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水使いの帰還①

ここのところ新キャララッシュですが、もう一人。男ばっかりだなー。華がないよー、華が。


今まではライバル心はあっても陸や徹に好意的な人たちばっかりでしたが、今回の彼はどうでしょうか。


どうせ華がないならせめていい男をいっぱいだそうキャンペーン中。


吉良きら君は名前表記はまだ検討中です。雲英と変更するかも知れません。読みは同じです。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ちなみに 卓子たくしは和風のテーブルのことです。

前にも書きましたが和風の雰囲気を出したいので、出来る限りカタカナ語を漢字で表記するよう心がけております。


設定集にも載せておりますが、戸上邸の1F部分の間取り図を作成したので掲載しておきます。

 目覚めた彼女の部屋に二人の青年か訪れてから後は怒涛のようだった。


 彼女の目覚めを子供のように泣いて喜ぶ二人を宥めるのに苦労した。本当に大丈夫なのか。痛むところがないのかと何度も聞かれた。


 その後、彼女の主治医が呼ばれ、彼女の病状を確認するための診察が行われた。


 結果、氾濫に巻き込まれたことと、三日間眠り続けたことで体は若干衰弱していたがそれ以上の問題はないと判断された。医師からは衰弱が回復次第退院できる旨の説明があった。


 数日で退院できることにはなったのだが、陸と徹の両方から誰もいない部屋に戻ることを禁じられ、彼らのどちらか−−おそらく、陸の方になるだろう−−が退院できるまで病院で生活するように言いつけらた。


 当然彼女は抗ったが、口論の結果彼らに根負けしてしまい、しばらく病院暮らしを続ける事となった。


 過保護過ぎると思いはしたが、二人の心配する気持ちから出ていると判る言動だっただけに強く抵抗ができなかったのだ。


 まるで『お姫様』のような扱いにくすぐったいようなふわふわした気持ちもした。当然それは気恥ずかしいものだったがそんな扱いも悪くないと思ってしまう。


 お姫様願望なんて私にはないと思っていたのに。と、清藍は幼稚な自分を恥じた。


 大学に通うことのできないため彼女は陸に頼み、家から参考書の類を持ち出した。同じ様に陸も自分の病室に参考書を持ち込んでいたので、逃げようとする徹も加えて(捕まえて)三人で遅れを取り戻すべく毎日自習している。


 陸の勉強方法は計画的で効率が良く、一人で自習するよりずっと効果的だった。


 一週間ほどそんな日々が続いた。護衛の様に眠る直前まで彼女のそばを離れない二人だったが、うっとうしいといった感情は浮かばず、まるで合宿のような気分で時が流れた。


 ようやく陸の体調が戻り彼も退院を許された。入院している間からずっと、二人に『しばらく戸上の家で暮らすように』と説得を受けていた。


 二人は清藍が水害に巻き込まれた事を−−あるいは、徹も含めて−−次期当主候補を狙った工作だと考えている様な雰囲気だった。勿論それを口に出して言ったりはしなかったが。


 肋骨にヒビの入っている徹はもう少し入院が必要な様だ。だが、徹は陸に合わせて自分も退院すると医師を説得した。負傷者が出ているこの状況で戦力を分断したくないという事なのだろう。


 肋骨にヒビが入って安静を言い渡されているこの状況で戦力も何もないのではと陸は思ったが、分断する事自体には彼も反対だったので陸の好きなようにさせることにした。


 そうして、彼らは日常を取り戻すことができた。わずかな変化と共に。


――――――――――――――――――――――――――――――ー


 清藍せいらんを伴い帰宅したりく達は彼らを迎えた戸上の使用人の中に一人あまり見慣れない顔を見つけた。


 資金的な援助は受けていたものの戸上の者とは疎遠だった清藍には判らなかったが、陸ととおるはすぐに気がついて警戒の眼差しを向けた。


 その男は出迎えた使用人のように彼らの荷物を受け取るでもなく、広い玄関の後ろの壁に背を預けて腕を組み三人に不躾ぶしつけな視線を送っていた。主に清藍へ向けて。


 整った顔立ちであったが、どこか人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべており、その瞳は切れ長というよりは鋭いと言った方が合っていた。


 面差しは陸と似ているように思う。陸よりも色合いの薄い栗色の髪は緩やかに波打って鎖骨の辺りまで伸びていた。


「お帰り」


 口の端を少しだけ上げて青年が小さく言った。


「お姫様も一緒だね。ようこそ、かな?」


 その青年を見た途端に徹が眉をひそめた。それに気づいた清藍は徹の顔を見上げながら、苦手な相手なのだろうかと首を傾げる。雲行きの悪そうな雰囲気に、機先を制して陸が声をあげた。


吉良きらさん、いらしていたんですか」


「うん。親父様に呼ばれてね」


「伯父様もいらっしゃるんですか。……お出迎え有難うございます」


 吉良と呼ばれた青年に鋭い視線を送り続ける徹を制するようにぺこり頭を下げて、荷物を使用人に預けて相棒と青藍を促して自室の方に誘う。


「……どういたしまして。お姫様、また後でね」


 吉良は軽薄な態度でひらひらと手を振って奥へ歩いて行く彼らを見送った。


 お姫様とは多分自分のことだろうと思ったが、そんな風に呼ばれる理由も思いつかず、更に後で会う理由も必要も思い浮かばず、清藍は軽く頭を下げるだけで彼の前を通り抜けて陸について行った。


 陸について屋敷の中を進ながら清藍は懐かしさを感じながら歩いていた。


 前にこの屋敷の中に入ったのは小学生の時ではなかったか。想像以上に細部を覚えていることに驚きながら清藍は、陸達の付いて行き、三人は陸の部屋に入った。


「せいら、僕の部屋で悪いんだけど、取り敢えず休憩しよう。今、せいらの部屋を用意させているから」


 陸が自室のドアを開いて彼女を招き入れながら言った。


 広い戸上の屋敷だ。部屋はいくらでも余っているのだそうだ。


「あ、うん。あの……私、家に帰ってもいいんだけど」


「ごめん、今はせいらを一人にするのは危険だと思うんだ。せいらを……襲う理由が明らかになったんだし……」


 隣で同意するように徹が頷いている。


「でも……風の神様は攻撃はしないって言ってくれたんじゃ……」


「アレだ。敵は風の御神おんかみだけじゃないってことだ」


 補足するように陸が言いにくそうにしている事をさらりと徹が口にする。


 気不味きまずそうな顔つきになりながらも、陸が同意する。


「むしろ、風の御神を裏で操っている人物がいるかも知れないしね」


「そんな。あんな強大な神様を操るなんて……」


「その話もある。座って話をしよう。せいらの納得する答えが出せるかわからないけれど」


 陸と徹の顔を順に眺めて、清藍はため息をつき同意するように陸の指し示した卓子の前に座った。


 彼女は思う。時間は限られているのに、と。けれど仕方ないとも思う。彼女の命が危険に晒されているのはまぎれもない事実だったから。


 外観は完全な和風の作りになっている戸上邸だったが、陸の部屋は少し違っていた。


 土間からそのまま部屋に上がれるようになっており、部屋に入ってすぐは三畳ほど畳が敷かれていた。奥はフローリングになっており、畳とフローリングの間は障子で仕切れるようになっている様だ。


 今は障子は開けられ左側にまとめて収納されているため奥の勉強机までが良く見通せる。勉強机の隣にパソコンなどの家電が並んでいる。


 ふと清藍の頭の中にこの場所は元はキッチンだった筈だという知識が頭の中をよぎった。見たこともない筈の映像が頭の中に浮かんで来る。


 それはこの場所で食事をする子供たちの姿で、その中には目の前の二人によく似た子供も混ざっていた。


 何故そんな映像がと疑問に思ったが部屋のデザインの珍しさに心惹かれ視線を動かすのに忙しくすぐに忘れてしまった。


 手前の畳の部分には、手触りの良さそうな二畳ほどの敷物がしかれ、その上に小さな卓子たくしが置かれていた。


 部屋の右手は一部がガラス張りになっていて、そこから中庭が見通せるようになっている。窓ではなく壁の一部にガラスがはめ込んである。ずいぶん凝った作りだと清藍は思った。


 徹はさっさと卓子の右側にどっかりと胡座をかいた。彼女は陸に促されながら土間側に、陸は徹と向かい合う形でさらにその左側に座った。わずかに猫背な徹と背筋を伸ばした正座の陸。その対比に彼女は小さく笑みを浮かべた。


「散らかっててごめん。僕も戻ったばっかりだから」


「ううん。綺麗に整頓されてる。見習わなきゃダメなくらい」


 それは素直な感想だった。散らかっていると陸は言ったがそれは勉強のための参考書がその辺りに二、三冊置いてあるだけでゴミや埃などは殆ど見られない。


 そんな事ないよと小さく返す声が聞こえる。恐らく陸は本気でそう思っているのだろう。


 彼女は左右に座る二人を落ち着かない気分で交互に眺めた。


挿絵(By みてみん)

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