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『異世界議員はつらいよ』  作者: カリア
第1部《議会爆発編〜定時を取り戻せ!》
5/23

第5話 予算と爆発と焼きそば券

フクナミ州・中央アリーナ──


そこは普段、魔法プロレスや学園討論甲子園などに使われる屋内スタジアム。

だが今日は違う。

ステージ中央に“魔法式演説台”が二つ設置され、観客席には満員の観衆。


テーマはただ一つ。

「残業ゼロ政策の財源、どうするの?」


観客の視線が俺たち残業ゼロ党に集中していた。

対するのは、焼きそばと恫喝の政治集団・圧政党アッセイトー

現れたのは幹部の一人──


「ヨォッ! 本日はお日柄もよろしく!

圧政党、金権担当のカネトモ・モーリだッ!」


観客がざわつく。彼は悪名高いが、人気もある。

前回の選挙では“焼きそば券戦術”で票をごっそりかっさらった実績を持つ。


「それじゃあいこうか。テーマは“予算”。

アンタらの“定時帰り政策”、どうやって財源つけんのか、見せてもらおうじゃないのォ?」


俺は、深く息を吸って演説台へ立った。


「まず、俺たちは“無駄な予算の再構築”を掲げている。

具体的には──フクナミ州の“お茶会推進費”年間17億ズリ(単位)をカット!」


観客が「うわー」とざわめく。


「ふむ、なるほど。ですがねぇ、我々圧政党は“お茶会”こそが地域の絆を育てるって考えてるんですよォ」


カネトモがニタニタしながらカバンを開く。


「たとえばこちら──**“焼きそば券配布プロジェクト”**。

これによって経済は回り、地域住民は喜び、支持率は爆上げ! ね?健全でしょ?」


「完全に買収やないかァ!!」


クラリスが横からツッコミを入れる。


「焼きそば券だけで州の予算の3割を食いつぶすって、もう政治というより屋台経済でしょ!」


「ふふ……ならば、実力で証明していただきましょうか!」


カネトモが掲げた魔導書から、不気味な金色のオーラが放たれる。


「発動──金権魔法《利権ビッグバン》!」


彼の足元から巨大な“領収書”が出現し、地面を叩きつける。


《内容:交際費 999,999ズリ 用途:飲みニケーション強化》


バゴォン!!


爆発とともに、会場が一部吹き飛んだ。


「お前の“爆弾”は税金で買った飲み代かよ!!」



「こっちの番だ」


クラリスが冷静に前に出る。


「こちら、昨年のフクナミ州の“役所内マッサージチェア予算”──年間3億ズリ。

誰が使ってるのよ?」


そう言って魔導タブレットを掲げる。


「発動──**“理路整然砲・ver2.0”**

《快適さの前に快適な未来を》!」


ズドォン!!


衝撃波が観衆の心を打ち、支持率+10%。


「ぬぬぬ……!」


カネトモが一歩引いた。

次は……猫耳男の出番だ。



ミャウル=マンダリン。猫耳。詩人。

見た目アイドル、中身は時々わからん。


彼はふらっと前に出て、一言。


「残業代

未来の借金

誰が払う」


静寂。

次の瞬間──空中に巨大な句が浮かび上がり、金色の帳簿を貫いた。


「発動──**“世論誘導韻・改”**」


会場全体に“定時の風”が吹き抜けた。

観客のハートがざわつき、カネトモがひざをつく。


「な……なんで俳句で説得力が出るんだ……ッ!」


支持率、さらに+15%。残業ゼロ党、ついに50%越え!



最後に、俺が立ち上がった。


「金の魔法で人の心を買うな!

必要なのは、未来に投資する勇気だ!!」


右手を掲げ、全力で叫ぶ。


「発動──**“残業ゼロ光線・ノーザンフラッシュ”**!!」


白銀の閃光が天井を突き抜け、議事魔法空間が振動する。


カネトモの“金権防御結界”を打ち破り、直撃ッ!!



「ぬあああああああああああ!!!」


スーツが焦げ、領収書が燃え、焼きそば券が空を舞う。

カネトモ・モーリ、討論不能状態(KO)。



「勝者──残業ゼロ党!!!」


観客、拍手! 支持率は一気に62%まで上昇!!


リエルが涙ぐみながら言う。


「これで……この世界に希望の光が……」


「いや、まだ一県だよ!? あと十五自治区あるよ!?」


「でも、これは革命の第一歩ですわ♡」


ミャウルが一句詠む。


「議会にも

光さしたれ

定時風」


──俺たち、ちょっとずつ前に進んでる気がする。

焼きそば券に勝ったってことは、きっと何でもできる。


次の戦いは──さらなる強敵。

“テレビ討論番組”だという噂が入ってきた。


ああ、異世界議員はつらい。



(第5話 了)

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