木花開耶物語7話 A
今回も戦闘シーンは避けれたけど(いつになったら書くのやら)、非現実的描写があり、大変でした(+o+)
なんやかんやで結構続いてますが、まだ第一章なんですよね……と言いますか、まだ一週間経ってないという驚きの時間差(?)(;一_一)
まあ、今回も長いお話ですがどうぞ最後まで読んでください<m(__)m>
「垣間見た日常との境界線」
――二XX六年六月九日 とある路地
「やはり、瓊瓊杵様絡みですか……」
呆れにも似た冷ややかな視線を注ぐ鈿女が、小声で呟いたのを瓊瓊杵は聞き逃さなかった。
「ほう。やはり、とは何じゃ? 何か言いたそうじゃの、鈿女?」
「いえ、滅相も御座いません(棒読み)」
手慣れた風に返す鈿女は、何故か得意気だった。そして瓊瓊杵は何故かそれ以上言い返さなかった。まさかとは思ったが、彼女にも罪悪感の類が在る様だった。つまり、瓊瓊杵はそれなりに責任を感じている、という事だ。それなら、それを悟った鈿女の得意気な様子も納得がいく。又とない、鈿女の優越感に浸れる機会だった訳だ。
しかし、それも束の間の優越感だった。瓊瓊杵は即座に話題を変えた。
「それにしても、あの女子。何処かで見たような……何処じゃったかの?」
「本当に覚えていらっしゃらないのですか? まだ此方に来て、そう日は経ってないかと思われますが……」
「何じゃ、私の記憶に難癖をつける気か?」
「いえ、そういうつもりでは在りません。ただ……」
言い淀む鈿女は、チラチラと現れた女性を確認していた。その不可解な仕草に、何か見当でもあるのか、と瓊瓊杵は尋ねた。
「いえ、本当に覚えてらっしゃらないのですね?」
「だから、先程からそう言っとるじゃろう」
「失礼ですが、瓊瓊杵様。ならあの方は何故、貴女様に対して尋常でない怒りを抱いているのですか?」
言われて見ればその通りだった。突如として現れた女性の、第一声こそ軽そうな物言いだったが、改めてその顔を見ると眼が全く笑っていない。むしろ、その瞳からは殺気を感じる。彼女の背中から禍々しいオーラが立ち上っていた。
ここまでの事を相手に思わせておいて、当の本人は知りませんなど在る訳が無い、それが鈿女の出した結論だった。
「確かにその通りじゃが……どうも腑に落ちぬ」
まだ文句を言う瓊瓊杵だったが、それに対しては鈿女も肯いていた。
「はい、私も一つ気になる事が……」
二人は顔を見合わせて同時に言う。
「「ニギハヤヒ(様)」」
果たして、その単語の意味とは……? そして現れた女性の正体とは……?
――同刻 木花家から数百メートル地点~とある路地付近
「はっ、はっ、はあっ」
僕は、走っていた。いつもは早歩き程度で抜ける小道を全速力で走っていた。幸いな事に小道に人は一人も居なく、僕の渾身の走りは誰にも見られる事はなかった。
――あれ? 何でそんな事、気にしてるんだ……
いつからだろう、本気になるのをやめたのは。真剣に取り組むのが馬鹿らしくて笑えたのは。必死で何かを成し遂げるのがカッコ悪く思えたのは。いつからだっただろう。
そうして今、僕がやっている事は、真剣でも、必死でも、本気でもないのだろうか?
「……違う。友達がピンチの時に、ヘラヘラ笑ってるのは利口でも冷静でも無い。ただの弱虫だ」
自問自答。自らの中に問いが在るのなら、自らの中に答えが在るのは必然。辿り着けるかどうかは、自分次第だ。だから、僕は決めたんだ。思い過ごしかもしれないけど、この目で彼女の安否を確かめる、って。それが、高校生になって初めて学んだ事。他でもない親友に教えられた当たり前で、最も大切な事。
ふと視線を上げれば、住宅街跡はすぐそこだった。あとは角を曲がって真っ直ぐ進むだけで到着だ。
きっと、彼女はこの先に居る。そんな気がした。けど、僕は心の片隅で彼女が居ない事も同時に願っていた。僕の見た変な夢が現実にならない事を、この悪い予感が的中していない事を願わずにはいられなかったからだ。けれども、やはりどちらかが問いの答えなのだ。そして、僕等は結果がどうあれ、それを受け入れなければいけないのだ。たとえ、それが残酷なハッピーエンドでも……。
――同刻 同地
「あー、お取り込み中、悪いんだけどさ」
と、瓊瓊杵と鈿女の会話に女性が割って入った。まだキーワードの謎が解けていなかったが、女性の言動を無視する訳にもいかず、二人は視線を女性へと移した。
「話の通じそうな人で良かったわ~ もし通じなかったら実力行使に移るところだった♪」
平然と物騒な事を言う女性に、顔色一つ変えずに瓊瓊杵は尋ねた。
「お主の目的は何だ? 此方には狙われる理由は在っても、話し合い程度で解決する問題を起こした覚えはないぞ」
正々堂々、白を切って出るのだった。隣の鈿女は深い溜め息を吐いて苦笑いした。当の本人は真っ直ぐに女性を見据えていた。宛も自分に非は無いと言うかのように。いや、実際言ったのだが……。
「あはっ。アンタ、面白いね♪ でも、ホント……バカだわ」
――ギギッ!!
言った途端、不気味な音と共に女性の周りの空間が歪み出した。その光景は、例えるのなら空間が笑っている様な、何とも形容し難かった。
そんな状態が数秒続くと、空間の歪みは勝手に収まった。その間、俯いていた女性が歪みが終わると同時に顔を上げた。その口元には妖艶な笑みが浮かんでいた。
「今の自分の立場、分かってんの? ココは上でも下でもない、内側よ。アンタの常識はココでは通じない。残念だったね。ぱなく強いらしいけど、ココでは私の作った私のルールに無理矢理にでも従ってもらうから♪」
空間が歪んだ説明と、この場所がどういった空間なのかを省略気味に女性は語った。それを黙って聞いていた瓊瓊杵が、鼻で笑い一蹴した。
「ふん、軽口女が。そんな性格では男が寄りつかんぞ? 女子はもっとお淑やかで優雅に振舞わねばな。そう、正しく私の様に」
それが、不利だと見て、体験して、尚のこと説明までされてから、瓊瓊杵が発した第一声だった。そう、まるで現状を理解していないのである。
「瓊瓊杵様、お言葉を慎んで下さい! まだ相手の手の内が分から……」
流石の鈿女も黙認し兼ねたらしく、それ以上瓊瓊杵が女性への罵詈雑言を重ねる前に止めた。けれども、もう手遅れだった。また、あの音が鳴り出した。
――ギギギギギッ!!!!
先程の歪みよりも激しい変化が女性の周りで多発する。これを擬人的に表現するのなら、正に激怒が最も相応しいだろう。
「アンタって奴は……アンタって奴は……アンタって奴は!」
今まで抑え込まれていた感情が爆発しかの如く、女性は表情を歪めた。それに呼応する様に空間が大きく揺れる。すると、女性の右側に右回転の歪みが生まれ、同時に女性の左側に左回転の歪みが生じた。その二つの歪みが魅かれ合う様に接近し、更なる揺れを起こした。
「やっぱ一回、アンタは痛い目に遭うべきなのよ。そうすれば分かるわ。誰の男に手を出したのか、ってね」
少し冷静さを取り戻した女性は、怒りから歓喜へと顔を変えていた。そして、訳の分からない独り言を淡々と唱えた。
凄まじい音と揺れる空間の中で、何とか女性の呟きを聞き取れた瓊瓊杵が懲りずに悪態を吐いた。
「この大馬鹿者めが……。私に喧嘩を売り、剰え、刺し違えて私に勝とう等とは……滑稽を通り越して無様だな、端女よ」
至って冷静な口調の瓊瓊杵、まさか勝算でもあるのだろうか……? 少なくとも隣で聞いていた鈿女には、そういう意味を含んでいる様に聞こえた。
(けれど、いくら瓊瓊杵様でもこの状況は……)
徐々にその距離を縮めていく左右の歪みと、依然として鳴り止まない轟音に顔を顰めつつ、鈿女は瓊瓊杵が何をするのか静かに見守る事に徹した。
そんな緊迫な雰囲気とは反対に、女性の顔は引き攣っていた。先程までの優勢的な笑みはそこに無く、困惑が浮かんでいた。
(さぁてと、どうしよっかな……。勢いで始めちゃったけど、止め方、決めてなかった……)
女性も瓊瓊杵と同様、至って冷静に何の策も無いのだった。
これでは、どちらが馬鹿なのか……。いや、どちらも相当な馬鹿だ。
――私の能力について少し解説――
はいはいはい、謎の美少女こと――です! えっ? 名前は出しちゃダメ? 何で? まだ、本編で明かされてないから、って……私、関係ないし~ は? 出番削るぞ、って脅し? 脅す訳ですか? はいはい、分かりましたよ。その代わり、物分かりの良い――様は快く引き受けてくれましたって書きなさいよ? OK? じゃ、気を取り直して……。
はいはいはい、謎の美少女こと・Mです! あっ、決してマゾではありませんよ~ と、それは置いといて、ココでは私の能力(と書いて「ちから」と読む)について少しだけ解説してあげるコーナーです(パチパチ)♪
まず能力の発動にはいくつかの条件があります。一つ目――と――を決める……って、また~? もういいや、二つ目その中だけで通用するルールの設定(内容が矛盾しなければ何個でも可能らしいけど、基本的に二つか三つぐらい)。このルールだけど、絶対的執行力ってのを持ってて簡単には抗えないんだって。けど、もし破られたら私の能力によって起こった事象の全てが取り消されちゃうんだ。要するに……まあ、追々説明するよ。三つ目は空間の――と――に伴う相応の――の消費……はあ、これじゃ何言ってるかさっぱりだよ。
つーか、説明しろって言うからわざわざ説明してんのに、規制ばっか入って説明になってないんだけど。結局、これって意味あるの? さあ、って投げやりな……。
とりま、私の能力は不明って事で。だって、分かっても対処のしようもないしね♪ そんな訳でこれにて説明終了! 本編に戻るよ♪
最後まで読んで頂きありがとうございました<m(__)m>
うーん、長かった(>_<)
短くしよう、とは心掛けているのですがついつい説明を入れると長くなってしまいます(;一_一)
まあ、嘆いても仕方がないので反省会終了(^^)
次回は、いや、次回も戦闘には入ら……ないかな(;一_一)うん、入らない。
でもでも、主人公復活で、物語も急展開の予感って感じですヽ(^o^)丿
と、次回予告もこの辺にして、、、次回も是非読んで下さい♪ by crow