63.再集合後の騒動④
サブタイトル変更しました。全然タイトル通りに動いてくれないから。
時間ないのに泣きたい。仕事の復習もしないといけないのに。えぐえぐ。ちなみに今日のお昼は担々麺。ラ王の煮るラーメン一個100円くらいなのに美味しいネ。
野菜たっぷり入れて豆板醬を足して食しました(じゅるり)ごちそうさまでした♡
彼女は黒一色の装いだった。
この時期に黒は暑いせいだろうか、シースルーのワンピースの下に七分袖のカットソーとスキニーパンツと言う装いだ。彬華の肉感的な印象をワンピースが和らげてくれている。
それを差し置いても、赤味の強い口紅を付け、明るい栗色の髪を下ろした彼女は魅力的だった。
両目にはいつも通り左右色違いのカラーコンタクトを入れている。今日はアンバーとエメラルドグリーンだ。
およそ病院には似つかわしくない装いだが、彬華がそれを気にする様子はない。
「おはよう、篠崎さん」
と声を掛けようとして、正樹は彬華の姿に見惚れて言葉を失いそうになる。
顔の造作だけでいうのならば、間違いなく清藍の方が美しいだろう。けれど、正樹は彬華の魅力はそのセンスにあると思っている。
黒一色の装いであるにもかかわらず、暑苦しさを感じさせないコーディネイトと奇抜とさえ言える装いを着こなせるセンスに感服する。
「おはようございま~す」
見た目に反して丁寧な物言いで、照れ笑いをする彬華が、もう目の前にいた。
だから正樹は焦ってしまう。彼女を褒めたいのに何といっていいか判らない。
「ごめん、病院にしてくる恰好じゃないね?」
「あ……う……そ、そんなことないよ!うん、今日もカッコいいよ」
「そっか。ありがと」
色の違う両目で見下ろされてどぎまぎしながら答える正樹は、下を向いたことで彼女との目線の合い方がいつもよりやけに違う理由に気付く。
彼女は十センチ以上のヒールを履いていた。
そもそもこの二人の身長はほぼ同じくらいだというのに。
「こっちだよ」
少し赤面しながら彬華を促して正樹は先に立って歩き出す。
赤面の理由はいろいろあった。身長があまり違わない事。おしゃれな服を着こなすセンスが自分にない事。うまく話せないこともそうだ。
けれど今は、彼女とこうしていられるだけで嬉しかった。
コツコツとヒールの音が静かな病院内に響く。
すぐに二人は陸の眠る病室に辿り着いた。
正樹は軽くノックをして病室の扉を少し開く。顔だけを室内に差し込む様に覗き込むと、広い病室に、空のベッドが三つと、その空いたところに薄いクリーム色のカーテンを引いた一角が見える。
中からは話し声は聞こえない。ふと正樹は新汰と吉良が先ほどまで険悪な様子だったことを思い出した。
しまったと思う。あんな状態の二人を置き去りにして浮かれて彼女を迎えに行ってしまった。
「新汰?……相馬君?」
小さな声で呼び掛けてみる。
「相馬?……あの子も来てるんだ」
正樹の声を聞きつけて、正樹の後ろで彬華がつぶやく。
「う、うん」
昨日、吉良が陸の親戚だと話しただろうか、などと思い出しながら相槌だけ打っていると、カーテンの向こうから新汰が姿を現した。
「どうしたん?随分戻ってこないから何かあったのかと思ってたとこだ」
「あー、うん。ごめん、急に電話鳴ったから、病室内だとダメだろうと思って……」
「あぁ、正樹君戻って来たんだね。心配してたんだよ」
にこやかに、そして馴れ馴れしい口調で声を掛けるのは、シャーっと音を立ててカーテンを引きながら、丸椅子に座って体をこちらに向けている吉良だ。
「どうしたの?入って来たら」
新汰も吉良もいつもの調子に戻っている様だった。
ほっと胸をなでおろして、正樹はドアを大きく開けると、後ろに彬華を伴って部屋に入って来た。
正樹に続いて入って来た彬華の登場に、新汰は驚いて彬華を凝視して、吉良はぽかんと口を開けた。
「……誰……?…………まさか司書のお姉さん?!」
その驚きが声の大きさに比例したのは間違いなさそうだった。