第2話 政党設立って、そんなノリでいいの!?
「というわけで、さっそく政党を設立しましょう♡」
エルフのくせにキャピキャピした笑顔で、俺の肩をポンと叩くリエル=ヴァレンティーナ。
彼女いわく、選挙に出るには**“政党に所属している”か、“政党を作る”**しかないらしい。
「そんな簡単に政党って作れるのか?」
「もちろんですわ。設立要件は、以下の三点ですの!」
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【政党設立の三要件】
① メンバーが最低3名(うち1名は“マスコット枠”で可)
② 政策理念を100文字以内で表現できること
③ 規定の提出フォームに魔力署名すること
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「なにこの異世界ガバガバ政治制度!? てか“マスコット枠”ってなに!?」
「候補者の印象アップを狙う存在ですわ♡
ウサギ型の精霊とか、炎を吐くナマズとか、人気ですよ〜♪」
まるで選挙ポスターに“ゆるキャラ”でも載せるノリである。
なにが“イセカイ・ニッポン”だ。中身はギャグマンガである。
「ちなみに、私が候補者支援制度でついておりますので、あなたにはあと2名の仲間が必要ですわ」
「この3日で!?」
「ご安心を♡
街の“政治適性診断所”に行けば、職業別に相性のいい仲間候補が自動でマッチングされますわよ」
異世界でまさかのジョブマッチング制度……。
これは地味に現代より進んでる気がする。少し悔しい。
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かくして俺は、リエルに連れられて、
街の中心部『政庁キャッスル』にあるマッチングセンターへと向かった。
受付の壁には、壮大なスローガンが飾られていた。
「選ぼう未来、斬ろう腐敗。Yes!デモクラ魔!」
「なんだこの…昭和風な啓発コピー…?」
「前政権が電通精霊に頼んで作ったキャッチフレーズですわ」
ブラックな笑いが止まらない。
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マッチングマシンに手をかざすと、淡く光る水晶球が俺の“政治波動”を分析しはじめる。
『あなたに相性の良い仲間を検索中…』
『条件:反権力的、真面目すぎず、爆発耐性あり』
「最後の条件が物騒すぎるだろ!」
そして──
『マッチング成功!以下の候補が推薦されました!』
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① 元・中央官僚の女性:クラリス=ミナセ
•特徴:毒舌、合理主義、スーツに眼鏡、口癖「非効率ね」
•職業:ロジカル官僚(魔法:冷徹弁論・理路整然砲)
② 謎の猫耳青年:ミャウル=マンダリン
•特徴:猫耳・口数少ない・言葉がすべて五七五
•職業:詠政士(魔法:俳句政策結界・世論誘導韻)
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「この異世界、登場人物のクセがすごい!」
「でもミャウル様、女性票が非常に高いですのよ?
過去には“黙ってるだけで議席3つ”獲った実績もあります♡」
もうなんか、政治っていうよりアイドル選挙に近い。
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というわけで、俺はクラリスとミャウルに面会することにした。
クラリスは、いかにもキャリア官僚な雰囲気で、俺を見るなり一言。
「……アンタ、本当に立候補する気あるの?」
「いや正直、定時で帰りたいだけです」
「……気に入ったわ。とりあえず“議会崩壊”までは付き合ってあげる」
クセは強いが、味方につければ心強そうだ。
そしてミャウルはというと──
「政治とは 票より爆発 目を引けよ」
「名言っぽいけど、意味はまるでわからん!」
彼は俺の肩にポンと手を置き、にっこり笑って言った。
「ボクの役目は──“静かなる炎”」
あー、もう、うん。よくわからんけど、なんか頼もしい。たぶん。
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こうして俺は、
・毒舌官僚クラリス
・猫耳詩人ミャウル
・そして選挙管理エルフのリエル
という、カオスなメンツで政党を立ち上げることになった。
「政党名はどうしますの?」
「……決まってる」
俺は迷わず、用意していた手書きの看板を掲げる。
『残業ゼロ党(正式名称:夜は帰る党)』
「理念:定時で帰れる国づくりを目指す(98文字)」
「……素敵ですわ♡」
こうして、“異世界政治ギャグ”の新星が産声を上げた。
──立ち上がれ、残業ゼロ党!
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(第2話 了)