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82.吉良の暴走③

 またまたお久しぶりですみません。そして短いです。重ね重ねすみませんすぎます( ノД`)シクシク…


 ちょっと追加してますハイ。ちなみに木授術は5属性には入っていません。


 本編で説明されそうもないのでここで軽く解説を。

 あくまで5属性は火(炎制術)、水(水賜術)、雷(雷誘術)、風(風操術)、土(土護術)です。木は土属性の一部もしくは水と土の複合属性とされています。なのであくまで木術が得意でも新汰は土使いと呼ばれます。

 吉良きらは一瞬迷った後、正樹まさきの方へ顔を向ける。援護メインの新汰あらたよりも接近戦を仕掛けてくる正樹をより危険視した様だ。


 次の瞬間にはふわりという形容が相応しい身軽さで正樹が飛び込んでくる。


 甘いと思う。吉良が迷った瞬間を狙わない正樹を。けれど今はそれが幸いしている。手に硬質に変化させた水を纏わせて正樹の攻撃を防ぐ。


 しゅるりと何か固いしかし、しなやかなものが擦れるな音を吉良の耳が捕らえた。それは結界によってもたらされた静寂のせいでやっと聞き取れた程の小さな音。


 とっさに跳んだ。空中に数瞬で消える氷の足場を作って、2歩、3歩と駆け上がる。3歩目はタンッと勢いをつけて正樹の頭上をくるりと回りながら飛び越えた。


 三度、新汰と正樹に対峙してから、音の正体を知ることができた。


 新汰と正樹の間、先程まで吉良がいた空間を、どこからか伸びた茶色のつるの様な植物が叩いた。


「……木授もくじゅ術とは……ね」


 吉良は笑う。着地の後に素早く振り返り自らを襲った物体を確認して。


「初めて見たよ。レアなのは一人だけじゃないんだね」


 よく見ると蔓の様な植物だと思っていたものは木の幹だった。それは、まるで柔らかい蔓のようにしゅるると地を這って、木々の間に巻き戻って見えなくなった。


 植物を操る術を木授もくじゅ術という。けれどそれは……。


「ずいぶんと古い呼び方をするね」


 ずいぶん昔に廃れてしまった呼称だった。現に正樹はその呼称を知らないようで、不思議そうな顔をしている。新汰の言葉で何となく理解した様子だ。


「話を聞いてくれないか、吉良君」


 話しかける間にも吉良が氷刃を作り出し、二人にけしかけてくる。数センチ程の細かい氷刃は、ダメージは少ないが数が、多く広い範囲で二人を包むように弧を描いて向かって来る。


「今はダメだよ」


 答える声は楽しそうにも聞き取れる。


 吉良の操る氷の風は縦横無尽に周囲を蹂躙していく。術の効果範囲の広さに二人は致命傷を避けるように動くだけで精一杯だ。


 氷嵐の間をぬって肉薄する正樹の攻撃も、新汰の木の幹や木の葉の遠距離攻撃もその度に氷の盾で弾かれてしまう。


 攻撃属性は氷のみだったが、吉良の攻撃パターンは多彩で二人係でも苦戦を強いられる。新汰は正直攻めあぐねてしまっていた。


「正樹……」


 新汰を守るように立つ正樹の背中を眺めながら小さな声で新汰が声を掛ける。


「手加減とか、してる余裕ないかもな」


「でも……」


「骨の一本くらい折るつもりでかからないとこっちがヤバい……」


「……それは……そうだけど……」


 新汰は優しすぎる正樹にはこの状況は相当きついのだろうと思った。


 今までも正樹は模擬戦以外では対人戦は行ったことがない。覚悟を決めることができるだろうか。新汰は正樹の心中を思うと胸が痛んだ。


 一度目を閉じて、深く息を吸った。


 覚悟を決めないといけないのは、多分俺の方だ。普通に生活する中で身についていった道徳観。この平和な日本で普通に生きていれば、人を傷付けることなどすることもなく一生を終える人間も少なくない筈だ。


 けど、判ってる。……いや、判ってるつもりだ。


 俺は――少なくとも戸上に連なる人間は暴力と無縁でなどいられないと。


 そのための訓練も当然のように受けてきた。だから、覚悟を決めないといけないのは、俺だ。


 正樹に罪を着せないためにも。


 頭の片隅に、大人しそうな外見のわりに我儘なところのある恋人の顔が過った。


 覚悟なんて――、できてなかったな。


 少なくとも一族の女性を選んでいたらここで躊躇することはなかったのかも知れない。こんな状況では逃げることができない事を、少なくとも一族の人間なら理解して貰えるだろうから。


 そんな甘い考えを抱いていた自分が可笑しくて自然に笑みが出た。


 しゅるりとしなやかな音を立ててどこからともなく木の幹が側面から吉良を襲った。狙いは足元だったがそれは予想通り氷の盾で弾かれ、鈍い音を立てて割れた。本来の木の幹に戻り地面に落ちた。


 正確に言うならば2対2の戦いだ。苦戦を強いられても別に可笑しくもなんともない。姿が見えないだけだ。


 そう自分に言い聞かせた。


 新汰の足元まで転がって来た木の幹を足の甲で蹴り上げて掴むと、新汰は掛けていた眼鏡を外した。


 普段はメガネなしでは生活できない程の近眼の新汰だ。眼鏡を外せば近くの正樹でさえぼやけてしまう。


 新汰は鋭く息を吐くと吉良との距離を一気に詰めた。

R03-09-12 加筆

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