第2話「副魔王省の罠!焼きそば券は不滅です」
──数時間後、俺たちは副魔王省の会議室で地獄のような光景を目撃していた。
「なにこれ……」
俺の手元には分厚い資料。
タイトルは──
【第137回 焼きそば券政策活性化推進事業 概要書】
リエルがさらっと説明した。
「はい♡ 焼きそば券は“地域活性化”という名目で、現行予算の三割が振り分けられております♡」
「まさか焼きそば券がまだ現役とは……選挙で滅ぼしたはずなのに!」
「いえ、“選挙戦用焼きそば券”は禁止しましたが、“地域振興用焼きそば券”は継続中ですわ♡」
「名目の付け替えかよおおおおおおお!!!」
⸻
クラリスが腕を組んで冷静に指摘する。
「この“地域振興焼きそば券”、用途の9割が“省庁関係者向け茶会”と“謎の交流イベント”ね」
「不正じゃん!!」
「いえ♡“合法”です♡」
リエルの笑顔が今日も腹立たしい。
⸻
ミャウルが静かに一言詠んだ。
「券あれど
胃袋満たし
心カラ」
「句の語感のわりに現実が重い!!」
⸻
そこへ、副魔王省総務調整局長・カゲカツ=クロガネが仁王立ちで現れた。
「残業ゼロ補助金? 子育て支援?
──甘い!! 甘すぎる!!」
「じゃあお前らは焼きそば券で国民幸せにしてんのか!?」
カゲカツがバン!と机を叩くと、焼きそばの香りが充満した。
「幸福度ランキング最新データ──“焼きそば満足度”のみ急上昇中だ!!」
「国民満足度の指標、そこだけかよ!?」
⸻
だが俺は折れない。
「よし、こっちも“帰宅応援ポイント”で勝負してやる!!」
リエルが小さくささやく。
「ちなみに“帰宅ポイント”予算案は副魔王省が“夕飯食べ歩きツアー券”と統合しようとしていますわ♡」
「ふざけるな副魔王省!!!」
⸻
だが、この戦いは始まったばかりだ。
議会で勝っただけでは、国は変わらない。
俺たちは今日も“帰宅時間”のために戦う。
ミャウルが一句。
「焼きそば券
霞む夕日と
残業の音」
「ミャウル、俺たち……負けないよな?」
「絶対定時帰宅、達成する」
次回、副魔王省討論第一ラウンド開幕!!
⸻
(第2話 了)




