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旧・木花開耶物語  作者: crow
第一章
25/40

木花開耶物語8話 D

2話同時投稿の2話目です\(^o^)/

まあ、元々ギャグ要素の少ないこの話ですがこの話に限ってはシリアス展開という、まるで笑えない雰囲気となっております(;一_一)

楽しめないかもしれませんが、できれば最後まで読んで頂きたいですm(__)m

――彼女が僕を無視し始めた当初

「ウズメさん。僕、何か不味まずい事でも言いましたかね?」

 いつの間にか隣に居たウズメさんに、僕は話しかけていた。最早もはや、僕の思考では到達する事の出来ない女心(乙女心)という複雑な心理現象に恐怖すら抱いていた。って言うか、泣きたいくらいだった。

「申し訳御座いません、開耶さくや様。意外な一面かもしれませんが、瓊瓊杵ににぎ様はこういった事に関しては奥手なのです」

「はあ、そうなんですか……」

 当然、釈然としない答えだったが、それが女子(乙女)というものなのだろうと無理矢理納得させた。これ以上面倒事を増やさない為にもこれが最善の策であると信じたいところだった。

 さて、話が変わるのだけれど……それは決して僕の意思ではないので勘弁してほしい。そう、この話を持ち出したのは彼女達なのだから。

「時に、開耶様」

「はい? 何でしょうか、ウズメさん」

 自然と敬語を使ってしまう。何だろうか、雰囲気というか見るからに目の前の女性は大人な感じがするのだ。条件反射にも似た何かが、僕に敬語を使わせている訳だ。

「単刀直入に申し上げますと、私共わたくしどもは今現在の状況に関しまして大変、混乱しているのです。その御説明を、混乱の大本である佐久夜さくや様にして頂きたい所存なのですが……」

 なのですが、とか言われても。こっちの方がこの状況について聞きたい事が山ほどあるくらいで。

 ウズメさんからの申し出に困惑を浮かべていると、何かに納得したようにウズメさんは言った。

「開耶様、大変申し訳御座いませんでした。先程の言葉はお忘れください」

「い、いえ、ウズメさんは何も悪くないですよ! な、何と言いますか、僕も記憶が混濁してまして……詳しい事はさっぱりで」

 と、言いたくなかった事を正直に告白する。すると、それを聞いたウズメさんは僕の予想通りいぶかしむような表情を浮かべた。しかし、僕の予想とは全く異なる言葉を発した。

「それは、つまり……佐久夜様と開耶様は記憶の共有をされていない――という事で御座いましょうか?」

 何度も言うけれど、今の僕に最近の事を尋ねられても困る一方なのだが……どうやら、そんなのはお構い無しらしい。いや、ウズメさんの場合は導き出された意外な結論のせいでさっき僕が(勇気を振り絞って)言った事をすっかり忘れている、といった風か。まあ、俗に言うところの天然さんな訳だ。

 そこで僕はある事を思いつく。我ながら、名案だと思った。そして、すぐに虚しくなって、自画自賛を止めて、その自称・名案を話した。

「えっと、よく分からないんですけど……とりあえず、情報交換しませんか?」

「じょーほーこーかん、ですか?」

「はい。僕の知っている事と、ウズメさんの知ってる事をお互いに話して、共有しましょう……って、ダメですか?」

「じょーほーこーかんとは、そういう事でしたか。いえ、大丈夫です。ただ……」

「ただ?」

「開耶様が全てを知りたいのでしたら、それなりの覚悟をして聞いて頂く事になります。後は、このお話をする事を瓊瓊杵様が許して頂ければ、わたくしは私の知っている事を全て隠す事無く彼方あなたにお話し致します」

 ニニギという単語を聞き、自然と視線が彼女へと向く。二つの視線と恐らく聞こえていた会話の内容に、彼女は顔をしかめていた。何故そんなにも嫌そうな顔をしているのか、僕には分からなかった。ただ、その理由が先程のような子供っぽい幼稚な理由で無い事だけは確かだった。

 とは言ったものの人間は隠されたり、秘められたりしているものを知りたくなる性質たちで、答えに近づけば近づくほど躍起やっきになるのだけれども、今回はそういう感覚ではなかった。何か、知らなければいけないような、妙な使命感が僕に渦巻いていた。

 それから十数秒が経過した頃、ニニギがうなり出した。

「むぅ~~~~~~」

「えーっと、これは一体……?」

「端的に申し上げさせて頂きますと、審議中、ですね。品性に欠けますが、唸り出したという事はそろそろ答えが出るかと思われます」

「そ、そうですか」

 との事なので、もう少し待ってみる事にした。

 それから再び十数秒が経過した頃、ニニギの唸り声は止んだ。隣に居たウズメさんと顔を見合わせ二人で同時に頷いた。そして、ニニギの元へと歩み寄り、閉ざされた口とあの特徴的な目が開くのをただ待った。

 そして、その時は案外早く訪れた。

「好きすれば良い」

 それが長々と唸り続けた少女の出した答えだった。

 と言いたいところだったが、それから長い長い説明というか言い訳がましい話が続いたので、とてもじゃないけどそんなに簡潔にまとめる事は出来ない。と言うよりは個人的に『それが長々と唸り続けた少女の出した答えだった』とまとめるのが納得いかない訳で。

 そう、そしてこれがその直後に発生したニニギの出した答えに対する長い長い説明(言い訳)だ。

「か、勘違いするでないぞ。また此度こたびの様な事が起きては勝てるいくさも負けてしまうからな。そうなっては佐久夜様に合わせる顔がない。そ、それにだ。どうせ遅かれ早かれお主は知る事になる運命じゃった。それが偶々《たまたま》、今日この時じゃったというただそれだけの事じゃ。あと、先に言って置くと聞いたお主は十中八九、信じない。じゃから、この段階で話すのは反対じゃったのだが……まあ、私が話すのでなければ手間も省けるし、問いも全て話した鈿女うずめへと向くじゃろうからな。では後は頼んだぞ、鈿女」


――それから間もなくウズメさんの説明会の開始……から小一時間の経過

「――と、これが瓊瓊杵様と佐久夜様の馴れ初めです♪」

 普段より三割増しの調子(つまり上機嫌)で、佐久夜なる人物と彼女・ニニギの関係についてウズメさんは話してくれた。

 その話を要約すると、良い家に生まれたニニギは様々な男性から結婚を迫られていたが、その誰もが目当てにしているのは彼女自身ではなく彼女との結婚に付く特典、つまり地位であり、その見え透いた魂胆がニニギには許せないものだった。そんな時、新たな縁談相手として佐久夜という人物とニニギは出会う。その男性は一風変わった人物で、地位とか名誉とかのたぐいにはまるで無頓着、むしろ他人がさげすむような仕事を夢にしているらしい。そんな彼にニニギはかれていったらしい(ウズメさんの見解)。当時、父親について問題を抱えていたニニギは同じ悩み・不満を持つ彼とどんどん打ち解けていったそうだ。そうして、初・対面の一夜は過ぎたそうだ。

 それからは言うまでもなく、佐久夜様、佐久夜様としたい、相当な恋愛感情も抱いているご様子で。

 とりあえず、分かった事は……。

(ニニギは佐久夜さんの事を大切に思ってて、それと同じくらい佐久夜さんもニニギを大切に思ってるって事。それと、その佐久夜さんって人と僕の見た目から声、その他諸々が酷似こくじしているって事くらいかな……)

 それまで自分の恥ずかしい話を黙認していたニニギが動いたのはそんな時だった。

「のう、鈿女。何故なにゆえお主はあの夜の事を知ってるのじゃ? 確か、お主は私を送って屋敷に帰らせた筈じゃ。そして迎えに来たのは翌日の正午じゃ。さて、ゆっくりと昔話でもしようかのう、鈿女」

「えっ、あの、瓊瓊杵様?」

 ニニギは有無を言わさず、ウズメさんを連れて何処かへと行ってしまった。

 しばらくの間、二人は僕の見えない所で何か話したらしい。内容こそ知りえないけれど、ウズメさんが調子に乗って羽目を外したのが原因という事と、ニニギを怒らせると怖いという事だけは僕の胸に深く刻まれたのだった。


――ニニギとウズメさんが戻ってきて間もなく

「お待たせ致しました。それでは、本題に入らせて頂きます」

「えっ、さっきの話が本題なんじゃ……」

「いえ、あれはただの前置きです。ここからが、彼方あなたの知りたい事。いえ、知るべき真実です」

 ウズメさんの改まった口調に僕は息を呑んだ。そう、ここから先は生半可な気持ちで聞ける話ではないらしい。彼女達の真剣な眼差しがそれを静かに訴えている。僕の覚悟を示せ、と。

「覚悟、ですよね? 信じてもらえないかもしれないですけど、此処でニニギに初めて会うまで僕は夢の中でニニギに会ってたんです。寝てる僕を、いつも優しく起こしてくれるきらびやかな衣装をまとった少女、それがニニギでした。でも夢だから……夢だったから、こんな女の子が居る訳ないって勝手に決めつけてました。けど、彼女は実在しました。そして、今も此処に居ます。最初は意味分かんない事とかばかりで遠ざけてきたけど、今思えば初めて会った時からニニギは僕の事を心配してたんだよね?

 何か得体の知れないものに巻き込まれてるんだろうなって自覚はあります。それでも、このまま見て見ぬ振りして過ごすって選択もあるのかもしれない。でも、僕はニニギやウズメさんに傷付いて欲しくない。

 もし、僕が二人を巻き込んだのならごめん。後は僕が一人で片付けるよ。もし、僕が巻き込まれたのなら二人に最後まで付き合うよ。これが僕の覚悟です」

 言い切ると僕は、少しでも多く僕の本気が伝わればと願った。何故だか彼女達の事を他人事ひとごとだとは思えないのだ。放っては置けない。でも、それを彼女達に拒絶されれば僕にはもうどうしようもないのだ。

 所詮、僕の覚悟は根拠もない。信じられる確証もない。動機不純もいいところだろう。

 それでも、そんな僕を彼女達が受け入れてくれるのなら……。

 結果を待つ僕の前に、並んで立つ二人は顔を見合わせた。すると、ニニギの方がウズメさんに向け、手で払うような合図を送る。それを見たウズメさんがニニギの方へ一礼をしてから、僕の方を向いて言った。

「承知致しました。開耶様の覚悟、深く感銘を受けました。如何いかがでしたか、瓊瓊杵様?」

「ふ、ふん。じゃから、好きすれば良いと言ったじゃろう」

「ふふ、かしこまりました。それでは、話しましょう。この世の真実を」

 くして、僕はやっと新しい日常(ものがたり)のスタートラインに着こうとしていた。

ここまで読んで頂きありがとうございますm(__)m


前々からそろそろ物語の核心部分を……と言っていたのですが、また悪い癖が出てしまい、先延ばしにしてしまいました(>_<)

と言いますか、この2つの話は昨日急いで仕上げ、今日の午前中に添削作業をしたという切羽詰まった作品でした(;一_一)

次話は100%物語の核心に相当する部分(これはもう避けれない)です((+_+))


残念な事に暇が全くないので次話の投稿は今のところ未定です(;一_一)

早く仕上げるつもりですが、皆様に読みやすく分かりやすい物を目指して思考錯誤する予定なので、やはり気長に待ってもらえると嬉しいです(^^)


それでは、次話も是非読んで下さいm(__)m

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