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69.禍(まが)つ印④

 この時間になると、猫がご飯をくれと騒ぎ始めます。でも、ご飯の時間はいつも同じで6時なんですけどね。あと1時間がまてないらしいです。


 話は佳境……?主人公全然出て来ないけどーーーwwww


 まあ、吉良君が活躍し始まってるけど、いいのか?それで?

 楽しそうに説明する吉良きらに対して彬華りんかは無言だった。


 彬華は助手席に座り()()()()()()()()を織り交ぜて話している吉良に対しても何の反応もしていなかった。


 ただ、外の景色を――これから向かう先ではなくて、通り過ぎる景色に見入っている。


 横に座る正樹まさきも吉良の言動には殆ど関心を寄せずに、自分と二人の時は口数の多い彬華の知らない一面を見ているような気がしていた。


 吉良は先程とは違い楽しそうに話しているように見えるが、その実、相変わらず顔色が少し悪い。


 無理して平静を保とうとしているようにも見えるが、それに気付いている人物はこの場にはいなかった。


 話を聞いて返事を返している新汰あらたも、どちらかと言うと運転と外の様子に気を取られていたからだ。


 対、妖との戦闘に赴くわけではないが、このメンツではあまりにも心もとない事も気になっている。彬華の力量が知れない事も不安材料の一つではあるのだが、それ以上に気にかかることがあった。


 吉良にしても正樹にしても既に術者として何度も仕事をこなしており、危機に対しての判断力も術者としての力量も申し分ないのだが、彼らの間に彬華がいることで妙に雰囲気がおかしなことになっている点だ。


 正樹は元々、術者としての仕事は新汰を介してしか受けておらず、組むのも新汰達だけだ。だからこそわかるのが、いつになく正樹がそわそわしている。


 これは当然、彬華が傍に居るからだろう。そして、どういう偶然がその彬華が吉良と知り合いだったらしいという事もそれに拍車を掛けている。


 もとより正樹の恋愛に口出しなどするつもりはなかったが、この状況は不味いと感じるのは自然な流れだった。


 対して、吉良も彬華にどういう感情を寄せているのかは良く判らないが、正樹が彬華を連れてきてから様子がおかしくなっている。


 得てして、男同士が仲違いするのは女のせいだったりするけれど。こんなところを標的にされたら普段の力の半分も出せるかどうか……。


 そう考えて、新汰はため息を付く。大人になったと思っていたが、まだまだ自分達は未熟なんだなと一人心の中で嘆息するしかなかった。


「戸上さん。そのまま、そこの交差点を右に曲がっていただけますか?」


 深いため息をそっとついていた新汰に、声を掛けて来たのは彬華だ。


「……了解。何か見えた?」


「いいえ。はっきりとは……。人が多いと集中が続かなくて……すみません」


 ルームミラー越しに彬華がこめかみを、抑えながら外の様子を凝視しているのが確認できた。その表情は険しくて、苦しそうだ。


「大丈夫?」


 正樹が隣で声を掛けたが、彬華は小さく頷くだけで正樹を振り返る余裕もないといった風だ。


「……このあたりのどこかだと思うのに……」


 小さい声は周囲に届いていない。


 彬華の言動にいつの間にか吉良も話すのをやめていた。彬華の様子を伺い、吉良も彼女の見ている方向に視線を釘付けにしている。


「そこ、真っ直ぐだと思うよ」


「判るの?相馬君」


「多分……」


 ちらりと彬華の視線が吉良へ移る。


「真っ直ぐ行くよ」


「お願いします」


 そうして、4人のまとまりがないままに、彼らは進んでいく。その、場所へ。

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