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旧・木花開耶物語  作者: crow
第一章
27/40

木花開耶物語9話 前編

*諸事情により省略。後日追加予定です……(>_<)


=追加分=


はーい、作者のcrowでーす(^^)

いやー、もう前書き無しで良いんじゃないか? とか思ってたりしましたが、書くって書いちゃってたんでその辺は意外と律儀なのです(*^_^*)

そーですね、何か突拍子もない話に思えるかもしれませんが、全て最初から決まっていた事なので、最近になって無理矢理組み込んだりとかは無いです(^_^;)

最初は何言ってんの、とか思うかもですが読み進めていけば解決するかと思われますので気長に読んで頂きたく思いますm(__)m

「終わりを告げられた日常」

――二XX六年六月十日 早朝 住宅街跡 約半日前

 これは僕の覚悟の証明(結構、というか本気で言った割にあっさりと返されてしまった)から間もなく起きた事である。

「それでは……そうですね、何から御話しましょうか?」

「えっと、それって僕が決めるんですか?」

「はい、そうして頂けると(主に私が)助かります」

 そう言うウズメさんの目は「頼む」というよりは「早く決めて下さい」と言わんばかりに笑っていなかった。

(そうだなあ……まず、気になるのは……今更だけどアレかなあ……)

 と、すぐに思いついたのは例の訊き辛かった内容だった。

「あの、今更かもしれないんですけど……ウズメさん達の言う『佐久夜』と僕の『開耶さくや』ってどういう風に聞き分ければいいんでしょうか……?」

 この問いに間髪入れず返事をしたのは、意外にもウズメさんの隣でふて腐れていたニニギだった。しかし、返答ではなく返事をしただけだった。

「この愚か者めが、佐・久・夜・様、じゃ! 分をわきまえよ。お主如きが呼び捨てに出来る様なお方では……」

「お言葉ですが、愚か者は貴女様の方で御座いますよ、瓊瓊杵ににぎ様」

 と、言ったのは当然ウズメさんな訳だが、可哀想にニニギは変なところでツッコミを入れたばかりに速攻、御(しか)りを受ける事となる。僕としては特に気にならなかったのだが、どうもウズメさんはそういうニニギの振る舞いを特に気にするようだ。

「いいですか、瓊瓊杵様。いくら開耶様と佐久夜様が別人であったとしても、その様な態度は貴女様の品性を疑われてしまいます。瓊瓊杵様は瓊瓊杵様らしく振舞われるのが良い、と佐久夜様はおっしゃいますかも知れませんが、それは飽くまで、二人きりの時だけに致してください」

 長い説教はそこで終わった。と言うのも、僕が割って入ったせいなのだけど。

「まあまあ、ウズメさん。それで、あの、僕の質問の方は……?」

 と、まあ、こんな感じで仲裁に入った訳だが、ウズメさんには盛大な溜め息を吐かれ、ニニギからは助けたにもかかわらずにらまれる始末だった。

(……り、理不尽だー!)

 僕の心の叫びを知る筈もなく、ニニギは再びそっぽを向き、ウズメさんは答えを淡々と口にした。

「明確な聞き分け方は御座いません。感覚的に読み取って頂き、分からない時は尋ねて頂ければ、私は懇切丁寧こんせつていねいに御教え差し上げます」

鈿女うずめの事じゃ、どうせ無言に笑顔で誤魔化すぞ」

く言う瓊瓊杵様は、知っていらしても御教えしない素晴らしい性格の持ち主で御座います」

「むう……」

「ふふっ……」

 どうも、お二人ともご機嫌斜めの御様子で。この調子では先が思いやられる。どうしたものか……いや、僕の立場もかなり危うくないか? つまるところ、二人の怒りの矛先がこちらに向かないとは言い切れない、という事だ。

(ヤバい、ヤバい。黙ってるべきか? いや、それは無理だろう。きっと、ウズメさんが次の質問の催促に来る筈だ。それなら、出来るだけ僕に視線が集まらない様に存在を薄く、薄く……)

「開耶様? 急にお静かになられて、如何どうさいましたか?」

「鈿女が怖いからひるんでしまったのじゃ。ああ、怖い、怖い」

「ふふっ、誰が怖いのでしょうか?」

 何と言う事だろう。ウズメさんの背後から禍々《まがまが》しいオーラが溢れ出ている。

 まさか、黙って影を薄くさせる作戦が裏目に出るとは誰が予想できただろう。思わぬ問題はやはり、元凶・ニニギだった。

 僕が黙れば、必然的に会話は二人でする事となる。そして現状、二人はまともな会話が出来る精神状態ではない。お互いが相手の怒りの炎に油を注ぐような言動しかしない。

 この場合、最も被害を軽減するには二人の間に第三者が入り、話題をコントロールするか、二人の間に物理的に入らなくても、何か罵詈雑言ばりぞうごんが出てすぐフォローに回れば、被害軽減は充分に可能だろう。

 ただ、どちらの手段を選んでも僕の犠牲はまぬがれないだろう。犠牲とは、つまり僕は二人に嫌われる覚悟で挑むべきだという事である。この作戦、僕はどちらの味方でもない。つまるところ、どちらのフォローもするし、どちらの発言もいさめなければならない。時には聞かなかった振りをして話を進めなければいけない場面も出てくるかもしれない。そんな中、誰が僕に好感を持てるだろうか? まあ、無理な相談だろう。

 最近こんな役ばっかりだなあ……僕。

 と、言う訳で、僕はこれ以上、被害を出さない為にも犠牲になる事を決心するのだった。


 二人が無言の睨み合いを続ける中、僕は勇気を振り絞って間に割って入った。

「はいはい。そこまでにしましょう、二人とも」

「む?」

「あら?」

 僕の唐突な参戦に二人は目を丸くする。その隙に僕は場の主導権を握る。

「ウズメさん、早速で悪いんですが次の質問をしてもいいですか?」

「……はい、構いませんよ」

 少し戸惑いの色が見られたが、構わず僕は質問を口にする。

「次に気になったのは……僕は、僕達は何に巻き込まれてるんですか?」

 今回の説明会において核心と言っても過言では無いこの質問を、こんなに早く持ち出したのは他でもない、僕の作戦だ。

「それは、ですね……」

 明らかに答えに困った様子のウズメさん、これは予想通り。そして、僕はニニギに視線を送る。

「ふん……」

 僕の視線に気づいたニニギはまたそっぽを向いてしまった。しかし、これも予想通り。

(よし、上手くいってる。これで少しは冷静になる……かな?)

 僕の作戦、それはまず二人に冷静な思考を取り戻してもらう事だ。その切っ掛けとなる事は多々あるだろうけど、僕は難しい問題を考えさせるという方法をチョイスした。それと言うのも、もうひとつの狙いがあってだ。

 恐らく、この質問を一言で答えるのは不可能だろう。もし、そんなウズメさんの姿を見たニニギが罵倒ばとうしたとする。すると、必然的に問題の解答権はニニギへと移る。何故か? 相手を馬鹿にしたのだから当然、自分はもっと上手く説明できる事だろう。それが出来なければ、ウズメさんも少しは気が晴れるだろうし、ニニギも勝算も無しに罵倒しなくなるだろうと踏んでいたのだが、ニニギは見た目よりも賢いようだ。

 そんな事を考えていると、不意に頭を抱えるウズメさんが僕の目に映る。

(冷静になってもらう為とは言え、悪い事しちゃったなあ……)

 しかしながら、いつかは聞かなければいけない内容だ。僕だって、被害軽減の為だけという理由で尋ねた訳では決して無い。どんな話でも受け入れ、受け止める覚悟で聞くつもりだ。

「開耶様、今から話す事をどうか驚かないで聞いて頂きたく思います」

「心配しないで下さい。もうどんな事でも驚かない自信があります。だから、お願いします」

 そう言った僕の目を数秒間、見つめたウズメさんは観念した様に目を閉じて首を振った。

「そうですか、それは私の杞憂きゆうでしたね。それでは、順を追ってお話し致します。その前にひとつ断って置かなければならない事があります」

「それは、何ですか?」

「はい。どうか、今から話す内容を人間の常識で考えないで下さい。私達でさえ奇怪なこの事態に動揺を隠せずにりますゆえ、人間である開耶様には少々、理解しがたい御話かと思われます。どうか、広い御心と柔軟な思考で物事を捉えて下さい」

「何ですか、それ? まるでウズメさん達が人間じゃないみたいな言い方じゃないですか」

 その数瞬後に知る事になるが、この言葉は人間を今までの日常から切り離す禁句だった。

 そして、僕がどれだけ甘い考えをしていたのか思い知らされる前兆だった。

「申し遅れました、私達は神界しんかいより参った者です。此方こちらでは ―神― と呼ばれる存在です」


「……えっと」

 次の言葉が出なかった。しかしながら、僕の頭の中は混乱ではなく、困惑で一杯だった。と言うのも……。

(何でも信じると言った手前、こんな事は思いたくないけど――規模スケールが違い過ぎやしませんか……?)

 確かに、僕は何かに巻き込まれてる感じがしていた。でも、それはせいぜい街規模のちょっとした事件程度だった。いや、そもそもこれまで僕が得た情報からどこをどう考えても、そんな大それた話になる要素が見つからない。

(ん? あれ、本当にそうだろうか……?)

 そういえば、すっかり忘れていたがニニギと出会ってから僕は沢山の不思議な経験をした。

 まずは、クッシーが宿題を忘れた事。

 次に、住宅街跡に居た動物達が突然一匹残らず消失した事。

 他にも、ハルの無断欠席、どこまでも続く夜中の住宅街跡、ニニギの負傷、何の前触れもなく倒壊した建物、その建物の破片がどこかに消えた事、ウズメさんが現れたのは一体どこか、ニニギとウズメさんの関係、ニニギの怪我はどう治ったのか、ニニギを襲った犯人とは、屋上で雲ひとつない空が陰った理由、その直後に僕を襲った強風の正体、駅に停泊していた宙に浮く黄金の船、登陽とみや 毘美まさみなる人物と大男の関係と正体、夢で見た桜の樹で話した女の子は誰か、六月九日の欠席理由、六月八日以降の記憶が曖昧あいまいになってしまった経緯いきさつ、ニニギの態度が急変した理由、と。

 とりあえず、このくらいの謎がある訳だけれど、もし彼女達が本当に神様だとすれば(まあ、あくまで神様の定義にもよるのだけど)数個の謎は解ける気がする。

 それを踏まえてもう一度、謎について考えてみよう。

 まずは、クッシーが宿題を忘れた事。これに関して彼女達は完全に無関係だ。

 次に、住宅街跡に居た動物達が突然一匹残らず消失した事。彼女達が完全に無関係とは言えない。なぜなら、彼女達は大抵この辺りに居るからだ。だが、神様という特異点による影響だとも言い切れない為、現段階の情報量では解決は不可能だ。

 他には、ハルの無断欠席(無関係)、どこまでも続く夜中の住宅街跡(現段階では解決不可:以後略称……不)、ニニギの負傷(不)、何の前触れもなく倒壊した建物(無関係)、その建物の破片がどこかに消えた事(不)、ウズメさんが現れたのは一体どこか(もし神様なら出来るかも知れない:以後略称……可)、ニニギとウズメさんの関係(不)、ニニギの怪我はどう治ったのか(可)、ニニギを襲った犯人とは(不)、屋上で雲ひとつない空が陰った理由(無関係)、その直後に僕を襲った強風の正体(無関係)、駅に停泊していた宙に浮く黄金の船(無関係)、登陽 毘美なる人物と大男の関係と正体(無関係)、夢で見た桜の樹で話した女の子は誰か(無関係)、六月九日の欠席理由(無関係)、六月八日以降の記憶が曖昧になってしまった経緯(可)、ニニギの態度が急変した理由(無関係)、と、こんな感じになる。

(さて、っと。どうしたものかな……?)

 信じる、そう言うのは簡単だ。でも、それは本当に僕が言った覚悟に反していないだろうか?

 嘘を吐くのも男としてどうかと思うけど、大切な人を傷つけるっていうのは人として最低だと思う。結局のところ、正直が一番って事なのかなあ……? いや、違うか。


 長く無言を貫き、思慮しりょを重ねた僕は、やっと結論を出せた。

 そうして、とても遅くなった返事をする。

「すいません、ウズメさん。やっぱり、ちょっとうまく飲み込めないです」

 正直な気持ちを、まず言ってみた。

 すると、やはりウズメさんは顔をくもらせた。

「そうです……か。いえ、お気にさらないで下さい」

「ふん」

 やはりな、と言いたげな溜め息を吐いたのは言うまでもなくニニギだ。

 それに続けるように(驚かせる気、満々で)、僕が出した『もうひとつの答え』について話そうとしたところ、先にウズメさんが言い辛そうに口を開いた。それに気づいた僕はとりあえず様子を見る事にした。

「あの開耶様……よろしければ、この話は聞かなかった事に――」

 そこで僕はウズメさんの言葉をさえぎるように、さっきの僕の言葉に繋げる形で言った。

「でも……もし良かったら、そのお話詳しく聞かせてもらえませんか?」

「えっ?」

「……っ!?」

 いつも、いつでも冷静沈着なウズメさんのきょとんとした顔と、最近仏頂面(ぶっちょうづら)が続いたニニギの驚いた顔が見れた。それだけでも充分に満足だったけど、まだ彼女達を驚かせる『取って置き』が僕には残ってる。

「僕は、僕が何に巻き込まれているのか知りたい。相手が神様だろうが仏様だろうが関係ない。僕は貴女達を信じるって決めたんだ」

「開耶様……」

 そう、僕の出した答えは――正直な気持ちと……小さな嘘だった。


 正直なところ、彼女達が神様かどうかは半信半疑だ。確かに、不可思議な経験を僕はしたけれど、その証明が出来ないのは単純に僕の知識不足が原因かもしれない。超常現象だと思っていた事も実は科学的に証明できるかもしれないし、僕の見間違えという事も充分に有り得る。だから、僕は彼女達の話を聞いて判断する事にしたんだ。

「それでは、どうか驚倒きょうとうさらずお聞き下さい。疑問は話の最後にお尋ね下さい。私も答えられる範囲で答えさせて頂きます」

「分かりました。ウズメさん、お願いします」

 ウズメさんは頷くと昔話のように語り出した。


――約二ヶ月前 神界

 ある日の事でした、突然天より声が響き聞こえてきたのです。

「あー、あー。神界の皆さん聞こえてますか?

 私はこの神界の管理を受け負っている天界人てんかいじんのイグドラシルです。

 これから結構重大な事言うんで、一回しか言う気ないんでしっかり聞いてください。

 今この時から不本意ながらあるゲームへの参戦希望者を募ります。参加は自由です。ただ、参加しないというのは直接的に貴方あなた達自身の死を意味します。その辺りはご了承ください。

 まあ、それと言うのも前任者の管理不届きが原因なんですが、神界と下界げかいはどう転んでも滅びる未来が決定付けられてしまいました。

 納得がいかない、そんなのは信じられない、どう思っていただいても構いませんが、こちらの用件だけ先に言わせてもらいます。

 私は近い未来に二つの世界を滅ぼしてしまった責任を負って神界へと降格こうかくされるそうなんです。それで私の代わりとして一名……いえ、三名くらいなら助かります。つまり、天界人へと昇格すれば死なずに済むという訳です。

 そして、ここからが本題です。その一名ないし三名を決める為にある戦争ゲームを不本意ながら開催したいと思います。その名は――

―― 終末戦争しゅうまつせんそう ――

 ルールなんてものは有って無いようなものなので知りたい人は係りの者に各自尋ねて下さい、私からは省略します。あと、参戦したい方は一チーム三人として下界に通じる門の前に集まって下さい。

 ああ、当然の事ですが、ゲームと言っても戦争なんで死ねば世界が滅びる前に存在が消えます。遊び感覚で参戦すると痛い目を見る事になるでしょう。これは生き残りを賭けた戦争です」

 それ以降、声は止みました。

 最初は誰も信じていませんでした。しかし、それも時間の問題でした。

 誰かが門の前に様子を見に行ったところ、普段は固く閉ざされている筈の門が開いていたそうです。その噂はすぐに伝播し、私達の耳にも入りました。

「おい、ニニギ聞いたか!?」

「い、行き成り何事じゃ?」

「いやな、下界へ通じる門が開いてるんだと」

「ええ、その御話でしたらわたくしも小耳に挟みましたよ、瓊瓊杵様」

「よし、早速出かけるぞ。支度をせよニニギ!」

「……もしや、佐久夜様は天からの声をお聞きにならなかったのか?」

「ああ、その時は丁度、寝ていた」

彼方あなたの場合は違うじゃろ。丁度ではなく常に寝て居るしのお」

「まあ、そんな事はどうでも良い。閉まる前にくぐらねばな。ニニギ達も来るだろう?」

「わ、私は……まあ、佐久夜様を御一人にすると何をなさるか分からぬし、私が付いていないと私は心配で夜もおちおち眠れぬしな。仕方あるまい、付いて行く」

「よし、決まりだな! アンタはどうする?」

「そうですね。私は所用しょようが御座いますので後日、瓊瓊杵様と合流させて頂きます」

「そうか。じゃあ、善は急げだ! 行くぞ、ニニギ」

 ここから先は、先に門へと行かれた瓊瓊杵様よりお聞きした内容です。

 門へ着くと係りの者に三人居ないと駄目だ、と帰されたそうです。仕方なく瓊瓊杵様は私と同期の児屋こやねを連れて門へ行ったそうです。

「この三名で登録致しました。それでは、三名の中から一名選んで下さい」

「選ばれると何かするのか?」

「はい、先に下界へ行って頂きます」

「じゃあ、俺だな」

「お待ちください、佐久夜様。お忘れかも知れませんが、これはいくさなのですよ?」

「分かってるよ、他の連中は本気で倒しに来るかも知れない、って言いたいんだろ? 大丈夫だって。先、行って面白いもん沢山見つけてニニギにも見せてやるよ」

「本当に危ない事だけは為さらないで下さいね……。

 それはそうとして、残された者はいつつのですか?」

「一ヶ月後となります」

「い、一ヶ月後~~!? やはり駄目じゃ、佐久夜様! ここは児屋に行かせて――って、もう居ない……」

「佐久夜様でしたら、もう門を潜られましたよ~」

「児屋……なぜ、止めなかったのじゃー!」

 と、こんな別れ方をしたものですから、初・対面の際にあのような奇行きこうに及んだのかと思われます。

 それはさて置き、残された瓊瓊杵様は―― 終末戦争 ――のルールを聞きに行きました。

「ルールですか? はい、了解致しました。

 勝敗の基準は肉体への損傷量で決まります。御自身の許容できる損傷量(致死量)を超えた損傷は負けに繋がるという事です。これは下界でいうところの人間と同質の能力です。まあ、下界で怪しまれない為の運営側の細工だと思って下さい。

 ああ、勿論の事ですが、時間制限などは御座いません。武器や神器じんき神業かみわざ神技スキルも際限なく行使していただいて構いません。まあ、余り派手に暴れると下界の人間が五月蝿うるさいのでその辺りは人目を避けるなど各自でご配慮下さい。

 ああ、言い忘れていましたが、先に行かれた方達にはちょっとした細工を施しました。まあ、再会してからのお楽しみ、という事なので話せませんが」

「なっ、それは一体どういう意味――」

「ああ、ご心配なさらなくても大丈夫ですよ。貴方あなた達、後組あとぐみには特に何の細工も施す予定はありませんので」

「そういう事じゃないっ! お主ら、佐久夜様に一体、何をした!」

「だから、これ以上は話せません。それ以外の御質問なら何なりと」

「くっ……じゃあ、お主らの目的は何だ?」

「? イグドラシル様の説明をお聞きになっていなかったのですか?」

「いや、聞いていたが」

「では、その聞いた通りで御座います。それ以上もそれ以下も御座いません。勿論、裏も表もありません」

「……つまり、こんな大それた事をして後任を決めるだけ、という事か?」

「まあ……簡単に言えばそんなところですかね」

「馬鹿げてる」

「そうですかね? 貴方達は命がかかってるんですよ? 私ならそんなに軽視できないけどなあ……」

「それは、お主に自分よりも大切なモノが無いからだ」

「……」

 と、捨て台詞ぜりふのように言って瓊瓊杵様は去ったそうです。それから、一ヶ月はすぐに経ち瓊瓊杵様は下界へと降りたそうです。

 私は所用が想像以上に手間取ってしまい、瓊瓊杵様と合流出来たのは下界に降りてからでした。そうして、私達は当面の目標を佐久夜様探索として下界を徘徊はいかいしていました。

 それが、瓊瓊杵様と開耶様が出会う二日前の事です。それから二日間、私と瓊瓊杵様は二手に分かれて探索致しました。そのせいで、開耶様にはいろいろと迷惑をかけてしまったようですが、結果として佐久夜様は見つかったので当初の目標は果たされました。

 そして、私達の次なる目標はこの戦に勝ち残る事です。

 これで私からの話は終わりです。


 今の話が本当なら、ニニギが大怪我した理由もすぐに完治した事も合点(がてん)がいく。けれど、またまた専門用語のオンパレードで、話の三割は聞き流してしまった。

 つまるところ、この質問タイムでしっかりと見極めなければいけない訳だ。

「えっと……ですね、色々と気になるところはあったんだけど……最初から順番に訊いていきますね?」

「はい、構いません。懇切丁寧お答え致します」

 やる気、満々で何よりだ。ウズメさんに話し疲れた様子は窺えなかったので、僕は話を進める事にした。

「まず根本的な事から、話に出たシンカイ・ゲカイ・テンカイと言うのは具体的にどこの事なんでしょうか?」

「そうですねえ、理解しやす此方こちらの言葉で表現するとしたら……神界は天国で、下界は地球そのものですね」

「あれ、テンカイは?」

「天界は少々、複雑なのです……私達は下界を管理する立場にありますが、人間の皆様は私達の存在など知りませんよね? それと同じで天界は神界を管理する立場にあり、故に私達にも分からない存在なのです」

(うーん、分かったような、分からないような……筋が通ってるような、筋が通ってないような。判断の難しい話だなあ。とりあえず、保留)

「そう……なんですか。じゃあ、シンカイが天国というのは比喩ひゆ的にという意味ですか?」

「その説明ですが、正確には半分ほど間違っております。と言うのも神界は三つの層で構成されているのです。

 一番、此方に近い層が天国の様な所なのです。其処そこには死者の魂が集まり、転生の時を待っています。全ての魂はいにしえより絶える事無く使い回されているのです。転生の際、前世の記憶は消されますので誰もその事は知り得ません」

(知り得ません、って僕は知っちゃったよ。まあ、いいや。聞かなかった事にしよう、うん)

「分かりました。次の質問ですけど―― 終末戦争 ――って言うのは結局のところ何なんですか?」

「瓊瓊杵様の御蔭で目的は分かりましたが、それ以上の事は私達にも何とも言えません。裏も表も無いとは言ってましたが、きっと何かあると思います」

(きっと何か……天界人・イグなんとかの企みが……という事なのだろうか……? これも今は保留)

「そうですか。じゃあ、次の質問です。先に行かれた方達に施した細工って結局何だったんですか? 確か、佐久夜さんにはもう会ったんですよね?」

「……ええ、その事なのですが……何と申したら良いのやら」

「???」

 急に黙ってしまったウズメさんに僕は首を傾げる一方だった。すると……。

「私から話そう」

 そう言ったのは、そばで話を盗み聞いていたニニギだった。

 そして、信じられない事をさらりと口にした。

「佐久夜様は、お主の中にる」

 一瞬の沈黙の後、素っ頓狂な声が僕から漏れた。

「……えっ? 何言って――」

 その瞬間、不意打ちの如く僕はニニギの接吻せっぷんを受けた。

 生涯、三度目のキスは何故か大人な感じがした。

 それと言うのも(惚気のろけ話に聞こえるかもしれないけれど)、今までの二回は単純に唇を重ねただけだったのに対して今回は大きく異なっていたのだ。彼女の口から僕の口の中へ、何か熱いモノが流れ込んで来る、そんな感覚がしたのだ。

「――っぷはっ! ちょっ、何でいつもいきなりなんですか!?」

「じゃあ言えば、何も言わずさせてくれるのか?」

「そ、それは……」

 答えに躊躇ちゅうちょしてしまう。

 いや、躊躇しないのもどうかと思う。これは簡単に「YES」とは言えないだろう。ところ構わずそんな事をされては僕の体裁が悪くなる。勿論、彼女の体裁もだ。

 そんな事を考えて深刻な顔をしていると、ニニギが奇行の真意を話し出した。

「それに、話すよりもこの方が手っ取り早いのじゃ。ほれ、腹の中が熱いだろう」

 言われてみれば、ニニギから流れ込んで来た何かが喉を通ってから、様々な器官や臓器を擦り抜けてお腹の中心付近で停滞している。まるでそこに溜まるのが当たり前、とでも言うようにどこにも消えず、そこに存在し続けた。

「―― 神力じんりき ――」

 彼女はこれをそう呼んだ。

「そこは―― 神力 ――を溜める臓器―― 神力臓じんりきぞう ――」

 とも言った。

「ほれ、聞こえるのではないか? 佐久夜様のお声が」

 言われた僕は、熱を帯びたお腹に触れ目を閉じて心を落ち着けた。


――よう、ニニギが無茶して悪かったなー


「うわっ、ホントに声がした!」

 脳内に直接響く僕と同じ(かちょっと低い)声に驚く。

「上手くいった様じゃの。そうしたなら、佐久夜様に表に出て来れぬか訊いて貰えぬか?」

「う、うん……?」

(えっと、佐久夜さん……? ニニギが外に出て来れないか、って……?)


――面倒だから嫌だ、って伝言頼むわー


「えっと、佐久夜さんから伝言です。『面倒だから嫌だ』だそうです」

「むむむっ。誰の神力の御蔭おかげじゃと思ってるのじゃ! 出て来ぬか!」

 言って、僕の肩を両手で掴んで前後に振り出すニニギ。見兼ねたウズメさんが止めに入らなければもう少しダメージを受けていた事だろう。

 それから、僕の落ち着くタイミングを見計らって佐久夜さんは話しかけてきた。


――……

「うん、分かった。そう伝えるよ」

「何じゃ、気味の悪い。独り言ならもっと小さな声でした方が、お主的にも周り的にも良いぞ」

(余計なお世話だ。っていうか、折角、ニニギへの伝言を預かったのに……これだからなあ。最近、貧乏くじ引きまくりだなあ)

「佐久夜さんから伝言です。『こんな何でもない所で俺が出てどうすんだ? ニニギから貰った―― 神力 ――はニニギがピンチの時に俺が助けられるように温存しとくんだ。本当に感謝してるよ、ありがとうニニギ』だそうです」

「佐久夜様……! し、仕方ないのお、遅れたら怒るからな」


――最後の一言は俺、言ってねーけどな

「う、うるさいなあ。いいだろ、僕なりにアレンジしただけだよ……」

「む?」

「ううん、何でもないよ」

 そう、何でも無いけれど、これで僕は彼女達の事を信じざるを得なくなったのだった。

 僕の中に佐久夜さんが居て、彼女達が神界から来た神様だという事、今生き残りを賭けた戦争に巻き込まれているという事、全てを。

*諸事情により省略。後日追加予定です……(>_<)


=追加分=


とりあえず、超長文を最後まで読んで下さり大変ありがとうございますm(__)m

えーっと、どうでしたか? まあ、ビックリですよねー(>_<)

でも、これからもっとビックリな事とか山ほどあるので、分からない事や分かり辛いところはキャラ紹介や感想などに、相談があれば随時掲載するつもりです(^^)

今回も?なキーワードが多数登場しましたが、後の話でしっかりと補足説明が入りますので、気長にお待ちくださいm(__)m

PROLOGUEの後書きにも書いた通り、後編には全くと言って良いほど手をつけておりませんので、次話の掲載は完全に未定です(;一_一)

分かっているのは、恐らく次もこのくらいの量になるだろうと言う事です(+o+)

できれば今月末を目指したい所存です(>_<)

気長にお待ちください、そして次話も是非読んで下さい、それからくどいかも知れませんが感想頂けると嬉しいです、楽しいです、やる気出ます(←いや、最初から出せよって感じですね、すんません)……と言う訳で今回はこの辺りで、ありがとうございましたm(__)m

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