二十二話:形の違う同じ想い
再び言っておきますが只今萃夢想編(の筈)です。
今回は紅魔館での宴会?です。
書きながら「あれ?異変始まってるよね?なに書いてんの?」って思ったのは内緒です。
~魔法の森 紅魔館付近上空~
二日後、俺は紅魔館に出向くことになった。理由はレミリアから宴会に誘われたためだ。
それにしても一昨日は散々な目にあった‥‥どうやら俺と魔理沙のことが(チルノやルーミアなどを除いた)一部にばれてたようだ。
そのせいで回りから「酒が甘いんだ!」と言われ、俺は強い酒を強引に飲まされ、魔理沙は顔を真っ赤にしながらいろいろ質問されていた。
「そのお陰で昨日は二日酔いでまともに動けなかった‥‥それを良いことにあの天狗はぶっ倒れてる俺に容赦無く問い質ししてくるし‥‥」
「(はぁ、先越されちゃった‥‥私もあんくらいすれば良かった‥‥)」ボソッ
「ん?‥‥何か言ったか?」
「(なーんでもない、ほら前、あれが紅魔館ってとこでしょ?)」
茜に言われて前を見ると、森に佇む真っ赤な洋風の館が見えてきた。
「そう、あれが紅魔館。深紅に染めらててやっぱり目立つな」
「(何とも不気味だね‥‥血で染められたように真っ赤で気味悪い‥‥)」
「まあ、当主が吸血鬼だからな‥‥」
嫌そうに喋る茜に苦笑いをしながら答える。
門の近くまで飛び、その手前で降り、乗っていた陰陽玉を元の手の平サイズまで戻し仕舞う。
門の前には待ってましたという顔をした中国風の服装をした女性が立っていた。
「悠治さん、お待ちしてました」
「やあ美鈴、仕事ご苦労さん」
「あの早速ですが、また一つ手合わせお願い出来ますか?ずっと何もしないのは退屈なんですよね」
美鈴は顔の前で手を合わせ一礼したあと苦笑いしながら頭をぽりぽりと掻いた。
「あ、あぁ‥‥俺さ、実戦は久しぶりだから鈍ってんだよ‥‥それに弾幕勝負は許されてないし」
「そうですか‥‥なら仕方ないですね」
「まあ当の俺は全然構わないし、せっかくだからやるか。俺も体を動かしたい気分だ」
俺がそう言うとしょぼんとしていた美鈴が一瞬で笑顔になる。
「それじゃ、悠治さんに負担を掛けないよう軽い組み手をやりましょう♪悠治さんも心得てるって聞きましたから」
「でも一年そこらだからな、少しは手加減してくれよ?」
「私もそこまで鬼じゃありませんよ、人間と妖怪じゃ力量が違いすぎますからね」
お互いに距離を取り、構える。
「それではいきますよぉ‥‥たあ!」
「くっ‥‥!」
美鈴は一気に近付いて蹴りを放つ。それを紙一重で躱し、肩の背負う刀に手を掛ける。そのまま鞘から抜き、降り懸かる。
「はあ!!」
「おっと、危ない!」
刀は空を切り、美鈴は後ろに下がる。
「面白い刀ですね、その刀からも悠治さんの気を感じられます」
「この刀は気を込めれば多少の形状は変えられる、いくら美鈴が妖怪でも女性だ。切り傷は付けたくはないからな、だから刃の形は変えてる」
俺の持つ刀の形は、刃と峯が逆の状態になっている。そのお陰で人が切れることは無くなる。
「相変わらず優しい人ですね、魔理沙さんが惚れたのも納得出来ます」
「い、いきなり魔理沙の話しを振るな!///‥‥行くぞ!!」
「あはは、すいません‥‥」
一呼吸置いて、次は此方側から攻撃を仕掛ける。
「せいっ!!」
「よっと」
「まだまだあ!」
薙ぎ払いを躱されるが、美鈴の動きを予測して連続で攻撃し続ける。
が、紙一重の所で空振りしてしまう。
「(くっ‥‥目で追えても体が付いていけないか‥‥)そこっ!!」
「読みは完璧ですが‥‥甘いです!」
美鈴は俺の一撃を見切り、そのまま平手打ちを喰らった。
「くっ‥‥!」
軽い衝撃と共に後ろに飛ばされる。
体勢を立て直し倒れずに済んだが、これが本気の闘いだったら吹っ飛ばされ骨を持ってかれるだろうな‥‥
「いってぇ‥‥」
「大丈夫ですかぁ?」
「あぁ‥‥ごめんな美鈴、俺の力不足だ」
「いえいえ、まだ悠治さんは病み上がりみたいなものですから仕方ありません。それにありがとうございます、私の暇に付き合ってもらって頂けて」
美鈴は深々と頭を下げる。すると美鈴の後ろから妖精メイドが飛んできた。
あ‥‥ぶつかる‥‥
ゴッ
案の定美鈴の後頭部とメイドの額は直撃し、二人とも悶えている。
「いったー!何ですかいきなり!?」
「きゅ~~‥‥」
「二人とも大丈夫か?」
刀を鞘に仕舞い、目を回して伸びてるメイドの頬を軽く叩き、目を醒ませる。
「ん‥‥はわ!すすすすいません!!」
「そこまで慌てなくても‥‥」
妖精メイドが美鈴に何度も頭を上げ下げして謝ってくる。
「私は大丈夫ですよ、それで何か用ですか?」
「そうでした!不知火様、パチュリー様がお呼びです」
「パチュリーが?」
「はい、何かお伝えしたいことがあるとか言ってました」
隣の美鈴を見る。美鈴は「私は構いませんよ」と言ってくれた。
「分かった、今から向かうよ」
「かしこまりました。ではご案内します」
‥‥メイド、少年移動中
妖精メイドに連れられてパチュリーの居る地下の図書館までやって来た。
「パチュリー様、お連れしました」
「伝えたいことって何なんだ‥‥って小悪魔、どうしたんだ?」
図書館に入るなり小悪魔が本に埋もれていた。
「こあ~‥‥あ、悠治さん、いらっしゃったのですね」
「またドジったのか?」
「ちょっと躓いただけです‥‥いたた」
「大丈夫か?」
本に埋もれてる小悪魔に手を差し延べ助け出す。
「ありがとうございます。それで、パチュリー様に御用ですか?」
「はい、不知火様をお連れするよう言われましたので」
「そうでしたか。では、私はパチュリー様に伝えてきますね」
小悪魔は散らばった本を積み直してから、パチュリーのとこに向かって行った。
「それでは不知火様、私は次の仕事があるので失礼します」
「そうか、ありがとな」
俺が礼を言うと、妖精メイドは一礼したあと図書館を出て行った。
「いらっしゃい、悠治」
「俺に伝えたいことって何だ?」
「まあ、とりあえず‥‥後ろ‥‥」
「ん?」
後ろを見ようとしたら背中に衝撃が走った。
「おにいちゃん♪」
「フ、フラン!?何でこんな時間に?」
「お兄ちゃんに直ぐにでも会いたかったんだもん♪」
フランは後ろから嬉しそうに喋りながら抱き着いてくる。
「でもな‥‥夜更かし?朝更しの方があうか。まあずっと起きてるのはダメだぞ?で、伝えたいことってこれか?」
「それはこっちでも対処できるわ‥‥問題はね‥‥」
そう言って苦い顔をしたパチュリーが横に視線を向ける。
俺もその方向に視線を移すと、そこには不機嫌な顔をした魔理沙が立っていた。
「魔理沙?何であんな不機嫌そうなんだ?」
「どうやら魔理沙さんは、悠治さんに対する妹様の行為が気に入らないようです。昨日もそれが原因で争ったんですよ‥‥」
「‥‥で、その戦場が此処になったの‥‥お陰で大量の本が雪崩落ちてきたわ‥‥」
パチュリーは頭を押さえて溜め息を吐いた。
「話しを戻すが、どんな用件なんだ?」
「‥‥はぁ‥‥見れば分かるでしょ、争いの原因はあんたなんだから、なんとかしなさい‥‥」
「そう言われてもなぁ‥‥」
魔理沙の方を見ると俺の顔と背中のフランの顔を交互に見てから話し出した。
「何でレミリアの妹が背中にいるんだ‥‥?」
「何でって言われてもなぁ‥‥」
「フランはお兄ちゃんが好きだからこうしてるんだよ♪魔理沙もお兄ちゃんのこと好きならすれば良いじゃん♪」
「っな!?///」
フランは俺の背中から降りて腕に寄り添いながらそう言った。
‥‥子供の発する言葉ってきついものがある、言いにくいことをストレートに言うからな‥‥
魔理沙は顔を真っ赤にしつつ、俺の近くまで来た。魔理沙は俺をじっと見つめ、すぐ顔を俯かせた。
「あ‥‥わ、私は‥‥///」
「??どうしたんだ、魔理っん!?」
急に魔理沙の顔が近付いてきて、俺の口を魔理沙の唇で塞がれた。
「ん‥‥っはぁ‥‥これなら‥‥子供には無理だよな‥‥悠治‥‥私だけ‥だよね‥‥?」
魔理沙は甘い声で囁いてくる。これは止めないとまずい気がする‥‥
「ちょっ!ま、魔理沙落ち着け!!」
「魔理沙ずるい!フランも!!」
「「フランも!」じゃねえ!!パチュリー、小悪魔、なんとかしてくれ!!」
パチュリー達に助けを求めるが、パチュリーは溜め息を吐いて完全にスルーされ、小悪魔は頭から煙を出して顔を真っ赤にしている。助けてはくれないんだな‥‥
「お兄ちゃん♪フランも、フランも♪」
「ダメだぜ!それだけはダメなんだぜ!!」
二人に挟まれ、綱引き状態の俺。もう何が何だか分からなってきた‥‥
「‥‥いい加減落ち着け二人とも!!」
俺の怒鳴り声でやっと収まり、二人とも申し訳なさそうに俯いた。
「「‥‥ごめんなさい(だぜ)」」
「‥‥はぁ、ったく‥‥魔理沙もフランも喧嘩するなよ」
「でもフランだってお兄ちゃんと‥‥」
俯きながらぼそぼそと呟く言葉が聞こえた。フランの頭を優しく撫でて、頭をフランの高さに合わせる。
「フラン、さすがに魔理沙みたいなことは出来ないな」
「‥‥なんで?どうしてもダメなの?」
「‥‥なあフラン、どうしてこだわるんだ?」
フランにそう聞くと、少し近付いて俺の服の裾を握った?
「だってお兄ちゃんはフランのお兄ちゃんだもん‥‥どんな形でもお兄ちゃんはフランの家族だもん‥‥」
「‥‥俺がフランの前からいなくなると思ったのか?」
「‥‥うん」
目に涙を溜め、泣きそうなのを必死に堪えて頷いた。我慢するフランを、俺は自分の胸元に抱き寄せた。
「そんなことしないさ、フランが俺のことを家族って思うなら俺とフランは家族だ」
「ずっと‥‥?」
「あぁ‥‥フランがそう思うならな」
「‥‥うん♪」
胸の中で嬉しそうに頬擦りしてくるフランは、しばらくしてから背中に移動する。
そこが落ち着くのか、小さな寝息が聞こえる。
「‥‥寝ちまったか、安心したのかな?」
「なあ悠治‥‥血も種族も全く違うのに家族って言えるのか?」
魔理沙が少し不機嫌な顔で聞いてくる。
「そういうのじゃないんだ‥‥知ってるだろ、フランは何百年も地下にいて、誰からも愛情を受けることが出来なのをさ‥‥あの時初めてフランは安心できる場所を見つけたんだろうな、本当に嬉しそうに微笑んでた‥‥だからこそフランは、俺も家族の一員って言いたいんだ」
「‥‥じゃぁもしもな、家族に勘当された奴がいたらどうする?」
「どうだろうな‥‥それがまだ浅いならやり直せば良い、家族ってのは掛け替えのないたった一つの肉親だ。いくら亀裂が深くても血が繋がってるのには変わりはない、一からでもやり直せって言うかな?でもどうしようも出来ないのなら何も言わない」
「え?‥‥どうして?」
魔理沙は少し驚いたように首を傾げた。
「辛いだけだろ?それで心に傷を付けたらどうしようもない、治すには時間が掛かるし支えてくれる誰かがいないと苦しくなるだけだからな」
「‥‥くっ‥‥ごめん悠治‥‥!!」
魔理沙はいきなり図書館から飛び出て行った。
「あ、おい魔理沙!!」
「早く行ってあげたら?というか男なら行くべきよ」
「わ、分かった。小悪魔、フランを頼む」
小悪魔に背中のフランを預け、急いで魔理沙を追った。
~紅魔館 門前~
「美鈴、魔理沙どこに行った?」
「魔理沙さんですか?ついさっき魔法の森に飛んで行きましたよ、何かあったんですか?」
「俺も何のことだかさっぱりだが、追いかけねえと!」
陰陽玉を展開して魔法の森へ向かった。
‥‥少女追跡中
「魔理沙、どうしたんだよ!」
箒に乗り、高速で移動する魔理沙に漸く追いつき止める。
「なんか不味いこと言ったか?言ったのなら謝る」
「悠治は何も悪くない‥‥別に何でもないから‥‥」
「何でもないわけないだろ、じゃあどうしてそんなに辛い顔をしてるんだよ?」
魔理沙の表情は辛く苦しい顔を浮かべ、それを帽子を深く被って隠そうとしている。
「なあ一体どうしたんだ?」
「‥‥何も言わないんだろ‥‥」
「え‥‥それって‥‥ごめん、悪かったよ‥‥これ以上は聞かない」
魔理沙に背中を向け、高度を下げて地上に降りる。
「‥‥ゆ‥‥悠治!!」
地上に降て、歩きだそうとしたら上から声が聞こえ振り向くと、魔理沙が空から飛び降りて来た。反動で倒れたが、俺はしっかりと魔理沙を受け止めた。
「っと、今度はどうしたんだ?」
「‥‥私のこと何も聞かないの?悠治は昔の私知らないでしょ‥‥」
「‥‥別に良いさ。辛いんだろ?なら無理に話すことなんてない」
魔理沙をゆっくり離そうと肩に手を掛けたが、強く抱き着いて離れようとしない。
「お、おい‥‥」
「‥‥お願い、傍に居させて‥‥今離れたら私‥‥どうなるか分からない‥‥」
「魔理沙‥‥」
「(彼女を受け止めてあげるの)」
「(茜?)」
急に俺に憑く茜が話し掛けくる。その口調はいつもより穏やかな話し方であった。
「(もう分かっているんでしょ、今の魔理沙は悠治に助けを求めてるんだよ?なら声を掛けてあげて)」
「(でも、これ以上言うのは逆に傷付けるだけだろ。そっとしておいた方が‥‥)」
「(魔理沙には君が必要なんだ。代役なんていない、しっかり彼女の気持ちを受け止めて楽にさせて。これは悠治にしか出来ないことだよ)」
俺の中から茜を感じなくなり、何処かへ行ってしまった。
「(‥‥)‥‥魔理沙、顔をあげて」
「‥‥何?っん‥‥」
顔を上げた魔理沙の唇に優しく口付けをした。魔理沙は驚く素振りもせずキスを受け入れた。
顔を離すと、目を涙で潤わせた魔理沙がじっと見つめていた。
「悠治‥‥あ‥‥あのね‥‥」
「何も言わなくていい‥‥魔理沙が安心するまで俺が傍に居てやる‥‥」
「‥‥うん‥‥できたらこれからも‥‥///」
「ん?何か言ったか?」
「‥‥なんでもない」
顔を埋めて何て囁いたのか聞き取れなかった。そして埋めたまま言った。
「‥‥悠治は私の悠治だからな‥‥誰にも渡したくない‥‥フランドールに何言われても私だって悠治のこと大好きだから」
「フランも同じくらいの気持ちだと思うぞ、ただその好きって形が違うだけ‥‥フランは大切な家族だから、魔理沙は違うだろ?」
「‥‥言わない‥‥悠治と一緒の気持ちって感じるから‥‥///」
魔理沙は俺の胸に耳を当て、心臓の鼓動を聞いている。
俺も魔理沙の素直な気持ちを感じられた。
その後紅魔館に戻ると、レミリアや他に来ていた人達の視線(主にアリスとかパチュリーとか)が異様に痛い気がした。
何事もなかったが、賑わいつつも何かと嫌な感覚を抱いていたのは余談だ。
紅魔館での宴会と言ったな‥‥あれは嘘だ。
まあ余談で軽く触れましたが‥‥
ぐぅ‥‥彼女達の暴走を抑えるのがそろそろキツくなってきた‥‥それだけはなんとしてでも阻止しなければ。