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襲撃

揺れている。

激しく揺れている、それは男性器。

だが、男性器の振動は特段、珍しい現象とはされていない。

例えば、職場に遅刻しそうな時。電車の発車ベルが聞こえた時。ジムのドレッドミルが回転する時。運転の荒いバスに搭乗する時―――そこではズボンの下で必ず、男性器が揺れているのだから。


だが、君は見たことがあるだろうか。

300本もの成人男性器が、芝生にありったけの射精を撒き散らしながら、こちらへと全力疾走してくる様子を。

600個もの金玉が竿からぶら下がり、対となる2つの玉がお互いに、凄まじい勢いで衝突を繰り返す光景を。


「ウ、ウ、イクウウウウウウウウウウオオオオオオオオ!!!(ピュロピュロピュロロロ!!(射精の擬音))」


数多のチンポは『群』となり、動くというかは―――もはや『蠢く』という表現が適切なようにさえ思える。

前へ後ろへと暴れる肉棒は、男達の太腿に強く打ち付けられ、ペチン、ペチンと大きな音を鳴らす。その音が幾重にも重なると、それらはまるで―――巨大な一つの生き物のように感じられた。


カーン!カーン!カーン!

澄んだ空を響かせるのは、警鈴の呼び声。

「襲来〜!襲来〜!」

「あれは……『淫臭村』の連中だ!!」


食事時。彼らの名産品のきゅうりが食卓に並ぶこの時間帯。

事態を察知した『弱珍村』の村民は、次々と家の玄関前から顔を覗かせる。だが、畏怖とも呼べるその絶大な印象を前に、村民たちはただ、扉の前で立ち尽くす他無かった。


平穏な農家として細々と暮らしていた彼らのペニスは極めて頼りなく、弱かった。対して、人の命を奪う為だけに育った『淫臭村』の武闘派ペニスは、正しく凶悪であった。彼らのブツは―――太さ、長さ、硬さ、そのスリーサイズのどれを取っても、文字通りの桁違いだったのだ。


彼らの持っていた食器が、ガチャンと音を立てる。

『あの生き物』はきっと、我らが村民の生活、文化、尊厳を、一つ残らず、喰らい尽くしてしまうだろう。

「はは……は……」

その景色を見ていた弱男の一人は、遂に自らの首をナイフで切り裂く。だがそれは、これから起こる出来事を考えれば、きっと正しい選択だったのだろう。


「嘘や……ありえへん……。奴らの先月の『厄チェッカー』は『A』だった筈や……。」ガクガク

弱男達の足元は、たちどころに濡れていく。

本来、繁栄を司る筈のその器官はもはや、村人たちにとって、『確実な死』を想起させる上で十分なシンボルとなった。


秋の夕暮れ空に照らされるオレンジ色の丘。

突如、その輪郭が暗く縁取られたかと思うと、次の瞬間には上半分が。2、3回、瞬きする頃にはその下半分が。暴れん坊おちんちん達は、今まさに丘の一面を真っ黒に埋め尽し、いよいよ村のバリケード前までやってきた。


「キャアアアアアアアア!!」

「に、逃げろおおおおお!」

「逃げろったって、どこに!?!?」


パパパパパン!パパパパパパパパパパァン!!

銃口からはマズルフラッシュ!薬室からは火薬の香り!

カラシニコフ(AK)に蜂の巣にされるのは、『弱珍よわちん村』の村民たち!


「ッシャアアアアアア!!雑魚チンポ共をぶちのめせエエエェ!!」

「女は肉袋、男はエメンタール、子供は生贄だああああああああ!!!」


生贄による厄チェッカー。

一ヶ月に一度、発生する厄災の内容を確定することができる、淫臭村の通常儀式。


先月の焼死体はAの字、すなわち『AOE心臓トマトジュース化』―――ランダムな位置に出現する『呪殺様』の周囲300m村民の心臓がトマトジュースになる厄災―――を指し示した。


収入の殆どがトマトジュースで成り立っていた『淫臭村』だったが、稀に出荷数が足りなくなると、こうやって他の村を急襲する必要があったのだ。


そして、その日―――俺は、倒壊した家の中で、ただただ非力に座り込んでいた。

俺は、指先に砂の感触を得ている。そこは室内の筈なのに―――。

数分前までは天井のあった空間に、今や青暗い空が現れている。

生温い風に乗って、土埃と硝煙の香りが外から入ってくる。そして―――遥か遠くで、破裂音と悲鳴が聞こえる。


俺の頭の中で、甲高い飛翔音がフラッシュバックする。

それがいつだったかは覚えていない。だが、爆発音と共に剥がれ落ちた壁は、俺を庇っていたママを下敷きに―――


「今月も始まったのお、『村レイド』が笑」

「フォフォ、腹の足しになると良いナァ。ォ、いい女発見♪」


血煙の向こうから、二人の影が浮かび上がる。

一人は老体。一人は大男。二人は遠くで鳴り響く銃声と悲鳴を盃に酌み交わしていた。


「フォフォ、お邪魔しま〜す。随分とデケェ家に住んでたみてェだが。」

大男は、奇妙な笑い声と共話す。

それはまるで地響きのようでもあり、警察ドキュメンタリーに登場する犯罪者のように低い声でもあった。


「今や、彼らのチンポ相応のサイズに纏まったがの笑」

老人は、満面の笑みを浮かべながら話す。右手には迫撃砲が握られていた。


煙をくぐり抜けた老人と大男。

その目線の先には、俺のママが身動き取れずにうずくまっていた。


「ママ……ママ……!」

俺は二人の前に立ち、両手を広げる。


「いいかい健太……私はもう駄目なの……貴方だけでも逃げなさい!」

「だめ!だめ!」


「フォフォフォ、泣けるなァ〜〜」ザッ

俺を押しのけ、ママの前で仁王立ちを始めたのは、全裸の大男。

首には毛艶の良い、ふわふわとしたマフラーが二重にも三重にも巻かれている。それには到底、合法的な手段で得たとは思えないような煌めきがある―――だが、それにも増して存在感を放っているのが、その股間に重々しくぶら下がった、巨大なチンポコだ。


「コラコラ、マグナム。女は生かさなきゃ駄目じゃろうて。」

「フォフォ、見ろ村長、倒壊した梁に腹が抉られちまってるォ、こいつはもう子を産めねェ。」カチャ


マグナムと呼ばれる大男は、会陰部を指で押したと思うと、尿道からニュッと、直径0.5cm程の金属の筒が飛び出した。


「フォフォ。ボウズ、カッコイイもの見せてやるぜ。このチン口径でマスを掻くとだなァ……」シコシコ

大男は、見せつけるように、ゆっくりと股間をしごき始める。


俺の胸元は、嫌な予感を目前に激しく収縮を繰り返す。吐いても吐ききれない呼吸音が、力なく喉から通り過ぎる。

俺の目には涙が溜まっていたが、表情はただ一点、その光景を見つめる他になかった。


俺の方へ、震える手を伸ばすママ。


「健太……あなたは……村最後の希望……」パアンッ!


「……ッッッ!!」


チン口径の鬼頭、その先端の尿道からは、灰色の煙が揺れていた。

俺の白いTシャツに、いくつかの赤点が染み込む。硝煙の香り。そして、動かなくなったママ。


「ヘッドショットォ!フォフォフォォ!」

「流石じゃのう、マグナム!」


「マ……マ……!」


俺は、冷たくなったママの手を取る。


「フォフォフォ。ガキ、こっちだ。」

「い、痛い!」

大男は、俺の腕を力強く引っ張る。

ぎゅっと関節が痛む。肩が外れるようだった。


引きずられる体。遠ざかるママの姿。


先程までママ活として性行為をしていた俺にとって、オキニ人妻の死は、使い慣れたオナホが発売終了になった程の悲しみだった。


「俺の……俺のオマンコがあああああっ!!!」


「弱男の集まりの割に子供が多いのぉ、これは思わぬ収穫じゃ。」

悲しみに暮れる暇もなく、俺は村の広場へと連れて行かれた。


「うぅ……」「ぐすんぐすん」

焚き火に囲まれ、一箇所に集められる子供たち。辺り一帯に、涙と絶望の香りが漂っている。

家は破壊され、親を殺され、残ったのは年端もいかない子供たち。

あらゆる暴虐の限りが尽くされたかのように思えた。だが―――。


だが―――地獄はそこから始まったのだ。

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