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89.水と闇の邂逅⑥

月一投稿とか……文字数少ないのに。( ノД`)シクシク…


会社の上司変わって、3日目ですん。もう辞めたい……あいつぶっとばいたしよぉぉぉぉ


薬剤師の仕事なめ切ってるとしか思えないんですよねえ。人の命預かる仕事だって判ってる?死ねばいいのに

 サラリと琳華が艷やかな黒髪を書き上げる。緩く波立つ長い髪が滑り落ちる。


「私は夜上じゃない。戸上の掟も、夜上の慣わし知らない、ただの逸れ者(はぐれもの)よ。野良闇使い」


 あれ?と、清藍は気付いた。そういえば、琳華はかなり明るい茶色の髪ではなかったか?


「気が付いた?」


 清藍の視線を辿って、少し意地悪そうに、それでいていたずらっぽく彬華が微笑む。


「この色が私のホントの髪色。陽の光を浴びても透けない程の黒。そして、瞳の色もね」


 そう言って、見せ付けるように顔を青藍に近付ける。


「ホントだ」


「私がここに呼ばれた理由の1つは、この色よ。闇の神が好む色。肌も、少し浅黒いでしょ?」


「はい……ハーフなのかなって思ってました」


「優しいなぁ、大体は『何処の国から来たの?』って聞かれたり、外国人に現地語で話し掛けられるとかなのよ。こう見えても私は純粋な日本人なんだけど」


 清藍は曖昧に笑った。実は清藍も最初は外国人だと思っていた。肌の色なども勿論だが、顔だちも少しエキゾチックな雰囲気がある。しかし、日本語の発音は独特だから、その流暢な話し方を聞いていれば少なくとも幼いころから日本にいたことは判る。


 たとえ日本人でも外国語が堪能になると日本語の発音がおかしくなる場合もある。少なくとも彬華は日本語以外話せないか、話せても日常的に外国語で会話をしているわけではないことはすぐに判る。それを伝えると彬華はとても嬉しそうに微笑んだ。


「そっかあ。言葉遣いには人一倍気を付けていたの。判ってくれる人がいて嬉しいなぁ」


 外国人と思われないためにだろうかと清藍は考える。だとしたら、普通に生活している人も、色々なことで苦労しているのかも知れない。何気ない一言で傷付いたり……そう思うと、なぜ自分だけがこんなに辛いのかと嘆いていた日々(かこ)が少しだけ恥ずかしくなる。


 世界を知らなかったというか。この世で自分が一番辛いと思っていた。そこから抜け出せつつある今ですらそう思う時もある。


 どうしてこんなに人と話せないのかと悩むことも多い。けれど、街を行きかう幸せそうに見える人にだって、辛いことや苦しい事くらい当たり前にあるのだ。多分。


「話を戻すね。褐色の肌は置いといても、この見た目って本来は夜上一族の証みたいなものなんだって。日に透かしても透けない程に色の濃い、黒と見紛う程の濃い色合い。日本人って言ったってここまで濃い色合いの人って元々少ないんだって」


 長く波立つ黒髪を一束摘み上げて彬華は言う。人伝えに聞いたことを隠さない口調だ。それを教えたのは夜上一族の誰かなのだろうか。


 そういえば、陸はもともと色素が薄く肌の色も白い。目などは外国人かと思う程の薄さだ。徹は髪は黒く瞳も濃い色をしていたが彬華の様な真っ黒ではない。焦げ茶色くらいだ。


「髪は……カラーリングで何とでもなりますけど目の色は?あ……さっきは左右色違いのカラーコンタクトをしてましたけど、学校や仕事の時まで……?」


 人は意外に人の顔を見ていない。普段から空気のように扱われていた清藍には痛い程に判る。だから瞳の色まではそれ程気にしないでもいいのではないかと思った。


「……それね。最初はそうだったんだけど」


「ええ~~大変……」


「でしょ~?結構お金もバカにならないしさ~。視力2.0もあるのに何が悲しくてコンタクトしないといけないのかって話よ。しかもわざわざ普通に見えるカラコンなんてさ……」


 彬華が頬に手を当ててため息をつく。


「仕事中はメガネよ。ブルーライトカットのやつ。あれ、レンズの色が黄色いから目の色わかりにくいし、更に少し反射度少し高いやつで目の色判りにくいようにしてるの。サングラスに見えない程度にね。幸い仕事は殆どパソコン作業だから、私の視力を知ってる人にも納得してもらえるでしょ」


「パソコンできるんですね……凄い」


「あんなもん誰でもできるよ。やる気があるかないかだけで。ああ……今の仕事は苦手な人もいるかもしれないけど、高校で数学もっとちゃんと勉強すべきだったって後悔してるわぁ」


 彬華は数学は苦手でねえ、と苦笑いを浮かべる。


「パソコン作業で数学が関係する仕事……設計とか?」


「ふふ……残念ながらそこまでは出来ないの。ただの図面屋よ。手書きで起こされた図面をデータ化するだけのね。このご時世なのに今だにパソコンで図面引けない人って多くてね」


「パソコンで図面を引く……凄い……」


 パソコンすらロクに触ったことのない清藍には想像もつかない。


「全然よ~。高卒でもできるくらいの仕事なんだから~~……あ……また脱線してるね、ごめんごめん」


 苦笑いとともに頭を掻き、軽くため息をつくと気を取り直したように口元を笑みの形にして。


「闇の神様に呼ばれたと思ったのはそういう理由。本来ならもっと力のある術者を呼びたかっただろうと思うけれど、この辺りにはいなかったのかな。夜上もそう残っていないんだろうし。


 あ、私が夜上一族より術力が上ってわけじゃないのよ?この近くにある神社が好きで高校の頃から良く遊びに行っていたの。私の行ってた高校この近くだから」


「神社……あぁ、三日月神社でしたね。闇の神様をまつっているんですか?」


「ん~正確には月の神様だと思うけど、誰だろうね。ツクヨミノミコトかなあ。日本神話って月の神様って一人しかいないよね」


「あ、そうですね。多分。三日月……珍しいのかな。月じゃなくて三日月だけを祀ってるのでしょうか」


「詳しいことは私も知らないんだけど。ツクヨミノミコトを祀っている神社自体が珍しいんじゃないかな。大体は、アマテラスオオミカミかオオクニヌシノミコトか……じゃなければ、場所の土地神様を主神にしてるんじゃなかったかな~……確か崎宮さきのみやの主神も珍しい名前だったような……」


「へぇ……詳しいんですね」


「いや全然。神社は好きでアチコチ行ってるんだけど全然覚えられなくてね。アホだから私。嘘言ってるかも、適当でごめんね」


 関心しきりの清藍に、彬華はアハハとごまかし笑いをする。


「そんなわけで、珍しいからさ。月の神様なんて、それにあの辺りって静かで落ち着くしね。土曜日とかお弁当と本持って良く遊びに行ってたのよ。あ~トモダチいないってバラしてる様なもんだなぁ。恥ずかしい


 それに私は()()()()の良く見えるタチでね。時々綺麗なお兄さんの幻が見えてて、それを見に来てたっていうのも、アハハ……」


「幻……まさかその人は……」


「それがシェードって私が読んでるヒト……誰かのこと。この世の人じゃないとは思うけど、邪気も感じないから幽霊とかそういうのではないとは思うんだよね」


「彬華さんはそのシェードさんに呼ばれてここに?」


「そうじゃないかなって。なんて言うかな……大分弱っている……んだと思うんだ。シェードに会った時ってものすっごい疲れるというか消耗するんだ。私の術力をごっそりもってかれんじゃないかってくらい」


「ええ……それなのに通っていたの?」


「はは……おかしいよね……でも、消耗はするけど、翌日までそれが続くことは何故かなかったのよ。ホントに消耗してるんなら、その場ですべて奪い取るんじゃないかなって考えたの。人一人の命で神様が回復するなら安いもんでしょ?」


 掛かっているのが、自分の命だというのに軽く言う彬華に、清藍は少したじろいだがそれよりも気になることがあった。

「必要最低限だけを吸い取ってるってことですか?」


「そうなんじゃないかな~~って勝手にね、思ってるだけなんだけどさ。……もしさ、あたしの術力を吸ってシェードが少しでも回復するならそれでもいいかなって」


 本当は初めて幻を見て消耗した後、暫くは怖くてそこには近づかなかった彬華だった。しかし、術力はすぐに回復し、後遺症の様な物も残らなかった。結局、何ヶ月か後にまた彬華はそこを訪れた。その日は彬華一人ではなく友人を数人連れて。しかしそれは、また別の話だ。


「シェードさんは彬華さんを巫女と思っているのかも知れませんね」


「巫女?」


「はい」


「巫女ねえ。赤い袴でも穿く?」


 あははと二人は笑った。清藍は巫女姿の彬華を想像して似合いそうだなと思った。けれど、それは言葉にはできなかった。

R05-03-16 一部改稿

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