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『異世界議員はつらいよ』  作者: カリア
第1部《議会爆発編〜定時を取り戻せ!》
10/23

第10話 就任演説!定時で帰る国のつくりかた

異世界ニッポン、統一議事堂──


その中央ホールには、満員の聴衆、魔導カメラ、空飛ぶ報道ドローン。

そして壇上には……俺がいた。


「では……これより、新統一代表シン=カグラによる就任演説を開始いたします」


司会エルフの合図とともに、ライトが俺を照らす。


俺の右隣には、クラリス=ミナセ。

左には猫耳の詩人、ミャウル=マンダリン。

そしてその背後には、選挙管理エルフ・リエルの感涙が滝のように流れていた。



俺は、マイクを握り、深く息を吸った。


「はじめまして。

いや、今は“ただいま”と言うべきかもしれません」


笑いが少し起こる。

俺は続けた。


「俺は、ただの公務員でした。

定時で帰って、冷蔵庫の半額弁当を楽しみに生きてました。

そんな俺が、今こうして、異世界の代表になってる。信じられません」


「だけど──ひとつだけ、ずっと変わらなかったことがある」


俺は、拳を握りしめた。


「働く人が、ちゃんと笑って帰れる世界にしたい。

それが、俺の、最初で最後の政治理念です!」



演説ホールに光が広がる。


「俺は、かつて“夢みたいなこと言ってる”と笑われた。

“現実を見ろ”と叱られた。

でも、誰かが夢を信じなきゃ、現実は変わらない!」


俺は壇上から、ひとつひとつ、政策を提示した。



 政策提案(ざっくりver)

1.公共サービス時短改革法案

→ 無駄な会議を魔法で短縮。報告書は“自動精霊化”

2.残業税導入案

→ 企業が労働時間を延ばせば国に追加納税(その金は働く人へ還元)

3.帰宅応援補助金制度

→ 定時に帰ったら“帰宅ポイント”が貯まり、魔法スーパーで割引!

4.討論議会の時間制限ルール

→ 長引く討論には「爆発カウント」が発動。だいたい物理的に終わる



「この国を、笑って帰れる国にしたい!

難しいことかもしれない。けど、それでも──」


「俺は、帰りたいんだよ!定時に!!」


「みんなで帰ろう!! 一緒に!!」



その瞬間、観客席が爆発的に沸いた。

「帰りてええええ!!!」

「残業なくせえええ!!」

「弁当半額ラブッ!!」


支持率は、**120%(魔法的補正)**を超えた。



クラリスがつぶやく。


「……まさか、演説でここまで熱狂を……」


「言葉に心があった。

理屈じゃない、魂のポエムだった」


「ポエムじゃねぇよミャウル」



演説後、俺たちは控室に戻った。


「シン様……まさか、本当に……

“異世界初・全会一致”での信任を得るなんて……」


リエルが涙を拭いながら笑う。


「やったな」


クラリスが肩を叩いてくる。


「次は……実行ね。言ったからには」


「わかってる。

始まりは“言葉”でも、変えるのは“行動”だ」


「その通り。

だけど、ひとまず……今日は、」


ミャウルが、マントをひらりと翻しながら言う。


「帰ろうぜ 定時過ぎたぞ 仲間たち」


「そこはポエムで締めるのか……!」



こうして俺たちは、議事堂をあとにした。


空には星が瞬き、風は心地よく、どこかの家から夕飯のにおいがした。


「──定時って、いいな」



(第10話 了)


第1部 ー完ー


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