木花開耶物語8話 C
久しぶりの投稿です(>_<)
書き方を戻しました(;一_一)
人からは面倒くさい書き方とか、面倒な言い回しとかよく言われますが、自分的にはこれが一番書きやすいと言いますか、しっくりくると言いますか……(^_^;)
まあ、諸事情諸々で遅れましたが一応2話同時投稿です(^_^)v
是非読んで下さいm(__)m
――二XX六年六月十日 早朝
深い闇の中で目が覚めた。
(ここは……ああ、夢の中か)
身体が徐々に闇の深奥へ堕ちていくのを他人事のように眺めた。
(ふぁあ、眠いや。少し……休もうかな)
身体を胎児の如く丸め、羊水の様な闇へと身を預けた。
――おいおい、何処行くんだよ?
遠く後方から、そんな声が聞こえた。
耳を塞ぎ、再び眠りに就く。
――なあ、そのまま堕ちてって何処に着くと思う?
直接頭に響くその声に、皮肉混じりの回答をする。
「さあ、僕は静かに寝れれば何処だろうと構わない」
――そうかよ。じゃあ、お前も――ニニギを見捨てる訳だな?
(ニニ、ギ……? 頭が、痛い……っ)
頭の中を掻き乱される衝動を覚える。
何故か、その言葉が引っ掛かる。
何も思い出せないのに、身体が覚えてる感覚。
(ああ、確か……僕は――彼女に会いに……)
――思い出したか? んじゃ、後は大丈夫だな……
振り返ると、そこには僕と同じ顔をしているけれど決定的に何かが違う僕が居た。
すると、彼の来た道が一筋の光によって照らし出された。
――アイツを……ニニギを頼むよ。アイツさ、無茶ばっかりするからさ
僕のした事の無い笑顔を浮かべながら彼は、闇へと向かった。
擦れ違う瞬間、僕は彼に肩を押された気がした。
何故か僕はそれが、バトンタッチの様に思えた。
そうして、僕は光へと歩みを進めた。
――同刻 住宅街跡
「佐久夜様もああ仰って居ったし、ここは一つ試してみない手はないじゃろう?」
「な、な、何を不埒な!? いくら正当化しても寝込みを襲うなんて……」
「よく考えよ、鈿女。此奴が起きている時にさせてくれると思うか?」
「そ、それは……」
「愚図々々してると此奴が起きてしまう」
「あっ、瓊瓊杵様!?」
ウズメの言葉も聞かずニニギは開耶の傍らへと座した。そして、顔を覗き込むように近付けたその時、思いも寄らない事態が発生した。
――ガバッ
「んんっ!?」
「あっ……」
「……ん? んん? ~~~~~~~~っ!!」
その予期せぬ状況に誰もが驚いた。そう、当の本人達も、だ。その瞬間、開耶の脳はニニギと初めて出会った時の事をフラッシュバックさせた。
それは――接吻
一瞬の、それも不可抗力(一度目は故意かもしれないが)とは言え、二度目の彼女とのキス。しかし残念な事に二回とも、甘酸っぱい思いも喜びも抱けなかった。
何故、こんなにもタイミングが悪いのだろうか?
シチュエーションとか、その場のノリとか、両者の同意とか、そういった類のものが微塵も無い唐突な出来事にそんな思いどころか、僕は謝罪の気持ちで胸が一杯である。
そんなこんなで現在は、距離を置いて住宅街跡に居る。
(あれ? 何で僕、住宅街跡に居るんだっけ?)
今の今まで特に気にもしていなかった事だけれど、よく考えると起きる以前の記憶、つまり今日の朝……あれ、もう朝だ。って事は昨日の朝から今までの記憶が曖昧かもしれない。
(あれ? 昨日、学校行ったっけ?)
クッシーや玉ちゃんに会った覚えがない。
(もし、学校に行ってなかったとして……どうして行かなかったのか――それが重要な問題だ)
果たして、目の前の二人はその辺りの事情を知っているのだろうか。いやいや、早まってはいけない。そもそも、何て聞くつもりだったんだ。
――すみません、昨日僕が学校行ったか知ってますか? もし行ってないなら欠席の理由とかも分かりますか?
我ながら馬鹿な質問だと思う。そんなのは「僕の名前と住所教えてもらえますか?」と初対面の人に尋ねるのと同等ぐらい不思議且つ理解できない問いかけだろう。
そんな些細なことに頭を悩ませていると、ニニギに連れ添っていたウズメさんがこちらにやって来た。
「先程は(主に瓊瓊杵様が)取り乱してしまって申し訳御座いませんでした」
「い、いえ。僕の方こそ事故とは言え、あんな事をしちゃって……ニニギさんの方は落ち着きましたか? 直接、謝りたいんですけど」
その言葉が意外だったのか、ウズメさんは目を丸くした。それもその筈だ。僕も、僕の口からこんな言葉がすらすらと出るとは思ってもいなかったのだから。
妙な間が空いて、ウズメさんが返答する。
「はい。大分、落ち着かれましたのでもう近付いても宜しいかと」
「そうですか、じゃあちょっと行ってきます」
そう言って僕は立ち上がると、少し離れた位置でそっぽを向いているニニギの元へと向かった。
「ニニギさん? あの、ちょっと話が……」
「ちょっと待て、お主。その声で『ニニギさん』と呼ぶな」
「えっ?」
理解不能。その声で、って何なんだろう。生まれてこの方、声について指摘を受けたのは今日が初めてでこれから先、そう何度も無い体験だと思う。
もしかして、電話越しだと通常よりも声が低く聞こえるから、気持ち少し高めで話すと相手に伝わりやすいですよ、とかいうあれの事だろうか。そうだとすれば、僕の声が低すぎて聞き取り辛く、何か別の言葉と聞き間違えるから止めろ、と。いや、待て。前提が間違っている。
それとも、自分に聞こえる声と相手が聞く声には多少のズレがあります、という事だろうか。
思考を巡らせていると、突然後ろから助け舟が出される。
「瓊瓊杵様、御言葉が足りていませんよ。開耶様が困惑為さって居ります」
声の主は言うまでもなくウズメさんだった。まあ、この場にこの三人以外居ないのだから当然と言えば当然なのだけど……突拍子もなく現れるのは心臓に良くない訳で。
「むぅ……じゃから、佐久夜様の声で『ニニギさん』と呼ぶな」
「私にではなく、開耶様の方を向いて仰ってください」
何度も提言しているけれど、彼女達の言う『開耶』と『佐久夜』の違いは文字を書く以外、認識不可である。アクセントの違いもないし、それについての説明などされた事も無いのだが、定着しつつある今日この頃。早めに聞くべきなのだろうが、どうもそういう機会に恵まれていないらしい。
例えば、数学で昔やった公式を大分経ってから使う時になって、忘れてしまっているにも拘らず、授業は勝手に進むし、周りのみんなは覚えてるらしく訊き辛い状況というのを想像してくれれば分かりやすいだろう。
聞くは一時の恥、知らぬは末代の恥。なんて諺があるけど、現代社会において知らない事を訊くというのは相当な勇気が必要なんですよ。それが原因で就職とか困っている人が山のように居るんだから、間違いないだろう。
「瓊瓊杵様、御・言・葉・が足りませんよ~?」
すると痺れを切らした、笑顔だけど尋常じゃない圧迫感を放つウズメさんがニニギに更なる説明を催促した。それがどうして、僕の後ろからなのかはさておき、これで当初の問題である『ニニギに話しかける事を拒絶される』が解決するのならそれに越した事はないのである。
「その声……佐久夜様の声で、わ、私を呼ぶ時は『ニニギ』と呼べ」
「……そっすか、分かりました」
その程度の事でいいのなら甘んじてそれを受け入れよう。まあ、その程度と言いつつも、女子を呼び捨てるのは初めてだったりする。しかし、それで全てが……とりあえず、現状の問題が解決するのだ。
「あのさ。ニニギ、話が……」
しかしながら、現実はそんなに甘くなかったとさ。
「ば、ば、馬鹿者!! 突然、呼ぶ奴があるか!? まだ心の準備が……っ~~~~~!!」
と、何故か顔を真っ赤にしたニニギは、それから十数分、呼んでも口を利いてくれませんでした。
ここまで読んで頂きありがとうございますm(__)m
書き方が変わって読み辛いという人も居るかもしれませんが……次も、その次もこの書き方で書いちゃってるんで……(;一_一)
さて、話は変わりますが、私のリアルが忙しいあまり投稿に時間がかかる今日この頃で御座います(>_<)
願わくは読書の方には気長に待ってもらえると幸いです(^^)
それでは次話も是非読んで下さいm(__)m