表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界議員はつらいよ』  作者: カリア
第1部《議会爆発編〜定時を取り戻せ!》
6/23

第6話 異世界TV討論!本音と爆発は編集不可

「おめでとうございますシン様っ!!

フクナミ州の国民的テレビ番組『討論☆ダイナマイト』の出演依頼が来ましたわ♡」


そう言ってポンと書類を手渡してきたのは、いつものエルフ・リエル。


「“祝・出演決定”じゃないんだよ!

討論で毎回誰か爆発する番組だろそれ!!」


「さすがに最近は“軽く燃える程度”で済んでおりますわ」


それを“安心”と言い張る感性、まじで異世界。



『討論☆ダイナマイト』──

それは、視聴率32%を誇る異世界最強の報道バラエティ。

政治家たちが魔力で発言し、炎上と爆発と失言の限界に挑む超絶番組。


「で、相手は誰なんだ?」


「こちらですわ♡」


リエルが魔導スクリーンを起動すると、そこに映ったのは──



◆対戦相手:メディア帝政党メディアエンペラーとう幹部


名前:デンパ・モロヒト

•異世界テレビの帝王。報道番組を3つ持ち、影響力は州内最大。

•魔法スキル:印象操作のインフルエンス・ウェーブ

•特技:話を勝手にまとめる/相手の発言を途中で編集する



「終わった」


俺はその場に崩れ落ちた。


「やばい奴が来たわね……報道魔法が本気で強いのよ。

“切り抜き編集結界”と“BGM誘導術”がコンボになると、マジで事実がねじ曲がる」


クラリスが腕を組みながら分析する。


「猫耳、どう思う?」


ミャウルは小さく呟いた。


「言葉より

映像こわい

この世界」


わかる。

いや、詠まなくていいから普通に言って。



そして収録当日。


俺たちは、フクナミ放送局にある巨大スタジオ「ダイナマイトホール」にいた。


カメラ20台、スタッフ100名、観客300人──

すべての視線がステージに注がれる中、司会のエルフが高らかに叫んだ。


「本日のテーマは──『理想と現実、どちらが政治に必要か!?』」


これはまずい。理想=俺たち、現実=相手という構図になるのは確実。


「ようこそ、夢見がちな改革者クンたち」


ステージ奥から、片手にマイク、片手にバラを持った男が歩いてくる。


デンパ・モロヒト。

黒スーツ、白マフラー、声は低く、胡散臭さは満点。


「皆さん、理想って素晴らしいですよね?

でも、現実ってのはね。そう甘くない。

この人たち、予算の話だけで“焼きそば券”否定しちゃったんですよ〜?

お祭り文化の否定ですよ、これは!」


会場「ええ〜〜〜〜〜〜!!」


「印象操作スキル・発動──

《BGM:哀愁ピアノ》+《字幕:冷たい改革派》!」


ズドン!!


画面上に“理想主義の冷たい男たち”という字幕が出現し、悲しげなピアノが流れ始める。


「卑怯すぎるだろこの番組!!」



「落ち着いて。次は私が行くわ」


クラリスが冷静に前に出た。


「理想と現実、どちらが大事か?

その答えは、“未来を語れる方”に決まっているわ」


彼女はタブレットを掲げる。


「発動──**“現実数値突きつけデータ・ブラスター”!**」


空中に表示されたのは、5年後の赤字シミュレーション。

そこには“現状維持なら破綻”と書かれていた。


観客の空気が変わる。


「事実を直視しましょう。今がその時よ」


支持率+10%。


だがデンパは動じない。


「データの提示、ありがとうございます。

ですがね、皆さん──この人、データしか見てないんですよ?

心が、ない!!」


ズバァァァァァン!!!


《BGM:悲しきヒロイン》+《効果音:ため息》

さらに映像が“モノクロ化”され、クラリスが孤独な悲劇の女政治家のように演出されていた。


「編集魔法エグすぎる!! どこまでできるんだよお前!」



俺のターンだった。


マイクを持ち、前に出る。


「政治に必要なのは、理想か、現実か。

それ以前に、信じられる言葉だろ!!」


拳を突き上げ、叫ぶ。


「俺は、働く全ての人に言いたい。

“夢を語れる職場”を残業地獄の中で失っていいのか!?」


ズドォォン!!!


《発動:理想追求ビーム・ver3.0 “社会希望光線”》


観客から拍手が沸き起こる。支持率+20%!!



デンパは顔を歪めた。


「くっ……ここまで来るとは……!

ならば奥の手だッ!!」


彼がマイクを高く掲げ、叫んだ。


「発動──**“言葉の切り取りカット・エディット・ゾーン”**!!」


俺の発言が一部だけ抽出され、編集された映像が放映される。


《“残業は必要だ”……俺は……働く全ての人に言いたい……夢を語れる職場……失っていい”》


字幕:「夢を失えと語る候補者」


「めちゃくちゃじゃねぇか!!」



しかしその時、ミャウルが前に出て、そっと一句。


「そのカット

嘘も混ざれば

火となるぞ」


詠んだ瞬間、**“世論誘導韻・真”**が発動!

会場の空気が一気にクリアになり、編集魔法が打ち消されていく。


「な、なにィィィィ!? 映像の流れが……戻っただと……!」


観客がどよめく中、俺は締めに叫んだ。


「信じろ! カメラより、心に届く言葉を!!」



番組終了時──


支持率:残業ゼロ党 68%

メディア帝政党 22%


リエルは涙を流していた。


「まさか、本当に……編集魔法を破れるとは……」


「やったよ、俺たち……! ついに“本音で勝った”ぞ!」


ミャウルが一句。


「メディア戦

勝利の味は

定時帰り」


お前、最後のはただの願望だな?


──だが、これで“全国討論大会”への参加資格を得た俺たち。

次なる舞台は、他自治区の猛者たちが集う、首都クシロ!


異世界議員の戦いは、さらに熱くなる!



(第6話 了)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ