二十三話:夢と現
いつの間にか萃夢想編がが終わり、日常パートに突入。
‥‥前々から日常パートだろってツッコミは無しでお願いします。
今回、会話場面がちょくちょく変わります。めんどくさいとか思わないで下さいね‥‥
「今日はどうしたんだ?茜」
俺が眠りに付きしばらくして、茜が作り出した夕焼け色の精神世界に呼び出された。
「それより体はどう?」
「体?ああもうかなり回復したぞ、やっと霊夢からも許しはでたからな。茜も聞いてたろ?」
「そう‥‥だったね」
今もそうだが、最近異様に茜の様子がおかしい。いつもの陽気な口調とは違い、少し暗い気がする。
「なんかの相談か?話し、聞くぞ?」
「ううん、ありがとう大丈夫だよ‥‥」
茜は俺に笑みを見せる。そして何か思い出したかのように手の平を叩いた。
「あ、そうだ悠治、せっかくだから弾幕ごっこやろうよ。何回か見てたからやり方は大丈夫だよ、スペルカードもあるし」
「ん?茜って持ってたか?」
「此処は私の作り出した空間だよ?そのくらいなら簡単に作れるよ」
そう言って目の前に長方形の物体を作り出し、掴んで俺に見せた。それは紛れも無いスペルカードだ。
「私なりに悠治のをアレンジしたやつだけどね」
「俺のスペルカードと一緒なのか?てことは何枚かあるってことだよな?」
「二枚はあるよ。じゃあ簡単なルールを説明するね」
茜から出されたルールは‥‥
一、無制限の一本勝負。
二、スペルカードの使用は俺が一枚限り(実際には二枚)、茜が二枚。攻略されたり、被弾した場合その時点で敗北とする。
三、特別に空中戦の為の、翼符『シルバーウィング』に使用を許可。(弾幕を撃つのは禁止)
何故か使用時間が無制限となっている。
とまあ、簡単に三つのルールが出された。
また茜が初めてってこともあり、肩慣らし感覚の弾幕勝負だ。
多分、真剣勝負になると思うが‥‥
「それじゃ、始めますか!翼符『シルバーウィング』!」
スペルカードを唱え、背中に白銀の翼を生やす。
この感覚‥‥久しぶりだ、精神世界でも全然変わらなく体が軽くなった。
「やっぱり綺麗だね悠治の翼は‥‥なんか昔の悠治が懐かしい‥‥今は凄く頼りになるくらい強くなったよね、だから今の悠治を見てみたいな!」
「ああ、昔の俺とは違うからな!!」
翼を羽ばたかせ高く舞い上がる。茜も後を追うように空中に舞った。
「行くぜ茜!」
「どーんっと来なさい!」
自分の周りに弾幕を展開して放つ。茜も札を構えて投げつける。
「茜、初めてなんだから無理はするなよ?」
「人の心配よりまず自分のこと!」
茜は弾幕を避けつつ札を投げる。投げられた札は十数発の弾幕に拡散され放たれる。流石妖怪退治してたこともあり、狙いが上手い。
「まず一枚目いってみようかな♪風陣『風の満ち干』!」
茜がスペルカードを唱えると、背中に魔方陣が現れる。
その魔方陣から無数の弾幕が八方へと放たれた。
「くっ‥‥濃いが問題ねぇ、躱しきれる!」
「‥‥そろ潮が引く頃だね、ほいっと」
背中の魔方陣から今度はさっきより大きめの弾幕が高速で放たれる。
「ぐぁっ‥‥っとあぶねぇ、被弾すっとこだったぜ」
「ほらほらぁ、攻撃は前だけじゃないよ♪」
「っな!?」
茜の放たれた無数の弾幕はその場で動きが止まり、逆再生のように後退してきた。
前方の高速弾幕と後ろの壁のような大量の弾幕に挟められた。
「(前も後ろも逃げ場が無さ過ぎる!まだスペルカードは使えねぇし‥‥)なら、気合いで躱す!!」
「ねえ悠治、この勝負に勝ったら一つお願い聞いてもらえる?」
「今言うかそれ!?ちくしょう!!」
「ん~‥‥分かったよ」
茜は弾幕を放つのを止め、背中の魔方陣が消えた。
「スペルカード、一枚使っちゃったけどまあいっか。じゃあ私が悠治に勝ったら一つお願い聞いてもらえる?」
「んなのいつでも言ってくれりゃ聞いてやるよ。わざわざ勝ったらなんて」
「張り合いがなきゃ楽しくないでしょ?こういう楽しみが私には必要なの」
いたずらな笑みを浮かべて背を向けた。
「お願いって何だよ?」
「今言ったら意味ないじゃん♪私が勝ったら教えてあげる♪」
「普通は俺が勝ったら教えるとかじゃないのかよ?」
「私が勝たないと意味ないの。もし悠治が勝ったら分からないままだけど、態と負けたら承知しないから♪」
くるっと体を半回転してエメラルドグリーン色の髪を靡かせた。
「さってと、このくらいで悠治は根なんて上げないよね?」
「当たり前だ!」
シルバーウィングを強く羽ばたかせ、後ろに跳ぶ。
両手に霊力を込め、鳥型の弾幕を展開して茜に放つ。
「そうこなくっちゃ!(‥‥私って不器用だなぁ‥‥あの時も素直に言えなかったし‥‥悠治‥‥)」
茜は少し考えた顔をしながらも軽々と弾幕を躱していく。
「こんなもんじゃ無理か‥‥やっぱ使うしかねえよな」
「悠治が本気で来るなら勿論私も全力でいくよ!」
茜のように一枚のスペルカードを作り上げ、唱える。
「迅符『七四七・武迅』!」
右手に霊力を集中させ、刀の形状を作り、連続で斬撃を飛ばす。
「おっらあああ!!」
「おっとこれは厄介だね。本当に全然違う、昔の悠治は小さく纏わせるくらいだったのに」
「俺だって強くなるため修業をして、この幻想郷で仲間を‥‥大切な人を守るための力を付けた。だから俺は、絶対にあんなことは‥‥」
刀を十字に振り、正面に十字の斬撃を作り出す。それに複数作り出してから手を翳し‥‥
「繰り返さねえからよ!」
一斉に放った。
「悠治‥‥これだけは言っておくね‥‥自分を見失ったら、その強さは人を傷付ける鋭利な刃物になることを忘れないで‥‥」
「んなの分かってんだよ、心配すんな!」
「‥‥なら良いんだけど、私もいくよ!」
茜は最小限の弾幕だけを躱し、二枚目のスペルカードを取り出した。
「もしそうなっても、私が必ず止めるから‥‥悠符『無限結界空間』」
「ぐっ‥‥マジかよ‥‥」
茜が唱えたスペルカードは、茜を中心に周りの弾幕を消していき、最後には俺が霊力で作り出した刀でさえも消された。
「悠治はもう私の結界の中、この空間では私以外の弾幕は抑制されるよ。それに‥‥」
「それに‥‥何だ?‥‥っ!?」
一瞬にして俺の目の前に茜が現れ、吃驚してしまう。
「ふふっ、驚いた?」
「どんなスペルカードだよ、瞬間移動とかよ‥‥」
「別に普通に歩いて近付いただけだよ、悠治にはそんな風に見えたみたいだね」
茜は俺の横に移動し、腕にがっしりとしがみついてニッコリと笑顔を見せた。
「ねえ悠治、私のお願い‥‥いいかな?」
「‥‥分かったよ、俺の負けだ‥‥どんなことだ?」
「ん~‥‥じゃあ人里に行きたいかな?私、幻想郷の普通の人を見てみたい。今まで妖怪とか普通じゃない人ばっかだったからね」
「そんなことで良いのか?もっと他のこともあるだろ?」
「良いの、私はそれで♪」
「まあ、茜がそう言うなら構わないけどよ。それじゃ俺は戻るよ」
目を閉じ、意識を遠ざける。
「あ‥‥この時が一番辛いよ‥‥悠治、今日だけは甘えたいな‥‥」
悠治を掴んでいた手を胸の中心で包み込みように握り、そのまま空間を消した。
~博麗神社 悠治の寝室~
「くっ‥‥!!」
体を伸ばし、まだ眠気の残る体をはっきりと覚ます。
「ふぅ‥‥さてと、霊夢にはさっき話したし、軽く準備しないとな」
今朝、霊夢に言ったところ今日一日の暇を与える代わりにいろいろ頼まれた。
俺は陰陽玉と壁に立て掛けておいた刀を手に持ち、刀は鞘から少し抜く。
「‥‥」
「(悠治、どうしたの?)」
「いや、刃が欠け始めたから霖之助さんのとこ寄ろうかと思ってな」
「(時間‥‥掛かる?)」
刀を仕舞い、肩掛け用の紐を鞘に付けて肩に掛ける。
「人里の近くだし、直ぐ済むからそんな声出すなって」
「(うん‥‥そこって加治屋かなんかなの?)」
「香霖堂って言う‥‥まあ移動しながら説明するか」
廊下側に出る障子を開け、玄関口まで向かい境内の方へ出た。
境内の中心ぐらいまで来たら、陰陽玉を取り出し気を込める。ある程度込め終わり目の前に投げると、一人は乗れる大きさまで広がる。
「よっと。じゃあ行くぞ、茜」
「(うん♪)」
陰陽玉を高く舞い上がらせ人里方角に飛ばした。
‥‥少年移動中
「いらっしゃい、悠治君か」
香霖堂に入るといつものように店主の霖之助さんが出迎えていた。
「ご無沙汰です霖之助さん。あの、これなんすけど‥‥」
「あの刀じゃないか、たった一年でかなり使い込まれたみたいだね」
「それで人里の加治屋に行ったんですけど、どうやら無理みたいで断られたんすよ」
「ははは、それはそうだろうね、僕が作ったこのマジックアイテムは金剛石より固い物質を使っているからね。勿論、この幻想郷でも外の世界でも研ぐアイテムを持ってるのは僕だけだろうね」
霖之助さんは鞘から刀を抜いて刃の状況を見る。
「所々欠けてるね、余程のことじゃないとこんなことにはならないんだけど‥‥」
「大丈夫‥‥ですよね?」
「このくらいなら直ぐ終わるよ、とは言っても二、三日預かるけど良いかな?」
「別に構わないっすよ」
「じゃあ預からせてもらうよ」
霖之助さんが奥の部屋に置きに行ってると、茜が話し掛けてきた。
「(悠治が言ってた通りで私達がいた世界の物が売っているんだ)」
「(まあ幻想郷じゃ殆ど使い物にはならないものばかりけどな、電化製品とかあるけどそもそも電気なんてもんないし)」
「(ふーん、なんかあんまり意味ない場所なんだね)」
茜の言葉に苦笑いをして答える。ちょうど霖之助さんが戻ってきて、俺の表情に不思議がられる。
俺は誤魔化す様に香霖堂を後にした。
~人里~
「此処が幻想郷の人間が住んでる里、普通は人里って言われてるな」
人里内はいつものように人々が行き来しており、活気にあふれている。
「(妖怪ばっかりじゃないのね、幻想郷って)」
「妖怪の為に創られた幻想郷も、人間がいなければ妖怪も存在できないからな。少し見て回るか」
人里を歩いていると、酒屋のおっちゃんが声を掛けてきた。
「おう!不知火のあんちゃん、今日は一人かい?」
「大体は一人で来てるつもりだけど?」
「あらゆう君、お買い物?」
「ああ、霊夢に頼まれたんだよ」
声を掛けてくる里の人達に軽く返しながら人里内を歩いていく。
「(悠治って結構有名なんだね)」
「まあ‥‥原因は天狗の新聞だろうし、一番の原因は俺が異変に関与してるからだろうな」
「(それもあると思うけど‥‥うん、絶対あれだと思う)」
「あれってなん「あ、鳥のにーちゃんだ!!」‥‥おっと?」
腕を組んで考えてると、多分俺のことを呼んでいる子どもの声が聞こえた。
振り向くと、里の子ども達が俺のとこまで駆け足で来た。どうやら寺子屋近くまで来てたみたいだ。
「にーちゃんあれに乗りたい!空にビュンッっていくやつ!」
「俺も俺も!」
「お兄さん、また小鳥さんと遊びたいな。ねえ、良いでしょ?」
「おいおい‥‥皆、悠治兄ぃを困らせるなよ‥‥」
両腕を掴まれ身動きとれない状態で、寺子屋に引っ張られ連れてかれる。
「お前等!そこで何してるんだ!」
寺子屋の方から青髪の女性がやってくる。女性は子ども達を見てため息を吐いた。
「はぁ‥‥お前等、人様に迷惑掛けてないだろうな?」
「子ども達はなんもしてないっすよ慧音先生」
「そうか、なら良いんだが。ほら授業始まるぞ!」
「え~‥‥俺、にーちゃんと遊びたい」
「私も」
「お前等なぁ‥‥」
子ども達の我が儘に額に手を当て頭を抱える慧音先生。やっぱ先生って立場は大変なんだな‥‥
「ほら、早く授業やってこい!今日は無理だけど遊びに来っから。な?」
『‥‥はーい』
子ども達が渋々寺子屋の中に戻り、目の前の慧音先生は顎に手を当て何か考えている。
この青髪の女性、上白沢慧音先生。此処、寺子屋で教師をしている人間だ。正確にはワーハクタクという半人半獣らしいが(天狗情報)、慧音先生は人里に強く貢献していて信頼もされている。
但、頭が少し硬いところがある‥‥二つの意味で‥‥
「‥‥で、何を考えてるんですか?」
「いや、君は前は学生だったと聞いたんだが‥‥どんなことを学んだのか気になってな」
「どんなことって言われてもな‥‥基本的なことはやってましたけど?」
「そうか、なら単刀直入に言おう。悠治、少しの間だけ教師をやってはみないか?」
「‥‥へ?」
慧音先生の口から意外過ぎる言葉を聞いて変な声を上げてしまった。
「何で俺なんかが?」
「君は子ども達の受けが良いんだ、以前来たときにかなり気に入られたようでな、たまに子ども達から君の名前を聞くんだ。無理にとは言わないが考えてみてくれ」
少し考えるも、直ぐに答えは出た。
「俺にはそんなこと出来ないし、今回はお断りしときます、すいません」
「いや君が謝ることはない、私も変なこと聞いてしまったな。すまなかった、でも考えてはみてくれ」
「はい、機会があったら今度。じゃあ、俺はこれで」
慧音先生に会釈して寺子屋をあとにした。
「(良かったの?悠治ならやるとおもったんだけど?)」
「さっきまで俺の都合で動いてたし、茜が行きたい場所全然行けてないからな。茜、今日は外に出て良いぞ?」
「(本当に良いの?)」
「俺がこうして動けるのも茜のお陰なんだからそんくらい当たり前だろ?茜には返しても返しきれない恩があるんだ」
「(‥‥)」
「茜?」
急に黙り込んだ茜、首を傾げてると腕に誰かが抱き着いてきた。
横を見ると俺に寄り掛かる茜の姿があった。
「あ、茜‥‥?」
「こんなのもう無いかもしれないから、今日は悠治に甘えてもいいよね?」
「なんだよ、もう無いかもしれないって?」
「私はもうこの世に存在しない人間、悠治に憑く幽霊‥‥悠治が必要としなくなったら私は消えるしかない‥‥本当は此処にいちゃいけないのよ‥‥」
「‥‥此処にいるだろ、ちゃんと俺の目の前に茜が存在してるだろ?」
「え!?ちょ、ゆ、悠治‥‥///」
暗い顔をして肩を落とす茜。滅多に吐かない弱音に、俺は無意識に茜の頭を撫でていた。
「こうやって触れることが出来るし、お前を感じられるんだぞ。昔と変わらない茜をな」
「‥‥悠治が変わりすぎなの‥‥///」
「確かに、そうかもしれないな。ほら行こうぜ」
そう言って茜の前に手を差し延べる。茜は小さく頷いてから手を握った。
「‥‥バカ悠治///」
「何か言ったか?」
「今日はこき使ってやるって言ったの!」
「はは、覚悟しとくよ」
俺達が手を繋いで歩いているのを見た人達が妙に不思議がられることがあったが、出来るだけ気にしないようにした。
だが‥‥
「ねえ、お兄さんって魔法使いのお姉さんとお付き合いしてるんじゃないの?」
「!?」
一つ思ったことと言えば、子どもの発言はストレートすぎて痛いことがある‥‥ということだ‥‥
いい加減謎に満ちた茜さんの能力を簡単に説明しますか。
能力:『空間と結界を操る程度の能力』
自分または指定した位置から結界を広げ、結界内の空間は自分の思う通りに操ることが可能(但し、限度はある)。
結界内では空間の圧縮、膨張、結界内の物質の促進、抑制することが出来る。
また、目に映る風景(空間)を結界に記録させ、全く同じ風景を作り出すことが出来る。作り出した風景は、立体的な絵と同じなので本物とは似ても似つかない。
簡単に説明したらこのくらいしか書けませんでした。いずれは今回使ったスペルカードの解説と同時にやろうと思います。
それではまた。