第7話 目指せ全国大会!爆笑討論トーナメント開幕
「では、次の目的地は……こちらですわ♡」
リエルが掲げた地図の上には、キラリと輝く**「クシロ」の文字。
異世界ニッポンの首都であり、討論バトルの全国大会──『政論グランプリ』**が開催される聖地である。
「なんでクシロが首都なんだよ!? 凍ってるじゃん!」
「寒冷地手当と魔法暖房の導入により、超住みやすいスマート首都として開発されましたの」
異世界、なぜかこういうとこだけやたら先進的。
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今回の大会には、全国から16政党が参加。
公開トーナメント方式で、討論によって勝ち抜き、最終的に「次期・統一連邦代表」に推薦されるとかなんとか。
「おかしいな、俺たち元々は地方代表だったはずなんだけど……」
「支持率全国3位ですもの♡ 国民の注目度がすごいんですのよ」
「そんな人気、実感ないけどな……」
「街頭インタビューで“あの猫耳くんがカワイイ!”って100人中68人が答えましたわ」
「え!? 俺は!?」
「3人です」
「せめて二桁……!」
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そしてついに開幕した全国討論トーナメント!
オープニングセレモニーは壮大だった。
魔法花火が舞い、各政党のマスコットが踊り、政治の尊厳が30%ほど失われた。
その中で発表された初戦の対戦相手は──
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◆対戦政党:筋肉主義政党《ムッキム党》
代表:バルク=ダンベルゴッド
•職業:全身筋肉
•政策:すべての問題を筋肉で解決する
•討論スタイル:肉体言語+筋論詠唱型魔法
•主張:「筋肉こそが社会基盤」
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「え、討論って“言葉”でするんだよね?」
「そうですね、一応。
ムッキム党の場合は“怒鳴りながらプロテインを撒く”のが討論らしいですわ♡」
「それただの迷惑系ボディビルダーだよ!?」
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そして試合当日。
アリーナに登場したのは、全身にオイルを塗りたくり、スーツを筋で破って登場するバルク=ダンベルゴッド。
「政治とは……鍛え抜いた心と肉体!!
財源? そんなもの筋肉で作る!!」
「すでに日本語が通じてない!!」
観客席からは「バルク〜ッ!!」「魅せて〜!!」という熱狂的な筋肉コール。
謎の人気。だが負けられない。
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試合開始!
バルクがまず叫ぶ。
「発動──筋肉討論魔法《グレートマッスルロジック!》」
彼の全身が光り出し、筋肉が弁論のごとく収縮する。
《筋肉=努力=信頼=政治資本》
「理屈の飛躍がアスリート並だな!?」
会場が沸く中、俺は一歩前に出る。
「わかったよ、ならこっちは言わせてもらう!」
「発動──**“ノー残業信条・アドレナリンエディション!”**」
拳を突き上げ、叫ぶ。
「働く者が身体を壊す社会に、未来なんてない!
筋肉だけじゃ守れないものがあるんだ!!」
ズバァァァァン!!
観客から拍手!支持率+10%!
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「いくぞ猫耳!」
ミャウルが前へ出る。
「筋の道
通らぬ論に
鉄拳を」
詩を詠むと同時に、空中にプロテインシェイカーが爆発した。
「発動──**“韻律破筋”**!」
詩的な批判が筋肉構造にダメージを与え、バルクが一瞬よろめく!
「う、うおおおおお!! 詩で腹筋が!!」
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「トドメよ」
クラリスがすっと前へ出る。
「あなたは言ったわ。“筋肉で問題を解決する”と。
なら、この問題に答えて──」
彼女は魔導タブレットをかざした。
「“少子化対策、筋肉でどうする?”」
バルク「えっ……?」
「“教育政策、筋肉でどうする?”」
「う……うぐっ……」
「“議会の透明性、筋肉でどうする?”」
「ぎゃあああああああ!!」
バルクの筋肉から蒸気が噴き出し、スーツが完全に粉砕されて討論不能状態に!
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勝者:残業ゼロ党!!!
支持率全国2位へ浮上!!
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リエルが小さく拍手しながら言った。
「さすがですシン様♡ 筋肉にも、言葉は通じましたのね!」
「最後、通じてたか? ほぼ爆発してた気がするんだけど……」
ミャウルが一句。
「筋と筋
交わらぬなら
火を吹こう」
怖ぇよ。
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だが次の対戦相手は、さらにクセが強いらしい。
その名も──**“AI統治党”**。
理想の自動政治、機械による政策判断。
相手は感情ゼロの冷酷ロボ候補者……!
「異世界議員は……まだまだつらい。」
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(第7話 了)