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旧・木花開耶物語  作者: crow
第一章
31/40

木花開耶物語10話 B

~まえがき~


 予定よりも早く出来上がったので更新です(^^ゞ

 今回は最後が一番カッコいい……かな?(;一_一)

 まあ、後はしっかりと伏線(布石?)の回収をした回でしたね^_^;

 それでは是非、最後まで読んで下さいm(__)m

――同日 夜中


 ふと目を窓に向けると、外は随分と暗くなっていた。六月上旬にしては早い日の入りに二人の帰りを心配したが、よくよく考えたら二人とも僕の家に泊まっていく予定だった。色々あってすっかり忘れていたけど、まだメインイベントが残されたままだ。このまま何事もなく(特にニニギはこのまま朝まで寝ててくれると助かる)、このお泊り会が終われば……いや、きっとそんな簡単に終わらないんだろうなぁ……。

「で、何の話だっけー?」

 ミヤのその言葉で僕は我に返る。

(そうだ、嘆いてる場合じゃない……あの夜の真相を確かめるんだ)

 ニニギは(たぶん僕が嫌いだから)教えてくれそうにないし、ウズメさんも(たぶん嫌われてはないだろうけど)はぐらかすだろう。聞けるチャンスはこれを逃せばもうないかもしれない。ここは慎重に、でも聞ける事は聞けるだけ聞く。

 そんな風に一人で勝手に意気込み、僕はミヤへ言葉を返した。

「六月七日の夜、住宅街跡で起きた事について知ってる事を話してください。ミヤがニニギを助けた側っていうのは、一体どういう意味なんですか?」

「言葉通りの意味だけどー?」

 この人はどうしてこうも要領を得ないのだろうか。狙ってやっているのだろうか。もしそうだとしたら、ミヤは人をイライラさせる天才だ。

 しかしながら、ミヤのそれが素なのは僕が良く知る彼女の特徴である。因って、悪気はないのだ。これだから憎めない。

 そうして僕は心を落ち着け、別の方向から攻める事にする。

「じゃあ、質問を変えます。ミヤはどうしてあの夜、住宅街跡に?」

「偶然だよー イワフネを乗りましてたらたまたまあの上の辺りに居ただけー」

 これまでの話から察するに(イワフネに関しては謎だが)、ミヤは一部始終を偶然、目撃したといったところだろうか。まだニニギの負傷に完全に無関係とは断言はできないけれど、現時点ではミヤは信頼に値すると僕は思う。

 だから、僕は彼女の話を聞く……いや、聞きたいと思った。

「ミヤの見た事を全て話して下さい。ミヤの見た通りに話してくれればいいので、お願いします」

「うーん、いいけど……あんまり覚えてないんだよねー もう三日も前の事だしー」

(この人は……! いやいや、落ち着け、ミヤのこれは悪気がある訳じゃないんだ……きっと)

 そう言い聞かせて、僕はもう一押しする。

「そこを何とか。憶えてる限りでいいですから。もしかしたら、話したら思い出すかもしれないし、思い出したらその都度、追加してってくれて構いませんから。どうか、お願いします」

「そこまで言うなら、仕方ないなー それじゃ、後でおねーさんのお願いも聞いてもーらおう」

(まったく、この人は……)

 出そうになった言葉を引っ込め僕は作り笑いを浮かべ、お願いする。

「じゃあ、お願いします」



――三日前の夜


「んー、乗り心地サイコ―!!」

 その頃にはもう私の日課となっていた夜空の散歩。私にとってこれは何気ない一日の楽しみ。夜の闇に紛れて空を駆け回る、この感じが堪らなく好きだった。何モノにも縛られない異常なまでの開放感が私を病み付きにした。

 昼間の世界は私にとって苦痛でしかない。それに対して、夜の世界は私を楽しませるアミューズメントパークの様だった。

「あっ、そーだ。良い事思いついちゃったー♪」

 ホントにただの気紛れの様な思い付きだった。

「今日は周るコース変えよっか、イワフネ♪」

 普段はイルミネーションで着飾った街を見下ろしながら颯爽と駆けて行くのだが、その日は何故か山と海くらいしかない寂れた田舎に向かった。そこを選んだ理由は私には分からない。ただ、私の中でそこに強い思い入れがある様な、そんな気がしたからだった。

「やっぱ、何もないかー……けど、ココに居るとすごく落ち着く。静かなのも悪くないかも……」

 ニニギちゃんを見つけたのはそんな時だった。当然、当時の私はニニギちゃんの正体は知らなかった。それどころか、次の日に駅で会った時も、この時の子だなんて全く気づかなかったくらいだった。

「ん? 何か、走ってる……?」

 建物の上を飛び交う二つの影。私の眼では動きを追うのがやっとな程、次元の違う追いかけっこだった。

「えっ……ちょっ、何なのあの子達!?」

 追っているのが少女(つまりニニギちゃん)なのはすぐに分かった。でも、追われている方はまるで正体が掴めなかった。どんなに目を凝らしても黒い残像にしか見えない。ただ、残像のせいか追われている奴の背格好は少年の様に見えたのは憶えている。

 私は意味も分からないままその二人の後をイワフネで追った。

「確か、この辺りに……あっ、居た……!」

 再び私が二人を見つけた時、二人は住宅街跡の中でも一際高い建物の上で対峙していた。私の位置からでは丁度ニニギちゃんの影になって相手が見えなかった。その時に確信したのはニニギちゃんに追われていた奴はやっぱり少年だったという事。

「さーて、ちょっと脅かしてあげようかな~」

 二人の動きに驚かされたお返しにこっちも空から現れて驚かせようと私が思いついた時、例の事件は起きた。

「よーし行くよ、イワフネ~!」

 そう言って、私は勢いよく急降下を開始した。しかし、私達は辿り着けなかった。


――ゴウゥゥ


 低く響く轟音と共に発生した竜巻が私達の行く手を阻んだ。なぜ、竜巻が発生したのかは今、考えてみても分からない。でも、ニニギちゃんの能力じゃないのなら、相手の少年の能力だったのかもしれない。

「ちょっと一体、何よコレ……!?」

 竜巻は建物を覆う様な形で停滞し、外界との行き来を遮断した。

 私は暴風に煽られ、ひっくり返らない様に操作するのと、イワフネの縁にしがみ付くので必死だった。

 そうして、漸くして竜巻が止んだ頃には事件は終わった後だった。

 いつの間にかニニギちゃんは斬られて重傷だし、容疑者候補の少年らしき人物は逃走するし、一般人(サクヤくんね)が来たりするから、もう大変。

 サクヤくんは私の能力でちょっと足止めさせてもらって、その間に私はニニギちゃんを安全な空間に避難させたってワケ。少しの間、攻撃してきた奴の様子を窺った……でも、これ以上仕掛けて来る感じもしなかった(それどころか、戻ってくる気配すらなかった)からとりあえずニニギちゃんは解放、やって来た一般人がニニギちゃんの知り合いっぽそうだったから後は任せる事にしたってコト。

 当時の私にとって、ニニギちゃんもサクヤくんもただの他人だからね。どうなろうがどうでもいいって思ってた。

 そうは言ったものの私も急ぎの用がある訳じゃないし、逃げた少年を追う気もないからしょうがなく行く末を見守った。そしたら案の定、どっかからカマイタチみたいなのが飛んで来て一瞬で建物を倒壊させるものだから、私の能力で一時的に消失させた。

 それからは、変な気配がスゴイスピードで近づいてきたから私も姿を晦ませた。



「と、要約するとこんな感じで合ってますか?」

「うんうん、大体そんな感じー♪ スゴーイ、よくまとめれたねぇー」

「ま、まあ、慣れですかね……ははっ」

 正直、ミヤの話は想像を絶するほどに分かり辛かった。確かに思い出したらその都度追加してくれて構わないとは言ったけれど、何の脈絡もなく全く関係のない話をされ続け、その合間に事件の話を入れるものだから、僕の思考はパンク寸前だ。ただ真実を知りたい、その一心でここまで頑張れたと言っても過言ではないだろう。

 疲れ果てる僕に構わず、ミヤは更に追い打ちをかけるかの如く問いかけてきた。勿論、本人にそんな気は全くないので、憎むに憎めないのが辛いところだ。

「慣れねぇ……あっ、そーいえば、サクヤくん。私と会うの何回目か知ってるー?」

 また随分と脈絡のない話題に話が飛び火した。けれど、元を正せば僕が口走った事に関しての疑問だ。原因の半分……いや、三割くらいは僕にもあるだろう。

「二……? 三回くらいじゃないですか……?」

 しかし、改めて思い返してみるとまだミヤとは二、三回しか会ってないんだなぁ、とか思ってしまう。ミヤとのやり取りのノリは同い年の男子と仲良く話している感覚に近い。しかし、生物学的にミヤは女だ。そんな関係になるには僕の性格上、相当な時間が必要なのは自分が一番分かっている。

 そんな事を考えて、正確な回数を数える事にする。

(今回の話に出た住宅街跡が一回目で二回目は駅近辺の大通り、三回目は今日の放課後に屋上で……やっぱり、まだ三回か)

 と、不思議で溢れた今週一週間を思い出す。そして、予想通りミヤとは慣れると言う程、多くは会っていない事が判明した。

(いや、それはどうだろうか……?)

 会った回数としては確かに三回かもしれないけれど、過ごした時間はどうしようもなく色濃いモノだったような気がする。もっと分かりやすく言えば、ミヤとの会話やコロコロ変わる彼女の表情、二人で一緒に見たもの、その全てが印象に残り過ぎている。つまり、僕が言いたいのはミヤの影響力は絶大だ、という事。

 そんな風に心の中でミヤを褒めていると、何も知らないミヤが嬉しそうに僕に尋ねてきた。

「二回? 三回? クイズなんだから、どっちかはっきりしてよねー」

 いつからクイズに変わっていたのかはさて置き、僕はついさっき出した答えを自信満々に言った。いや、言ってやった。今、思い返すと……ちょっと、ドヤ顔だったかもしれない。

「じゃあ、三回で」

「サクヤくん、三回ねー?」

 ミヤのこのノリだと後、何人か居るように聞こえるかもしれないので、一応断わって置くと、解答者は僕一人だけだ。

 とりあえず、正解なのは分かっていた。ただ、ミヤが僕に何と言うのかだけが気になっていた。しかし、やはり、ミヤは僕の予想を華麗に裏切る。

「……ぶっぶぅー! 正解は、四回でした♪」

「ん?」

 僕は耳を疑った。

 しかし、すぐに冷静さを取り戻した。

(まあ、ミヤの言う事は……ねぇ?)

 そんな調子で僕は、無意識にミヤを見る視線もそんな風になっていた。僕がそれに気づいたのは、ミヤが僕の視線に気づいて心外そうに反論してからだった。

「あのね、ホントに四回なんだからねー」

「えっ? ああ。はい、そうですか」

 やけに真剣なミヤの態度に僕は生返事をする。

(あれ、数え間違えたか……?)

 あんなにも自信満々で否定されると、こっちが不安になるのは当たり前だ。しかし、どんなに記憶を辿ってもその三回意外にミヤに会った憶えはない。もう僕には答えの見当もつかないお手上げ状態だ。

 故に、避け続けていたけれど仕方なくミヤの見解を聞く事にする。

「えっと……ですね、ミヤ。どう考えても三回の筈なんですけど、一応ミヤの答えを教えて下さい」

「えーっと、一回目が学校でー、二回目が住宅街跡でー、三回目が駅の近くでー、四回目が今日学校で……ほら、四回」

 短い沈黙。

 少しの思考停止を挟み、僕の思考は正常に稼働を再開した。

(えーっと……一回目はいつ……???)

 やはりと言って良いのかどうかは知らないけれど、やはり僕に非はなかった。ミヤの言うところの二回目の出会いも、僕の知らない一方的なものだったにも関わらず、一回目の出会いも僕の知らないものだったとは、誰が思いつくのだろうか。正に、三択クイズで未知の四択目が正解でした、と言われた気分だった。

「ちなみにお伺いしますけど、一回目の出会いを詳しく聞かせてもらえませんか?」

 怒る気も失せ、僕はただただ事の真相のみを追究する事にした。

「一回目でしょー? 確か……三日前だから、火曜日? サクヤくん、憶えてない?」

 僕は三日前・六月七日の事を思い返す。

「火曜日ですか? その日は……クッシーが宿題を忘れて、住宅街跡の野良達が居なくなって、ニニギが襲われた日ですよね?」

 僕は一つ一つ同意を求めるようにゆっくりと話した。それに対してミヤも、一区切り毎に頷いて見せた。

 しかし、よくよく考えるとミヤはクッシーや野良達を知らない。

 いや、知ってるのか?

 まあ、どっちでもいいか。

 話を戻すと、ここまで聞いても僕にはミヤと会った記憶はまるでない。

 けれども、一つ断言できる事があった。それは二回目の出会いがニニギ襲撃後、六月七日の夜間だから、一回目の出会いはそれ以前、しかも六月七日中という事 (あくまでミヤの意見を鵜呑みにするのならだが)。

 ここまで分かった僕は、ミヤに答えを催促した。

「それで、一体いつ会ったんですか?」

「うーん……と、サクヤくんが教室に入る時に、何か変なモノに触らなかったー?」

 言われてみれば確かに、教室に入る前に何かあった様な気がする。

 詳しく思い出せないまま、僕はたどたどしく頷き、話の先を促した。

「あれねー、こっちでの私の初・能力使用だったんだー」

 ミヤの能力については、僕はまだ詳しくは知らない。けれど、それは僕を狙ったのだろうか。それとも偶然なのか。どうせ、答えは後者だと思う。

「じゃあ、狙って僕に会ったのではなく、偶然だったって事ですか?」

「まあ、そーいう事だね」

 予想通りの答えが帰って来て一安心する。そして、納得する。

(……まあ、身に覚えがない訳だ)

 これにて、身も蓋もないクイズは終了した。



 話は、ミヤによって急に始まったクイズが終了し、僕が落ち着きを取り戻した頃へと移る。

 今回の(翻訳した)ミヤの話、結論から言えば相当な情報を得れたと思う。特にその少年らしき人物、こいつが犯人の可能性がかなり高い。

 しかし、どうも引っかかる。

 何故、一撃で仕留めなかったんだ?

 そりゃ、僕等としてはニニギが死ななくて良かったと思っている。けれど、攻撃した側はどうだろうか。攻撃してきている以上は負傷ないし、殺害を目的としている筈だ。そうすると、その少年の行動は不可解な点がある。

 仮にミヤの存在を警戒していたとしても、一撃だけ与えて離脱、その後に間接的方法で始末を試みる、この流れがどうも腑に落ちない。もし本当にミヤを警戒していたのなら、ミヤがまだ居るかもしれない状況でもう一度攻撃を仕掛けるだろうか。それはつまり、ミヤの事を軽視しているという事になる。しかし、そうすると前提が合わなくなる。

 ミヤという存在を気にもしていないのなら、そのままニニギへの攻撃を続ければよかったんだ。そして、確実に死んだのを確かめてからミヤから逃げ切る、もしくはミヤも……。

 そこで、僕は考えを止める。

 そして、自然な動作で視線をミヤへと移す。

 ミヤに変化はない。ミヤの能力を詳しくは知らないけど、心を読むとかでなくて良かった。そんな事に僕は安堵の溜め息を吐いた。

 それから、僕は突拍子もなく尋ねた。

「それで、その話が前後するんですけど……ニニギを負傷させた犯人って分かりますか?」

 我ながらバカな質問だと思った。そんな事を知ったところで僕にはきっと、いや絶対何も出来ない。聞いただろ、相手は人間よりも数段頑丈な造りをしたニニギに重傷を負わせる程の手練れ。僕が足掻いたところで、僕の存在にすら気づかないかもしれない。

 けれど、聞かすには居られなかった。僕の中で好奇心や義務感、焦燥、怒りが込み上げてくるからだ。この気持ちを止める術を僕は知らない。ただ、その気持ちをぶつける相手がいれば、少しは楽になるんじゃないかと根拠もなく思っているだけだ。

 本当に人間は愚かな生物だ。


――神様ニニギならこんな時、どうするんだろうか……?


 ミヤから意外な返答がしたのはそんな時の事だった。

「さー……でも、私はその少年じゃないと思うんだよねー」

「えっ……?」

 まさか、ミヤが僕と同じ考えとは思いもしなかった。驚きの余り僕は、間髪入れずにミヤの考えを問うのだった。

「ミヤはどうして、そう思うんですか?」

 うーん、と少し悩んだ末、ミヤはあっけらかんと答えた。

「何となく……かなー」

 今更ながら僕は愚問だった、と心の中で嘲笑するのだった。彼女に理論や理屈などという崇高な考えは縁遠い存在なのをすっかり失念していた。つまり彼女に残った、自分の考えを証明する方法は感情論と勘しか最初からなかった、という訳だ。

 さて、この話ももう終わりにしよう。有力な情報も入手したし、これ以上に何か得る事もないだろう。とりあえず、当面の目標も決まりそうだ。ミヤに感謝したいけれど、それ以上に言いたい事が沢山あり過ぎて、口を開くと言いそうになるので僕は黙る事にした。

 しかし、沈黙は続かなかった。それもその筈、相手はミヤなのだから。

「そーいえば、サクヤくんの能力って何なのー?」

 それは唐突で、突拍子もない質問だった。

「僕の能力ですか? すみませんが、僕自身、僕の身体に神様が住み着いた事を知ったのが最近なものでして……結論から言えば、全く分からないです」

 嘘は吐いていない。ただ、信じてもらえるかは定かではない。願わくば、こんな些細なやり取りで仲を悪くはしたくない。穏便に解決するに越した事はないだろう。

 しかし……いや、やはりと言うべきか、僕の心配は杞憂に終わる。

「そっかー、じゃあ仕方ないねー」

 と、ミヤはあっさりと退いた。その意外過ぎる行動に僕は自然と笑みが零れる。

「なに、笑ってるのー?」

「……いえ、気にしないで下さい」

 込み上げる笑いを必死で抑えたものの、特に話す事もなく再び沈黙が訪れる。正確には未だにテレビが点けっ放しだから、全く静かという訳ではない。だが、二人の視線がテレビに向いていないのは明らかだった。

 そして、やはり(というか最早絶対に)ミヤは自ら沈黙を破る。

「じゃあ、サクヤくんの神格ってなーに?」

「シンカク……ですか?」

「そ、神格」

 当たり前でしょ、みたいな顔で言われると大変困る神様用語。今日は解説のウズメさんもいらっしゃらないので、ミヤの説明を聞くしかないのだが……理解出来るかは僕次第だな。

「えっと、シンカク……でしたっけ? まだ聞いた事のない言葉なんで説明してもらってもいいですか?」

「そーだったのー? 説明だっけー? 全然いいよー

 神格っていうのは、簡単に言うと……その神様の元となった物や事のコト」

(い、意外だ……!? ミヤの説明が分かりやすい……!?)

 ミヤにしては要点だけを掻い摘んだ良い説明だった。いつの間にミヤは進化したんだ。

 と、驚く僕を置いてミヤは言葉を続ける。

「――って、ニギハヤヒ様が私に教えてくれたなー」

(ですよねー)

 疑ってかかって正解だった訳だ。何と言うか、今だけは嫌いだけど奴に感謝しよう。

「で、私の神格っていうのがちゅーさい、なんだって! サクヤくんはー?」

 僕は少し考えてから、諭すように話し始めた。

「えっと、ミヤ。それって簡単に他人に話しちゃっていいんですか?」

「……」

 珍しく場が一瞬だけ静かになった。丁度、テレビも番組の切れ目で音がなくなった。

 そして、次の瞬間には音は戻ってきた。先程より三割ほど増して。

「ああっ、ダメだったようなー……!! って言うか、言うなーって言われたよーな……!?」

 これまた珍しい光景だった。焦っているミヤというは初めて見たかもしれない。

「いや、待ってよー……思い出せ、思い出せ……言ってたよーな、言ってなかったよーな……」

 そんな風に僕は呑気にその光景を眺めていた。

「ニギハヤヒ様なんて言ってたかなー……? ヤバいなぁ……これ以上失敗するとまたシカトされちゃうかなぁ……ううん、前向き、前向き!」

 いつもはミヤに弄られる側なので、弄る側に回れて僕は少し良い気分だった。

「たぶん、大丈夫。きっと、大丈夫。そんな大した情報じゃないもんね、うん……」

 このままもう少しミヤの錯乱振りを見ていたかったが、僕の良心が働き、狂乱劇場は終幕となった。

「大丈夫ですよ、ミヤ。僕しか聞いてないですし、僕が誰かに話さなければバレませんよ」

「そ、そっかー……良かったー」

 最初に比べれば疲れたのか随分と落ち着きを取り戻していたので、説得は容易だった。それよりも気掛かりだったのは、ミヤの先程の言動。

“ヤバいなぁ……これ以上失敗するとまたシカトされちゃうかなぁ……”

 ミヤの中心にあるのは奴の事、奴の機嫌、奴の話。

 それに対して、奴はミヤに何を返している?

 これが神様やつらのやり方なのか?

 ミヤは……人間ぼくたちはどうしても報われないのか……?



 こうして、夜中のバカ騒ぎは収まった。

 しかし、まだ真夜中の大乱闘が残っているとはこの時の三人には知る由もなかった。




 バカ騒ぎが収まって間もなくの事だった。

 家のリビングの窓際が無残に吹き飛んだのは……。


 最初は家の前をダンプカーでも通ったのかと思っていた。しかし、違った。例えるのなら、起震車で体験できる最大レベルの揺れと同等かそれ以上の轟音と震動がこの家だけを襲ったといった具合だ。幸い、御近所に被害は出なかった。本当にこの家だけをピンポイントで狙って来たようだ。

 揺れは一分ほどで収まり、数秒後リビングの窓際が吹き飛んだ次第である。後で修理代金を請求するつもりだ。母さんには……ダンプカーが居眠り運転で突っ込んで、逃げたって事にして置こう。

 これは僕の憶測だが、奴はこの家ごと持ち上げるないし、壊そうとし、無理もしくはミヤを気遣ってか止めたといったところだと思う。何にせよ常人の域はとっくに超えている事は充分に理解できた。

 それでも、奴には言わないといけない事がある。

「玄関、って知らないんですか?」

「……」

 土煙の中から見覚えのあるシルエットが出現する。

「まあ、それはもうどうでもいいんですけど……アンタに一つ言いたい事があるんですよ」

「……」

 奴は僕に構わず直立不動だった。何かを待っているのか、それとも僕が何をしようと無関係だと思っているのか。あの能面のような顔からは判断がつかない。ただ、いきなり攻撃してくる感じではないようだ。

 それを確認してから僕は鬱憤を晴らすように言い放った。

「アンタにとってミヤは何だ?」

「……」

(眼中にない、って……結構ムカつくなぁ)

 奴は無言を貫き、僕は僕の意志を貫く。互いの視線が交差し、火花は散らさないが、今にも戦いの火蓋が落ちそうな状況だった。

 僕は心の中に戻り、彼と会話を交わす。

(僕の役目はここで終わり。何の役にも立てなかったけど、とりあえずはまず一発アイツの顔に決めちゃってよ、佐久夜さん)

 それから、一瞬の事だった。

 目を開けた佐久夜さんが口の端を少し釣り上げ、ニギハヤヒの左頬を殴り、リビングの奥まで吹き飛ばすまでの過程は。

「任せとけ、お前の分まで俺が片してやるよ」

 開口一番、佐久夜さんはそう言ってくれた。

~あとがき~


 ここまで読んで頂きありがとうございますm(__)m


 一応、宣伝しておくと……この度、ホームページ作りました。

 そちらの方に色々と画像とかアップロードしたんで、興味のある方は是非遊びに来てください(^^)/


URL: 

 http://www3.hp-ez.com/hp/konohana/page1


 荒らしたりはしないでね~


 今回は宣伝なあとがきでした。

 次回の更新は………………来年の1月下旬~2月上旬くらいかと

 

 それでは、みなさんだいぶ早目のメリクリ&あけおめ&ことよろです(^^ゞ

 次回も是非読んで下さいm(__)m

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