十八話:消えぬ翼~受け入れた過去
ぬぅ‥良いタイトルが浮かばなかったな‥‥
相変わらずの執筆力ですがどうぞです!
今回は三人称から始まります。
2/4追記:文章に間違いがあったので再投稿です。
「‥‥‥?」
悠治が目覚めると、夕焼け色に染まった謎の空間に仰向けで倒れていた。
「‥‥俺、妖夢に刺された筈だよな」
刺された部分を触ると傷口は無くなっいる。状況が全く掴めない悠治は腕を組みながら考える。
「ん~‥‥これは‥‥夢?」
「まぁ、そんなもんだね」
「!?」
突然後ろから女性の声が聞こえ振り向く。そこには悠治にとっては目を疑う女性が立っていた。
「相変わらずオーバーリアクションねぇ」
「え?‥‥何であんたが‥‥」
「久しぶりねぇ悠治、あれから何年経ったかしら?」
悠治は今、目の前で起きている事が理解出来てなかった。それは居るはずのない人が居るからだ。
「やっぱり‥‥夢‥なのか?」
「正確には私の術で悠治の精神だけが此処に居るわけ、理解出来た?」
「‥‥無理だ、信じきれない‥‥」
頭を抑えて首を横に振る。悠治にとってはこれが夢であってほしい‥あの時の記憶が蘇ってきてしまい、悲しくなり気持ちの整理が着かないからだ。
「‥‥仕方ない、おりゃ!」ムギュッ
「わっぷ!?」
彼女は悠治に抱き着き、自分の胸に押し当てる。悠治は悶えて放れようとするが、一向に放れようとしない。
「く、苦しい‥‥!!」
「私の名前をちゃんと言えたら放してあげる」
「あ‥‥かね‥‥」
「ん?聞こえないぞぉ?」
「茜!放せよ!!」
名前を叫ぶと、悠治を放し満面の笑みを見せた。
一方悠治は咳き込みながら彼女を見る。
「ゲホッゲホッ‥‥ったく‥分かったよ、信じるよ‥‥」
「んふふ、分かればよろしい♪」
茜の変わらない性格に悠治は嬉しい気持ちもあるが、やはり彼女の死は悠治に深い傷を付けた。それをグッと心の底に押し込め、いつもと変わらない顔をする。
「悠治、何で私が喚んだか分かる?」
「いや、全く検討も着かないが?」
「まぁ無理もないか‥‥そろそろ出て来たらどうなの、妖怪の賢者さん?いや、スキマ妖怪と呼ぶべきかしら?」
そう言うと空間が裂け、その中から一人の女性が上半身だけ出して現れる。
その姿は、以前悠治が出会った時の紫色の洋服ではなく、紫の式、八雲藍と似た白い和風の服を着ていた。
「どっちでも良いけど、貴女は私の名前も知っているようね‥‥(まさか私の僅かな妖気に気付いたというの?なんなのこの人間は‥‥)」
「ええ、八雲紫さん?因みに此処は私が作り出した空間、貴女がいたことくらいお見通しなのよ」
僅かに動揺する紫に対し、茜は悠々とした顔をしている。
「あんたが八雲紫‥‥俺を幻想郷に連れてきた張本人‥‥」
「私に恨みでもあるの?不知火悠治君?」
紫の言葉に悠治はゆっくりと首を横に振った。紫は少し驚いた顔をするも直ぐに元の表情に戻す。
「あら意外、てっきり恨みを晴らされるかと思ったわ」
「最初はそう思ってたさ。‥‥家族に何もいえなかったからな‥‥でも幻想郷は俺みたいな変わり者でも受け入れてくれたんだ。友達も居るし、今は此処が俺の居るべき場所だ。だから感謝しているよ」
「そう言ってくれるのね。それじゃ改めて、幻想郷にようこそ」
紫は悠治に笑顔で握手を求める、悠治も小さく笑って紫の手を握り握手をする。
握手している手を放すと、手を叩きながら茜が入って来た。
「はいはい、仲直りはこれくらいにしといて本題に移らないと、時間は無限じゃないんだから。さて、いきなりだけど悠治、私を憑依してもらえない?」
「‥‥は?」
「だから私を憑依してもらいたいの」
茜の突然の発言に悠治は首を傾げる事しか出来なかった。というのも茜が言ったことが理解出来なかった。
「別に良いじゃない、乗っ取ろうとしてる訳じゃないんだし。守護霊が付くって思ってさ♪」
「いやいや‥‥何でそんな簡単に言うんだよ、怖いし嫌なんだけど‥‥」
「面白そうじゃない。やってみなさいよ、貴方のためになるかも知れないわよ?」
引き気味に断る悠治だが、紫が面白半分で奨められる。何か裏があるような顔をしているのを悠治は感じ取った。
「じゃあ聞くが、何で俺に憑こうと思っているんだ?答えによっては考えるぞ」
「一番の理由は悠治のためなの、今は何ともないと思うけど実際の悠治の体は危険な状態なのよ‥‥」
「え‥‥?なんでそんなこと知ってんだよ?」
「ずっと見ていたからね、妖怪の賢者さんも知ってた見たいだけど」
悠治は紫の目を見た。その目は確かに何かを知っている目だった。
「俺は‥‥俺の体はどうなってんだ!教えてくれ紫!!」
「あまり良い状態じゃないわ、出血も酷かったし細胞の一部が破壊されているらしいの‥‥今、貴方の体は幻想郷一の医者に見せてるわ。後は本人の気力次第らしいわよ」
「今の悠治じゃ、唯死ぬのを待つだけ‥‥私なら悠治を助けられる、君にはまだ生きてもらいたいの。友達を悲しませないためにも(あの娘のためにもね)」
茜の言葉に悠治は頭を強く抑える。
少ししたあと、悠治は顔を上げた。
「分かった、俺もまだ生きていたい‥‥皆との約束を守らないとな」
「うん、それでこそ悠治だ!それなら早速始めるよ!」
「なら私は外に戻るわ、待っているわよ悠治君」
そう言って紫はスキマに戻っていった。
「さて‥と‥‥悠治、手出して」
「こうか?」
悠治は手の平を上にして茜に見せる。茜は一枚の札を渡す。
「札?こんなの渡されても此処の俺は精神体なんだろ?」
「簡単に言えばこのお札は、私が悠治に憑くための契約書みたいなもんだから。何もないよりは良いしね」
手に置かれた札は光の粒になって悠治体に消える。そして悠治の手の上に茜は手を置いた。
「‥‥よし、それじゃいくよ。私が完全にいなくなったらこの空間は消えるから、そしたら悠治は元の場所に戻れるから」
「茜‥‥あの時のことを俺は忘れることは無かった、だから‥‥」
そこで言葉を止まり俯く。堪えてた感情が溢れ返り、言葉が詰まる。だが顔を上げ、強い眼差しで茜を見た。
「俺は誓う、俺の周りにいる大切な人は絶対に守る!もうあんな悲しい想いは俺だけで充分だ!」
「ふふっ、悠治らしい‥‥但し、無理しちゃ駄目だよ?誰かに頼っても良いじゃない、もちろん私にもね」
「ああ、その時は頼むよ」
茜が微笑むと体が薄くなり辺り一面光が覆う。茜の体が消え、光が悠治の中に注がれていく。
光が全て注がれると、急に悠治の意識は薄れていった。
そして完全に意識が途絶えた。
~悠治Side~
「!?つっ‥‥!!」
飛び起きると体に激痛が走り、腹部を抑える。その痛みで此処が現実だと知る。
「!!!‥‥っはぁ‥はぁ‥‥」
「‥‥ゆ‥ゆう‥‥じ‥?」
隣から俺を呼ぶ声が聞こえ、顔を向ける。そこにはキョトンとした顔の魔理沙が帽子を抱えて座っていた。
前屈みになった体制を戻しながら魔理沙に質問した。
「‥‥ま‥魔理沙か‥‥なぁ此処ってどっ!!?」
いきなり魔理沙が俺の胸元に飛び込んできた。突然のことで吃驚してしまい、心臓の鼓動が早くなる。
「ちょっ!?‥‥ま、魔理沙!?///」
「よかった!!もう起きないかと思った、一生このままかと思った‥‥」
「お、おい‥‥///」
俺の胸元に埋めていた魔理沙が、顔を上げる。何故か目が潤んだ魔理沙の顔、その顔はちょうど俺の顔の目の前にあった。
魔理沙は顔を真っ赤にして慌てて離れる。俺の方もどうしたら良いのか分からず、頬を掻きながら魔理沙から目を逸らす。
「ご、ごめんだぜ‥‥///傷口障ることしちゃって‥‥///」
「い、いや大丈夫だ‥‥///」
俺たちの周りに気まずい空気が流れる。お互い黙り込んでしまってすごく重い‥‥
「な、なあ魔理沙、此処は何処なんだ?///」
「え!?///‥‥え、ええっと‥‥///」
顔を逸らしたまま魔理沙に此処の場所を聞くが口籠もってしまい、会話が止まって重い空気がまた流れる。
コンコンッ
ドアをノックする音がし、(多分魔理沙も)体をビクッと震わせた。「入るわよ」と女性の声と共に紺と赤の服を着た医者らしき女性が入って来た。その後ろには兎耳を付けた少女もいた。
「あれから二週間経った‥‥って‥嘘でしょ‥‥うどんげ、私の部屋から患者のファイル取ってきて頂戴」
「え?‥‥あ、はい」
兎耳の少女がそそくさと部屋から出ていった。女性は俺の近くまで来、身体の状態を見て唖然としている。
「信じられないわ、昨日までは目を覚ますかどうか分からなかったのに‥‥一体何があったの?」
「ああ‥‥「少し話したらどう」‥紫か」
空間にスキマが開き、声の主の八雲紫が出てくる。そのスキマからもう一人女性が出てきた。
「どうも、あの時はありがとうね」
「ええっと‥‥」
「西行寺幽々子よ、あの時妖夢を連れて来たでしょ?あの子の主なの、よろしくね悠治君」
「紫とかに俺の名前聞いたのか‥‥」
幽々子さんは扇子で口元を隠しながら小さく笑う。
「それで?何か知っているのかしら?」
「ええ、でもこの話しは彼から聞いた方が良いわ。別に良いわよね?悠治」
「あ、ああ‥‥そうだな‥‥」
大きく深呼吸し、気持ちを整えて話しをする。俺があの場所であった出来事、俺に憑いた茜という人物のことを話す。
「‥‥‥ということなんだ」
「成る程ね‥‥」
「師匠!持って来‥きゃ!?なな、何ですかこんなに集まって!!?」
うどんげと言われていた少女が部屋の威圧感に圧倒され、腰が引いている。
「お邪魔してるわよぉ」
「随分と人が集まったわね‥‥」
確かに‥‥この部屋は個室より少し大きいくらい
「さて、今日はここまでにしましょうか。悠治も目が覚めたんだし、この話しは日を改めましょ」
「私もぉ、どうやら大丈夫そうだし良かったわぁ」
「そ、それじゃ私も帰るぜ‥‥ま、またな‥‥///」
紫と幽々子はそのままスキマに戻り、魔理沙も病室を出ていく。兎耳の少女は小さな溜め息を吐いてから師匠と呼んだ人にファイルを渡した。
「そういや名前聞いてないから何て呼べば分からないんだけど‥‥?」
「そうね言ってなかったわね‥私は八意永琳、永琳でいいわ。此処で薬師をしているわ。で、こっちは鈴仙・優曇華院・イナバ、私の弟子で身の回りの手伝いをしてくれているの」
「永琳と‥‥鈴仙でいいのかな?」
顔を鈴仙の方へ向けると顔を逸らして目を見せようとしない。
「えっと、言いやすい方で構わないです。あと私の目は見ないほうが良いですよ?」
「‥‥?」
鈴仙の言葉に首を傾げる。何か理由があるようだが、それを聞くのは止めておこう。
「‥‥っえ?永琳って医者じゃないの?」
「大丈夫よ、医療の知識はちゃんと知っているし、経験もしているから安心して」
永琳の目は真剣だ。この人なら充分安心出来るな。
「にしても貴方、本当に普通の人間なの?人間で、しかも外来人なのに霊力が強すぎなのよね‥‥あの茜って言ったかしら?その子が憑く前でも相当よ?」
ファイルの中の資料を見ながら永琳は俺に質問してくる。思い当たる節がありすぎて何処から話せば良いのか分からず頭を抱える。
「まあ無理に言わなくてもいいわ、過去には言いたくないこともあるものね」
「いや、大丈夫だ‥‥昔いろいろあったからな、今もだけど」
永琳の言葉が図星だった為、苦笑いで返すしかできなかった。
「そういや、此処は何処なんだ?」
「此処は迷いの竹林の中にある永遠亭という場所よ。竹林は迷いやすいから無闇に出歩かないことね」
「わ、分かった‥‥気をつけるよ」
迷いの竹林の話しは聞いたことがある。外から見れば竹林の背丈はかなりのものだが、迷うほどではない。しかし一度入ってしまうと、脱出は困難と言われていて、人里の人達はあまり近寄らないらしい。
それと何故か落とし穴とか盥とかの罠が仕掛けられてるとかなんとか。
「さてと、今日は一日安静にしていなさい。いくら体力の回復が早くても、傷はまだ癒えてないわ」
「一刻も早く退院したいんだけど‥‥」
「これは医者からの命令よ」
「師匠の言う通りです。そんなに早く退院しても、またベッドに逆戻りですよ?」
「‥‥はぁ、仕方ないか‥‥」
二人から念を押され、今日は一日体を休めることになった。
どうも内容が大雑把になってしまう‥‥
いろいろ御指摘頂きたい所存です。
次回は何時になることやら‥‥忙しくなってきたし、月一ペースじゃ無くなってきますね‥‥
出来るだけ間を空けないよう努力していきますので、今後もよろしくお願いします。