第8話 AIとの討論!?ロボ議員の冷たい理想と爆発
「今回の対戦相手は……AI統治党」
リエルが持ってきた資料に、俺たちは思わず顔をしかめた。
「お相手は完全論理型の自動候補者。
名前はロボリス=ガバナンスⅣ型。政治判断アルゴリズムで動いてますわ♡」
「AI!? 機械!? なんでそんなのが候補者やってるんだよ!?」
「市民の“感情に疲れた結果”誕生した、新時代の無機質候補ですの。
現在、全国支持率1位……」
「1位ィィィィ!?」
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ロボリス=ガバナンスⅣ型──
それは冷徹無比な政治AI。
計算能力は人類の1万倍。討論魔法の構成速度も世界最速。
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会場に入ると、観客の空気もどこか緊張していた。
見上げるほどに巨大なボディ。銀色の装甲。赤い目。まるでロボ魔王だ。
「人類候補者シン=カグラ。あなたの演説内容、すでに500通りに分析完了」
「やめて!? 俺の過去ツイート掘り返すなよ!?!」
「あなたの矛盾点、自己矛盾率3.7%。統治不適格の可能性68%。
なお“残業ゼロ政策”の実現性:0.032%」
「夢も希望も数値で潰してくるぅぅぅ!!」
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そして、討論開始。
ロボリスが発した言葉は、正確無比で無慈悲だった。
「現実問題、残業ゼロ化によってGDPは8.4%減少。
公共サービス稼働率は6割まで低下。人類幸福指数、むしろ下がる見込み」
「ぐぅ……」
爆発こそしないが、じわじわと精神に来る“数値爆撃”。
論破というよりExcelに殴られてる感覚だった。
「次に、“働きがい”の定義は曖昧。人類の主観的満足値に依存するため、政策として不安定──」
「クラリス!」
「はいはい」
クラリスがすっと前に出る。
「あなたの論理は正しい。
でもそれ、人間社会に必要な“心”を全部捨ててる」
「不確定要素は統治に不要」
「そうかしら?」
クラリスは魔導タブレットを掲げる。
「発動──**“人間的矛盾魔法・感情式”**!」
《理屈だけでは、票は動かない》
ズドン!
観客の一部が涙し、支持率が+8%!
「感情データ取得中……矛盾発生。処理に時間を要する」
「……ちょっと効いてるぞ!」
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次に出たのはミャウル。
彼はロボの前で一言、詠んだ。
「心なき
政治に咲かぬ
希望花」
刹那、ロボリスのセンサーパネルがブレる。
「詩的言語、論理処理不能……異常波動……」
「発動──**“詩的混乱波”**!」
観客席から「尊い……」の声と共に、支持率さらに+10%!
「詩に弱いなAI!!」
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そして、俺の番が来た。
俺は、ロボリスを見据え、静かに言った。
「お前が言うように、理屈だけで考えたら“残業ゼロ”は甘い夢だ」
ロボ「理解と同意。なら撤回を」
「だがな──夢を語れない政治家に、誰が未来を託すんだよ!!!」
拳を突き上げ、叫ぶ。
「人間はミスもするし、非効率で、矛盾だらけだ。
だけど、“笑って家に帰れる社会”を目指す気持ちがある限り、俺たちは前に進める!」
「発動──**“理想追求ビーム・ソウルブレンド”!!**」
ズゴォォォン!!!
金属音が響き、ロボリスの胸部装甲が光で包まれる。
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ロボ「心……とは……なに……」
観客が固唾を飲んで見守る中、ロボリスはふらりと歩み寄り、俺に問いかけた。
「質問。あなたは、“確実に負けるかもしれない政策”を、なぜ掲げる?」
「決まってる。
それでも、その未来を信じたいからだ!」
沈黙──そして、
「答えを……保存しました……」
ロボリス、討論不能状態。
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勝者:残業ゼロ党!!!
全国支持率、ついに1位に躍り出る!!
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リエルが駆け寄ってきた。
「ついに……ついに首位ですわ!!」
「やったな、シン」
クラリスが小さくガッツポーズ。
ミャウルは黙ってハイタッチしてくれた(手は肉球だった)。
──でも俺はわかってる。
これは、ゴールじゃない。
この先には、あの“最恐の敵”が待っている。
異世界議会連邦の中枢に君臨する──
“魔王党”代表、ダークロード・マサカズ
次回、最終決戦編、始動。
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(第8話 了)