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『異世界議員はつらいよ』  作者: カリア
第2部《改革の壁編〜副魔王省と予算バトル〜》
11/23

第1話「異世界改革、初日から詰みました」

政権交代から三ヶ月──俺は、今日もため息をついていた。


「……なんで、俺、定時で帰れないんだ?」


議会で多数派を獲得し、夢の“残業ゼロ社会”を実現したはずの俺、シン=カグラ。

だが、目の前のデスクには**“改革開始前・事前手続き申請書(第1万4732号)”**の山が積まれている。


「うーん……これは地獄ですね♡」


いつものテンションで笑うのは、選挙管理精霊リエル=サンドラ。

なぜか今は副魔王省担当政務官のバッジを付けている。


「リエル、お前……まさか副魔王省にスカウトされたのか?」


「いえ♡“強制出向”です♡」


異世界ニッポンの政治、相変わらず闇が深い。



「さーて! 本日から“副魔王省予算ヒアリング”で〜す♪」


リエルが元気よく言った瞬間、ドアが吹き飛んだ。


「失礼します!!」


現れたのは──


「副魔王省 総務調整局長、カゲカツ=クロガネ、参上!!」


全身黒スーツ、黒マント、黒ネクタイ、顔は能面のように無表情。

唯一の特徴は**“どこからでもツッコミを入れたくなる完璧すぎる逆三角形体型”**だった。


「あなた方の改革案、我が副魔王省の規定により──全却下です!!」


「即日否決!?俺まだ口開いて3秒しか経ってないんだけど!?」



毒舌官僚クラリスが冷静に資料をめくる。


「……理由は?」


「第一条:新制度導入は“現体制温存の原則”に反するため!

第二条:残業ゼロは副魔王省のアイデンティティ危機につき不可!」


「もう存在がバグじゃんこの省庁!!」


猫耳詩人ミャウルが一句詠む。


「ゼロ目指し

役所の圧で

残業倍」


「詩で状況悪化するのやめてくれ!?」



俺は立ち上がった。


「ふざけんな! この国のトップは議会の民意だろ!?」


カゲカツがニヤリと笑う。


「“副魔王省調整権”により、議決後でも“現場裁量での握りつぶし”が可能です。

異議があるなら、“予算ヒアリング魔法討論”で対抗するがよい!」


リエルが耳打ちしてきた。


「……シン様、副魔王省は**“予算爆破術”**の使い手です。

過去には税収の50%を“茶会予算”で消し飛ばしました♡」


「改革開始1秒で負けそうな未来しか見えねぇ!!」



だが、ここで怯んでたまるか。


俺は手を掲げた。


「やってやろうじゃねぇか。

副魔王省、まずは残業ゼロ補助金で殴り合おうぜ!!」


クラリスがキリッとメガネを光らせた。


「論破開始ね。

──最低でも“帰宅ポイント制度”だけは通すわよ」


ミャウルも静かに拳を握る。


「帰りたい

だから戦う

その想い」


俺たちの第二部の戦いが、今、始まった。


異世界議員は、まだまだつらい!!



(第1話 了)

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