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旧・木花開耶物語  作者: crow
第一章
15/40

木花開耶物語6話 D

何とか戦闘パートを避けれた(;一_一)

と言う訳で、少々面白みに欠けるかもしれませんが、いつもの事なのでお見逃しください(>_<)

最近、顔文字を覚えまして多用しています。鬱陶しかったり、間違ってたらスミマセン

それでは、是非、最後まで読んで下さい(^^)

――二XX六年六月九日 夕方

 太陽が西に傾き、そろそろ今日の終わりが近づく時間帯。相も変わらずゴシックロリータな服に身を包んだ瓊瓊杵ニニギは、拠点への帰路を上機嫌で歩いていた。その後ろを飾り気の無い着物をまとった鈿女ウズメが、保護者的な面持ちで付いていた。

「瓊瓊杵様、そんなに浮かれていては転んでしまいますよ」

「鈿女よ、これを浮かれずに居られるものか」

 そう言って、瓊瓊杵は道の角まで走って行ってしまった。その時の表情は、まるで興奮を隠しきれない子供の様だった。そんな瓊瓊杵の仕草に、鈿女はつい笑みを零してしまった。

(瓊瓊杵様ったら、本当に嬉しかったのですね……)

 そんな事を考えながら、鈿女は先に曲がって行った瓊瓊杵の後をゆっくりと追った。そして丁度、鈿女が曲がり角を曲がると、先を行っていた筈の瓊瓊杵が静かに待ち構えて居た。

 しかし、それはとてもおかしな光景だった。確かに瓊瓊杵はそこに居たが、身体の向きが鈿女の方では無く、進行方向を向いたままだった。それはまるで進むのを躊躇ためらう様な、そんな印象を鈿女は受けた。

「どうされました、瓊瓊杵様?」

「…………」

 鈿女の問い掛けに瓊瓊杵は沈黙を貫いた。そんな瓊瓊杵には先程の浮ついた気配は既に無かった。それを即座に察した鈿女も静かに思考を切り替えた。

「……どちらの方角に?」

 氷の様な鋭く冷めた低い口調で、鈿女は瓊瓊杵の背に尋ねた。

「…………」

 しかし瓊瓊杵はまた何も答えなかった。そこで鈿女は、完全に主の意図が掴めなくなってしまった。

(敵襲では、ない? それでは一体……?)

 鈿女は思考を凝らし、何とか瓊瓊杵の考えに追い付こうとした。しかし、その思考は主の口より発せられた意味深な言葉によって中断させられた。

「……気付かぬか、鈿女?」

 待ち望んだ返答は、角を曲がる前とは一八〇度変わった低い声だった。

「はい? それはどういった意味で御座いましょうか、瓊瓊杵様?」

 だが、鈿女には瓊瓊杵の言った言葉の意味が、冗談や形式的作法などを抜いて本当に理解出来なかった。そんな鈿女に対し、瓊瓊杵は呆れて溜め息を吐きたいところだったが、事態は急を要した為、小言や説教は省き、用件だけを簡潔に伝えた。

「敵じゃ。方角は分からん」

 瓊瓊杵の唐突な現状報告を鈿女は静かに受け入れた。そして瓊瓊杵に分からなかった敵の位置を知るべく、神経を研ぎ澄ました。しかし、敵の気配どころか自分達以外の気配さえも察知できなかった。

 すると、瓊瓊杵が付け加えるようにしてさらりと意外な言葉を口にした。

「あと、分かっているのは――此方こちらの歩が悪すぎるという事だけじゃ」

 この言葉を聞いた鈿女は、大変驚いた。敵の位置が分からない事よりも、瓊瓊杵が弱気な発言をする事の方が、何よりも増して鈿女を驚愕させたのだった。

(瓊瓊杵様、如何どうしてしまったでしょう? こんな瓊瓊杵様、見た事が無い……)

 その気持ちを言葉にこそしなかったが、鈿女の内心は相当な荒れ模様だった。今までに無いケースにどんな対応をすべきなのか、何と声を掛ければ良いのか、今の自分に解決できる問題なのか。鈿女の頭の中では、そんな疑問や不安が一斉に答えを要求するので、混乱状態となってしまった。

 これはオーバーなリアクション、と思うかもしれないが今までの瓊瓊杵の行動を振り返ってほしい。開耶と出会い頭にキスをしたり、駅の一件では怪我をしていながらも敵に単身で挑んだり、そして今回の堂々とした学校潜入。この様な行いから、彼女が大胆不敵且つ思慮に欠けている事は明白だ。そして、そんな彼女だからこそ敵の姿が見えない程度で臆したり、劣勢だと計ったりする筈は無い。それどころか彼女の場合、周りの建物を虱潰しらみつぶしに破壊しながら敵をあぶり出す、という強行にさえはしらないとは言い切れない。

 しかし、現実は違った。彼女の顔に勝利の色は無く、ただ追い詰められた焦りの色だけがうかがえた。こんな彼女の顔を鈿女は見た事があるだろうか? 答えは否、断じて否だ。彼女の常に傍若無人な言動に鈿女がどれ程困らされた事か。それも考慮すれば、鈿女の乱れようも納得がいくだろう。

 少しの間が経ち、冷静さを取り戻した鈿女はある事に気がついた。

「瓊瓊杵様、少し宜しいでしょうか?」

「……何じゃ?」

「瓊瓊杵様の仰った通り、敵の気配はまるで掴めませんでした。しかしながら、この程度ならば充分に対処できるかと存じます、が……」

 そう、鈿女の気が付いた事とは、敵の正体や所在が分からない時の正攻法だった。(もっと)もらしい正論を言ったつもりの鈿女に、瓊瓊杵の思いがけない言葉が返された。

「何じゃ、まだ気付いてらなかったのか?」

 それは、角を曲がってから初めて言われた言葉の本当の意味だった。そして当然、鈿女は今回も前回と同様、本質的な意味を理解するには及ばなかった。それはひとえに彼女の理解力が悪い訳でなく、瓊瓊杵の説明省略にも非は在った。そう悟ったのか、瓊瓊杵は溜め息混じりに省いた説明を語るのだった。

「はあ、良いか? 今、私達は敵の手中に居るような状態じゃ。差し詰め、敵の作った空間、もしくは世界そのものを創り変えたのか……まあ、そんな中に私達は居る。いつからだと思う? そう、あの角じゃ。アレが異界の入り口だったのじゃ」

 突然過ぎる暴露に思考が追いつかないなりにも、鈿女は少しずつ理解していった。

 まず、敵の確信的存在。今から何が起きても不思議では無い、という覚悟を胸に抱く。

 次に、敵の罠にはまった事。しかも、前を行く瓊瓊杵だけならまだしも、自分まで一緒に嵌ってしまうという失態に弁明の言葉も無かった。

 最後に、敵の目的が確実に自分達である事。もし、自分達がどういう存在か知っているのなら即刻、罠を解き逃がす筈だ。間違いなく、こんな小物な参加者に引けをとる瓊瓊杵様ではない。返り討ちに遭うのは目に見えている。それを態々《わざわざ》、沢山いる参加者の中で罠まで張って待ち伏せをするくらいなのだから、相当な恨みか因縁か……、それとも相当な馬鹿か無鉄砲なのか。何にせよ、此方の素性を知った上で挑んで来ていると見受けられた。

 すると、ある疑問が鈿女の頭に浮かんだ。

「瓊瓊杵様、少し宜しいでしょうか?」

 全く同じフレーズで始まる会話。聞き飽きたかの様に瓊瓊杵は、何じゃと返した。

「失礼ながら、瓊瓊杵様は此方に来てから他人様に恨みを買う様な事は致しませんでしたか?」

 彼女が疑問に思った事、それは敵がどうやって自分達を知ったか、だった。そして鈿女は(瓊瓊杵に関してのみ)恨みを買う以外に狙われる理由は無いと判断したらしい。

 当然の如く、そんな事を尋ねられてこころよく思う筈は無かった。

「鈿女よ。もしやお主、私が誰かに何か良からぬ事をして、こんな目に遭う羽目になった、とおもおて居るのか?」

「い、いえ、滅相も御座いません。今までの失言、どうかお許しください」

 瓊瓊杵の不機嫌なオーラを感じ取った鈿女は、その場にすぐ膝をつき頭を下げて詫びた。しかし、その程度の事で機嫌を直す瓊瓊杵ではなかった。

「ほおう、今までの失言を許せと……? そうじゃな、お主からの非礼は今日だけでも三つ程在るしの。その全部は流石に許せんな」

「はい?」

 鈿女の口から間の抜けた声が漏れた。それは言うまでもなく、瓊瓊杵の言った三つの非礼の内、二つが浮かばなかったからではなく、予想だにしなかった返事だったからだ。今回の瓊瓊杵の発言は常識的な判断から推し量るに、許しを乞う相手に対して使うものでは無かった。けれども、相手は瓊瓊杵だ。常識云々《うんぬん》が通じる相手では無い。それは誰よりも鈿女が理解している事だった。

「あの、その……三つの非礼とは一体……」

「鈿女よ、誰が発言を許した?」

「も、申し訳御座いませんでした!」

「誰が謝罪を許した?」

「…………」

 この分では、溜め息一つ吐くのにさえも彼女の許しが必要になりそうだった。

しかし現状とは裏腹に、鈿女は内心で胸を撫で下ろしていた。

(……瓊瓊杵様、いつも通りの振る舞いに戻りつつあって良かったです)

そう、彼女にとって瓊瓊杵にののしられたり、理不尽な事を要求されたりするのは日常茶飯事であり、弱気で内気で慎重な彼女の方が非日常である。

鈿女がこうなる事を図った訳ではないだろうが、結果として瓊瓊杵のモチベーションを通常時のものに戻せたのは、彼女の功績と言えるだろう。そして、それを無意識に行える鈿女の忠義心の高さをまた物語る出来事だった。尤も、瓊瓊杵に感謝の気持ちなど微塵もないのだが、鈿女もそんな見返りは求めていない。その点において、二人は良いパートナーと言えるだろう。

それからも、まるで二人は敵の手中に居るのを忘れたかのように会話を続けた。それを見て不快に思う者の存在など気付く筈もなかった。

「ちっ。アイツ等、自分達の置かれてる状況、全く理解してないや。はあ、ムカつくなあ……」

 そう漏らすと監視者は、言った言葉とは真逆な笑みを浮かべた。まるで、面白くなってきた、と言わんばかりの不気味で不敵な笑み。そして次の瞬間……。

――ビュュゥゥウ!!

 異界内において、異音に等しいその突風の様な音の音源へ、二人は同時に振り向いた。すると、其処には一人の女性が軽く手を挙げて立って居た。そして、女性は言った。

「――ハロー、ハロー。単刀直入に訊くけど、アンタハニギハヤヒサマノナニ?」

 と、言いながら女性が指差したのは……やはり、瓊瓊杵だった。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました<m(__)m>

6話は一応これで終わりです。

何かいきなり話が飛んでるような……と思われた方、正解です。話は飛んでいます。しかしミスではありません。続きと言いますか、間の話は番外編という形で掲載する予定です。

7話についてですが、まだ何も手をつけていないので掲載時期は未定です。活動報告やキャラ紹介を通じてお知らせはするつもりです。

それでは、読んで頂きありがとうございました<m(__)m> STORY by crow

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