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57.病室での会見①

 やっと三人が揃いました。この辺りから解明編になっていくことでしょう。


 私事ですが、今日から……もう昨日か、初出勤でした。いくつになっても緊張しますね、こういうのは。緊張しいなのは小さい頃からなので(何せコミュ障なので)仕方ないのでしょうか。


 明日からもまた頑張ろう(笑)

 結論から言うならば、その日、りくが目を覚ますことはなかった。


 正樹まさきに誘われるままに、彼の母親の手料理を食べた後、一度病院に戻ったものの依然陸はベッドに横たわったままで、主治医はしきりに首を傾げていた。


 翌日は休日だったこともあり、主治医は検査は翌週へ持ち越される旨を一行に告げて帰って行った。


 翌日の早い時間に、再び陸の病室に集まったのは、新汰あらた正樹まさき吉良きらの三人だった。


相馬そうま……吉良……さん」


 正樹に引き合わされる形となった、新汰と吉良。名目上は従兄弟同士という事になるわけだが、普段はほとんど崎宮市にいない新汰には吉良との面識はないに等しかった。


戸上新汰とがみあらたさん。初めまして……ですかね」


「子供の時にもしかしたら会っているかも知れませんが、婆様ばばさまの私塾で……」


 その会話が示す通り、二人が顔を合わせてもピンと来た様子はない。


「婆様……やはり、当主様のことは皆そう呼ばれるのですね」


 ぽつりと漏らされた言葉は、新汰に向けられたものであったが、独り言の様な内容だったので、新汰は微笑んで頷くことで肯定の意を示しただけにしておいた。


 そうして、三人は陸の顔を見下ろしながら、しばらく無言で途方に暮れる形となった。


「やはりこれは、例の件と関係があるんだろうか」


 数十分の沈黙の後、思考することに飽き始めた正樹がスマフォをいじり始めたのを見て、新汰がぽつりと呟いた。


()()()?」


 吉良は僅かの間、正樹の視線を流したが話を聞いているのかいないのか、反応の全くない正樹の様子を確認するとそのまま、新汰の方へ顔を向けて問い返した。


「吉良さんは、水上みかみさんにお会いしたことは?」


 新汰はその問いに答えることなく、吉良に声を掛けてきた。正樹は視線をスマフォに向けたままだ。外交事がいこうごとは新汰の役目だと言わんばかりに、正樹は我関せずを決め込んでいる。


「水上……清藍せいらんさんのこと、ですよね?」


「ええ」


「はい、本家の中で何度か」


 探り探り進められていく二人の会話。静かに交わされる会話は、ドアの外から聞える見舞客などの往来にかき消されて三人以外には聞こえていないだろう。


「彼女が本家にいる理由についてはご存知ですか?」


 吉良の目を見て、慎重に言葉を選んで問い掛ける新汰の瞳は、真実を掴み取ろうとする真摯しんしさが伺えた。


「……洪水の被害にあったとだけ」


 答える吉良もいつもの気安い雰囲気を消して、慎重に考えて答える。


「洪水の際に彼女が濁流に呑み込まれたことまではご存じなかった?」


「……えっ?入院していたとは聞きましたが……洪水に?」


「はい。一人ではありませんでしたが、彼女は氾濫はんらんに巻き込まれて無事に生還しています」


 そこまで聞いて吉良は黙り込む。彼の細い指が自らの唇に当てられ、視線は周囲をさ迷う。


「おれ……私はそこまで詳しいことは知りませんでした」


「そうですか。……あ、どうぞあまりかしこまらずに」


 そこで会話がぷつりと途切れる。新汰も吉良も互いに思考を巡らしながらお互いの様子を伺うように視線をさ迷わせた。

R03-07-06 一部改稿

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