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77.黒い靄の中心点②

 おひさしぶりでして。いきておりますよ。


 話は決まっているのに書けない……。困ったものです。取り合えず短いですが掛けた分だけ上げとこうと思います。

 新汰あらたの車の後部座席で彬華りんかが背もたれに体を預けている。


 その視線は遠ざかっていく三人の男たちの背中を追っていた。黒い靄の更に濃い方へと向かっていく人影に胸騒ぎを覚える。


 彬華の心の中で付いて行った方がいいと誰かが告げている。けれど、消耗した体は重い。この黒いもやに体力を奪われている様だ、とも思った。


 何故他の三人は平然としているのか。この靄に特に彬華の体が反応しているのは間違いないようだった。


 遠ざかる人影の一人がこちらを振り返る。その特徴的な人影はすぐに判別が付いた。正樹まさきだ。彬華を心配しているのだろうか。


 彬華は小さく正樹に手を振ってから体を背もたれに預けた。頭の奥がずっしりと重い。


「正樹」


「うん」


 ちらりを彬華の乗る車を振り返った正樹は、軽く新汰に促されながら進行方向に顔を戻した。


 彼女が気にはなるが連れて行くよりも安全だろうと思う。


 一つ大きく息を吐いてから見ることのできない何かを捉えようと空を睨む。見ることはできなくても、確かにこの場には何か嫌な雰囲気が漂っている。


 コンビニと隣接した公園の中心部へ近づく程、ここに居たくないという思いが強くなっていく。


 もう肌寒いと感じる季節だというのに手のひらが少し汗ばんで気持ちが悪い。


 不意に吉良が立ち止まった。


 小さな公園のちょうど中心付近に小さなため池があり、その周囲にいくつか遊具が密集している。池の中に小さな小島があって何かの碑が立っているように見える。


「いかにも、だな」


「うん、でも。この場所を指定されなかったら、術者でも気づかない程度には抑えられてるね」


 瘴気はその碑から零れ落ちている様だった。けれど、吉良の言う通りそれは術者ですら気付かないくらい僅かだ。


 彼女は何者なのだろう。ふっと吉良は、今は車の中で休んでいる筈の女性を想い浮かべた。


「これをどうにかしたら、彼の神は解き放たれるのかな」


 呟くのは正樹だ。


「どうだろう?瘴気が漏れているっていうことは、この石碑は悪いものを封じているのかも知れない」


 答えるのは正樹の相棒だ。新汰は左手の人差し指で、レンズの下を押し上げるようにメガネのずれを直し、その石碑に見入っている。


「この場所に来たはいいけれど、問題はこの後どうするかだけど」


「……そうだけど、場所が判っただけでも進展だと思うよ。一旦戻って、陸君たちと相談するのもありだと思うしね」


「目が覚めてるといいけど」


「徹君にも話さないといけないしね」


 新汰と正樹はそんな会話をしながら顔を見合わせた。

R03-07-04 一部改稿


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