66.禍(まが)つ印①
連続投稿できた。明日も投稿できるかな?
ああ眠い。おやすみなせぇ
新汰達は戸上本家の門の前まで来ていた。
陸が倒れていた場所だ。
陸が倒れた理由に超常的な出来事が関与しているのだとしたらその現場に何か手掛かりがないかと考えたようだ。
彬華には詳しくは告げていない。陸の家とだけ伝えてある。
普通の生活をしていた人間にこの地を守る術者達の総本山だと話しても、頭がイカレてしまったのかとしか思われないだろうという事は想像に難くない。
新汰は門の周囲全体を見回し、陸が倒れていたという左側の柱の辺りに立っている。吉良はその少し後ろで同じように周囲を伺っている。
正樹は一番後ろで所在なげに彬華に注意を注いでいる。
戸上邸の門の前で三人の男に守られるようにして立っている彬華は、誰にも感情を伺わせない無表情を保っている。
やがて……門の下に流れる小さな水路へ視線を落とし、その縁に咲いている紫色の小さな花を見詰めた。
この時期になるとどこにでも生えているありきたりの小さな花だった。けれど、彬華にはその花が血に濡れて見えている。
「これ、かな」
小さな彬華の声に男達三人が反応する。
こんなに毒々しく禍々しい花をこの三人ですら気付かないことが彬華にとっては意外なことだ。
素早く新汰が近寄って来て、身振りだけで彬華を後ろに下がらせた。後を追う様にその隣に吉良も達同じような様子で花を見下ろす。
「本当だ。気が付きさえすればこの花の禍々しさは隠しようがない……けど、これは……」
僅かに間があってから吉良が呟き、同意するように新汰が頷いた。
「巧妙に隠されていたとしか思えない、か」
吉良の言葉を引き継いでから、新汰はその場に屈み込んだ。
新汰は花に手を翳したかと思うと、小さく何かを呟く。すると花はみるみる萎れ、枯れてくたりとそこに倒れた。
変化はそれだけではなく、数秒の時間をおいて枯れた花は、風化し砂となって風に散っていく。
「……これでよし」
一連のその様子を後ろに下がっている彬華には見ることは出来ない。その為に下がらせたのだ。
「篠崎さんありがとう、ここの処理はこれで大丈夫だと思う」
立ち上がって後ろを振り返り告げる新汰の声はいつも通りの穏やかさだ。
「そうですか。お役に立てて良かった」
「これで陸君が目覚めてくれるといいんだけどね」
まだ難しい顔をしたまま新汰が呟くが、それに答えられる者はここには誰もいない。
「俺たちはこのまま、熊田市の方まで行くけれど。篠崎さん悪いんだけれどそっちも付き合ってもらえるかな?」
「あ、ええ。大丈夫ですけど何をしに?」
「うん、ちょっと調査かな」
はあ、とだけ答えて彬華は不思議そうに新汰を見て、それから正樹に視線を移した。
正樹は何か言いたげにこちらを見ているが、結局彼が口を開くことはなかった。