30 栗拾い大会でしてよ
「あ~、テステス、1(ワン)、2(ツー)、ワン、ツー」
拡声器の調子は順調ですわ
ごきげんよう
冷泉院雪子ですわ
今日は待ちに待った栗拾い大会ですわ
いえね苺ちゃんパパに大会モンブランをお願いしたのですわ
「明日、家族分の4個お願いしてよろしいかしら?」
苺ちゃんパパの回答
「栗がないので無理です」
<ガーン>
頭の中で鐘が鳴り響きましたわ
なんでも国産の質が良くて、価格も安いものを知り合いから優先的に回して貰っていたそうですわ
ところがパパが大会モンブランで優勝したことからバッタ物が大量に溢れたのだとか
そのあおりを受けて質の良い栗が無くなったそうですわ
後は質が良いけど高い栗ばかりだとか
そうしたらわたくしはヒラメキましたわ
栗が売ってないのなら自分で取ればよいのですわ
冷泉院の家は市街から車で1時間のところにありますわ
家の後ろには森が広がっていますわ
正確には山なのですわ
・・・どれだけ僻地にあるかがバレましたわね
大体日本の林業はとっくの昔に破たんしていますわ
山なんて二束三文ですわ
それをさらに買い叩いて買ったのがお爺様ですわ
絶対に値切って買うのがお爺様の楽しみなのですわ
お得で楽しいので一石二鳥だそうですわ
腐っても山ですから杉だけでなく栗、梅、桜の木があったそうですわ
休みの日に友達とお弁当を持って山に入り遊んだそうですわ
・・・昭和の初期のレジャーがそんな程度なのが驚きですわ
そこで栗を拾うついでに埋めたのだとか
まあ桃栗三年といいますから間違っていませんわ?
おかげで今では山の至る所で栗の木が大量にありますわ
それ以外にもミカンの木やらブドウの木やら梅の木やらがたくさんありますわ
・・・お爺様の食い意地はわたくしと同じくらいですわね(汗)
無農薬の栗が山3個分(笑)
まあそんな訳で今日は栗拾いですわ
初めは苺ちゃん一家とわたくしだけでしたわ
ところがわたくしの弟がやりたいと言い出し
我が家の執事やメイドが子供にも体験させたいと言い出し
お父様が「だったら会社の福利厚生で」と言い出し
当日、つまり今現在、わたくしの目の前には数えるのもバカらしいくらいの人数が集まっていますわ
なぜいか言いだしっぺということで、わたくしが仕切ることになりましたわ
大勢を前に拡声器を持っていると言いたくなりますわね
「お~す!」
とか
「歯を磨けよ!」
とか
「また来週!」
とか
「アメリカに行きたいか~」
とかですわ
いえここはやっぱり悪役令嬢らしく
「お~ほっほっほっ、人がゴミのようですわ!」
かしら?




