表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界議員はつらいよ』  作者: カリア
第1部《議会爆発編〜定時を取り戻せ!》
9/23

第9話 最後の敵、魔王党!討論バトル、開幕

「ついに来ましたわ……魔王党です……!」


リエルが震える声で言った。

彼女の顔には、これまでのどの対戦よりも濃い絶望の色が浮かんでいる。


「え、ちょっと待って。魔王党って何その絶望ワード」


「そのままですわ。

腐敗・圧政・利権・不正・謎の献金・煙に巻く答弁──

全てを詰め込んだ、“悪の集大成”ですの」


「どうしてそんな政党が存続してんだよ!?選挙制度バグってんのか!?」


「“バグ”ではなく、“仕様”ですわ♡」


この異世界の闇、深すぎる。



そして現れた最終戦の対戦相手──


◆政党名:魔王党だいまおうとう


代表:ダークロード・マサカズ

•称号:闇の支配者・元国会答弁無双・元祖なんでも反対マン

•特徴:何を言われても言い返さず、煙に巻く

•魔法スキル:うやむや結界スルースキル・インフィニティ



開会式。ステージに現れたマサカズは、ダークスーツにフードを被り、光の当たらない椅子に腰かけていた。


「ふっ……ようこそ、若き理想主義者たちよ。

今日、君たちの討論は“議事録から削除”してあげよう……」


「言論封殺予告じゃねぇか!!」


観客もどこか怯えた様子だ。

この男、何を言われても動じず、あいまいな発言で論破を回避するという“最悪のスタイル”の持ち主。



討論開始──


まず、俺が切り込む。


「マサカズ、お前の政治には“未来”がない!

利権と保身と責任回避だけじゃ、誰も前に進めない!」


「そうですね。ご意見はごもっともですが、それはそれとして今後の議論の推移を見守りながら……」


「話が、終わらねぇ……!!」


クラリスが即座に前に出る。


「このままじゃ討論にならない!

“議論回避結界”が張られてる!」


「はい。スキル名、《うやむや結界オブラート・ミスト》ですわ」


リエルが補足する。


このスキル、相手の攻撃を自動で“曖昧な返答”に変換してかわすというチート技。

言葉のドッジボールならぬ、言葉のワカメスープ。



だが、俺たちには──“人間力”がある。


「クラリス! ミャウル!作戦Cで行くぞ!」


「了解」


「言霊を かき乱すのは 正論だ」


まずクラリスが論点を一点に絞る。


「質問よ、マサカズ。

あなたは、若者の投票率低下をどう改善するつもり?」


「なるほど、ご質問ありがとうございます。投票行動については各々の自由意志が尊重されるべきであり、その中で──」


「発動!“ロジック拘束魔法・Yes or Noで答えなさい!”」


《質問:若者向け投票制度改革に、賛成か反対か!?》


空中に表示される二択!


マサカズの目が一瞬揺れる。


「そ、それは、ですね……さまざまな意見を踏まえた上で……」


「はい、討論スロー判定入りました!」


リエルの笛が鳴る。

“答弁回避”が3回続くと、支持率が自動的に下がる制度が、この大会にはあるのだ。



次にミャウルが出る。


彼は、ふっと詩を紡ぐ。


「語らぬは

己の中の

恐れなり」


「詩的攻撃、発動──**“韻撃リリック・バースト”!**」


マサカズの後ろの椅子が爆発した。


「なっ、なぜ!? 詩で破壊されるのか!?」


「この世界は“言葉が現実になる”んだよ。お前こそ、覚悟決めて語れ!!」



そして、俺はマイクを握った。


「逃げてばかりの政治が、どれだけ人の心を遠ざけるか。

お前がやってきたのは“支配”だ。

でもな、政治ってのは──**“一緒に考えること”**なんだよ!!」


発動!


「“想い爆裂魔法・ディスカッションフィナーレ!!”」


拳を突き上げ、最後の言葉をぶつける。


「逃げるな、マサカズ!!

答えろよ、“あんたの信じる未来”を!!!」


ズゴォォォォォン!!


白銀の光が、結界を貫いた。



沈黙──

そして、


「……ふっ……私は……なぜ……あんなに答えるのが、怖かったのか……」


マサカズのフードが落ちた。

その顔には、若き日と同じ、“信念”が宿っていた。


「討論不能状態──よって、勝者・残業ゼロ党!!」



観客、総立ち! 支持率はついに100%に到達!!


リエルは泣いていた。


「……ついに、腐敗と沈黙を破りましたのね……」


ミャウルが一句。


「議会とは

黙ることなく

語る場所」


俺は静かにうなずいた。


そうだ──

言葉が、世界を変えたんだ。



そして俺たちの戦いは、ここに終わり、

新たな始まりを迎える。


次期・統一連邦代表、シン=カグラ。


異世界に、初めて“定時で帰れる未来”が訪れるかもしれない。


いや──必ず、訪れさせる!



(第9話 了)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ