14 スイーツの大会の審査員は大変です@某料理学校校長
苺パパが優勝したスイーツ大会の審査員の話です
パパのモンブランの美味しさが伝わればいいな~と思っています
---------------------------------------------
「ないっ!」
目の前にあったモンブランが消えていた
誰か食べたんだ?
・・・もちろん私だ、な
私は某料理専門学校の校長である
こう言うと成功者で左うちわだと思われるかもしれない
・・・今の子達は左うちわを知っているのかな?
伝わっているかどうか心配だ
でも実際は違うのである
学校を作るのがゴールではない
作ったからといって生徒が勝手に集まるわけではない
ましてや料理を教えることができる教師というのも以下同文である
さらにいえば収入(授業料)から支出(給料とビルの賃料、食材の購入費等)を引いた利益を出さなければならない
今年度利益を出したからといって、来年度も儲かるという保障はない
学校を運営するというのは大変なのである
毎日毎日が博打だと言ってよい
私(理事長)が広告塔になりTVや雑誌の取材、イベントへの参加をすることで知名度をあげている
だれが聞いたこともない学校に大金を払ってまで通うというのだ?
いやいくまい
はやい話、知名度を上げることが必要なのである
・・・言っておくが他の教師や理事にも営業活動はやって貰っているぞ?
今回もそんな対外的に存在をアピールするためにスイーツの大会の審査員を引き受けた
出されたスイーツを一口か二口食べて点数を付けるやつである
簡単そうに見えるんだが、出場者の数が100人を超えるともはや拷問でしかない
朝食を抜いているのだが、それでも苦しい
昼食を抜くのは前提だが、ヘタしたら夕食も入らない
それが頻繁に、ヘタしたら週一か週二であるのだ
確実に糖尿病一直線である
今は情報社会で、一週間前の情報がもはや過去の遺物と化している
スイーツなどの写真写りの良いイベントにこまめに出るのが重要なのである
そうしないと知名度が一気に下がり来年度の入学者が減るのである
まあそんなわけでスイーツの大会に出ているわけだ
大会名?
憶えていないな
どれもこれも似たような名前だから覚えないんだよ
カンペを用意しているから大丈夫なんだ
しかしどれもこれも大して変わり映えしないスイーツばかりである
インスタグラムのせいで多少見た目が良い
しかし味はどれも同じ
食感も同じ
目隠ししていたらどれがどれだか判らないだろう
まあそんなクズでも参加費を払ってくれている ~要は私の日当でもある~ わけだから適当に褒める
・・・TVなんかで大げさに「おいしい」と言っているのと同じだな
ルーチンワークで審査員をしていたら突然アレに出会った
見た目は普通のモンブランだった
昨今のトレンドに従い見た目はソコソコ良い
何も考えずにフォークで掬い一口食べた
いつの間にか目の前にあったモンブランが消えていた
たしかにさっきまでは目の前の皿の上に載っていた
でも今は無い
口の中には栗の味がする
この食べ過ぎと感じるほどの満腹感は無理に一個丸々モンブランを食べたはずだ
でも食べたという記憶がない
思わず隣の審査員を見る
隣も私を見ていた
どうやら同じ思いのようだ
おもわず参加者の調理台に駆け寄った
後ろに他の審査員 ~料理学校関係者や料理評論家~ が付いてきたから皆がおなじ思いのようだ
この味の秘密を知りたい
それが頭の中で一杯だ
調理台に行くと見慣れない袋があった
そこでおかしいと気がついた
腐っても料理学校の校長だ
国内や国外で流通しているもの ~もちろん最高級品まで~ ならば全て知っている
ところが全く見覚えのない袋 ~パッケージの模様~ だ
どうやら生クリームと小麦粉が入っていた袋のようだがどこの製品かが全く判らない
生クリームが入っていた袋には白霧牧場
小麦粉が入っていた袋には白露農場
との名前が書いてあった
・・・全く聞いたことがない
「・・・ひょっとして冷泉院?」
料理評論家の審査員がポロッと言った
冷泉院といえば流通から家電まで手広くやっている所だが食品には手を出していないはずだが?
そう思い聞いてみた
食品関係の部門もあるとのことだった
ただし一般的な商業ルートでは流通させず、自分達のグループ内で消費しているらしい
だから知る人ぞ知る、というか普通は知らないそうだ
・・・早い話が生協か?
無農薬に原種栽培、広域放牧といった世間の流れに反した方針で運営されているそうだ
その分、味は良く、一度食べるとスーパーの食品は食べれなくなるそうだ
生産量が少ないため自分達だけの秘密にしているのだとか
・・・よく幻とも言える存在を知っているものだと感心した
出場者に聞いてみると娘の友達が冷泉院の長女だとか
それで今回手に入ったのだそうだ
最強のコネだな!
私にも欲しいぞ!