78 外圧2
「屋内練習場を貸して欲しい」
なんか似たような指示がきた
前回は官邸からだったが、今度は外務省からだ
どちらにしても対応はうちの部署、というかオレだ
前回のスケートリンクの件で冷泉院担当と思われたようだ
これだから前例主義の官僚というのは、って私も官僚でした
今度はサッカー関係らしい
いや有名らしいんだが興味がないから名前を言われても全然わからないんだがな
なんでもサッカーというのは熱狂的なフアンがいるらしい
だからアウエーではグランドから遠いホテルしか予約できないとか
シャワーが水しか出ないとか
クーラーが微妙に冷えなく汗かきながら寝るとか
食事に食べれない物がでてくるとか
現地語しか使えないスタッフだけとか
とにかく嫌がらせが酷いらしい
ところが日本ではそんなことがない
でも日本人は英語がわかるけど喋らないという理解不能な人種だ
他が良い分、微妙に使えないのでかえってそれがストレスになるとか
便利な日本もの考えモノである
そこで作られたのがホワイトプリンスホテルだ
英語でそのままいうとタクシーの運転手がうなづいて送ってくれるというとても便利なホテルである
アル=マシャ―=サンガなどというホテル名なんかだと憶えるのも一苦労な上、発音が現地人と違うらしくて何度言ってもタクシーの運転手は理解してくれなかったなどというネタは海外で試合をするアスリートならではのアルアルネタである
ホワイトプリンスホテルなどというベタな名前はトウキョウタワーと並ぶ楽勝ネタなことを知る日本人は少ない
もちろん試合前には予約しておけば母国の料理が提供される
まあ日本人が作るのだから微妙に味が違うのはお約束である
ありなしで言えば、ありよりのなし、である
また試合後の打ち上げに母国のビールが飲めるのも嬉しい
ああ、屋内練習場の話だった
海外での練習はスパイ対策が必要だ
起用する選手、フォーメーションありとあらゆることを試合前に知ろうとスパイが侵入する
時にはグランド整備員、警備員、はては遠方の高い建物から望遠レンズでの監視から無音ドローン、監視カメラへのハッキングに至るまでになった
へたな映画顔負けである
ところが冷泉院に頼むと外から見られにくい上、学生ばかりの学校の敷地内の屋内練習場が使えた
どれだけ楽かは実際に使った人間しかわからないだろう
いままでは冷泉院にメールで連絡するだけでなんとかなった
なにせ冷泉院が建築して寄付した設備だ
当然優先的に使える権利がある
おまけに芝の状態が良い
はっきりいって金がかかっている
おかげで練習で怪我をする機会が少ない
実はこれが一番の理由である
アスリートにとって怪我は必須である
それは仕方がない
だが可能な限り減らすのがプロの仕事である
どこかの島国のプロのベースボーラーは死球による怪我で国内トップの成績を叩きだし記録更新が不意になっただけでなく、後遺症でその後鳴かず飛ばずの廃業に追い込まれる寸前まで堕ちたそうである
怪我と言うのはそれほどのものである
予防できるなら万全を尽くしたいというのが本音である
ところが今回、一方的に冷泉院の娘が退学になった上に、建物の権利を寄越せなどと言われたそうだ
関係が悪化したのでどうにもなりません
ちなみに娘の退学については取り消しされていません
ごめんなさい
そんな内容のメールが返信されたのだからもう大変だ
別に小娘が退学になろうがそんなのは関係がない
世の中実力がすべてだ
学校なんて後でどうとでもなる
いや学校で大騒ぎするなんて数カ国だけである
不要な苦労をさせる他の国と同じかよ!
である
逆恨みであるが




