65.正樹の心中
お久しぶりでございますよ。
仕事覚えられなくて凹んでる作者です。誰か慰めて(T . T)
歳なのかしら。やる気ないの?って毎日聞かれてる。辛いね……毎日挫けそうだけどなんとか頑張ってます。
みんなもコロナで大変だけどがんばろうネ!
複雑な心境というのはこういうものなのかな。
隣の座席に座る彬華を盗み見しながら正樹は心の中でぼやいた。
彬華が幽霊が見えると話したことがあった。正樹はそれを疑ってはいなかった。けれど、深く考えてもいなかったことに今気が付いた。
この土地は戸上をずっと育んでいた土地だというのに、だ。
この土地の人間の多くはこういう体質に生れ落ちる。
正樹もその例に漏れなかった。けれどそれでも、殆どの人間はその能力を開花することなく一生を終わっていく。
正樹の親族には正樹と同じ程に術力を操れる人材はいない。少なくとも戸上の私塾で親族と鉢合わせることは一度もなかった。つまりそれは、彼の親類の中に術者となれるほどの才能のある者がいなかったということだ。
正樹は消して術者として能力が高いというわけではない。たまたま先祖返りして生まれた風使いが、疾上姓だっただけに過ぎず、本当の意味での疾上一族はもう存在してない。
当然正樹の家に疾上の伝統やしきたりなどが残っている筈もなく、自分は普通の会社員の父とパートで働く母の間に生まれた普通の子だと認識していた。
彼の中には戸上の家の者達の様な選民意識は存在していない。
新汰に頼まれることがなければ、おそらく術者としての自分を封印したまま普通に生きていただろう。
だからあまり深く考えることもなかった。
けれど。
またちらと隣を盗み見る。
病室の中にいた優秀と評価される術者ですら見ることのできないモノを、もし本当に彼女が見えているのだとしたら。
多分、戸上一族の権力争いに利用されることになる。
ぞくりと正樹の背筋に悪寒が走った。
そうだ。戸上の男たちは優秀な次代を生み出すためならばどんな禁忌も厭わない。むしろ戸上の男だからか。当主になることができない故に、次代を生み出す事にしか価値を見出せない彼らだから。
過去に何度も兄妹・姉弟間ですら子をなしてきた一族にどんな禁忌があるというのか。
ならどうしたらいい?このまま連れて行っていいのだろうか?そんな考えがよぎった。
知られるのはまずい、多分。けれどこのまま返す気にもなれない。せっかくのチャンスなのにということもあるが、それよりも目の届く所にいる方が安心な気がして。
何故か彬華の能力を見極めようという、考えには至らなかった。正樹にとってそれは重要なことではなかったからだ。
こんな力などない方がいい。それは多分、新汰をそばで見ているからこそ思う事だろう。
この力のおかげで普通以上の収入を得ている正樹ではあったが、それでもそう思うことを止めることはできなかった。