62 恩知らずな人は知りませんわ
「冷泉院の寄付によるスケートリンクで練習をして優勝しておきながら他の会社のCMに出ているとは恩を仇で返すようなものですわ」
そう言うと真っ青になりましたわ
ごきげんよう
冷泉院雪子ですわ
冷泉院からの寄付金が一般的なレベルまで下がったことを受けていろんな人が非難してきましたわ
決めたのはお父様ですから苦情はそちらに申し立てればよいのですわ
でも自分よりも強い者には沈黙し、弱いわたくしに文句を言ってくるのですわ
目の前のアスリートは練習ができないと文句を言ってきましたわ
ですから言ってやりましたわ
恩知らず、と
顔色が真っ青でしたわ
どうやらようやく立場が判ったようですわ
でも容赦はしませんことよ?
だって自動的に悪役令嬢のスキルが発動したようですもの
ほら今、勝手に手が動いて扇子を取り出しましたわ
閉じた扇子の先端で彼女の肩を<ポンポン>と叩きましたわ
「スケートリンクの維持にどれだけのお金がかかるかおわかり?」
口が勝手に動きますわ
手も勝手に動いて扇子の先端で肩のあたりをグリグリと抉っていますわ
「それだけの恩恵を受けておいて優勝しながら感謝の気持ちを聞いたことがありませんわ」
ツツツッっと肩のあたりを扇子の先端がなぞりましたわ
「他の企業のCMに出て億単位のお金を貰ったらすべて自分のものにしますわよね?」
顎のあたりで扇子が止まりましたわ
「それが貴方方の先輩の話ですわ」
扇子を持ち上げて顎をクイッとしましたわ
「そして未来の貴方の姿でしてよ?」
顎をさらに上げましたわ
顎を持ち上げられたせいでつま先立ちですわ
顎を持ち上げれられた上に、つま先立ちになったせいで話す事が出来ませんわ
それにもかかわらず言葉が勝手に出てきましてよ
「さきほどのセリフをもう一度言ってみてくださいます?」
・・・毎回思うのですがどんな仕掛けで悪役令嬢のスキルが発動するのか知りたいですわ
バカなアスリートを締め上げた翌日、その先輩達がお父様の所に謝罪に訪れたのは別の話ですわ




