第11話 天空のハブ・アンド・スポーク
王都の空は、かつてないほど「騒がしく」なっていた。
だがそれは、魔王軍の襲来でも、不吉な前兆でもない。サトシ・クドウがもたらした、新たなる「流れ」の音だった。
「……第9フェーズ、『天空の動脈』の構築を開始します。マリーナが拓いた海運と、リンネが敷いた陸路。それらを垂直に繋ぐのが、この航空物流です」
王都を一望する北側の高台――サトシの指示で建設された、世界初の「魔導飛行場」の管制塔。
サトシは194cmの巨躯を窓際に立たせ、滑走路へと降りてくる翼の群れを見つめていた。
30歳。硬質で完璧な美貌。彼が纏うのは、高高度の低温にも耐えうる特注の防風ロングコートだ。そのブルーグレーの瞳は、地上の喧騒を通り越し、雲の上の「最短ルート」を既に読み切っていた。
「サトシ様、計測完了しました。ワイバーンによる積載重量は、あなたの設計した『軽量航空コンテナ』によって、従来比で210%向上。空力の乱れを抑える術式も、完璧に同期していますわ」
サトシの隣で、複雑な魔導計器を操作するのはミラだ。
知的なエマ・ワトソン風の美貌を持つ彼女は、今日はフライトジャケット風のタイトな衣装に身を包んでいた。165cmの細身の体をサトシの194cmの影に滑り込ませ、彼にだけ聞こえる声で淡々と、しかし信頼を込めて報告を続ける。
「これで、王都から魔王城の目と鼻の先にある『断絶の渓谷』まで、わずか4時間で物資を運べます。……陸路なら2週間かかる場所を、です」
「素晴らしい。……だが、それを操る『翼』が足りないな。……アイリス、前へ」
サトシが呼ぶと、滑走路の端で巨大なワイバーンをなだめていた一人の女性が、颯爽と歩み寄ってきた。
航空輸送部隊「天翼」の隊長、アイリス。
21歳の彼女は、健康的で力強い美貌を誇っていた。
身長170cm。激しい空中機動に耐えうるよう鍛え上げられたしなやかな肢体は、露出の多い飛行服の中で躍動感あふれる美しさを放っている。金褐色の髪を無造作にまとめ、青空を映したような澄んだ瞳には、王立航空騎士団の家系に生まれた誇りと、勝気な笑みが宿っていた。
「待たせたね、サトシ! あんたの作ったこの『アルミの箱』、最初は重いと思ったけど、風を切ってみたら魔法みたいに軽いよ! 私の相棒も、これならいくらでも飛べるって喜んでる!」
アイリスはサトシの目の前で足を止め、挑発的に腰に手を当てた。彼女の持つ「太陽のような明るさ」と、戦う女性としての「強さ」が混じり合ったオーラは、現場の荒くれ乗り手たちを一瞬で従わせるカリスマ性を放っている。
「……アイリス、速度は確保できても、精度が欠けては物流とは呼べない。……着陸誤差は?」
「ふふ、そんなの聞くまでもないよ。あんたの引いた『魔導誘導灯』の通りに降りれば、針の穴を通すような着陸だって余裕さ。……ねえ、サトシ。この任務が成功したら、今度は私を乗せて、もっと高いところまで連れて行ってくれるんだろ?」
アイリスはサトシの至近距離まで詰め寄り、194cmの彼を見上げた。24cmの身長差。彼女の健康的な肌から漂う、潮風と革の混じった香りが、サトシの冷静な思考を一瞬だけ揺らす。
「ちょっと! アイリス! あんたまでサトシを口説く気!?」
そこへ、管制塔に駆け込んできたのはエララだ。
若々しい美貌を誇る彼女は、ゴールデンブロンドの髪をなびかせ、アイリスとサトシの間に割って入った。
「サトシは今、私の『領主としての威信』をかけた国家事業をやってるんだから! 不届きな空の女はあっちに行きなさい!」
「あはは、エララ様は相変わらず可愛いねぇ。でも、サトシみたいな『強い風』を乗りこなせるのは、私みたいな女だけだよ?」
アイリスが不敵に笑うと、背後から他のヒロインたちも続々と集結した。
アッシュブロンドを美しくまとめたリディアが、航空便の「配送ダイヤ」を手に微笑む。
172cmのワイルドなユーナが、地上輸送との連携を確認しにくる。
サファイアブルーの瞳を持つセラフィナが、空路開通による「運賃収入」の予測をサトシに耳打ちする。
漆黒の瞳のプリヤが、空からの諜報網をサトシの影から報告する。
透明感あふれるリンネが、飛行場の舗装強度を誇らしげに語る。
そして、美脚のマリーナが、海運と空運の「インターモーダル」をサトシの隣で論じる。
194cmのサトシを囲む、9人の絶世の美女たち。
エララ、リディア、ユーナ、ミラ、セラフィナ、プリヤ、リンネ、マリーナ、そして新しく加わったアイリス。
それぞれの最高の輝きを反映した彼女たちが、それぞれの専門分野でサトシを支え、同時にその「唯一無二のパートナー」の座を狙って火花を散らす。そのビジュアル密度は、もはや一つの王国を優に凌駕していた。
「……全員、持ち場へ。これより、第1次航空配送を開始します」
サトシの冷徹な号令が響く。
◇◇◇
魔王城へ至る最後の難所、「断絶の渓谷」。
そこは強力な魔力が渦巻き、徒歩では数週間、地上部隊の進軍はほぼ不可能な死の地だった。
その渓谷の麓で、魔王軍に包囲され、飢えと疲労で極限状態にある軍勢があった。
勇者アルフォンスの残存パーティだ。
「……ああ、もう終わりだ。水も、矢も、食糧も……何一つ届かない」
アルフォンスの黄金の鎧はもはやボロボロになり、かつての輝きを失った目で空を仰いでいた。
サトシを追放し、自分たちの「魔法」で全てを解決しようとした結果、彼らは物流の届かない「死の領域」に自ら入り込んでしまったのだ。
「勇者様……見てください! 空に、何かが見えます!」
女魔術師が震える指で天空を指差した。
そこには、魔王軍の飛行魔獣とは明らかに違う、規則正しい隊列を組んだ翼の群れがあった。
サトシが設計した航空コンテナを腹部に抱え、ミラの誘導魔導波に従って飛行するワイバーン輸送隊だ。
「……援軍か? いや、違う。あれは――」
アルフォンスの目の前で、数十個のパラシュートが開き、物資がゆっくりと、しかし正確に、勇者軍の陣地へではなく、その少し手前の「ヴァレリウス領出張所」へと降りていく。
「――おーい、空腹の勇者様たち! サトシ様からの伝言だよ!」
アイリスの声が、魔導拡声器を通じて上空から降り注ぐ。
「『無料の物資は終了した。パン一つ、矢一本につき、金貨3枚。……払えないなら、その聖剣を担保に預かる』だってさ! あはは、商売上手だねぇ、ウチのボスは!」
「……サ、サトシ……! お前は、こんな地獄の空にまで、道を敷いたというのか……!」
アルフォンスは膝を突き、絶望に叫んだ。
自分たちが命を懸けて這いずり回る戦場を、サトシは「最適化された配送ルート」として、空から見下ろしている。
格の違い。それはもはや、人間と神の差のように、残酷に、そして合理的に示されていた。
◇◇◇
その夜。王都飛行場のテラス。
第1次航空配送の成功を祝う祝杯が挙げられていた。
サトシは194cmの体をデッキチェアに預け、夜空を眺めていた。
そこへ、アイリスが高級なエールを持って現れた。彼女は飛行服を脱ぎ、肩を大胆に露出したパーティ用のドレスを纏っている。力強くも華やかな美しさが、月光に照らされて白く輝く。
「……サトシ。お疲れ様。あんたの言った通り、空は最高の近道だったよ」
アイリスはサトシの隣に座り、自分のグラスを彼のグラスに軽く当てた。
「……道ではありません。アイリス、これは『ハブ』です。ここを中心に、大陸全土を最短時間で繋ぐためのね」
「ふふ、相変わらず可愛くない。……でもね、サトシ。あんたが作ったこの空の道、私はずっと守り続けるよ。……だから、あんたの隣に座る権利、私にも分けてくれないかい?」
アイリスはサトシの逞しい腕に自分の手を重ね、熱い視線を送った。
その直後。
「ちょっと! 新入りが抜け駆け禁止よ!」
「アイリス様、航空燃料の計算報告がまだ終わっていませんわ。……サトシ様は私とデータの照合をする予定です」
「ふふ、サトシ様、夜の空は冷えますわ。……私の淹れたお茶で暖まってくださいな」
エララ、ミラ、リディア、そして他のヒロインたちが一斉にテラスになだれ込んでくる。
194cmのサトシを巡る、9人の絶世の美女たちの饗宴。
サトシは、自分に群がる彼女たちの熱気と、夜空に輝く「物流網の明かり」を見つめながら、冷徹に独りごちた。
「第9フェーズ、完了。……次は、魔王城そのものを『物流センター』へと改築します」
30歳の冷徹な男の瞳が、暗闇を切り裂くレーザーのように青白く輝いた。




