は佐久夜さんに任せますか」

 そう言って、僕は目を閉じて奥に引っ込む。

「何が、任せますか、だ。これからは二人で片を付けるんだろ?」

 引っ込むは訂正、僕の役目はここから彼を支えることだ。


――……そうでしたね。忘れてました


 すると、今まで影も形も話題にすらならなかったニギハヤヒが怒りを露わにして、縁に姿を現す。

「くっ、また邪魔をするのか。我が主よ、あのわっぱを――」

 言いかけて、止まる。それもその筈、ニギハヤヒの眼前に佐久夜さんが現れたのだから。どうやったのか、僕にはまだ秘密らしい。

「おい、まだ俺の話が残ってんだよ。とりあえず、邪魔すんな……よっ!」

「ぐわっ!?」

 そう言って、佐久夜さんはニギハヤヒの胸の辺りに蹴りを入れ、反対側の縁まで吹っ飛ばす。

 ニギハヤヒが倒れたのをしっかり確認してから、佐久夜さんはミヤの方を向き、話を切り出した。

「ま、話って程の事じゃねえ。さっきの答え、五回じゃなくて本当は六回な。俺は嬢ちゃんとどっかの道で会った覚えがある」


――僕はそんなエピソードは身に覚えがないんですけど?


 僕を無視して佐久夜さんは話を続ける。

「確か、そん時はニニギと一戦してたんだっけか?」

 それを聞いて思い出したのか、ミヤは事情を知らない僕にも分かるくらい取り乱した。

「あっ、あ、あれは、私の早とちりでニニギちゃんを襲っちゃって……」

 言えば言う程、声は小さくなっていった。ミヤが珍しく自分の非を認めている事が僕には驚きだった。

 そんなミヤに対して、佐久夜さんはあっけらかんと調子で話を進める。

「まあ、別に責めたい訳じゃねえよ。話って程の事じゃねって、言ったろ?

 俺のは――ただの訂正だ」

 そこで佐久夜さんの視線はミヤから体勢を立て直し終えたニギハヤヒへと移る。

「と、まあ、こんぐらいは知り合って数日で知るだろうし、憶えてるだろうよ。

 で、こっからが本題だ。

 ――……お前は此奴こいつの事どんくらい知ってんだよ?」

「……」

 沈黙したままのニギハヤヒをあおる様に挑発を続ける。

「黙秘権なんてねえぞ、木偶坊でくのぼう。それとも、俺と拳で語らうか?」

「……」

 その時、ニギハヤヒの視線がミヤを捉える。

「ニギハヤヒ様……」

 ミヤが目に涙を浮かべながら呟く。

 それをニギハヤヒがどういう風に解釈したのかは定かではない。

 ただ一つ、確かな事がある。

「ちっとは何とか言ったらど――」

 言ってる間に、ニギハヤヒは僕等の目の前に居た。

「……何よりも、童風情がいもあるじわれと対等に振舞っておる事が気障りだ」

 言いながらニギハヤヒは佐久夜さんの頭を掴み、後方(つまり、反対側の縁)に放り投げる。

「うぉっ……!?」

 佐久夜さんは空中で何回転かし、見事に着地に失敗する。

 そうして、僕等が背中を打ち付けている間にニギハヤヒは身体の向きを反転させて待ち構える。その姿は、まるでミヤをかくまっているようにも見えた。

「吾が直々に相手を務めよう」

「へえ、そりゃあ、楽しみだ」

 何とも恰好のつかない体勢の発言だった。


 ただ一つ確かな事、まだこの二人は助けられる!

ここまで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m


そういえば、キャラ紹介の方を更新したので、是非参考にしてみて下さい(^^)/


次回の更新はいつもながら未定です(>_<)

執筆の進み具合を考慮して活動報告の方に予定日は掲載するつもりです(^^ゞ

たぶん4月からは忙しくなるんで、ゴールデンウィークを目指したいですけど……


それでは今回はこの辺で、次回も是非読んでくださいm(__)m

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