11 言われるままモンブランを作ったら大会で優勝した@甘井苺パパ
苺パパのお話です
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「優勝は甘井洋菓子店の甘井さん!」
私の名前が読み上げられて驚いた
いや優勝するつもりでモンブランを作ったのだが・・・
はじめまして
甘井苺の父です
小さな洋菓子店をしています
事の起こりは苺の友達の一言でした
「わたくしのためにモンブランを作って下さらないかしら?」
娘の友達が家に遊びに来たので店で人気のモンブランをおやつとして出してみた
だがセレブの方には物足りなかったようだった
すかさずお願いがきた
しかし、セレブの方はお願いまで優雅だな
下町の庶民とは大違いだ
あ?
なぜ下町育ちのウチの娘にセレブのお友達がいるか?
ウチの娘が高校に通っているからなんだよ
ウチの娘は自慢になるんだが結構頭が良い
この辺の子供は成績が良かったり、運動ができたりするとセレブの高校に特待生として入学する
入学金や授業料だけでなく制服代や文房具代まで支給されるから驚きだ
・・・制服一着10万円とか一般家庭で払うのは絶対に無理だから当然か?
もちろん特待生だからと言ってイジメられることはないようだ
金持ちはイジメなんて品の無い事はしないらしい
それどころか下町の一般家庭に遊びにくる始末
・・・本当にセレブの考えていることは判らない
そこでモンブランをお願いされた訳だが、お願いの内容が細かかった
栗を茹でるのではなく焼け、等々商売人にケンカを売っていた
「高すぎて売り物になりません(意訳)」
そう言うと
「2000円ではお安すぎかしら?」
・・・セレブの常識は庶民とはかなり違っているようだった
そういえばおやつの時に紅茶でいいかと聞いたら茶葉やミルクの種類まで指定されたな
一応職人だからそういうこともあると知識はある
だが実際に注文されることがあるとは思いもしなかった
もはや住んでいる世界が違うとしか考えられない
・・・ちなみにウチの紅茶はティーバックだ
紅茶の茶葉やティーポットなんて優雅なモノはない
あと、ミルクはスーパーの低温殺菌牛乳しかない
そんなわけでそれらでガマンして貰った
下町紅茶でも
「おいしいですわ」
と言われたのには驚いた
大量生産品でも美味しいと言うその根性
セレブというのは性根までセレブなんだと思った
試作した品の試食をして貰いたいと娘経由で言ったら次の日に来たのにも驚いた
フットワークが軽すぎる
セレブというのはよっぽど暇なんだな思ったのは秘密だ
食べた感想が「美味しいですわ」だったのでホッとした
だが
「こんど美味しい栗と生クリームが手に入ったら持ってくるので使ってくださらない?」
と言われたて気がついた
絶対に満足していない
まあそんなわけで試行錯誤の末に完成したのが今回優勝したモンブランだ
でも褒められるほど心苦しい
本当の開発者は娘の友達の御嬢様だ
それに2000円(税別)にもかかわらず飛ぶように売れている
限定30個なので開店前から行列ができる始末だ
買えなかったお客さんは他の商品を仕方がないので買っていってくれる
ちょっと前まで廃業寸前だったのが嘘のように売れまくっている
近所の人にまで褒められまくりだ
褒められれば褒められるほど罪悪が増えていく
どうしたものか?