第6話 異世界TV討論!本音と爆発は編集不可
「おめでとうございますシン様っ!!
フクナミ州の国民的テレビ番組『討論☆ダイナマイト』の出演依頼が来ましたわ♡」
そう言ってポンと書類を手渡してきたのは、いつものエルフ・リエル。
「“祝・出演決定”じゃないんだよ!
討論で毎回誰か爆発する番組だろそれ!!」
「さすがに最近は“軽く燃える程度”で済んでおりますわ」
それを“安心”と言い張る感性、まじで異世界。
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『討論☆ダイナマイト』──
それは、視聴率32%を誇る異世界最強の報道バラエティ。
政治家たちが魔力で発言し、炎上と爆発と失言の限界に挑む超絶番組。
「で、相手は誰なんだ?」
「こちらですわ♡」
リエルが魔導スクリーンを起動すると、そこに映ったのは──
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◆対戦相手:メディア帝政党幹部
名前:デンパ・モロヒト
•異世界テレビの帝王。報道番組を3つ持ち、影響力は州内最大。
•魔法スキル:印象操作の波
•特技:話を勝手にまとめる/相手の発言を途中で編集する
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「終わった」
俺はその場に崩れ落ちた。
「やばい奴が来たわね……報道魔法が本気で強いのよ。
“切り抜き編集結界”と“BGM誘導術”がコンボになると、マジで事実がねじ曲がる」
クラリスが腕を組みながら分析する。
「猫耳、どう思う?」
ミャウルは小さく呟いた。
「言葉より
映像こわい
この世界」
わかる。
いや、詠まなくていいから普通に言って。
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そして収録当日。
俺たちは、フクナミ放送局にある巨大スタジオ「ダイナマイトホール」にいた。
カメラ20台、スタッフ100名、観客300人──
すべての視線がステージに注がれる中、司会のエルフが高らかに叫んだ。
「本日のテーマは──『理想と現実、どちらが政治に必要か!?』」
これはまずい。理想=俺たち、現実=相手という構図になるのは確実。
「ようこそ、夢見がちな改革者クンたち」
ステージ奥から、片手にマイク、片手にバラを持った男が歩いてくる。
デンパ・モロヒト。
黒スーツ、白マフラー、声は低く、胡散臭さは満点。
「皆さん、理想って素晴らしいですよね?
でも、現実ってのはね。そう甘くない。
この人たち、予算の話だけで“焼きそば券”否定しちゃったんですよ〜?
お祭り文化の否定ですよ、これは!」
会場「ええ〜〜〜〜〜〜!!」
「印象操作スキル・発動──
《BGM:哀愁ピアノ》+《字幕:冷たい改革派》!」
ズドン!!
画面上に“理想主義の冷たい男たち”という字幕が出現し、悲しげなピアノが流れ始める。
「卑怯すぎるだろこの番組!!」
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「落ち着いて。次は私が行くわ」
クラリスが冷静に前に出た。
「理想と現実、どちらが大事か?
その答えは、“未来を語れる方”に決まっているわ」
彼女はタブレットを掲げる。
「発動──**“現実数値突きつけ砲”!**」
空中に表示されたのは、5年後の赤字シミュレーション。
そこには“現状維持なら破綻”と書かれていた。
観客の空気が変わる。
「事実を直視しましょう。今がその時よ」
支持率+10%。
だがデンパは動じない。
「データの提示、ありがとうございます。
ですがね、皆さん──この人、データしか見てないんですよ?
心が、ない!!」
ズバァァァァァン!!!
《BGM:悲しきヒロイン》+《効果音:ため息》
さらに映像が“モノクロ化”され、クラリスが孤独な悲劇の女政治家のように演出されていた。
「編集魔法エグすぎる!! どこまでできるんだよお前!」
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俺のターンだった。
マイクを持ち、前に出る。
「政治に必要なのは、理想か、現実か。
それ以前に、信じられる言葉だろ!!」
拳を突き上げ、叫ぶ。
「俺は、働く全ての人に言いたい。
“夢を語れる職場”を残業地獄の中で失っていいのか!?」
ズドォォン!!!
《発動:理想追求ビーム・ver3.0 “社会希望光線”》
観客から拍手が沸き起こる。支持率+20%!!
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デンパは顔を歪めた。
「くっ……ここまで来るとは……!
ならば奥の手だッ!!」
彼がマイクを高く掲げ、叫んだ。
「発動──**“言葉の切り取り陣”**!!」
俺の発言が一部だけ抽出され、編集された映像が放映される。
《“残業は必要だ”……俺は……働く全ての人に言いたい……夢を語れる職場……失っていい”》
字幕:「夢を失えと語る候補者」
「めちゃくちゃじゃねぇか!!」
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しかしその時、ミャウルが前に出て、そっと一句。
「そのカット
嘘も混ざれば
火となるぞ」
詠んだ瞬間、**“世論誘導韻・真”**が発動!
会場の空気が一気にクリアになり、編集魔法が打ち消されていく。
「な、なにィィィィ!? 映像の流れが……戻っただと……!」
観客がどよめく中、俺は締めに叫んだ。
「信じろ! カメラより、心に届く言葉を!!」
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番組終了時──
支持率:残業ゼロ党 68%
メディア帝政党 22%
リエルは涙を流していた。
「まさか、本当に……編集魔法を破れるとは……」
「やったよ、俺たち……! ついに“本音で勝った”ぞ!」
ミャウルが一句。
「メディア戦
勝利の味は
定時帰り」
お前、最後のはただの願望だな?
──だが、これで“全国討論大会”への参加資格を得た俺たち。
次なる舞台は、他自治区の猛者たちが集う、首都クシロ!
異世界議員の戦いは、さらに熱くなる!
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(第6話 了)