61.再集合後の騒動②
頭がどくどくと脈打って何だかおかしな状態です。酔っぱらっていませんよ?念のため。
明日も仕事なのにこんな時間まで起きてるとか阿保です。それでも一応今日は仕事の復習して、晩御飯もちゃんと作ってついでに喧嘩して……。はぁ、疲れた(>_<)
どうでもいい場面なのに茶番ばっかりはかどって全然進みませんね。早く調査に行けよオマイラ。折角顔出した桐華も書けないしこの場面だるい……。
ああ、小説で飯食えるくらい上手くなる薬ってお医者様処方してくれないっすかね?
阿呆だな。もう寝ます。
ちなみにちゃんと仲直りはしましたよ?( ´艸`)
しまったな。と思った時は時すでに遅し。図らずとも二人の会話に割って入ってしまった。しかも思わず新汰を馬鹿にするような口調で。
「何でそう思うの?」
ただ一言が堪えられなかった。これはいけない、判っている。判っているというのに……。
「どういう理由で木の神を探しているのか、とか細かい事情を知らないからそう思うのかも知れないけど、どう考えても県内の地震の被害が大きいのは東日本大震災だ。人死にに関してだけは関東大震災の方が多いから勘違いしているのかも知れないけど。戸上本家の人間がまさか郷土史を学んでいないなんてことはないよね?」
完璧に嫌味だと気付いていたが止めることができなかった。
病室内の空気が一気に下がった気がした。勿論錯覚だ。カーテンは開けられて、病室内には燦々と暖かい光が差し込んでいる。
朝晩はここ最近一気に涼しくなってきたが、日中はまだまだ寒さよりも暑さを感じるほどだ。
「い……や、すまな……申し訳ない。僕は他の戸上の者たちと違って頭が悪いし勉強嫌いで……。確かにあなたの言う通りしっかり郷土史を学んではいないかも知れません」
凍り付いてしまった場の空気を溶かすように穏やかな口調で答えたのは、何のことはない、侮蔑の言葉を向けられた当の本人だ。
正樹などはいきなり緊張感を増した場の空気に、唇を歪ませたままで固まっているではないか。
おそらく何か言って場の空気を変えようとしたのだろう。歪んだままの唇は今に至っても何かを言い出そうとしているかのように僅かにもごもごしている。
こいつは結構扱い安いのかも。判り安く硬直している正樹を見て吉良は思う。能力は高いのかも知れないが……嫌だからこそこの扱い安さは僥倖になるかもしれなかった。
吉良は正樹が眷属神を従えていたことで――実は従えてなどなく協力関係なだけなのだが――完全に正樹の実力を見誤っている。しかし、誰もそれを訂正する者はいない。それはそうだろう、誰もその事実を知らないのだから。
吉良は軽く息を吐いて、新汰を睨んでいた視線を緩めると、一度視線を窓の外に向けて外の景色を眺めた。
しっかりしろ、と自分を叱咤する。どうでもいい嫉妬心のせいで立場を悪くするつもりか?
それが自分に何の利益をもたらしてくれる?
自分にそう言い聞かせて。吉良は微笑んだ。
「ごめん、失礼なことを言ったね。何か判らないことだらけでイライラしてたのかも。陸君も目を覚まさないし……」
陸のことなどこれっぽっちも心配していなかったが、出て来た言葉は真に迫っていた。言葉だけではない。表情までも心から陸を心配している様だ。
「いえ……私たちの方こそ、あなたを巻き込んでしまったのに……」
新汰の謝罪の言葉を聞きながら吉良は別のことを考えていた。自由になったら俳優で食っていけないだろうか。
そんな気持ちなどさらさらなかったが、それもいいなと思った。
ああ今日もいい天気だ。
高く澄み渡る空を見上げながら、吉良は気が抜けたような気分でいた。
戸上本家の人間に――恵まれた家に生まれたというそれだけで、精神的にも金銭的にも辛い思いなどしたことがなさそうな新汰に嫉妬したなどと思いたくなかった。
それは戸上の人間に生まれたかったと思っているということと同じことだから。
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