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旧・木花開耶物語  作者: crow
第一章
21/40

木花開耶物語8話 PROLOGUEのみ

こんにちわ、もしくはこんばんわ(^O^)/

少々長めのPROLOGUEが完成したので掲載します(●^o^●)

面倒かもしれませんが、8話の本編に関わってくる内容なので是非最後まで読んで頂きたいです(>_<)

これ以上書くと、ネタバレをしそうなので、それではよろしくお願いしますm(__)m

PROLOGUE

――遠い昔、流れる事のない時の中で……

 古い屋敷の一室で、黒髪赤眼の少女は目を覚ました。

「むぅ……鈿女うずめ、鈿女よ」

 布団より上半身だけ起こした少女は開口一番、侍女を呼んだ。

「はい、此処に」

 すると、部屋の闇より音もなく少女のかたわらへとその者は現れた。

「……此度こたびの予定は何じゃ?」

 目をこすりながら尋ねる少女に、顔を伏せながら侍女が淡々と予定を述べた。

「はい、瓊瓊杵ににぎ様は今から婿殿になるお方とお会いになります。到着後の予定は御二人でご自由に決めてよろしいようです。尚、お迎えは明日の正午となっております」

 最後まで聞いた少女の顔が曇っていたのは、誰の目にも明らかだった。

「むぅ……初めて会う相手と一夜過ごせと? はあ、父上は何を考えてるのじゃ? 間違いでも起きたらどう致す積りじゃ……」

 怒りと呆れの入り混じった愚痴を吐き捨てると、黙認していた侍女より意外な言葉が告げられた。

「はい、御父君おちちぎみ様もそれが心意かと思われます」

 そんな気がしていた少女は、改めて聞かされる親の心意に怒りを覚えた。

「ふん、もうよいわ! 其奴そやつの家まで行ったら早々に別居じゃ。流石に空いた部屋の一つくらいはあるじゃろ?」

 すると、今まで淡々とした調子だった侍女が言いよどんだ。

「そ、その事なのですが……」

 侍女の急な変化に少女は焦れ、その先を促した。

「何じゃ? 勿体(ぶる)でない鈿女。申してみよ」

「は、はい。実はですね……」

 意を決して侍女が語った内容は、少女の想像を絶するものだった。

「は? 今から行くのは其奴の家ではないじゃと!?」

 侍女が語った内容は、端的に言えばそんな感じだった。

「は、はい。何でも、その殿方はもう随分と長い間ご実家には戻っていらっしゃらない御様子で。会いたいなら指定の場所に来い、との事です」

「ふん、強情で身勝手な奴じゃな。それで、その指定の場所とは?」

半生半死桜樹はんせいはんしのおうじゅの下です」

 それを聞いた少女は、すぐにどこか理解した。

「ああ、あの珍妙な桜の下か……。ふっ、其奴はどこぞの浪漫主義主張か、詩人の類か?」

「い、いえ。その様な方ではないかと」

「まあ、よいわ。それで其奴、名は何と申す?」

「殿方の名は――木花佐久夜このはなのさくや様で御座います」

「木花、佐久夜? ……ぬ」

 小声と唐突な返事に、侍女は少女の言葉を聞きそびれてしまった。しかし、何か言った確信のある侍女は少女へと尋ね返した。

「はい? 瓊瓊杵様、何か仰いましたか?」

 侍女が少女の身体が小刻みに震えている事に気づいた。しかし、この部屋に寒さはない。故にそれは……侍女が何の震えか悟ったその時には既に遅かった。

「そんな奴、知らぬわー!! 何故なにゆえ、私が出向いてやれねばならんのじゃー!! しかも、そんなどこぞの馬の骨と知らぬ無しと木の下で一夜を明かせと!? 嫌じゃ、こんな縁談取り消して白紙じゃ!」

 度重なる不満の数々に、ついに少女の感情が爆発した。そんな後先の事を考えない言動は、侍女の知る少女の普段の優雅さを見事に消し、逆に小柄な身体から連想される子供っぽさを際立てた。

「瓊瓊杵様……。とりあえず、お会いになるだけでもお願いします」

 けれども、そんな少女に侍女はまるで取り乱す事なく切願した。

「何じゃ? 鈿女は私に其奴と結ばれてもらいたいのか? もう私の世話は面倒か?」

 そんな侍女の態度に少女は八つ当たりの如く、侍女を問い詰めた。

「いえ、その様な事は決して! ただ……」

「ただ、何じゃ?」

 すると、侍女は目蓋を閉じて思い浮かべるように答えた。

「私はその婿殿とこの約束を取り次ぐ際、一度お会いしましたが、佐久夜様は瓊瓊杵様がお考えになっている様な方ではないと思います」

 言い終えると同時に侍女は目蓋を上げ、真っ直ぐに少女を見つめた。侍女の嘘偽りない告白に少女は、場都合が悪そうに目を逸らした。そして――。

「ふ、ふん。鈿女がそこまで推すのなら仕方ないの」

 と、小さく呟いた。

「えっ? それでは……」

「そ、それにじゃ。この縁談を断れば、取り次いだ鈿女も父上に怒られるしの。そんなのは、後味が悪いわ。とりあえず、会うだけじゃ。その後は勝手にする」

 驚く侍女に少女は付け加えるように早口で急な心変わりの理由を言った。そんな少女の様子が可愛くて、侍女の顔に少し笑みが生まれる。

「ふふっ、瓊瓊杵様――本当にお優しい方ですね」

 侍女の口をいて出た言葉は、正に本心だった。しかし、それを少女は受け入れられなかった。

「……ふん、世辞はよいわ。ほれ早く支度をせよ」

「はいはい」

 少女の不遜ふそんな態度を特に気にする事なく、侍女は軽い調子で返事をすると現れた時と同様、音もなく部屋より消えた。

 侍女の気配が完全に消えたのを確認してから、少女は呟いた。

「私が……優しい……?」

 少女は先程の侍女の言葉を頭の中で繰り返した。

『瓊瓊杵様――本当にお優しい方ですね』

(鈿女は何も分かっていてないのだな。本当に優しければ、こんな風に人を従えたりはしないし、自分の予定も自分で把握し、自分の相手も自分の力と意思で決める。

――私は何も優しくない)

 むしろ、自分とは縁遠い存在。少女にとって、優しさとは見えているのに決して触れる事の出来ない結晶の様な物。

「木花佐久夜、か」

 不意に、少女の脳裏に先の話題に上がった人物が浮かぶ。それは少女の防衛本能が、これ以上この話題を続ける事を拒否した結果だろう。しかし、少女は疑問を抱いてしまう。

「其奴はこんな私を受け入れてくれるのだろうか……?」

(もし、受け入れてくれたとしてもそれは私が『天孫てんそん』だからか。それとも事情を知って尚、哀れみの情で受け入れるのか)

「どちらにしても、私が惨めな事に変わりないな」

 自嘲じちょう気味に呟いた言葉が、頭の中で延々と木霊こだました。


――一方、半生半死桜樹の下

 樹に背を預け、足を前に放り出した体勢の男が一人。丁度、欠伸あくびをした。

「はあーぁ、眠ぃなあ」

 青を限りなく暗くした黒に近い頭髪、性格を表したかのような雑に伸びた髪型。それとは真反対に美しい澄んだ空色の瞳と、淡い緑地に桜色の花をあしらった着物をまとった青年。それが――

「佐久夜様」

 そう、少女の婚約者候補・木花佐久夜だった。

「よう、葦津かやつ

 青年よりそう呼ばれた女性は、短く切り揃え整えられたつやのある黒髪と、濃い青地に淡い黄色の水玉模様が入った着物を纏って、最初から其処そこに居たかの如く青年の隣にひざまづいていた。

「珍しいな、お前が此処に来るなんて。何か用か?」

 まるで、緊張感のない青年に女性が少し呆れてから用を語り出した。

「本日『天孫』様が此方こちらにいらっしゃるとお聞きしてりますが……その様な御格好でよろしいのですか?」

 女性の言うその様な格好とは、地べたに直接座った事で土に汚れてしまった、元は優美だったが現在は残念なことになっている着物の事だった。その視線に気づいた青年が着物の汚れをはらいながら答えた。

「って、言われてもなあ。家、帰るのも面倒だしよー……まあいいだろ、これで」

 すると、女性は静かに立ち上がり、身をひるがえした。そして――

「承知致しました。御父君様と姉君あねぎみ様にはそう伝えます」

 そう、言い残して去ろうとした。しかし、それを青年が止めた。

「ちょっと待て、葦津。どうして、その二人に連絡する?」

 その言葉に、女性は再び身体を反転させて心底、面倒臭そうに応じた。

「佐久夜様、御無礼を承知で申しますが、説明が要りますでしょうか?」

「ああ、分かりやすく頼む」

 言いながら青年は自分の隣を叩き、座るようにジェスチャーする。それに女性は、着物が汚れるので、と隣には戻ったが座りはしなかった。

 そして、淡々とした口調で説明し始めた。

「それではこの度の縁談ですが、佐久夜様は何か御遣おやりになられましたか? 何も致して居りませんよね? それとも、佐久夜様は『天孫』様からの縁談が何の苦労もなく降って湧いてくると御思いになられては……居りませんよね? つまり、この度の縁談ですが御二人の御助力によって固まったので御座います。故に、その動向は逐一、御二人に報告するのが筋で御座いましょう?」

 全くもって女性の言う通りだった。その為、青年に反論は無かった。しかし、怒りは在った。

(ちっ、やっぱり絡んでやがったか。薄々、そんな気はしてたけどな。葦津が何も言わねぇから、『天孫』の暇潰し相手にでも選ばれたのかと思ってたぜ)

「そうかよ。そういう事なら、仕方ねえ」

 諦めにも似た調子で言う青年を見て、女性が喜びを前面に出して尋ねた。

「佐久夜様、御実家に戻られる気に……」

 どうやら、青年を実家に戻すのが女性の役目だったらしい。それに気づいた青年は、女性が言い終える前に宣戦布告の様に言い放った。

「葦津、家からこれよりしな服を持って来い」

 一瞬、女性は自分の耳を疑ったが、笑みを浮かべた青年の顔を見て確信した。

「……かしこまりました。そのむねしかとお伝え致します」

 言葉の節々から女性の怒りが伝わったが青年は軽い調子で、よろしくな、と返した。

 そうして、女性は瞬く間に青年の前から姿を消した。

「へっ、自分達の思い通りに事が進むと思うなよ、クソ親父」

 もう青年以外、誰も居ない樹の下で静かに強く、そう呟いた。

「それにしても『天孫』ねえ。俺なんか選んで何考えてんだろうなぁ……」

 しかし、青年にとってはそれが最大の謎だった。

最後まで読んで頂きありがとうございましたm(__)m

さてさて、どうでしたか?(^^)

今回の新キャラとしては、葦津さんと(一応)木花佐久夜くんですかね(^_^)v

葦津さんは何か前回の「たかなし」とキャラ被ってない?って感じ(>_<)

まあ、その辺りはキャラ紹介で明確な違いを……ね(-_-;)


そう言えば、キャラ紹介が一向に増えてない(;一_一)

鈿女さんねー、スリーサイズが決まらなくてねー(嘘です)((+_+))

近々、更新します……たぶん……13日から忙しいから、それまでには何とか間に合わせたいと思っています(^^ゞ

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