第4話 政界の刺客!笑ってはいけない圧政党(アッセイトー)
翌日、俺は正座していた。
「なんで俺が……こうなった……」
頭には包帯、顔には絆創膏、そして足元には──**“爆発被害報告書”**。
リエルによると、「討論魔法により公共施設に対して構造的爆裂を発生させた件について」責任の一端があるらしい。
「討論でビーム撃った俺も悪いけどさ……議事堂の天井、魔法耐性ゼロってどういうことよ?」
「予算削減で、天井だけ“張りぼて”になっておりましたわ♡」
異世界の政治、そういうとこだぞ。
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「まぁまぁ、シン様。昨夜の討論会は見事でしたわよ♡」
リエルが淹れた謎のお茶(たぶんカフェインと魔力が混じってる)を差し出しながらにこにこしている。
隣ではミャウルが「勝ったから 今夜はご飯 倍にする」と、相変わらず五七五で喜びを表現していた。
「次の選挙まであと二週間。中間討論会が一つと、あと“敵からの挑戦状”が来る可能性もあるわね」
クラリスがノートパソコン(っぽい魔導具)を操作しながら言った。
「敵からの挑戦状って、なんだよ……」
「異世界政界には、特定の思想集団による**討論挑戦権制度**が存在するの。
要するに、政敵が直接ケンカ売ってくるシステムよ」
「国会が喧嘩番長方式ってどうなってんだこの世界……」
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その日の昼──
俺たちの政党事務所(借り物のボロいテント)の前に、一人の男が現れた。
「おやおやぁ、こぉんな貧乏政党が、よくもまぁウチの票田を削ってくれましたなぁ……」
見るからに胡散臭いスーツに金ピカのブローチ、そして髪はナス色のオールバック。
背後には無言でガタイのいい男たちが3人ほど並んでいた。
「どちら様で……?」
「失敬、自己紹介が遅れましたなぁ。
わたくし、圧政党幹部、カネトモ・モーリと申します。
座右の銘は“民主主義は殴って覚えろ”」
「お前それ選挙制度全否定だろ!」
クラリスがすかさず前に出る。
「この人、前回選挙で“議場に殴り込みして票を盗んだ疑惑”あったわよね」
「いやいや、あれはあくまで“ラッキーパンチ”ですわ。
それに我が党の支持者は“投票券と引き換えに焼きそば無料券”で動いてる、実に健全な構造です」
「ダメに決まってんだろ!」
カネトモはにやりと笑った。
「まぁまぁ。今日は正式な“チャレンジデモクラ”を申し込みに来ただけですわ。
討論内容は──“財源”。
あなた方の“残業ゼロ政策”に、どうやって予算をつけるおつもりか?」
……痛いところを突いてきやがる。
「討論場所は3日後、州中央アリーナ。敗者には、政党活動停止処分が待ってますわ」
「強制終了制度!? ゲームオーバーじゃん!!」
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その夜、俺たちは事務所で緊急会議を開いた。
「“残業ゼロ”を掲げるからには、ちゃんと財源を語れってことね」
「でも俺たち、財源の話とか……」
「だーいじょうぶですわ♡」
リエルがまた、無責任な笑顔で言った。
「この世界では、**“口が上手ければ理屈はいくらでも補正される”**んですのよ!」
「おい異世界! もっと現実を見ろ!!」
だが確かに、昨日の討論会で“理路整然砲”や“五七五政策”が通用したのは事実。
俺は覚悟を決めた。
「よし。やってやろう。
“財源がないから無理”なんて言わせねぇ。
俺たちは、“無駄を減らして未来を作る”んだ!」
「“茶会予算”を削るのね?」
「まずそこだな」
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そして3日後、
フクナミ州中央アリーナにて、異世界財政討論バトルが幕を開ける──!
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(第4話 了)