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『異世界議員はつらいよ』  作者: カリア
第1部《議会爆発編〜定時を取り戻せ!》
8/23

第8話 AIとの討論!?ロボ議員の冷たい理想と爆発

「今回の対戦相手は……AI統治党オートマチック・アイディアル


リエルが持ってきた資料に、俺たちは思わず顔をしかめた。


「お相手は完全論理型の自動候補者。

名前はロボリス=ガバナンスⅣよんがた。政治判断アルゴリズムで動いてますわ♡」


「AI!? 機械!? なんでそんなのが候補者やってるんだよ!?」


「市民の“感情に疲れた結果”誕生した、新時代の無機質候補ですの。

現在、全国支持率1位……」


「1位ィィィィ!?」



ロボリス=ガバナンスⅣ型──


それは冷徹無比な政治AI。

計算能力は人類の1万倍。討論魔法の構成速度も世界最速。



会場に入ると、観客の空気もどこか緊張していた。

見上げるほどに巨大なボディ。銀色の装甲。赤い目。まるでロボ魔王だ。


「人類候補者シン=カグラ。あなたの演説内容、すでに500通りに分析完了」


「やめて!? 俺の過去ツイート掘り返すなよ!?!」


「あなたの矛盾点、自己矛盾率3.7%。統治不適格の可能性68%。

なお“残業ゼロ政策”の実現性:0.032%」


「夢も希望も数値で潰してくるぅぅぅ!!」



そして、討論開始。


ロボリスが発した言葉は、正確無比で無慈悲だった。


「現実問題、残業ゼロ化によってGDPは8.4%減少。

公共サービス稼働率は6割まで低下。人類幸福指数、むしろ下がる見込み」


「ぐぅ……」


爆発こそしないが、じわじわと精神に来る“数値爆撃”。

論破というよりExcelに殴られてる感覚だった。


「次に、“働きがい”の定義は曖昧。人類の主観的満足値に依存するため、政策として不安定──」


「クラリス!」


「はいはい」


クラリスがすっと前に出る。


「あなたの論理は正しい。

でもそれ、人間社会に必要な“心”を全部捨ててる」


「不確定要素は統治に不要」


「そうかしら?」


クラリスは魔導タブレットを掲げる。


「発動──**“人間的矛盾魔法・感情式”**!」


《理屈だけでは、票は動かない》


ズドン!

観客の一部が涙し、支持率が+8%!


「感情データ取得中……矛盾発生。処理に時間を要する」


「……ちょっと効いてるぞ!」



次に出たのはミャウル。


彼はロボの前で一言、詠んだ。


「心なき

政治に咲かぬ

希望花」


刹那、ロボリスのセンサーパネルがブレる。


「詩的言語、論理処理不能……異常波動……」


「発動──**“詩的混乱波ポエムクラッシュ”**!」


観客席から「尊い……」の声と共に、支持率さらに+10%!


「詩に弱いなAI!!」



そして、俺の番が来た。


俺は、ロボリスを見据え、静かに言った。


「お前が言うように、理屈だけで考えたら“残業ゼロ”は甘い夢だ」


ロボ「理解と同意。なら撤回を」


「だがな──夢を語れない政治家に、誰が未来を託すんだよ!!!」


拳を突き上げ、叫ぶ。


「人間はミスもするし、非効率で、矛盾だらけだ。

だけど、“笑って家に帰れる社会”を目指す気持ちがある限り、俺たちは前に進める!」


「発動──**“理想追求ビーム・ソウルブレンド”!!**」


ズゴォォォン!!!


金属音が響き、ロボリスの胸部装甲が光で包まれる。



ロボ「心……とは……なに……」


観客が固唾を飲んで見守る中、ロボリスはふらりと歩み寄り、俺に問いかけた。


「質問。あなたは、“確実に負けるかもしれない政策”を、なぜ掲げる?」


「決まってる。

それでも、その未来を信じたいからだ!」


沈黙──そして、


「答えを……保存しました……」


ロボリス、討論不能状態。



勝者:残業ゼロ党!!!


全国支持率、ついに1位に躍り出る!!



リエルが駆け寄ってきた。


「ついに……ついに首位ですわ!!」


「やったな、シン」


クラリスが小さくガッツポーズ。

ミャウルは黙ってハイタッチしてくれた(手は肉球だった)。


──でも俺はわかってる。

これは、ゴールじゃない。


この先には、あの“最恐の敵”が待っている。


異世界議会連邦の中枢に君臨する──


“魔王党”代表、ダークロード・マサカズ


次回、最終決戦編、始動。



(第8話 了)

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