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『異世界議員はつらいよ』  作者: カリア
第1部《議会爆発編〜定時を取り戻せ!》
3/23

第3話 公開討論会!論破は戦争だ

フクナミ州議事堂、中央ホール──

そこは、魔力と野次とヤジロベエが飛び交う、言論と混沌の戦場だった。


「我ら、残業ゼロ党!いざ、初陣ッ!!」


気合いを入れて叫んだのは俺だったが、その背後には冷静沈着な毒舌官僚クラリス=ミナセと、五七五しか喋らない猫耳青年ミャウル=マンダリンが控えている。


「……勝ち筋、あるの?」


クラリスが眉ひとつ動かさずに言った。


「うん、まぁ、ゼロではない」


「それ、九割五分五厘負けるやつよ」


事実、今日の討論会の相手はフクナミ州の現職代表、トドメ=ヤブカラス。

“選挙6連覇の男”“利権の化身”“魔法的牛耳り屋”の三冠王である。


「シン様、敵の支持率は現時点で72%ですわ!」


「うちのは?」


「2%です!」


「嘘だろ!? どこで拾ってきた数字だそれ!」


「ミャウル様の女性人気が一部熱狂的で……♡」


猫耳の本気をなめていた。



そして、討論会が始まった。


司会進行のエルフが開会を告げると、

まずは現職・ヤブカラスが壇上に上がった。


「私はこの州の繁栄を守るため、合法的な献金を受け取り、合法的に道路をねじ曲げ、合法的に票を集めてきたッ!!」


なにが合法だ。全部アウトだ。


だがこの世界、**“論理の通った主張”**であれば魔力が増幅され、

聴衆の支持率を直接揺さぶることができる。


「論点すり替え魔法・オブラートクラッシュ!」


彼の発した言葉が、光となって空中に浮かび上がる。


《地域密着=親戚優遇=温かみある政治》


爆発音とともに観客がうなずいた。支持率+6%。


「ちょっと待て!? その論理飛躍しすぎだろ!!」


「魔法ですので♡」


リエルがにっこり笑った。笑ってる場合じゃない。



「……私がいくわ」


クラリスがすっと前に出た。


「この世界の予算配分表を見直してみなさい。

“茶会予算”が“子育て支援”の4倍? 正気とは思えない」


そう言って、クラリスは手元の魔導書からページをめくる。


「発動──**“理路整然砲ロジック・アサルト”**!」


《茶と子供、どっちが未来を育てるか》


ズドン!!

魔力が観衆を揺さぶり、一部のご老人が爆笑しながら涙を流した。


支持率、+8%。


ヤブカラスが舌打ちする。


「小娘が! 感情論で勝てると思うなよ!」


「ふーん、じゃあ次はこの子でどう?」


俺が目配せすると、猫耳の青年──ミャウルがすっと前へ出る。



静寂。


ミャウルは一歩前に出て、口を開く。


「未来見えぬ

道なき道に

茶をまくな」


観衆「……おおお……」


その一句が、まるで魔術詠唱のように空間を染めた。


「発動──“世論誘導韻フレーズ・トリック”」


空中に浮かび上がった句が輝きを放ち、ヤブカラスの頭上で炸裂した。


爆発音。

髪が逆立ち、スーツがボロボロになる現職。


「な、なんじゃこりゃあああ!!」


支持率、マイナス12%。

そして、俺たち残業ゼロ党──


**+20%**の大躍進!!



「……まさか、ここまでとは」


リエルが驚いた顔をしていた。


「ミャウルの一句、そんなに効くのか……」


「詩は、刃。政治、舞台よ。

舞うがよいぞ、正義の吟遊詩」


「さすがにそれ五七五じゃないな?」


だが、この世界では──

論理も、情熱も、言葉も、全てが武器になる。



そして最後に、俺が壇上に立った。


「俺たちの政策はたった一つ!

“定時で帰れる社会をつくる!”

残業ゼロ、それが未来への第一歩だ!」


その瞬間、俺の全身に力が走る。


《魔力特性発動:職場改革願望》


「発動──“理想追求ビーム・ノー残業光線”!!」


俺の拳から放たれた謎の光線が、議事堂の天井を突き抜けた。


ヤブカラス、完全に白目。



「決した!! 公開討論の勝者──残業ゼロ党!!」


支持率:初期2%→現在38%!


「まさか……ここまでやるとは」


「やった……! やりましたわシン様!」


クラリスが小さく笑い、ミャウルが“ガッツポーズ風の猫ポーズ”を決めていた。


俺は、ぐったりと座り込みながらつぶやいた。


「定時で帰るつもりだったのに……なんで爆発魔法撃ってるんだ俺……」


──だが、異世界は変わり始めていた。

ひとつの討論、ひとつの言葉が、世界を動かす。


次の相手は、さらにヤバい奴らが来るらしい。


まだ、戦いは始まったばかりだ──。



(第3話 了)

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