20.5 マリンがりんごを売る理由
「マリン!俺ごと魔王を封印するんだ!」
「え、でも・・」
「はやく!それしかもう、倒す方法はない!」
・・・・またあの夢か。
私は勇者アロンのことが好きだった。
そのことを伝えられなかったことを後悔しているのだろうか、
あの日の夢を今もたまに見る。
魔王とアロンは一緒に封印されている。
時が止まっているから、封印を解けばまた会うことができる。
でも魔王を倒せないから封印は解けない。。
アロンを封印した時、その場にはりんごが一つ残されていた。
アロンの特殊魔法、アイテム創造で作ったりんごに違いない。
齧ってみたけど、あまり美味しくなかった。
種を植えて育ててみた。
食べた人の評判はとても悪かった。
「なにこれマリンさん、すごく酸っぱいよ!」
「え、それほど甘くはないけど、酸っぱくはないと思うけど・・」
どうも色々調べると魔力の強さに反応して甘さが変わるようだ。
これが甘いと言える人が現れたら、その人は魔王を倒せる。
そうアロンが言ってる気がした。
それから私はりんごを売り続けた。
上級魔法学園の近くで売ってるが、評判は良くない。
一度だけ「まぁまぁかな。」と言った子がいた。
その子は今では上級学園のエースだ。
今日は試験の日だ。今の時間帯は第一次試験の
結果が出るまでここで腹ごしらえする人が多い。
だが今となってはもう期待もしていない。
もしかしたら、もうアロンには会えない
のではないだろうか、
魔王を倒すものは本当に現れるのだろうか。
そんな事が何度も頭をよぎった。
すると、上級学園の試験のプレートを持った
少女が通りかかった。ダメ元で声をかけてみる。
「そこの人、採りたてのりんごはどうだい?」
少し悩み、お金を出して言った。
「そのりんご、一つ下さい。」
このりんごは育つまでに7年ほどかかる。
そして生産も難しい。
10本植えて付きっきりで育ててもその3割しか実らない。
そのため少し値段が高くなってしまう。
それでも買ってもらうために安くしている。
通常ならこんな大変なもの、3倍の値段はするだろう。
それでも諦める事はできない。
少しでもアロンに
会える希望があるならやめる訳にはいかない。
りんごを育てるのに7年、
学校に3年かかり切りになるので、
試験が10年に一度になるのだが。
そうしているうちに一緒にいた少年が
りんごを一つ取り少女に渡した。
「美味しい!」
え、何だって・・・!
正直言って夢や嘘を疑った。
だがこんなに美味しそうに食べるのだ、
演技では不可能であろう。
それに自分のほっぺをつねってみたが痛かった。
溢れそうな涙を必死に堪えながら微笑んだ。
「どうだい?ウチのりんごは絶品だろ?」
どうやら今日は閉店のようだね。
この子に全てを託すしかない。
・・アロンは私だとわかってくれるだろうか。
まだ気が早いね、
まずはあのピンク髪の子を鍛えないと。
「さぁ、忙しくなりそうだ。」




