二十四話:永夜の満月
今回から永夜抄編です。
今回の異変は出来るだけ主人公には戦わせないようにしていきますので、少し味気ない感じもしますがご了承下さい。
それでも良ければ本編の方をどうぞ。
~博霊神社 縁側~
「くそっ‥‥何で俺だけ‥‥」
もうすぐ日付が変わる頃、俺は霊夢に博霊神社で留守番を任されていた。その霊夢は現在起きている異変の解決に向かっている。
「‥‥他の皆も動いてんのに、俺は呑気に異変解決を待ってるなんて‥‥んなの出来ねえよ!!」
「(悠治少し落ち着いて、第一場所が分からなかったら意味ないでしょ?)」
「大凡の位置は分かる、人里だ、人里に向かえば分かる気がする」
縁側から自室に戻り、刀を持ち出す。霖之助さんに修理を頼んでおいたお陰で欠けた刀も元に戻っている。
「‥‥わりぃ霊夢、神社を空けるが盗まれるもんもないだろうし、説教は後々聞く!」
霊力を込めた陰陽玉に乗り、勢いを付けて飛び立つ。
「(悠治、それ霊夢が聞いたら説教じゃ済まされないと思うよ‥‥)」
「んなの百も承知の上だよ。‥‥??‥‥茜、魔法の森の方から何か感じないか?」
上空で人里へ飛び立とうとしたとき、その方向から謎の気が感じられた。
「(気のせいじゃないの?それか霊夢か誰かの。そんなことより行くんでしょ、人里に)」
「あぁ‥‥」
人里の先、魔法の森から感じた異様な気‥‥俺でも分かるくらいのでかい気‥‥誰も気付かれないのは変だ‥‥今は人里へと急ぐことにするしかないか。
「魔理沙やアリスとは違う‥‥俺だけだったのか?とりあえず後回しだ」
‥‥少年移動中
~???~
「おかしい‥‥このあたりには人里がある筈なんだが‥‥」
博霊神社からほぼ真西に進み、本来ならこの場所に人間の里がある筈だが何も無い。
「どういうことだ?」
「(誰かが隠した‥‥そう考えるのが妥当じゃないかな?)」
「茜は分かるのか?」
「(まあね、自分も結界を使ってるからかな?何となく分かるんだ)」
結界‥‥ただ、人里を結界で隠そうだなんて普通の人では到底無理だ。ましてや紫や霊夢などがやるわけがない。
「だとすると誰なんだ?」
「(そこまでは私でも分からないよ。でも‥‥今宵は長くなりそうね、私達は私達でこの謎を探ってみる?)」
「でもな‥‥いたっ!?」
「でもじゃないの、今起きている異変は霊夢達に任せよ?気になるんでしょ、あんな大きな人里を隠した人は誰なのか」
俺から茜が出てきて軽く額にデコピンをくらわされた。
最近では俺の霊力も回復し、茜もより自由が効くようになって度々外に出てくるようになった。
「そりゃあそうだが、霊夢達が気になるな‥‥」
「私達が行ったら逆に霊夢に迷惑が掛かるでしょ、関わったことで被害が増えるんじゃないの?悠治を見てきてそう思うんだよ」
「主に俺がな‥‥自覚はしている」
今まで二度の異変に関わったが、その度に俺は瀕死の重傷を負っている。今回で三度目、今回もそうなったら体が持つかどうか‥‥
「‥‥そうだな、今は任せるしかないか。但し、後で合流する気だからな」
「ん。じゃあ手短なとこから見ていきますかね」
茜は腰に手を当てながら魔法の森に視線を向ける。何か当てがある言い方だな。
「茜、当てがあるのか?」
「いいや別に、何となく此方かなって」
茜は「それに」、と続けて話した。
「それに、何かあるんでしょ?魔法の森に」
「あぁ‥‥今は何も無いけどな、行くだけ行ってみるか」
茜も陰陽玉に乗り、俺は体を魔法の森に向け陰陽玉を飛ばした。
「そういや茜、何で出てきたんだ?」
魔法の森に向かいながら後ろにいる茜に話し掛けた。茜は俺の肩に手を当て、少し楽しそうな口調で話し出した。
「私がいた方が悠治に負担が減るでしょ?今夜ぐらいは出ても大丈夫そうだしね、遠慮はしないでよ?」
「‥ああわかったよ、頼むぜ茜」
「了解♪」
正直茜を異変に関わらせたくは無い、俺に憑いているせいで巻き込んでしまうのならいつかは放れたほうが良いよな‥‥
そんなことを考えていると茜が肩を叩いてきた。
「悠治、私は私自信から悠治に憑いたんだよ。それとも私がいることが嫌?」
「茜には全部筒抜けか‥‥」
「そういうの隠すのは下手なんだから悠治はさ。‥‥私が憑くのやっぱり嫌だった‥‥?」
「‥‥いや、前みたいに話ができるのは寧ろ嬉しいさ。でも俺は茜を戦わせたくないんだ、茜にはこの異変に一切関係ないし、俺の身勝手で茜を巻き込むことはしたくない‥‥」
「そんなの気にしなくて良いのに、昔は私がそうしてたんだからさお互い様だよ」
茜は俺の頭に手を置いて撫でてくる。それを少し荒っぽく退かす。
「ったく、やめろよ!」
「見た目が変わっても悠治は悠治だね」
「どういう意味だよ?」
退かした茜の手が俺の頭にまた置いてきた。
「その人に撫でてもらったり愛でられるの嫌いだもんね、こんなふうに♪」わしわしっ
「だっ!‥‥はぁ、もうどうでもいい‥‥」
「やっぱり抱き着きの方が良いの?」
「意味分かんねえよ‥‥」
楽しそうに俺をからかってくる茜に溜め息が出、返す言葉も出なかった。
「ふふっ、なら今してあげようか?」
「それはやめてくれ‥‥それに俺らは異変に動いてんだろ?」
「良いじゃない少しぐらい~」
「良くないっての、陰陽玉は少し広くはしてるが二人乗ってる分バランスは悪いんだから‥‥」
「むぅ~‥‥」
茜は納得がいかないようで子供っぽい声をあげる。多分、頬も膨らませているだろうな‥‥
「茜、誰かがいたら直ぐに対処出来なくなるだろ?」
「大丈夫だよ、現に誰もいないし」
「じゃあ出て来たらどうなるかな?」
急に声が聞こえたと思えば、目の前に人影が現れた。
「‥‥人か?」
「いや妖怪だね、人の気と違うから妖怪だね」
「冷静だし反応薄いな~、もっと驚いたりしないのかな?」
今度ははっきりと姿が見えた。緑色の短い髪に二本の触角のようなのものが生えている。白のシャツに膝までのズボン、そして背中にはマントのようなのを付けた幼い男の子のようだ。
「君は誰なんだ?」
「リグル・ナイトバグ、蟲を操る蛍の妖怪だよ。貴方たちは誰?」
「俺は不知火悠治、鳥と話せる人間だ」
「私は東風谷茜、幽霊みたいなもんさ」
リグルと名乗った少年は俺を見るなり小さく肩を落とした。
「貴方があの不知火悠治なんだ、人間がこんなところに来るなんて物好きだね」
「俺を知ってたみたいだな、君は何か俺に用か?」
「質問に質問で返さないでよ、まあルーミアや他の妖怪みたいに人間を食べる趣味は無いし、戦う意思も無いよ」
「敵対心はないんだな?ルーミアを知ってるみたいだし悪い奴じゃないようだ」
肩に掛けている刀の鞘から手を離して警戒を解いた。
「俺達は人里、人間の里がなくなった訳を確かめたくってな。近い所から情報をな」
「様は手探りなんだよね」
「違うっての。なあリグル、知らないか?」
「流石に分からないよ‥‥」
まあそうだよな‥‥誰も分からないのを分かるはずがないか、分かるのはその当事者ぐらいだろうし。
「君は戦う気が無いようだし 、俺達は先に行かせてもらうよ」
「ねえ、貴方達って本当はこの夜を止めようとしてるの?」
「そのつもりだが?なんでそんなこと聞くんだ?」
「ううん、なんでもない。でも、夜の妖怪には気を付けてね」
「君が言えたことじゃないだろ。まあ警戒は怠らないさ」
夜は人間とって恐れる時間帯だ。逆に言えば妖怪にとっては一番力を持つ時間帯だと言うこと。
俺も初めてな訳じゃないし、重々知っている。
「‥‥で、だ」
「悠治、どうかした?」
「どうしたもねえだろ、なんで君がついてくるんだ?」
俺たちは人里があった付近まで戻ろうしている横に茜以外にリグルが飛んでおり、何故かついてきている。
茜は茜でリグルと会話したりしているし‥‥
「これといった理由はないよ?強いて言うなら、ついていくのは貴方が人間だからかな?」
「なんだその理由。別になんも無いだろうし、ついてきても良いけどさ」
「それじゃ、お言葉に甘えるよ?」
結局リグルがついてくることになった。
まあ、人里の情報も何も無いしな、俺のやれることもこれ以上ないかもしれない。
「とりあえず、人里のあった場所まで戻って何も分からなかったら神社に戻るしかないな」
「ありゃ、諦めちゃうんだ。でも良いのそれで?人里も異変に巻きこれたかも知れないよ?」
「その時はその時で霊夢達に加勢するさ。でも人里とこの異変は関係無い気がするな」
「どうしてそう言えるの?」
「勘‥‥だな」
「なにその霊夢みたいな考え」
全く茜の言う通りだったので俺は少し可笑しくなり小さく笑う。
「‥‥(異変なんだよな)」
ふと空の月を見る。誰から見ても何の変鉄もない満月だ、周囲は月の光で照されていて明るく‥‥
「ウッ‥‥!?」
突然目に違和感を感じ、反射的に目を瞑ってしまい慌ててその場に止まった。
「悠治、どうしたの?」
「いや、目に何かが‥‥み、見えねぇ‥‥」
「ちょっと、大丈夫なの?」
手の甲で荒々しく擦り目に入ったゴミを取る。違和感が無くなり目を開けるが俺に写ったのは暗闇だった。
「なんだよこれ‥‥どうなってんだよ全然見えねぇ!」
「目が見えないって‥‥もしかしてそれが妖怪だとしたら、夜雀?」
「それ、多分みすちーのせいかもしれない」
「リグルの知り合いなのか?」
リグルの声がした方に顔を向けるが、目が見えないせいでどんな表情かは分からない。
「うん、友達なの‥‥でも、悪い子じゃないんだよ?」
「で、そのみすちーって子は何処にいるの?」
「♪~♪~」
何処からか独特な歌声が聞こえる。耳を澄まして歌声が聞こえる方向を向く。
「人間以外に誰かいると思ったらリグルがいたんだ」
「君がリグルの言ってた友達か‥‥?」
「あれ?鳥目になってる筈なのに。うん、そうだよ。私はミスティア・ローレライ、夜雀の妖怪なの」
「やっぱり夜雀だったみたいね、どうする悠治?」
茜が若干威圧のある声で返した。声でしか判別できないが、攻撃的な口調なのは分かる。
「茜は何もするなよ」
「でも悠治は目が「良いから何もするな」‥‥分かったよ、悠治のことだから何か策でもあるんでしょ」
「あぁ‥‥まあな‥‥」
正直言えば策も何も無い。当たり前だ、こんな状態じゃロクな考えなんて付きやしない。
だから、行き当たりばったりで行くしかねえ。
「なあミスティアとか言ったっけか、君が攻撃してきたのは気にしないから俺の目を戻してくれないか?これじゃ何も出来ないんだ」
「うーん‥‥良いよ。‥‥あれ?何で私何言ってるんだろ?」
「どうしたんだ?戻してくれないのか?」
「な、何でもない!今戻すから(‥‥どうして、断れないの)」
「やっと見えるようになった。ありがとな、ミスティア」
「う、うん‥‥」
意外にもあっさりと俺の目は戻った。ミスティアの姿もしっかり見えている。声で判別できたが、やはり少女の姿をした夜雀の妖怪だった。
「なあ、さっき食べさせられたのって何だ?味は魚っぽかったけど?」
「あれは八ツ目鰻っていう鰻なの‥‥それで鳥目を治せるの‥‥」
「それをどうしてミスティアが持っていたんだ?」
ミスティアに質問するが、ミスティアは口籠り代わりにリグルが答える。
「みすちーは屋台をやっててね、そこで八ツ目鰻を売ってるんだ。人間にも妖怪にも人気でさ、お客さんからおかみって呼ばれているの」
「言われてないよ、それにお客さんなんてそんなに来ないし‥‥」
「そうなのか?繁盛してそうだけど」
「いいよ‥‥お世辞なんて‥‥」
「みすちー、さっきからどうしたの?なんか変だよ?」
「え?そうかな‥‥いつも通りのつもりだけど?」
ミスティアの視線は定まらず、落ち着かない。初めて合う俺でも彼女の挙動が変だと分かる。
「なんかしたの、悠治?」
「何で真っ先に俺を疑うんだよ」
「悠治の能力のせいじゃないのかなって、違う?」
あぁ‥‥そういやミスティアは夜雀の妖怪って言ってたっけ。でもそれだけであんな風になるとは思えないんだけどな。
「違わないかもしれないけど、あそこまで変になるのはなぁ‥‥今までにないことだし」
「あ、うぅ‥‥」
一瞬、ミスティアと目が合った。だが、彼女はすぐさま目を反らしてしまった。
「??本当にどうしたんだ?」
「‥‥どうしてこんなに鈍感なんだろう」ボソッ
「ん?何か言ったか?」
茜は何故かため息を吐いて呆れ顔を見せる。
「別に。で、どうするの?悠治の目は戻ったんだし、そろそろ人里にでも向かう?」
「それもそうだな。リグル、俺達は先を急ぐからミスティアのこと頼めるかな?」
「あ、ちょっと待って!」
「今度ちゃんと話すから。それじゃ!」
リグルに呼び止められたが、軽く別れを言って人里に向かった。俺達は先を急がなきゃならないからな、すまないリグル。
とある1コマ‥‥
「悠治、まさかとは思うけどリグルが男の子か女の子か分かってたよね?」
「え、あいつ男じゃないのか?」
「やっぱり‥‥あの子、容姿はあれだけど女の子なんだよ?」
「全然分からなかったぞ‥‥確かに声は高く感じたけどさ」
「見た目だけで判断しちゃダメだよ、悠治」
リグル相手には定番のネタですね。あ、それほどでもないですか?
もっと内容を濃く書きたいんですが、自分の能力じゃまだまだ未熟ですね‥‥
では、誤字や脱字などありましたらご報告お願いします。