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東方飛翔録  作者: 星屑○
26/28

二十五話:偽りの月、偽る心

戦闘パートが無い分必然的に人の心情を書くことが多くなりますね‥‥どうも難しいです。


相変わらず内容が濃いとは言えませんが、あまり気にしないのでしたら本編をどうぞ。


リグル、ミスティアと別れて十数分。俺達は再び人里のあるはずの地点まで来た。


「茜、やっぱり怪しいか?」


「うん、結界とは違うけどそれに近いような何かが人里全体に掛かってるね」


茜は人里のあった場所を見渡す。相変わらず何も無く見えるが、確かに人里はあるようだ。


「茜でも分からないのか、でも人里が消えた訳じゃないんだな」


「そだね。じゃあ、入ってみる?」


「え?入れるのか?」


「私の能力なら行けると思うよ。ちょっと付いて来て」


茜の後に付いていき、ある程度の高度にまで下がる。


「‥‥よし、ここからならなんとか行けそ」


「なら頼む」


「りょーかい、任せて」


茜はそう言って人里に掛かる結界に手をつけた。そして何かを抜くように手を引いて、結界に穴を空けた。

穴を覗きこむと、その部分だけ別の景色が見える。小さな光や家が見えるし、それは人里だろう。


「よっと。うん、これで中に入れるよ」


「何かあっさりとやったな‥‥」


「そう?結界が比較的に薄い部分に穴を空けただけだけど?それじゃ、行こうか」


茜はそのまま結界の穴に入っていってしまった。

いや、そんな簡単に言うけどさ‥‥結構凄いことしてるよな、茜。


「‥‥って、茜、待てって」











~結界内 人里~


「勢いで結界の中に入っちまったけど、中は普通なんだな」


結界の中の人里は、俺が知っている人里で、月の光が周りを照らしている。


「でも、これで人里が異変に巻き込まれた訳じゃ無いってのが分かったね」


「ああ、そうだな。少し見て回るか」


俺と茜は静まり返った人里を見て回った。日付が変わった頃だからだろうか、人里には俺たちが歩く音だけが響いていた。


「静かだね‥‥」


「皆、眠っているからだろうな。里の外では異変が起きてるなんて思ってもないだろう」


とはいっても、俺は詳しい異変の内容は聞かされてはないからな。実際、どんな理由で異変を起こしているのか、首謀者は何処にいるのかすら知らない訳だし。


「さて、別に変わったことは無いようだし、そろそろ出るか」


「もう良いの?」


「これ以上此処に居ても変わんないだろ?」


「‥‥」


後ろに居る茜を見ると、茜は俺が見たことの無い何処か悲しそうな顔が月の光に照らされていた。


「茜、どうしたんだ?」


「悠治‥‥前、私が言ったこと覚えてる?私は悠治が必用とされなくなったら‥‥ううん、違う‥‥私が必用じゃなくなったら私は消えるしかないの」


「‥‥どういうことだ、消えるって‥‥?」


「私が憑いてる理由は悠治の怪我を治すため。私は幽霊、悠治に憑くことで此処に‥‥悠治の傍に居られる。でも‥‥」


茜が口籠もったとき、俺はその先の言葉が分かる気がした。


「もうすぐ悠治の体は完全に治る、そうすれば私が悠治に憑く理由もなくなって私の存在は消える‥‥でも、それでいいの。これは罪滅ぼし、私は悠治を助けたい一心で幻想郷に来た‥‥私みたいにならないようにね」


「‥‥なんで、お前はそんなこと言うんだよ‥‥茜が罪滅ぼし?おかしいだろ!あの時、俺がお守りを無くさなければこうならなかったんだ!俺にもっと力があれば茜を死なせることはなかった!」


茜が言う言葉は分かっていた。だからこそ俺の口調は強いものになった。


「俺は、まだ茜になんもしてやれてない、恩を返すどころか助けてもらってばかりだ。だから、俺が茜に出来る事があるならなんだってする!」


「ありがとう、悠治‥‥じゃあ、せめて悠治の傍に居させて‥‥悠治には魔理沙がいるのは知ってる‥‥でも、私は悠治のことが好きなの‥‥!」


「え?今、なんて‥‥」


「‥‥ふふっ、本当の弟のようにって事だよ‥‥」


茜はさっきの悲しそうな顔とは裏腹にイタズラな笑みを小さく見せた。俺はその笑顔には安堵した。

それはそうだ、外の世界にいたときは長くとはいかないが、いつも遊んだりしていた。茜は俺を弟のように可愛がられてたし、俺も茜を本当の姉の様に慕っていた。


「何を想像したのかな、悠治君?」


「別に。唯、茜がもっと俺に頼って欲しいと思ってな。俺の持つ力は、大切なものを守る為のものだからさ。この刀も相手に刃を向けるものにはしたくない」


肩に掛かる刀を見せて茜に言う。俺の力には前に茜から言われてる。

『力の使い方を間違えれば、それは鋭利な刃物になる』

それは俺自身が一番分かっている‥‥筈だ。


「‥‥まあ刃物には変わらないけど、俺には必要な物なんだけどな」


苦笑しながら肩の刀を掛け直す。茜は少し心配そうな顔をしたが、またいつも見せる笑顔をする。


「悠治だもん、間違った事になんて使わないよ」


「言い切れるんだな、俺自身でも不安なのに」


「私の知ってる悠治はいつも誰かを第一に考えていて、人の命の大切さを知ってる優しい子だって‥‥」


茜から発せられた人の命という言葉は、俺の心の奥底で強く響く。


「っ‥‥」


僅かに歪めた顔に気付いてしまったのか、茜の顔からまた笑顔が消えかけた。


「と、とりあえず‥‥暗くなっても仕方ねえし、そろそろ行こうぜ。人里の人達に迷惑掛けちまいそうだし、な」


「そう‥‥だね。あはは、やっぱ私らしくないね。私らしく能天気な性格でいかなきゃ♪」


そう言っていつもの茜に戻った。

俺はそれじゃ、と、人里から出ようとしたとき、遠くから誰かに呼び止められた。


「そこで何をしている、っと、悠治君じゃないか。どうして君が居るんだ?」


「慧音先生?いや、それは‥‥」


何故か誤魔化す様に目を逸らしてしまった。当然の事だが慧音先生は俺の挙動を不思議がった。

別に、隠さなくても良い筈なんだが‥‥


「何か隠しているのか?それに、どうやって里の中に入ったんだ?外からでは見えない筈なんだが‥‥」


「あ、人里が見えないの知ってるのか。てことは、もしかして先生が?」


「ああ、それをやったのは私だ。今起きている異変に里の住人を巻き込ませたくはないからな」


そう言って慧音先生は空を見上げた。俺達もつられて見上げる。

さっきまで見上げていた雲一つない夜空が広がっている。そのせいか月が普段より大きく見えて少し眩しい。


「この異変、俺には何が起きるのか分からない。慧音先生はそれを知っていると?」


「たしかに、私が知っていることはある。だが、君が此処にいる意図を知りたい」


「別に大したことじゃないさ、私と悠治は人里が消えた理由(わけ)が、この異変に関係してるのか確認したかったんだ。外の結界みたいなのは、私の能力で抉じ開けて中に入ったのよ」


俺が言いかけた言葉を代弁するかのように茜が慧音先生に言った。


「でも、異変の影響じゃないってのははっきりした。でしょ、悠治?」


「あ、ああ‥‥」


「君は‥‥いや、確か君は東風谷茜君と言ったかな?」


「そうだよ、慧音先生。会うのは今回が初めてだね」


「先生はどうして茜を知っているんすか?」


茜は今日慧音先生と初めて出会ったと言った。先生に会ってる時は俺から出てくることはなかったし、独りでに出歩くこともない。


「なんだ、知らないのか。君の事だから耳にしてると思ったんだが‥‥っと、話が逸れてしまったな、この異変のことだったな」


「そうだった。この異変はどういうものなんだ?何が起きようとしているんだ?」


「正確な異変とは少し違うが、私の知る限りのことは話そう。此処じゃ周りに迷惑が掛かるだろうから私の家で説明しよう。こっちだ」












~人里 慧音宅~


それほど遠くない位置に先生の家はあった。一人暮らしにしては少し大きいくらいだ。

俺達は、客間に連れてかれそこで話を聞くことになった。


「さて、異変についてだな。先ず、この夜は明けることがないと言うことだ」


「夜が開けない?どういうことなんだ?」


「正確には時間がゆっくり進んでいるんだ。それをしたのは霊夢達が各々したことだ」


「大方この異変を今夜中に終わらせるためだろうね、よっぽど幻想郷に影響が出る異変なのかね?」


茜の言葉に慧音先生は首を横に降った。


「いや、今のところは大きな影響はないだろう。少なからず今夜中は、な。それともう一つ、空に今ある月は偽物だ」


「どうしてそんなのが分かるんだい?」


「君達も知っているだろう、私は半人半獣、満月の夜は獣になるんだ。だが、私はこの通り人間のままだ」


俺は慧音先生の姿を見る。整った大人の顔立ち、綺麗に手入れされてる長い青髪、見た目は獣らしさもない至って普通の人間の女性だ。


「私は満月の日は獣の姿になるんだ」


「先生が獣の姿にならないから月が偽物だということなんだな」


「そういうことだ、あの月は一見満月の様に見えるが実は少し欠けている。完全な月にならないようにな」


さっきまで見ていた月を思い出す。一際大きく見えたが何処かが欠けていたかは分からなかった。

いや、人間じゃそんな変化に気付かないのが普通かもしれないな。


「霊夢達はこの月の異変を止めるために動いているのか、ならどうするか‥‥」


「考えたって悠治の答えは一つだろうし、行くんでしょ、霊夢達の所に」


「まあな‥‥だけど、場所が分からないんじゃどうしようもないだろ」


人里に来た理由も異変の手掛かりを探すのを兼ねてだった。でも異変と関係が無いと分かった今じゃ、どうすることも出来ない。

俺がそうこう考えていると、突然障子が開けられた。


「慧音、あいつ等は何か‥‥し‥‥」


障子を開けたのは、長い銀ともいえるくらいの白髪に赤いもんぺ(だったか?)を履いた女性だった。


「どうしたんだ、妹紅(もこう)?」


妹紅と呼ばれた彼女は俺達を見てから、慧音先生の方へ目を向けた。


「慧音こいつ等は?」


「聞いたことはあるだろ、不知火悠治君と東風谷茜君だ」


「ああ、こいつが噂の‥‥」


「??」


彼女は慧音先生の傍に移動し。

噂はなんのことかは分からないが、俺達のことは知ってるようだ。茜の名前が出てきたのは意外だったけどな。


「こいつは藤原妹紅、私の友人でな普段は迷いの竹林で暮らしているんだ」


「‥‥‥」


「この通り人見知りでぶっきら棒だが、とても素直で優しいやつなんだ。妹紅も何時まで警戒しているんだ、近くに座ったらいいだろう」


慧音先生の言葉に妹紅は渋々といった感じに少しだけ近づいた。

それにしても、かなり警戒されてるな‥‥俺達。


「そういやさっき、何か言いかけたよな?」


「え、ああ‥‥」


「竹林の方で何かあったのか?」


「巫女を見かけた、スキマ妖怪も」


霊夢と紫か。どうやら俺達の目的もそっちにあるみたいだな。


「よし、俺達も行くか」


「君達も向かうのか、竹林に?」


「勿論そのつもり、多分そこにこの異変の答えがあるから」


俺は立ち上がって慧音先生に小さく頭を下げた。茜も俺に続くように立ち上がり、俺達は部屋を後にしようとした。


「そうだ、ちょっと待ってくれ」


「まだ何かありましたか?」


慧音先生に呼び止められ、手をかけた障子を離した。


「あそこにいくなら妹紅も連れて行くと良い。妹紅が迷うことはない」


「え?私も行くの!?」


妹紅は異様に驚いたあと、睨むように俺を見た。俺のことが苦手なのか、単に行くのが嫌なのか分からないが、乗り気では無いのが確かだ。


「大丈夫っすよ、一度は入ったことはあるし、なんとかなる」


「それでも迷わない保証はない、妹紅も頼む」


「‥‥分かったよ」


妹紅は渋々承諾し、俺達と共に部屋を後にした。






「妹紅、後は俺達だけで良いよ」


迷いの竹林の前まで来たときに、俺は妹紅にそう言った。


「あんたがそう言うなら私は別に構わないけどさ。なあ、ちょっといい?」


竹林に入ろうとしたとき、妹紅に声を掛けられ振り返る。


「ん、まだ何かあったか?」


「あんたに話がある、そっちのには外してほしい」


「そうか、なら俺達が外そう。茜、少し待っててくれ」


「了解、私はのんびりしてるよ」


俺と妹紅はその場から少し離れた場所で話すことにした。一瞬後ろを見たら、茜が笹の葉で何かを作る姿が見えた。






「で、話ってのは何なんだ?」


「私は人の事に兎や角言うつもりはない、でもこれだけ言っておくわ」


妹紅は俺から目を離し、顔を背けたまま話し出した。


「あんたのやる行いの全てが良いわけじゃない、あんたは誰から見ても優しすぎる」


「どういう意味だ?」


「言葉の通りよ、後はあんたは次第。それじゃ、頑張りな」


そのまま妹紅は人里の方へ向かって歩いていった。


「ああ、あとこれ」


妹紅が振り返り筒状の何かを投げられ手に掴んだ。そしてまた人里に歩いていった。

手に取ったそれを見てみると天狗の新聞だった。






「どうだった、悠治?」


「いや、何か変な事を言われた上に新聞渡された」


茜に渡された新聞を渡した。中身は知らないが差ほどの内容じゃないだろう。

茜は新聞に掛かれた記事を見ていた。


「んー?ああ、成る程‥‥ね」


「記事の内容はどうだが知らないけど、そろそろ行こうぜ」


「そだね。さて、私も自分にけりを着けなきゃ‥‥」


俺が先に陰陽玉に乗って先に竹林に向けて飛び、茜も後に着いてきた。

さて、と‥‥今俺がやれることは霊夢達に、この異変‥‥夜を空けさせる事だな。何もなくこの異変が終わることが出来れば一番良いんだがな‥‥


妹紅の口調が安定しませんでしたね‥‥

本来は女性の口調なのですが、二次では男口調が多いので6:4の割合で使っていきたいと思っております。

どちらかにすべきだと思いましたらそうします。


では、誤字又は脱字、その他のご指摘がありましたらご報告を。


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