二十話:博麗神社にて
更新完了です!!
前々から更新遅くなると言って変わってないのは何故だろう‥‥
そろそろ彼女の恋心を進展させたいなぁ‥‥先は長いけど
前書きは愚痴りましたが、どぞどぞ
「‥‥よし、完璧だな」
肩をぐるぐる回して調子を確かめる。二週間寝たきりだったため、少しの間永遠亭で体を慣らしていた。
「結構日を空けちまったからな、早めに戻らないと‥‥」
「不知火さん、失礼しますね」
外から声が聞こえ、襖が開く。兎耳を生やして俺のいた外の世界と似た現代風の服を着た少女が入って来た。
「師匠から退院の許可が下りたので、その報告しに来ました」
「鈴仙か、まあ許可がなくたって今日出ていく予定だったし丁度良かったよ」
「なら、師匠に退院を引き延ばすように言いますか?」
「すまん、それだけはやめてくれ‥‥」
鈴仙の言葉には冗談の欠片もなく、俺は但謝ることしか出来なかった。
「実際はまだ完治してないんですからね、無理をしてベッドに逆戻りだけは止めてくださいね」
「あぁ、分かってる」
鈴仙からの忠告を聞きながら、自分の荷物を揃えた。と言ってもあるのは修業用に持って行った小さい革袋と陰陽玉、霖之助さんから貰った刀ぐらいだ。
それらを担いで廊下に出た。
「いろいろ世話になったな、永琳達にもそう伝えてくれ」
「此方こそ、患者なのに家事などの手伝いをさせてしまって」
「別に良いさ、ベッドで寝ているより何ぼかマシだったし、体が鈍っちまってたからな。ま、少しは役に立てたか?」
「少しどころか大助かりでしたよ?やれる範囲をやってもらいましたが不知火さんの仕事の早さ、流石でした。他の兎達は見習って欲しいものです‥‥」
ハァ~っと溜め息を漏らす鈴仙を見て苦笑いをする。此処にいる間、一番仕事をしていたのは鈴仙だった。他の兎達も動いていたが一匹一匹の仕事量が小さいので、結局は鈴仙一人で切り盛りしているのと変わらない訳だ。
「不知火さんが居てくれましたから此処最近は楽でしたけど‥‥」
「ははっ‥‥これからまた大変になるな。でも、鈴仙なら大丈夫だろ」
「ありがとうございます、不知火さん」
鈴仙は俺に礼を言って頭を下げる。
「その堅っ苦しい敬語はやめてくれ、普通で良いから」
「そう?なら悠治って呼ぶね」
「その方が話しやすいからな。あともう一つ良いか?」
「?」
首を傾げている鈴仙に体を向けて少し近付く。
「えっと‥‥何?」
「前から気になってたんだが、何で目を見せようとしないんだ?」
「!?‥‥それは‥‥私の能力のせいなの」
「鈴仙の能力?」
「うん、私の能力は『狂気を操る程度の能力』、私の目をまともにみたら人は簡単に狂うの。だから見せられない」
鈴仙は目を見せないように顔を逸らす。
そんな鈴仙に一言いった。
「そんなことか」
「‥‥え?」
「そんなことでずっと逸らしてたのか、自分の能力だろ?自信持て、そうやって逃げるのはやめろ」
「別に逃げてる訳じゃ!!」
「じゃ、見せてくれないか?君の目」
「っ‥‥どうなっても知らないからね!!」
鈴仙は逸らしていた顔を俺の方へ向け、視線を目へ向けた。
睨むような鈴仙の目はルビーのように赤かった。
「綺麗な色してるじゃないか、ちゃんと顔を見せた方が君は綺麗だよ」
「な、何ともないの‥‥?」
「言ったろ?自信を持てって。目を見せないより、人を狂わせないように力を制御するって考えてみなよ。後は君次第だが」
キョトンとした鈴仙の顔にポンと頭に手を乗せて笑顔を見せる。
「んじゃ、鈴仙の目も見れたことだし‥‥」
後ろを向いて廊下の方へ歩いていく。そのまま正面の庭の石畳に置いてあった自分の靴を履いた。そして地面を蹴って足の位置を整えてから、陰陽玉を取り出す。
「またな鈴仙、仕事頑張れよ!」
「あ‥‥うん、またね‥‥」
手に持った陰陽玉に霊力を込めて地面に投げる。陰陽玉は人一人分の大きさになり僅かに宙に浮く。
俺はそれに乗り、天高く飛び立った。
「‥‥」
「イナバー、何処に居るのー?頼みたい事があるんだけどー‥っていたいた」
黒く長い髪の女性が固まっている鈴仙を見つける。
「イナバ、居るなら居るって言いなさいよ。??‥‥ちょっとイナバ聞こえてる!!」
「‥‥あっ‥‥姫様‥何かご用ですか?」
「何かじゃないわよ、ぼーっとして。イナバに頼みたい事があるの」
「すいません、分かりました」
そう言って、黒髪の女性と鈴仙は永遠亭の奥へと消えていった。
~博麗神社付近 上空~
「ふぅ~‥‥正直茜がなんとかしてくれなかったら危なかったな‥‥」
「(私が悠治の精神を維持していなかったら、狂気に呑まれていたわよ)」
「あぁ‥‥流石に俺の力じゃ無謀過ぎたな‥‥」
あの時、鈴仙の目を見た瞬間、頭がおかしくなり何が何だが分からなくなった。
直ぐに茜が戻してくれたが、あのまま狂気に呑まれていたらと思うとゾッとする。
「(にしても‥‥悠治、一体何を考えているんだ?無謀と分かって何故やるんだい?)」
「何も考えてなかったな。俺は但、鈴仙の目をちゃんと見てみたかっただけさ」
「(それと、君はよくあんなことを簡単に口走るかねぇ‥‥)」
「俺が何か変なこと言ったか?」
顎に手を当て、鈴仙との会話を思い出しても、一切思い当たる節が全くない。
「(‥‥いいよ、どうせ考えたって出てこないのが関の山でしょ)」
「??‥‥あ、見えてきたぞ」
正面の丘に目をやると、一際目立つ赤い鳥居が見えてくる。
「(へぇ、あれが幻想郷の結界を管理している博麗神社って場所なんだ)」
「兼、俺の居候している場所。久しぶりだなこの風景」
鳥居の上を通り、境内の中心に降りた。
陰陽玉を小さくして仕舞い、縁側の方へ歩いていく。
「今は昼前だから多分‥‥お、予想通り」
目をやった先には、紅白の変わった巫女服を着た少女が座ってお茶を飲んでまったりしていた。
「よう霊夢」
「え?悠治!?あんたもう出てきたの!?」
「‥‥なんか囚人が釈放されたみたいな言い方だな‥‥」
唖然とする霊夢の言葉に、苦笑いしながら答える。
「いくらなんでも早過ぎるでしょ!あんな大怪我一ヶ月そこらで治るわけないでしょ」
「それはだな‥‥無理矢理退院させてもらったんだ。どうもベッドの居心地が悪くてな」
「はぁ‥‥馬鹿にも程があるわ」
霊夢は溜め息を吐いて呆れ果てる。俺は呆れている霊夢の隣に座り、空を眺めた。
「此処からの風景も久しぶりだな、俺が修業に行くって言ってから一年近くか‥‥なんか長かったような短かったような変な感覚だ」
「何言ってんだか、九死に一生を得た人が良くそんな平和惚けなこと言えるわね」
「別に良いだろ?本当のことなんだし。それに「ゆ、悠治!?」‥あ、魔理沙か」
境内の方に目を向けると、黒い服に白いエプロンのようなのを付け、黒いとんがり帽子を被った少女が近付いてきた。
「な、何で悠治がいるんだぜ!?まだ治っていないんだろ!?」
「まあ簡単に言えば、無理矢理退院した‥‥かな?でも、体は何ともないから心配すんな」
「本当か‥‥?」
「なら一戦交えてみるか?」
そう言って手に持つ刀を見せる。魔理沙は顔を小さく横に振る。
「そうか、ならいいか。で、今日はどうしたんだ?でかい袋持って」
「あ‥ああこれのことか?森で大量にキノコが採れたんだ、霊夢に少し分けようと持って来たんだぜ」
そう言って手に持っている袋を霊夢に見せた。霊夢は小さな溜め息の後、ジト目で魔理沙を見る。
「また変なの混ざってるんじゃないでしょうね?」
「だ、大丈夫だぜ!今回はちゃんとしたのしかない!‥‥筈だぜ」
「どういうことなんだ?」
霊夢に魔理沙が持って来たのを嫌う理由を聞く。何故か露骨に嫌な顔をしながら話す。
「前にも同じように持って来て貰ったんだけど変なキノコが沢山あったのよ‥‥」
「そんなにあったのか‥‥」
「だって妙に長いのとか、白い水玉の入った赤いのとか、その緑色版のとか、青いのとか、発火するのとかもういろいろ‥‥」
「因みに霊夢が言った青いキノコは薬草と合わせると効力が増すんだぜ!」
「いらない知識を有難う‥‥はぁ‥‥」
何と言うか‥‥俺も魔法の森で修業してたからいろんな茸を見てきたが、場所が場所だったのか普通に見たことあるのしか生えてなかったからそんなのがあることなんて知らなかった。
「まあ、食えるものを持って来たって言ってるんだから大丈夫何じゃないか?」
「丁度昼時だしこのキノコでキノコ料理でも作らないか?」
「‥‥それもそうね、でも危ないと感じた物は棄てるか無理矢理食わすからね?」
霊夢の睨む目は、脅しではなく本気でやり返す目をしていた。魔理沙はそんな霊夢を気にせずに博麗神社の中に入った。
「俺も手伝うぞ」
「悠治は体を休めてなさい、どうせ永遠亭でも同じこと言って休もうとしなかったでしょ?」
「霊夢には全部お見通しって訳か‥‥それじゃ、お言葉に甘えて」
腰に縛っておいた荷物の紐を解き、枕代わりに頭の下に置く。
「‥‥‥(すぅ~すぅ~)」
「はっや‥‥余程疲れてたのね、本当に何のために永遠亭で治療をしてのやら‥‥」
霊夢は静かに眠る姿に呆れ果てつつ、その場を後にした。
不意に目を醒ますと縁側に居た筈の俺が全く別の場所に寝ていた。
一言で言えば河川敷の土手だ。
「‥‥また茜の空間か?懐かしい場所だな此処は」
「私と悠治が初めてあった場所って覚えてくれたんだ」
目線を上に上げると、あの時と似たように茜が立っていた。容姿はあの神社の巫女服だがあの時と変わらない茜の立ち姿だ。
「当たり前だろ、俺にとってこの場所はもう一度来たかった場所だったからな」
「たとえこの場所が私が作った空間で、現実じゃなくても?」
「ああ‥‥もう外の世界には俺が居る場所なんて無い、今思えば俺は幻想郷に逃げてきたもんだよな」
「はははっ‥‥」と小さく笑い、起こしていた体を倒して寝る体勢に入る。
すると、隣に気配を感じた。多分茜が座っているんだろう。
「‥‥悠治は逃げてなんかいないよ、だって仕方ないことなんだから‥‥」
「結局は逃げたと変わりは無い、誰も‥‥早苗ちゃんも何も知らないし、もう一生会わないほうが良いんだ‥‥」
目を瞑ったままそう答える。しばらく無言が続き静かな時間が過ぎていく。
「ねぇ悠治、起きてる‥‥?」
「ん?起きてるけど?というかこの空間でも寝れるのか?」
「うん、大丈夫だよ。まだ疲れ取れてないでしょ?」
「‥‥かもな、現実の俺は眠っているし、此方でも休んでいれば回復は早くなるだろ」
「じゃあ、もっとリラックスさせてあげる♪体起こして」
「一体どうすんだよ?」
体を起こすと、茜は俺の後ろに回り優しく抱き寄せた。しっかりと人の温もりを感じられ、心が安らぐ。
「どう?リラックス出来てる?」
「確かに気持ちは良いけど‥‥茜って霊体じゃないのか?まるで生きてるみたいに茜が暖かいんだが」
「私が作った空間内ならこうやって悠治に触れられるの、昔みたいにね」
そう言って俺を抱きしめている茜の腕が強くなる。
「(こんなこと出来るのは此処だけだし、私は死んでいる身‥‥いずれは悠治からも離れることになるのよね‥‥だから今だけは悠治の傍に居たい‥‥良いよね)」
「茜?大丈夫か、少し震えてるぞ?」
「ううん、大丈夫。それより悠治は体休めて‥‥」
「そうか‥‥昔は気にして無くて分からなかったな、茜の体温がこんなに心地好いなんて‥‥」
少しずつ薄れていく意識を加速させるかのように茜に更に強く抱きしめられた。
「寝ちゃった‥‥もう、何でそんなこと言えるかな‥‥悠治のバカ///」
茜は眠ってしまった悠治の顔を覗いて、頬にキスをする。
「私が出来るのはこれが精一杯‥‥」
茜は目を閉じて自分の空間を消していく。最後まで悠治の温もりを感じていた。
その後、俺が起きると丁度魔理沙たちが昼食を作り終えていた。霊夢曰く、今回は魔理沙にしてはまともな方だったと言う。
‥‥らしいのだが、霊夢は辛いと火を噴き、魔理沙はいろんな表情をしながらのた打ち回ったのは余談だ。(因みに俺は何ともなかった)
書いていくに連れて茜さんがチート化していく‥‥キャラ構成を考えてたときはそこまでじゃなかったのになぁ‥‥
此処まで来たら真面目にこの人の能力を考えるべきかな?
ではではまた。